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リリアーナ

(298)
カレンダーに×印をつけ、リリアーナはげっそりしていた。
「ああ、とうとうこの日が来てしまった・・・・・・・」

事の始まりはこうだ。
秋のバレンタインに、リリアーナはいつもお世話になっている友達に手作りチョコを贈った。
どうやらその中に媚薬らしきものが混入していたらしい。
まあ青酸カリや毒ニンジンでなくて良かったと思うべきかもしれないのだが。

媚薬のヨクホレールとは系統が違うため、解毒剤の入荷にはしばらく時間がかかるらしい。
だから時間稼ぎのため、アルは「今日のレクリエーションの優勝者にリリアーナを進呈する」と説明した。
アル、なんて事言うのと食って掛かると、アル曰く、
「いくらなんでも当日までには解毒剤が届くんじゃなぁい?」

・・・・・・・・その時はいいアイディアだとリリアーナも思った。
解毒剤が届けば全てが解決する、そう考えていたからだ。
だが。
「まさか今日になっても解毒剤が届かないなんて・・・・・・・・」

――では、以上で事前確認を終了します。本の中に入ってください――
リリアーナはぐっとこぶしを握り締めた。
こうなった以上、自分で優勝するしかない!
リリアーナはマジックアイテムが入ったポーチを腰に装着すると、意を決して物陰から出てきた。

「俺の嫁!」などと叫ぶ面々がこちらに気づいたようだが、問題ない。
リバース内でのスタート地点はランダムなため、チョコ被害者の面々と顔を付き合わせる可能性は低いのだから。

秋のさわやかな風を頬に感じながら、リリアーナはゆっくりと目を開けた。
そこは屋上だった。
「わー。本当に右と左逆転してるのね」
上から見下ろす学園内の風景は、まさに鏡に映したようだった。なまじ知っている場所だけにこれは混乱しそうだ。

驚くことは他にもあった。
何時の間にか自分そっくりの人形がついたペンダントを首に下がっており、見知らぬ箱も持たされていた。
おそらく参加者全員に配られるアイテムボックスだろう。


292
箱をあけようとしていたリリアーナは、ふと、中庭を横切っていく見慣れた人影に手を止めた。
「アル!すごい、もう誰か戦闘不能にしたの?!」
手には何ももっていないが、どうやらごみ箱に用があるようだ。懐にでもペンダントを隠しているのだろうか?
リリアーナは首をかしげた。
たしか説明では、学校をいくつかのブロックに分けており、そのブロックに一つ人形投下用のごみ箱が出現するはずだ。
そして誰かに倒された人物は、人形をごみ箱に捨てられない限りごみ箱の前で再生する。
となると、アルが倒した相手はごみ箱の前で待ち構えているはずなのだ。なのに、その姿が無い。
バグ?と悩んでいると、アルはペンダントを外すと、ゴミ箱の上に差し出し・・・手を離した。
「みんな、がんばって頂戴ねぇん。」
「アルったら何ひとりで楽してるのよ――――!!っていうか、今回私が困ってるの知ってるんでしょ――――!!
 ペンダント要らないならどーして私にプレゼントしてくれないのよ――――っ!!」
屋上で絶叫しているリリアーナを尻目に、半透明の姿のままふよふよと浮き、上昇を続け、やがて姿は消えてしまった。

リリアーナははっと我に返るなり、身を翻し校舎の中に入った。
とりあえず中庭のごみ箱に向かおうと思う。誰かと合流するのもいい。
「そうよ、何も私が優勝しなくてもいいんだわ!私なんて趣味じゃない誰かが優勝してくれれば万事解決じゃない!!」
ナーイスアイディア!とリリアーナは一人頷いた。

とりあえず今は中庭のごみ箱に向かおう。間に合えばまだアルの置き土産が転がっているはずだ。

(22)
リリアーナは下を目指していた。
廊下を通り抜けようとしたところで、前に女子生徒の姿を発見する。
どう戦おうかと悩んでいると、突然彼女の足は止まり、天井が崩れ落ちた。
あっけに取られていると、瓦礫の中から女子生徒のペンダントを握り締めたメラルが現れた。
「め、メラルさん・・・・・・凄い気合入ってるわね・・・・・・ところでものは相談なんだけど、私と」
「…安心して、リリアーナ。今ここであなたとやりあう気はないわ。でも。」
しかし…ここからが違った。メラルは明らかな敵意の篭った声で言い放ったのだ。
「今日はあなたと手を組む気はないし…あなたの優勝は断固阻止するわ。
 私の家名とその誇りにかけて。」
ガガ――――ン!とショックを受けているリリアーナの目の前に3枚の白いカードを放り捨てられた。
「な、何でそんなに怒ってるの?私何か気に障ることした?だったら謝るから!」
リリアーナはメラルの後姿に叫んだ。
追いかけたかったが、3枚のカードはどう見てもトラップだ。リリアーナは追いかけることが出来なかった。

取り残されたリリアーナは肩を落とした。
なぜメラルに、あれ程敵意を持たれるのかがわからない。
メラルも知っているはずだ。まともに戦ったら、リリアーナは学園のどの生徒にも敵わないのだと。
(あ。もしかして、・・・・・・私、どこかで他力本願じゃなかった?)
もしかしたら、メラルはそれを見抜いたのかもしれない。リリアーナは自分が恥ずかしくなった。
「いくら非力だからって他人の力に頼りきるんじゃだめよね、誰かと組むのならお荷物じゃなくパートナーにならなくちゃ!!」
リリアーナはぐっとこぶしを握り締めた。

その時、教室の窓ガラスを叩き割って飛び出してくる影があった。
「俺の嫁!ゲットだぜ――――!!」
「え?キャ―――― っ!!」
「さあリリアーナ、俺と一緒に目くるめく愛の世界へ・・・・・へっ?!」
男子生徒はすちゃっとポーズをとろうとして、すっ転んだ。
リリアーナはひっくり返って白目を向いている生徒をつんつんつついてみた。 反応は無い。
「・・・・・・・・・・・・」

(26)
リリアーナは大急ぎで階段を駆け下りていた。
「あーもう、びっくりした!でも・・・ラッキー!」
彼女の手にはちゃっかり男子生徒のペンダントが握られていた。 そう、さっきの男子生徒から失敬してきたのだ。
だがいつ彼が意識を取り戻し、追いかけてくるかわかったものではない。
外に出ようと急ぐあまり、リリアーナは注意力が散漫になっていた。
だからキサカにペンダントを奪われるまで、その存在に気づくことが出来なかった。

「キサカさん!? ちょ、ちょっと待ってそのペンダント返して!」
「やなこったい。これは貴女の為なのです御嬢様とか抜かしといて私利私欲に走るのが俺流。異論は認めない」
「えー?!ま、待って~!!」
猛ダッシュで逃げ出したキサカを、リリアーナは必死で追いかけた。
戦略かもしれないが、相手を傷つけず、ペンダントだけ奪ったキサカは紳士的だ。
おかげで五体満足のままリリアーナは彼を追いかけることが出来た。

19
前を走るキサカノ横に氷の鳥が飛んできて、彼に並走する。そして…唐突に話を持ちかけた。
「あんた…そのペンダント…他のペンダント二個と交換する気はねーか?
ガ―ン!とリリアーナは再びショックを受けた。
自分には共闘など持ちかけてくれなかったのに、キサカには思いっきり怪獣・・・もとい、懐柔にかかっている。
「えー?!エミュー何いってるの?!っていうかメラルさんはどういうつもりなのっ?」
正直エミューの話は破格の条件である。だからこそ意図がわからないのだ。

「そ、それを言うなら私も言わせてもらうわ!キサカさん、この間結局私のバスケット取りに行ったきり消えたわよね?!
 あーあ、レモンパイとかぼちゃジュース。私がロックに食べさせようと一生懸命用意したのに・・・。
 これってどうなのよっ! 乙女の純情踏みにじっておいてこの仕打ちはないんじゃないのっ!?
 あなたは私に借りがあるはずよっ!異論は認めないわっ!!もし渡したら化けて出てやるんだから~」
これでは交渉というより、とんだ言いがかりである。

走っている途中突如キサカは方向転換し、外のほうへ向かおうとした。
これでは肉薄していたリリアーナが避けられるわけも無い。
思い切りぶつかったリリアーナはバランスを崩し、キサラもろとも床にもんどりうって倒れた。

押し倒された形のリリアーナだったが、めげずにペンダントを握ったキサラの手にしがみ付いている。
「キサカさんペンダント返して!!いや、優勝しても私に興味ないって言うなら力貸してもいい!!」
必死になっていたリリアーナだったが、ふと嫌な予感に視線をそらせた。
視界の隅に見覚えのあるマジックアイテムが転がっているのに気づき、仰天する。
「げっ!幻灯機じゃない!!しかも録画中?!なんでここにっ?!」

どうやらリリアーナのアイテムボックスの中身は幻灯機だったようだ。
箱を調べればきっと「は・ず・れ・よぉ~ん(はあと)」と表書きされた封筒が見つかるだろう。

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自分のペンダント返して!とあきらめ悪く暴れていると、キサカにひょいと引き起こされた。
明確な腕力差に、いくらキサカが女顔でもやはり男性なのだということを否応無しに意識させられてしまう。
だがリリアーナが動揺するよりも早くそれは思った。
「失礼」
地面に足がついたとたん、リリアーナ思い切りバランスを崩してしまった。
手が振り解かれたからではない。何の脈絡も無く両手首が切断されてしまったからだ。
持ち主から離れた両手は、キサカの左袖と左手をまだ掴んでいる。
「悪いねリリアーナ。そのうち埋め合わせはするよ」
どっと冷や汗が出た。あまりのことに声も出せないリリアーナに向かって、キサカは剥ぎ取った両手を無造作に飛ばした。
彼が何か早口で詠唱すると、リリアーナの両手はまるで磁石のように切り口に吸い寄せられていった。

「ま、待っ・・・?!――――!!!」
キサカを追おうとしたが、僅かなタイムラグを置いて襲ってきた激痛に言葉を失う。
痛み以外のことにまで気を回せるようになった頃には、キサカもエミューの姿も消えていた。

リリアーナは自らの両手をじっと見つめると、何度も手のひらを開いたり閉じたりしてみた。
傷は完全に消えていた。僅かな痛みが残っていなければ、切断されたことも夢だと思うに違いない。
傷をつけて、元通り修復する。これもキサカなりの美学なのだろうが、魔力の消耗も侮れない。

だが他人を気遣っている場合ではなかった。今は何をさておいても
「キサカさんを追いかけなくちゃ」
リリアーナは駆け出そうとして、慌てて引き返した。
「アルのバカバカバカ!!ただでさえ勝ち目無いのにアイテム没収なんてひどすぎるわ!!
 これで私が優勝できなかったらどーしてくれるのよ!私の死亡フラグ勝手に立てないでよねー!!
 もしもゴーストになっちゃったら化けて出てやるんだから!」
ゴーストにゴースト化したリリアーナが会いに行くサプライズ度についての議論は止めておこう。。
とにかく一通り叫んで気が済んだのか、リリアーナは幻灯機を腰にセットし、アイテムボックスをウェストポーチに収納する。
ボックスの底に封筒らしきものが見えた。落ち着いたら目を通そう。

リリアーナは左手にロックバスターを装着すると、キサカを追って中庭に飛び出した。

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茂みの中からごみ箱の様子をうかがう。メラルはまだごみ箱のそばに残っていた。
キサカはどこだろう?とリリアーナは周囲を見渡した。
まだ自分の体がゴースト化していないのだから、捨てられてはいないはずなのだが。

どうしたものかと考え込んでいると、ふいにメラルがこちらに顔を向けた。
(も、もしかして隠れているのばれちゃった?)
ここは思い切って飛び出すべきだろうか?それともしばらく様子を見るべきだろうか?


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キサカが派手に飛び出してきた。・・・・・・目があったような気がして、リリアーナは慌てて首を引っ込めた。
どうやらリリアーナは、隠れるのは苦手のようだ。

メラルはごみ箱を氷のピラミットで埋めてしまった。
あれではごみ箱にペンダントを投下できないし、復活するのも大変そうだ。
どうしたものかと思っていると、ふっと目の前が翳った。
え?と上空を見上げた瞬間、背中に銃口が押し付けられた。
「……こんにちは、リリアーナさん」
「・・・・・・キサラ。昨日はちゃんと寮で眠れた?」
応えはない。リリアーナはごくりと生唾を飲み込んだ。
口調は落ち着いているし、殺意も向けられていない。
だが、リリアーナは振り返ることが出来なかった。キサラはまるで知らない人のようだった。
とりあえず意図がわからないので、リリアーナはホールドアップする。
「最初に言っておくわ。キサラにあげた手作りチョコに媚薬を混ぜたのは断じて私じゃない。
 次に、私はペンダントを奪われている。だから殺しても弾の無駄。
 最後に、リバース内では殺されても死なないけれど、痛みや死に至る苦しみは本物よ」
キサカにクッション代わりにされた男子生徒を痛ましそうに見つめる。
「――――私はヒーラーよ? だから、本当はリバースに参加する気なんてなかった。
 自分が優勝の景品になってさえなければ・・・ね」
リリアーナはゆっくりと振り向いた。
「で、キサラは私に何か御用?」

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視界の隅では、メラルとキサカが対峙している。
「まだ、彼女に舞台を降りてもらう訳にはいかないのよ。
 私の目的を果たす為にはね。だから…そのペンダントを奪い取るまで、
 私が何があっても引き下がらない。私のペンダントが捨てられるまでは…絶対に。
リリアーナは眉を顰めた。
「メラルさんは何であんなに私に拘ってるの?
 まさか私の友チョコ食べてリリアーナ大好き!結婚して!な~んて・・・・・あるわけないわよね、うん」
だとしたら怖すぎる愛情表現だ。
「キサラは何か聞いて・・・・・・?!」
リリアーナは屋上で魔法が発動するのを感じた。
「危ないっ!」
考えるより先に体が動いていた。

後ろから狙い撃ちされるとは思ってもいなかったようだ。
キサラが止める暇もなかった。
リリアーナは屋上から放たれたブリザード・レイとキサカの間に飛び込んでいた。

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ブリザード・レイは狙いたがわずリリアーナを直撃するはずだった。リリアーナも覚悟を決めていた。
だが急にそれ進路を変え、倒れていた男子生徒を氷漬けにする。
驚いたリリアーナが振り向くと、そこには銃を構えたキサラが立っていた。
その銃口からはうっすらと白煙がたなびいている。
「……リリアーナさんも言ってることとやってることが違うじゃないですか
 ………そういう性格なの…知ってますけど」
リリアーナは苦笑いした。だがキサラはリリアーナに用があるものの、味方というわけではないらしい。
「あーあ。やっぱりキサラはメラルさんの味方なんだ~。ふーんだ、いいもんねー。
 ところでキサラ、バレンタインデーの本命チョコ、ちゃんとメラルさんからもらった?」
バカ話をしても、キサラは眉ひとつ動かさない。これは本気でバトルモードのようだ。

61-62
「少年、リリアーナに当たってもいいなら撃て」
「敵は―――すべて倒すだけだ」
そっけない台詞に、リリアーナが「うわあ・・・」と大きなため息をつく。
「キサラ、さっきも思ったけど、ぜんっぜん!ちっとも!学生らしくない台詞よね!!」
研修が終わっても、キサラは相変わらずキサラのままらしい。
(・・・・・でもまあ・・・ちょっとづつ変わって来てるよね)
冷徹で計算高いかと思えば、さっきはメラルの心証を悪くしてまでブリザード・レイから守ってくれた。
口にこそ出さなかったが(言えばキサラは全力で否定するだろう)いい傾向だと思っていた。


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キサカはこれまた聞いたことも無いような呪文を詠唱していた。
「キサカさん、もういいわ。自力優勝はあきらめる。そのかわり、キサカさんが優勝目指してがんばってくれる?」
リリアーナがこっそりキサカに囁いたが、聞こえていたかどうかは怪しい。いきなりキサラが消えた。
「刺し穿て!悪魔の槍よ!!」
キサカを狙ったようだが、槍は逸れた。そしてそれはリリアーナの足元に突き刺さり、小爆発を起こす。
「えっ・・・・・?!きゃ―――― っ?!」
爆風でリリアーナのスカートが派手に捲れあがる。
慌ててスカートの裾を押さえたリリアーナは、赤い顔でキサラを睨みつけた。
「キサラのばかばか、えっち!」
  • ・・・・・・・・・キサラがリリアーナのために手加減してくれなければ、今頃スカートレベルの騒ぎではなかったはず。
まったく、とんだ言いがかりである。

氷の鳥が再び動き出した。
「止めてメラルさん!私の代わりに優勝してくれるって言うのなら、ペンダントくらい譲るから!!」
リリアーナは叫ぶが、氷の鳥は止まらない。
このままではなぶり殺しだ、そう思っていたリリアーナだが、ふと異変に気づいた。
無数に氷の鳥が飛び交っているのに、ただの一羽もキサカに傷をつけていないのだ。
(どういうこと?)
当のキサカは、涼しい顔でメラルに歩み寄っていた。

「手を組まないか? 貴様呼ばわりした非礼は詫びよう。
  君の目的はどうあれ、リリアーナの退場を忌避するのは共闘の理由になる」
3つのペンダントが宙を舞った。リリアーナのだけを二体の氷の鳥がキャッチし、メラルの元へと運ぶ。
「宣言は守っているからこちらに非は無い。リリアーナのペンダントは渡したから、
 俺が攻撃される理由も無い。 そして俺のイベント参加権は譲渡した。……どうする?」
「確かに、あなたの言う通り、今、私にこれ以上あなたを攻撃する理由はない。
 でも…ごめんなさい。あなたを仲間に引き込むつもりはないの。」
「・・・・・・・・・。」
奪い合っているのはリリアーナのペンダントなのに、なんだか当の本人はすっかり蚊帳の外である。
(こんなことなら、最初に接触した時ペンダント奪っておけばよかったのにね。
 まあメラルさんも、こんなに私があっさり私がペンダント奪われるとは思っても見なかったんだろうけど・・・)
リリアーナはがっくりと項垂れた。

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急にメラルがこちらを向いた。リリアーナはびくぅ!と飛び上がった。
「今日の夜。皆が寝静まった頃に…私の所に一人で来なさい。もし、明日の朝まで来なかったり…
 それより前にこのペンダントを取り戻しに来たりしたら、 あなたのペンダントは捨てさせてもらう。」
リリアーナは「はぁ~」と技とらしくため息をつくと、両手を上げて降参のポーズをとった。
とりあえず今夜までは、メラルと接触を試みることは許されないらしい。
「で、私はどこに行けばいい?」
普通に考えればメラルの自室だろうが、リバース内で寮が安全だという保障はどこにも無いのだ。
「それと、最後にひとつだけ質問させて」
珍しくリリアーナは言いにくそうに口篭もった。
「私のこと、好き?」


(98)
83 >86
「言ったろ。俺はお前らに喧嘩を売らない。メラルとリリアーナの密会にも干渉しない」
「いや何でそこで密会になるのよ」
「…そうしてもらえると助かります
「キーサーラー、あっさり納得しない!!」
ムキーッ!!とリリアーナは一人で腹を立てているが、あいにく誰も聞いちゃいなかった。

短いやり取りの後、キサラ達は立ち去っていった。
「喉。」
リリアーナは前方を凝視したまま、傍らの狐耳少年に小さな包みを押し付ける。
中身はリリアーナ特製の薬草キットだ。
「早く治したいんでしょ?こっちも併用するといいわ。勿体無いから苦くても吐いちゃダメよ」
 とりあえずここにいてもしょうがないし、移動しましょ」
キサカの表情を見て、リリアーナはあら?と小首を傾げた。
「一人より二人のほうがいいさっ♪て歌にもあるでしょ?
 とりあえず、キサカさんの喉が回復するまでは一緒にいたほうがお互いのためだと思わない?」
リリアーナは左手に装着したロックバスターをひらひら振って「ねっ?」とウィンクした。

「終わってしまったことはしょうがないわ。今やれることを精一杯やればいいのよ。
 それにまあ、物は考えようよね。うん。そうよ、ある意味こんな安全な保管場所は無いわ!キサカさんもそう思うでしょ?」
安全リリアーナはうんうん、と一人納得すると、先に立って歩き始めた。
(「安全」ということは、取り返すのも至難の業ということに、気づいているやらいないやら。

81 >88 >91-92
校舎内に入ると、そう遠くない場所で銃声が響いた。
誰かが戦っているようだ。物が割れる音や、爆発する音、重いものが床に落ちる音が立て続けに上がる。
「あの銃声、キサラのじゃなさそうね?・・・・・ねえ、行ってみましょうよ!上手くすれば漁夫の利よ!」
リリアーナはキサカの襟首を掴むなり、すたこらさっさと走り出した。


(100)
外の喧騒が嘘のように、学園長室はゆったりとした時間が流れている。
すわり心地の良さそうなアンティークの椅子の上で、学園長は優雅に午後の紅茶を楽しんでいた。
部屋の中央に置かれた革張りのソファの上には、教頭が仏頂面で腰掛けていた。
教頭の前には白磁のティーカップと、大きな水晶球が置かれていた。
ティーカップからは芳香が立ち上っているが、教頭が手をつけた様子は無い。
「教頭先生、新しい茶葉はお気に召しませなんだかの?」
教頭は水晶球から顔を上げ、初めて紅茶が置かれていたことに気づいたようだ。
短く礼を述べ冷めかけたそれを一息にあおると、再び水晶球に視線を落とす。

「教頭先生、何か気になることでもありましたかな?」
教頭が険しい顔をして頷いた。
「特定の生徒達が死亡と復活を何度も繰り返しています。それも大量に。なのにペンダントのごみ箱への投下率は思いのほか少ない」
学園長は立ち上がりソファまで移動すると、教頭が眺めている水晶球を覗き込んだ。
水晶球の中では寄生被害者達が森の中を徘徊している姿が映し出されていた。
「ほほう、考えましたな」
「学園長ぅぅ!感心している場合ではありませんぞ!
 再戦し勝機を掴むための体力の回復と配給以外のアイテムを温存させる配慮が仇となりました。
 死に至る苦しみと、参加資格であるペンダントとアイテムボックスをその場に残すというリスクが復活のペナルティだったのです。
 本人の意思でならともかく、他者に強制されての復活選択は本来の理念に反するものですぞ。
 このイベントの趣旨は、特定の生徒だけに繰り返し苦痛を強いるというものでは無かったはずです!」
ふむ、と学園長は白い髭を撫でた。
「・・・・・・・では教頭先生、こんな追加ルールはいかがかな?」

ALL
時計塔から能天気で溌剌な声が響き渡った。
「時計台のガーランドだ。今からリバース参加者に、学園長から追加されたルールを連絡するぜい!
 復活の際の魔力と体力の回復量、たった今から半分に減らされた!異論は認めねえ!
 今後は死ねば死ぬほど消耗して回復に時間がかかる、せいぜい気をつけろ!以上だ!」


(107)
102
空元気のリリアーナは廊下を足早に歩いていた。
知らず手の中の指輪をぐっと握り締める。先ほどメラルから連絡用に渡された物だった。
指輪は金属特有の冷たさで自己主張し、否が応でも先ほどのやり取りを思い出させる。

「リリアーナ、あなたの事は…いい友人だと思っているわ。例え…チョコレートに薬を盛られたとしてもね。
 今回、私はあらゆる意味であなたの敵なのよ。一位の賞品の話という点でもね。」
(あれは・・・・・・どう見ても怒ってたわよね・・・・・・)
メラルは警戒心が強くプライドも高い。
マリアベルの一件以来少しづつ心を開いてくれたようだが、今回の一件でリリアーナの信用は地に落ちてしまった。
少なくともリリアーナはそう感じていた。
「どうしよう、メラルさんに完全に嫌われちゃったよ~!!きっともう許してくれないんだわ!!
 ああもう、私のバカバカバカ!大事なチョコ作りを人に手伝ってもらったりするからこんなことに!!」
心の中で考えているつもりが、思いっきり口に出していることにすら気づいていないようだ。
リリアーナは指輪を握った手で、ぽかぽか自分の頭を叩いた。

しょんぼりと項垂れたリリアーナの歩調が緩んだ。キサカの襟首を掴んでいた手がようやく外れる。
「ねえキサカさん、ひとつ聞いてもいいかな?
 この間のバレンタインのことだけど、媚薬入りチョコなんか贈られたら腹が立つわよね?
 知らずに贈ったとはいえ、やっぱりチョコのこと、キサカさんも怒ってる?」


94 >99
「それに言っとくけど、私はギブアップもしてなければ悲鳴もあげてないわ。
 …まだ勝負の続きよ。」

リリアーナは息を呑んだ。この声の主が誰か、リリアーナは知っていた。
聞き覚えのある、だがここでは決して聞くはずのない少女の声。
「―――― エルザ?・・・・・・まさか。なんでここに?!」
廊下の向こうには強大な気配が二つと、生徒らしき気配が二つ。
しかも聞こえてくるエルザの声はかなり苦しそうだ。怪我をしているのか、それとも苦戦しているのか?
少なくとも、生徒二人のうち片方はロックの気配だと確信したリリアーナは、思わず駆け出していた。
「ごめんキサカさん、先行ってる!!」
リリアーナは猛スピードで駆け出した。トラップのことなどすっかり眼中に無いようだ。

「エルザにロック!大丈夫なのっ?!」
リリアーナが廊下の角を曲がり、レイド達の後方に飛び出したその時!!
「全力全壊!メギドラオーン!!」
「!! キャ――――!!!!!」
エルザを巻き込まないよう慎重に範囲を指定した大魔法が、レイド先生のいた辺りをなぎ払った。
ロックバスターを床に向けたリリアーナの姿は閃光にかき消された。
、
爆風が消えた時、リリアーナの姿はどこにも無かった。
そして床には50センチほどの穴と、不気味なくらい無傷な幻灯機が転がっているだけだった。

(134)
118
いやそれより!今レイド先生をフルボッコにしてる最中なのよ!
あんたも死んだふりなんかしてないで、起きて手伝いなさーーいっ!!」
ミルクがリリアーナを揺さぶるたびに、彼女の後頭部から鈍い打撲音が聞こえてくる。
このまま揺さぶられ続けたら、確実に死体へランクアップできそうだ。
「う・・・・・痛・・・・・・」
だが幸いそうなる前にリリアーナの意識は戻った。

手前にキサカが、そして向こうにはエルザが倒れている。
そして至近距離には修道服姿の少女。勝気そうな碧い瞳が、今は心配そうな色を浮かべている。
砂糖菓子のような名前がまったく似合ってない彼女の名前は確か・・・。
「ミルクじゃない。・・・・・・あれ、ロックは?」
夢だったのだろうか?ついさっきまでロックがここにいたような気がしたのに。

123 >124-125
だが今は、戦闘以外のことにかまけている場合ではなかった。
(・・・・・げっ!レイド先生にエース先生!!)
レイドは右手にファイアーボールを作り出し、タバコに火をつけた。
其の動きはぎこちなく、まるでロボットみたいだとリリアーナは思った。
エルザとミルクが何らかの方法で動きを封じたようだが、魔法までは手が回らなかったらしい。

「こ、これじゃどっちがフルボッコにされるのか分かんないじゃないのよー!」
数の上でこそ4対2でリリアーナ達が勝っているが、形勢はあまり芳しくない。
負傷しているらしきエルザは意識不明だし、リリアーナは魔法が使えない。
キサカは喉をやられているし、ミルクは立てないようだ。
対して教師組は2人。レイド一人でも持て余すのに、その後ろにはエースまで控えている。

レイドは巨大ファイアーボールを2発作り出した。
リリアーナは戦慄した。
『今のはメラゾーマではない・・・メラだ・・・』そんな言葉がリリアーナの脳裏をよぎった。

「逃げるぞ! リリアーナ頼む!」
「ミルクさん重い!退いて!!」
リリアーナは跳ね起きると、ミルクの手を引き立ち上がらせようとした。
だがミルクの身体は鉛のように重かった。
ここまでくると、着やせするタイプとかいうレベルの話ではない。
この状態には、三等過程卒業試験でレイドと戦ったリリアーナに心当たりがあった。
「一体何発撃たれたのよっ?!」

ロックバスターでキサカを援護しつつ、ミルクを立たせようとしたところで時間切れになった。
レイドはファイアーボールを放った。
あれをまともに食らったら、魔法障壁も無いリリアーナはひとたまりも無い。
だが、二人では逃げ切れない。

――――死んだらペナルティだ。
さらに悪いことに、この場所は校内のごみ箱より中庭のほうが近い。
もし復活地点が中庭だとしたら、メラルが作った氷のピラミットの中に閉じ込められる可能性が非常に高い。

ミルクもゲームの中ではライバルだ。
ここで彼女を見捨てても、別に本当に死ぬわけでもない。
優勝したいならミルクを見捨てて逃げるのが正解。そんなことはリリアーナにも分かっていた。

一瞬の逡巡の後、リリアーナは開いていた窓へ向かって思いきりミルクを突き飛ばした。
「ひとつ貸しだから!」

それが、リリアーナの最期の言葉だった。

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最終更新:2008年09月11日 14:18
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