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7:地下:蜘蛛の群れ

レヘ「アイシャの言う通りだな。あのテンコ、俺達を見捨てやがった。」
レベッカ・イン・メイレン・オン・スパイダー。
丸太のような太い足を、リズムカルにボンボンと地下道に打ちつけながら移動する大蜘蛛、
その背中の上で糸にぐるぐるまきにされたメイレン、
その彼女の頭に刺さったレベッカがそう呟いた。

レン「きゃふん!」
大蜘蛛は地下道の奥にある、少し開けた場所にメイレンを投げ出した。
そこは、地の底まで続く大きな縦穴だった。
その深い縦穴を、蜘蛛の糸で作られた床で階層を区切っているのだ。
今メイレン達がいるのは、さしずめ地下一階といったところである。
レヘ「なるほどなー。たしか蜘蛛は二種類の糸を吐き出すと聞いた事がある。
  獲物を取るための粘着質のある柔らかい糸と、
  自分の移動経路をつくるための乾燥した硬い糸だ。
  俺達が乗っているこの蜘蛛の巣は、硬い糸で作られてるみてーだな。」
「どっちにしろ、不快なのには違いないわ~。」
“獲物を取るための粘着質のある柔らかい糸”で巻かれたメイレンがそう愚痴る。
「泥棒め…憎い…わしらの“愛しい人”盗んだ。殺してやる…八つ裂きにしてやる…」
大蜘蛛がメイレンに憎しみをあらわにしている。
レヘ「だとよ、要するにおめーは金玉を盗んだ罪でこの蜘蛛に殺されるわけだ。
  良かったじゃねーか。長い人生がやっと終わるぞ?」
レン「えっ、え~!そんなの嫌に決まってるじゃない!テンちゃん、やっつけてよ!」
レヘ「無理言うな。今の俺はただの槍だぞ。もっともそのおかげで蜘蛛に食われる心配はねーけどよ。」
レン「えっ、食べられるって…ひゃー!!」
メイレンが少し首を動かすと、いつの間にか中くらいの大きさの蜘蛛がメイレンのまわりに集まり、
少しずつ彼女を齧っていっているのが見えた。蜘蛛達の毒牙はまだメイレンの肉に達していないが、
無論時間の問題である。
レヘ「な?つまりそういう事だ。おめーは今まで人間を食いすぎた。
  その報いが、自分が食べられる事だとして、一体何が不思議なんだ?」
地の底まで続く大きな縦穴にて、大蜘蛛がメイレンに尋ねた。
「お前をかしいよ?何を一人でぶつぶつ言ってるのよ?」
レヘ「あー、そうか。お前から見れば独り言にしか聞こえねーのか。」
レン「きゃー!きゃー!」
そう、大蜘蛛からすればメイレンが悲鳴を上げながら、
冷静に自分の運命を話しているようにしか見えないのだ。
「その女以外に誰か喋ってる奴がいるよ…幽霊?悪霊?怨霊?」
レヘ「惜しいな、ただの妖怪だ。少々槍すぎるけどな。」
レン「イ゛ェアアアア!?」
メイレンが一際大きな悲鳴をあげた。
メイレンに群がっていた中蜘蛛が、とうとうメイレンの肉に毒牙を突き立てたからだ。
メイレンがぐったりとなり、みるみるうちに顔が紫色に変わった。
レヘ「そうか、やっぱりお前らは毒蜘蛛か。どうりで顔がブサイクなわけだ。」
「おー、しゃべってるの、こいつよ!こいつがしゃべってたのよ!」
大蜘蛛は、メイレンの頭に刺さっていた槍レベッカを引き抜いた。
引き抜かれた方のメイレンは、すっかり毒がまわって身動き一つしない。
レヘ「気をつけろぃ!俺はデリケートなんだ。」
「この女にはもったいないよー。だいなしよー。」
大蜘蛛は器用に槍レベッカを持ち替えると、ずぶりと自分の頭に刺した。
レヘ「…そういうアクセサリーじゃねーんだけどな。」
「あー!?頭が!?頭がぁああああ!?」
大蜘蛛は大暴れをした。
レヘ「バカじゃねーの?頭に槍刺して平気な奴なんているわけねーだろ。
  約一名の例外はいたけどよ…」
「とっても気持ちがいいよー!!」
レヘ「ああん!?」
大蜘蛛はすっかり槍レベッカを気に入ったようだ。

「出かけてくるよー。その女は骨も残さないよー。」
大蜘蛛が中蜘蛛にそう命令した。つまり、メイレンを完食しておけ、という“意味”である。
レヘ「そういうこった。気をつけろよ、妖怪は死ぬ寸前が一番凶暴だぞ。」
大蜘蛛は槍レベッカを頭に刺したまま移動を開始した。
「…で、どこに行くんだよ?」
「友達のところよー。頭に刺したお前を見せるのよー。」
レヘ「ふーん、お前も女なんだな。新しいアクセサリーを男に見せてーわけだ。」
「余計なこと言わないのよ!」
大蜘蛛は、またしても太鼓を叩くようなリズムカルな足音をたてて地下道を移動する。

119
祭壇の近くにいる者達は、やがてその“太鼓の音”を耳にし、“彼女”の気配を感じるだろう。
そして、そこに至る地下道に居る者達は、“彼女”そのものを目にするだろう。

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最終更新:2009年07月05日 15:47
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