「おい、そこの地味な男。」
学園祭で盛り上がっている学園の一角にて、
地味目な男子生徒、ジミーはそう呼び止められ、ムカッとして振り向いた。
ジミーは自分が地味である事は自覚していたし、それを他人から指摘されるのは、
決して気持ちのいい事ではなかったからだ。
だからジミーは『俺の事を馬鹿にしてるのか!』と怒鳴るつもりだったのだ。
自分を呼び止めた少女の、その胸についたピンクのリボンを見るまでは。
「俺の…おお!君は今日からこの学園に来た留学生だね?はじめまして、僕はジ…」
「場所を案内してくれ。」
彼を呼び止めた少女はジミーの言葉を遮った。
「えっ?あ、いやごめん。青い腕章をつけた人がいるからその人に案内を頼んでよ。」
たしかに、ジミーには青い腕章がついていない。彼は案内用スタッフではないのだ。
しかし、ジミーの目の前にいる人民服の少女は、首を横に振る。
「別に難しい注文しているわけじゃねぇよ。トレーがどこにあるか知りたいだけだ。」
「は?……トレー?ごめん、一体何の事か…」
少女は肩に担いだ槍を、イライラしたように少し揺らしながら言った。
「トレーだよ、トレー。お前が尻の穴から黒くて太い長物を垂れ流す場所が、どこにあるか教えろって言ってるんだ。」
「ト、トイレの事かよ…(女子なんだから、もっと言い方ってもんがあるだろ。常識的に考えて…)
トイレだったら、そっちの建物…校舎に入ってすぐ右の階段の横だよ。」
「そうか。」
「あ、ところで僕の名前はジm…」
人民服の少女は、さっさと行ってしまった。
「名前くらい名乗らせてくれよ…」
ジミーは地味な哀愁に包まれた。
「西方っておもしろいな。トレーが二種類もある。」
校舎に入った少女は、青い模様と、赤い模様がそれぞれの入り口の上に描かれたトイレの前に突っ立った。
「青い腕章をつけた奴が案内役だと言っていたな。なら、留学生用はこっちという事か。」
人民服の少女は、青い模様が描かれた方のトイレに入った。
そのトイレの中には、今だかつて見たことが無いすばらしい形をした便器があったが、少女は気にしなかった。
少女が必要としていたのは鏡だったからである。
「やっぱり、このリボン邪魔なんだよなぁ。」
少女は鏡を見ながら、胸についたピンクのリボンを外した。というのも、
ちょうど胸ポケットの位置にそのリボンがついていたため、タバコを取り出す際にいちいち邪魔になっていたのだ。
かといって、このリボンを外してしまうわけにも行かない。でなければ、自分が留学生である事を示せないからだ。
【Rebecca・Wong(レベッカ・ウォン)】
リボンには、彼女の西方における名前が記されていた。
「ここか?それともこっちか?いやいや、こっちの方が…」
レベッカは、何度もリボンを付けたり外したりしながら、一番いい場所を鏡を見ながら検討した。
数分後、レベッカは男子トイレから出てきた。
散々取り付ける場所を替えられたピンクのリボンは、最終的に彼女の股間に落ち着く事になったようである。
「さて、案内役はどこにいるんだ?」
レベッカが少し歩くと、案内役はすぐに見つかった。
案内用スタッフはわかりやすいように、腕、あるいは服のどこかに青い腕章をつけているのだ。
「おい、そこの案内役。」
レベッカはすぐにその人物を呼び止めた。
「俺の名前を言ってみろ。」
最終更新:2008年10月28日 18:11