『ピルグリム・イェーガー』あと語り
今回取り上げた「ピルグリム・イェーガー」は、
ルネッサンス期のイタリアを舞台にした異能バトル物であった。
日本のマンガにおいては、もはやお家芸と言っても過言ではない
王道中の王道「異能バトル」というジャンルを、
キリスト教の支配するルネッサンス期のヨーロッパを舞台に、
昨今流行りの「衒学的魅力」をふんだんに取り入れて展開されていた。
当時のヨーロッパに生きる様々な階級、
階層の人々がキリスト教とどのように関わり、
社会の中でどのような暮らしを営んでいたのか。
各話の間に挟まれる説明文の中で、
学校の世界史では取り扱うことのない様な当時の風俗を知ることが出来た。
それらの細かいディティールを知ることで、
作品の中で描かれる物語に深みが生まれ、
キリスト教が支配する現代とはかけ離れた価値観の中で、
それでも活き活きと生きていた当時の人々の様々な想いに共感する事が出来た。
そして読者は、ルネッサンス期の世界で起こった数々の出来事が、
現代の日本で起こっている身近な出来事につながる部分が多い事に気付かされることになる。
「歴史から学ぶ」とはまさにこのことかと膝を打った。
歴史とは、現代へと繋がる物語の一部であり、
過去に張られた伏線が回収されるように、
歴史上の出来事は現代に起こる様々な事件を紐解く鍵になってくれる。
王道ジャンルを用い、マンガ読みの好きなキリスト教というスパイスを加え、
読み手の興味を引きつけておいたその上で歴史の真実へ迫ってゆこうとした。
大変な意欲作であったと思う。
2013/3/2 utarou
最終更新:2013年07月06日 02:20