「天使なんかじゃない」あと語り
今回のお題は、矢沢あいの「天使なんかじゃない」という少女漫画でした。
これぞ王道少女漫画!という感じの少女の恋愛を軸にした笑いあり涙ありのとても楽しい作品でした。
今作の感想を一言でいうと、
「とにかくキャラクターを好きになる作品」でした。
キャラクターの魅力を引き出すには、そのキャラクターの魅力を引き出すシチュエーションが必要です。
キャラクターひとりひとりが持っている魅力が、シチュエーションによって引き出され、
そして、物語という形でまとめられる事によって魅力的な作品が生まれる。
当たり前のことですが、そんな当たり前に大切な要素をしっかりと押さえて作られた作品だなぁと感じました。
こうゆうのを「漫画力」と言うのでしょうね。
物語として作品を回していく上では、どうしても「緩急」が必要になってきます。
勢いだけで「急」を作る事は出来ません。
「急」を作るためには「緩」が必要です。
ある程度の長編になるのであれば、物語の緩急を出すために読者はある程度「緩」に耐えなければならないものです。
しかしながら、今作ではその「緩急」の中にいろいろなテクニックが入っていて、
読者がどんどん先へ先へと読み進めていくモチベーションの作り方がとても上手いなと感じました。
伏線の回収を高速で行うことで物語の停滞感を弱め、主人公の行動が大人しくなっている時にはすかさずサブキャラを活発に動かしていく。
真面目なシーンとギャグシーンを混ぜて使う事で、ギャグに笑い、癒やされ、同時に感動の涙を流す…という様な状況を生み出す。
読者の心を掴んで離さない「読者の心を振り回すテクニックだな」と感じました。
青春群像劇として「青春の原風景」を描きながら、メタ的なギャグなどを挟んでいくバランス感覚には舌を巻きました。
ややもすると「萎える」原因にもなりかねないメタ要素をギャグとして上手に入れ込み、
それが真面目なドラマの邪魔をしない位置に、しかし、しっかりと存在感を持って入っていました。
読者がキャラクターに愛着を持つように絶妙に配置されたキャラクター達。
読者を飽きさせないテクニック。
ギャグによる読者の緊張の緩和(ガス抜き)が絶妙で、読んでいて疲れない心地の良い読後感。
娯楽作品としての高品質さを魅せつけられました。
今回は参加者の方々もナチュラルに「このマンガいいよね!」という気持ちが語りに込もっていて、
楽しい和やかな雰囲気のイベントになったと思います。
今作の魅力的なキャラクター達についての言及が主な語りの内容でした。
同じ「好きな気持ち」を共有するというのは本当に楽しいですね。
2013/8/30 by utarou
最終更新:2013年08月30日 19:13