「恋愛ディストーション」あと語り
今回取り上げた「海獣の子供」は、
ジュゴンに育てられた不思議な少年「海」と「空」
学校で上手く周りに溶け込めない少女「琉花」
3人が海の中で行われる不思議な現象「誕生祭」に遭遇する物語。
民間伝承などの大昔から伝わる伝説と、
海洋学、天文学、生物学などの科学的な切り口から生命の神秘「誕生祭」の謎にせまる。
専門用語バリバリのハードSFの様な世界観と海の生き物たちが織りなす幻想的でファンタジックな世界観が融合した不思議な作品でした。
宇宙を人体に例え、地球をその子宮に例えることで、
海で起こる「誕生祭」を何かが生まれる現象として描いているのですが、
細かいところは明確に答えを提示しないままに物語は終わりを告げます。
そのある意味で投げっぱなしにした感じが、
独特な読後感となり、楽しい作品でした。
読み返す度に新しい発見があり、新しい解釈が生まれ、
読後の「これはなんだったんだろう?」という問いには様々な答えが生まれます。
科学的な考証の中には間違った知識も多く含まれているそうなのですが、
現在わたし達が当たり前と思って信じている科学の知識と、
もう現代のわたし達には信じられなくなってしまい、「オカルト」と呼ばれるようになってしまった古くから伝わる民間伝承。
その両者が手を組んだ時に今まで人間には到達することの出来なかった生命の神秘の扉が開く。
そんなオタク心をくすぐるロマンが詰まった作品でした。
「地球上に生きている生命は数多く居るのに、人間はあまりに人間にしか関心がなさすぎる。人間を特別視し過ぎている。」
というメッセージが今作の中には何度か登場します。
その他にも思わずハッとする様な名言が数多く登場する作品になっています。
今回の本語りは参加者が少なく、
主にメインスタッフ3人での語りとなりましたが、
それぞれがそれぞれに熱い語りを披露しています。
それだけ奥が深く、面白い作品であることを物語っていると思います。
パッと見は派手ではありませんし、
相当にマニアックなタイプのマンガだとは思いますが、
多くの人が普遍的に持っている価値観を良い意味で揺さぶり、
適度に浮遊感のある心地良い読後感を与えてくれる作品です。
未読の方は是非読んでみてくださいね。
2013/11/28 by utarou
最終更新:2013年11月30日 16:25