群青学舎 あと語り


 毎月、主宰のutarouさんが記してきた「Twitterマンガ語り あと語り」。この11月分からスタッフ3人による持ち回り制になりました。持ち回り制変更後のトップバッターはtb_lbです。

 さて、2014年11月のTwitterマンガ語りのお題は入江亜季さんの『群青学舎』でした。複数の短編が全4巻にわたって詰め込まれたオムニバス作品です。
 11月初旬にお送りした「Ustまえ語り」では具体的にオムニバス作品を紹介しながらオムニバスそのものの魅力も語りました。

 さて、唐突ですが、入江亜季さんのご著書である、とある単行本を紹介しましょう。その単行本とは『コダマの谷 王立大学騒乱劇』。『群青学舎』1巻と同じタイミングで刊行された作品です。

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『群青学舎』とそっくりのデザイン! 赤と青の対比が映えます。

 この単行本には、「コダマの谷」と呼ばれる2002年ごろに同人誌で発表なさった連作と、同じ頃に雑誌「ぱふ」で発表なさった「フクちゃん旅また旅」という連作とが収録されています。どちらも『群青学舎』より前に描かれた作品です。
 その『コダマの谷 王立大学騒乱劇』には、入江亜季さんご自身による後書きが掲載されています。「コダマの谷」を描く直前にコナン・ドイルの『シャーロックホームズの冒険』を読み、イギリスに興味をもったことを語ったうえで、次のようなイメージを列挙していらっしゃいます。1段落分まるまる引用しましょう。

 ――石畳に石造りの街を、見下ろす丘にお城がそびえていて、王様とか、お姫様とか、貴族!とか聖職者!とか、どうもほんとにいるらしくて! 重そうなマントをこれでもかと偉そうになびかせたりして、サンドイッチが安くて相当おいしくて、お酒は水みたいなもので、カフェの小さなテーブルで美女が新聞を読んでいて、すりきれたガウン、タバコの煙に薄ぼんやりと光るランプ、ストーブのやかんがもうずっと沸きっぱなしで。
『コダマの谷 王立大学騒乱劇』(著:入江亜季、出版:エンターブレイン)
後書きより引用

 『群青学舎』をご覧になった方なら、すぐに気づくでしょう。そうです。まさに『群青学舎』の世界そのものです。入江さんは、そのモデルをイギリスではなく「かなりいいかげんなヨーロッパ風イメージ」にしたとも記していらっしゃいます。

 『群青学舎』はそのタイトルに反し、すべてが学園ものというわけではありません。“オムニバス”としての『群青学舎』を紹介するときに困った点です。ひとまずは「入江亜季さんの作風」「入江亜季さんそのもの」といった表現をしたのでした。
 でも、こうして『コダマの谷 王立大学騒乱劇』の後書きを読んだ後には、『群青学舎』は「入江亜季さんがイメージするヨーロッパ風の国々(時々、日本にも!)をツアーする」オムニバス作品群であるとも表現できそうです。

 思えば今回の「本語り」は、『群青学舎』というツアーを通じて、あのスポットが良かっただの、あの料理がおいしかっただのとわいわい語る3時間だったのかもしれません。
 1つ1つのスポットの満足度が高く、すべて人に共通して印象が刻まれた場面もありました。また、「ここは自分しかわからない面白さがある!」と語りたくなるような場面もありました。
 そんな素敵な作品と素敵な語りに包まれた素敵な時間でした。
 いい旅の後には、その思い出をかみしめながら次なるいい旅を求めたくなるもの。そんな素敵な作品をご存知の方は、その作品を推薦してみませんか。みなで旅の思い出を語るチャンスですよ!

2014/12/26 by tb_lb

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最終更新:2014年12月26日 03:28