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不思議の森


<プロローグ>

リリはいつものように食料を探して森をさまよっていた。

ここは魔族が住むといわれている辺境の地域『ミル』。
リリ自身も魔族と呼ばれる身だ。
外見は十代半ばから後半くらいで、色白の可愛らしい顔立ちには幼さが残る。
大きな赤い瞳と明るい赤茶色の長い髪を髪飾りでまとめ、服の布地は豊かな胸元を覆い、緩やかな曲線を描くウエストを帯で止め、ミニスカートからは白くきれいな足。ニーハイソックスにブーツを履いていた。
言ってみれば、健康的な可愛い子。魔族ではあるが、特に人間との外見差はない。

空腹を訴えるおなかの音に急かされるように、木の実でもないか…とキョロキョロとしながら森を進んでいた――
と、そのときだった。

「え!!?」

前に踏み出した一歩…その下にあるはずの地面がなかった。
ガクッとした感覚とともに、リリは暗闇へと落ちていった――。



ドサッと若干重みのある音とともに、リリのお尻に衝撃と痛み。

「いたた…」

…どうも高さのあるところから落下したようだ。
あたりは先ほど歩いていた森ではなく、ただの暗闇……。

「珍しい…外界からのお客さんだと思ったら……こんなに可愛らしいお嬢さんとは…」

暗闇から聞こえてきた声。
うっすらと明るさをまとった長身の男が現れた。

「……あ…貴方は…?」

「僕はルーゼ。君の名前は?」

「リリ…」

「リリちゃんだね。…僕も君と同じ、魔族だよ」

ニッコリと微笑むと、外界から遮断されたこの結界内で生活しているということ、リリが偶然にもコチラに来てしまったことを続けて説明する。
と、そこで二人の間に

ぐぐうぅ…きゅるるる……!

「あ…」

リリの空腹サインが鳴り響き、恥ずかしそうにするリリの様子に、ルーゼはクスクスと笑いつつ…

「せっかくだから、僕の館でおもてなしさせて? 外からの客人は久しぶりだし、ずいぶんおなかを空かせているようだしね」

そういってルーゼは笑顔のままリリを屋敷に案内した。

最終更新:2011年09月12日 22:35