不思議の森
<2>
改めて食事を再開したリリ。
その一口は相変わらず大きく、口いっぱいに頬張りつつもぐもぐと食べ、その表情や雰囲気は見るからに食べることが嬉しくて、幸せそうだ。
そして、リリの食べ方はとてもキレイで、その食べっぷりはいっそ清々しかった。
その様子はルーゼを喜ばせていた。
出会った直後に空腹アピールされたこともあって、品数も量もできるだけ多く用意していたが…こんなにも美味しそうにたくさん食べているリリが可愛らしく見えていた。
そんな中、執事は手際よくリリが食べ終わった食器を片付け、新たな料理を運ぶ。
肉料理を中心に、魚料理やパンやご飯やパスタにスープ…どれも量がしっかりあり、もちろん味だって絶品だった。
ずっと美味しい物を好きなだけ、おなかいっぱい食べるのが夢だっただけに、リリはパクパクと嬉しそうに幸せをかみしめるように食べていく。
最初の方でこそ、極度の空腹で味わうよりも早く胃袋を満たすことに夢中だったがようやく余裕をもって食事ができるというものだ。
執事によって空いた皿はさげられ、新たな料理が手際よく足されることもあってリリ自身もどれだけ自分が食べたのかよく分かっていなかったが、おなかは正直なものである。
もう先ほど緩めたはずの帯がだいぶキツくなっていて、豊かなバストの下からぐぐっと膨らみを増してきていた…。
「リリちゃん、おなか…大丈夫かい?」
ルーゼに言われて、確認するようにリリが自分のおなかに視線を落とす。
と、改めて見た自分のおなかは普段より…先ほどより大きく膨らんでいて帯に締め付けられている――
自分の目で見て確認したことで、そのキツさが実感としてリリをおそう。
「う…っん」
持っていたナイフとフォークを一旦置いて、締め付ける帯をさらに緩めようとするリリ……。
「くすくす…自分でできるかい? 手伝おうか?」
若干意地悪そうに…だが、どこか嬉しそうにルーゼが申し出るが、
「大…丈夫……っ」
さらに大きく膨らむ余地を求めるおなかとそれを阻もうと締め付けている帯。
先ほどのように簡単には帯を緩めることができず、苦労している様子のリリにルーゼはくすくすと小さく笑いながら近づき、
「ほら、僕が緩めてあげるから」
そう言って恥ずかしそうに…だが、拒否することのないリリの帯に手をかける。
「…あぁ、これはキツかっただろぅ? ちょっと我慢しててね」
ルーゼはリリの膨れたおなかをやさしく撫でてから、締め付ける帯を緩めてやる…と、しゅるるっと帯がほどけていく布の擦れる音とともに締め付けから解放されたおなかがぐぐっとその膨らみを増した。
「……ふぅ…」
リリはようやく楽になったというように小さく息をついた。
「大丈夫かい?」
「…うん…ありがとう……だいぶ楽になったっ」
そういってリリは笑顔をみせた。
その笑顔につられるようにルーゼも笑顔…いや苦笑をうかべると、リリの膨らみを増したおなかをやさしく撫でながら…
「…食べてくれるのは嬉しいけど、無理しなくてもいいからね?」
一応心配そうに言ってみるルーゼだが、リリの食べる様子を見るのもこんなおなかの膨らみを見るのも楽しかった。
言葉の裏には“好きなだけ、もっとたくさん食べるといい”という意味が隠されているのだが……リリがそんなことに気づくはずもなく、素直に満面の笑顔で、
「大丈夫! 帯緩めてくれたし、まだおなかいっぱいになってないもんっ」
「…そう、なら遠慮せずにどうぞ」
ルーゼは呆れることもなくその口元に笑みをうかべると、緩めたリリの帯を特に締めることをせずにすぐに外せるように結び直してやってから自分の席に戻った。
だいぶ楽になったおなかをリリは確認するようにさすってみる…。
ふっくらしていたおなかはさらに大きく膨らんでいて、柔らかな触り心地の中にかたく張ってきている胃袋の存在を感じる。
本来の胃の位置からだいぶ全体に広がっているようだが、それでも満腹感はまだ訪れていない。
帯も緩めてもらったことだし、目の前にはまだまだご馳走がリリに食べてもらうことを待っている…もちろん、食べることを止める気なんてリリにはなかった。
ただ、普通に座っているとテーブルにつっかえる寸前と分かって…一応距離をとるように座り直すと、残りの料理に手をつけることにした。
最終更新:2011年09月14日 21:16