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ひなどり気分。


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食べ放題でうっかり食べてしまった私のおなかはすっかり膨らんで、重たくなっていた。
リボンも抜き取ってしまったので本来のワンピースの幅に、見てすぐに分かるくらいおなかに、ウエスト…いや、おなか全体をワンピースが締め付け、今にもはちきれてしまいそうだった。裾丈も明らかに前の方が短くなってるし…なんだか妊婦さんみたい。
一応ストールでおなかの部分は隠してるけど、優くんはもちろん、他の人にも気づかれているだろう。

「どうしたの? 今日はあんまり食べてなかったね」

店を出て私の手を引いて歩きながら、心配そうに言う優くん。
普通の女の子…いや男の人でも私が食べた量は多いんじゃないかとは思ったけど、私がどれだけ食べれるか知っている優くんには少なく感じたんだろう。
私も、少なく控えめなところで何とか頑張ったつもりだった……一応最初は。
結果的にはワンピースの限界を感じて止めたようなものだが。
それにしても、当初の予定より食べ過ぎてしまったことが恥ずかしかったのと同時に反省していた。

「あ……私、やっぱり調子悪いみたい。今日はもう帰るね」

せっかくの決意も、買ってもらった可愛いワンピースも自分の食欲のせいで無惨なかんじになってしまったし。
料理は確かに美味しかったんだけど、優くんに可愛い女の子アピールをしたかった私はこの場から逃げ出したい気分になっていた。
優くんは元気のない私をすごく心配して、送ってくれるって言ってくれたのを半ば無理矢理、

「…一人で大丈夫、ありがとう」

と、持っていてくれた服を受け取って家路に着く。

なんだかしょんぼりしながら、そしておなかを締め付けるワンピースと戦いながら家に戻る。
家に着くと、私はそのまま自分の部屋に戻り、まず今はキツいだけのワンピースを何とか脱いだ。
急に締め付けを解かれたおなかが若干膨らみを増した気がしたけど、元から膨らんでいるのが少し大きくなっただけで、むしろ楽になった気がする。
それより、同時に私の頭をよぎった……中途半端な空腹感が気になって仕方なかった。

今までは締め付けられていたのでそのキツさの方が気になっていたが、それがなくなれば次にくるのは……未だに満たされていない空腹感。
これが怖かったんだ――…この反動が。
それでも、満腹まで食べたいという欲求は以前より確実に強くなっている。

どうしよう…。
そういえば、週末なのに両親とも家にいない……?
あ、そうだ、今晩は二人で一泊旅行に出かけるからと食費のつもりか5千円受け取ったんだっけ……。
部屋で一人キャミソール…おなかはぽっこりと膨らんだまま…で考えたが、結論がでるのは早かった。
体のラインが分かりづらいワンピースに着替え、上からパーカーを羽織ると財布を手に家を出る。
そう、私はとりあえずこの空腹感が嫌で何か食べるものを買いにコンビニに向かった。

あえて滅多に行かないコンビニを選び、まず買い物カゴに2Lのお茶2本と1.5Lのジュース1本を入れて、後は菓子パンを5つとおにぎりを5つにサンドイッチを3つ、お弁当を2つ、ロールケーキ1本とシュークリームを2つ買って家に帰る……。
一度にコンビニで買うには多いからか店員さんが一瞬戸惑ってから必死に袋詰めをしていたので、やっぱり恥ずかしくて早く店を出たい気分でいっぱいだった。
別に一気に食べようとは思ってないけど、とりあえずあとどのくらい食べれば満腹になるのか分からないからコレでなんとかしようと思っただけで、食べ切れなければまた後で食べるつもりでいた。

必死で重たい荷物とおなかで家に急いだ。
家に着くと台所からコップを持って部屋に戻り、とりあえず楽な…何よりウエストが苦しくない服装に着替える。
目に付いた部屋着のワンピース丈のロングTシャツを素肌の上から着て、下は……面倒だからショーツのままでいいか。
お気に入りの大きなクッションに座り、小さいテーブルに買ってきたモノを並べた。
勢いで結構買ってきてしまったことに驚いたが、モノを見た瞬間に私は改めて沸き起こる食欲を感じ、急かされるように小声でいただきますをして食べ始めることにした。

優くんと行って食べた食べ放題料理がおなかにまだ残っているのは、この膨らみを見れば分かる。
でも消化は進んでいるし、胃もおなかも締め付けから解かれているので食べ物の受け入れ準備は万端だった。
私は胃にモノが残っているうちに食べれば早く満腹になるはずだと思って、とりあえずジュースをコップに注いでまず一気に飲み干してから適当につぎ直し、温めてもらってきた幕の内弁当と唐揚げ弁当を食べ始める。
コンビニの食べ物であろうが、私には美味しく感じられた。
口いっぱいに美味しさと幸せを噛みしめ、こくんと飲み込んで次の一口をほおばる……その繰り返しをしばらくすると、やっと空腹感が薄らいできた。
二つのお弁当を食べ終え、おにぎりとサンドイッチを食べながらおなかを確認するように触ってみると、食べる前より確実にその膨らみを増している。
ただ、Tシャツなのでウエストへの苦しさはない……言い換えればまだまだ余裕ってことかな。
なら、あとは満腹になるまで食べればいいだけ。
私は味はもちろん、食べることを楽しみながら食事を続けた。

飲み込む度に胃に食べたものが貯まっていく感覚やその重量感、ゴクゴクとジュースを飲めば胃の隙間に入り込むのと同時に食べたものに染み込んでいく感じがした。
当然、私のおなかは確実に膨らんで大きく丸くなっていく。
胸の下から急激に膨らみ、下着のあたりまでの曲線が自分が見てても何だか面白い。
そっと触ってみると、だいぶ固く張っているみたい。
テーブルにはまだ買ってきたものが残っている……まだ食べれそうだし、とりあえず食べちゃおうかな。

私は飲み終わったジュースのペットボトルをどかし、お茶を開けてコップに注いで一口飲んでから、残りのおにぎりを食べきる。
あと残っているのは菓子パンとデザートか…。
なんだかちょっと寂しい気分にはなったが、私の胃もおなかもいい感じに張ってきていて、しっかりと重みを感じた。でもまぁ、まだいけるでしょ。
満腹…といえばそうかもしれないけど、私は菓子パンの袋を開けてかぶりついた。
口の中の水分がパンに奪われるのをお茶で補いつつ、一つ二つと食べていく……。

「ん……っぷ…げぇふうぅ…ッ」

自分でもびっくりするくらい大きなげっぷが口から漏れた。誰もいないけど、ちょっと恥ずかしい。
一応、おなかをさすればまだ平気そうなので食べるのを続行することにした。
ただ、まだ食べれるという確信はあったけど、おなかの膨らみは結構なものでユルユルだったTシャツはぴっちりと張り付いて、腰のあたりから膨らみに合わせてシワが入ってる。
へぇ――…こんな風になるんだ。
自分ではあまり観察したことがないので興味もあった。
“このまま限界まで食べたらどんな感じになるんだろう?”
今は人目も気にすることなく、しかも服からの外部的な圧迫はない。実際苦しくなったら脱いでも支障はない。
それに、食べるものは台所を探せばまだ何かありそうだし……試してみようかな?

2Lのお茶1本を飲み終えたタイミングで、私は一旦台所へ食べれるものを探しに行くことにした。



最終更新:2011年10月15日 22:25