理想の現実
<2>
瑞樹の今回の作戦は簡単。
自分のペースに巻き込んで、美和にたくさん食べさせようというものだった。
思ったとおり…外食とケーキを食べた後であるにも関わらず、だいぶ早いペースで食べている。
自然といつもより食べる量も増えているのが見て分かるくらいに。
……ちょっと意地悪かとも思うが、可愛いところが見たくなってしまうのだ。
もちろん自分が食べれば、美和が食べきれなくても料理が余ることはない。
そのかわり、美和には満腹になるまで…いや、限界まで食べさせるつもりでいる――今日も。
瑞樹と一緒に食事をするうちに、美和の食べる量は自然と増えてしまう。
だが、それに気づくのはいつだって食事が終盤にさしかかった頃だ。
「……けふっ」
小さく漏れた吐息を恥ずかしそうに、美和は口元へ手を添える。
…ウエストを緩めたはずが、いつの間にかスカート自体が膨らもうとするおなかを圧迫しているのが見なくても分かった。
美和は無意識に、ぴっちりと張り付くようなスカートを下着が見えない辺りまで下へ押しやると、ようやく解放されたおなかがぐぐっと更に膨らみを増して前へとせり出す。
テーブルに隠れてはいるが、服の上からでも分かる…スカートを下げたことで食べたものがみっちりと詰め込まれた大きなおなかに、隙間から顔を出した可愛らしいおへそ。
そのおなかを見れば明らかに食べ過ぎのはずなのに、美和はまだ食べるのを止めない。
シチューを食べきって、自分の皿に残ったハンバーグとご飯も何とか食べ…いや、若干無理矢理だがすでにパンパンのおなかに詰め込んでいったものの、やはり無理があったようだ。
まだテーブルには料理が残ってはいるが、ようやく食べる手を止めた美和は苦しさを感じるのかおなかをさする……と、思った以上の膨らみと張りに自分でも驚く。
胸の下から急激に膨らみ、大きく丸く…そしてかたく張り詰めた美和のおなか。
「美和、もういいの?」
「…ん……うん…もう無理かも…んぷっ…」
若干苦しそうな美和の様子に、瑞樹は仕方なさそうな苦笑をうかべると、
「そう? 一応デザートまで用意してあるんだけど…プリン」
「え…プリン?」
美和の表情が変わる。
「うん、好きでしょ? プリン」
「うんっ!」
キラキラした笑顔で頷く美和。
それも瑞樹の作戦のうち。
大量に料理を出した上で、美和の好きなプリンを最後に出す――そうすれば美和はたとえ満腹であっても絶対に喜んで食べる。
「じゃあ、もってくるよ」
そう言って冷蔵庫へプリンを取りに行く瑞樹を見送りつつ、美和はおなかが楽になるように少し姿勢を崩す。
どう考えてもプリンが入る余地もない様子のおなかをさすりつつ、見えてしまっているおへそを隠すように服を引っ張ってみたが無理そうだ……。
仕方なく、出来るだけ隠れるように…瑞樹にはソレを隠すように座り直してプリンを待つことにした。
――そして、
「はい、どうぞ♪」
「わぁ…すごいね……っ」
瑞樹が持ってきたプリンを見て驚く美和。
ソレは丼で作ったカスタードプリンだった。
「大きい方がいいかな、と思って」
瑞樹はにっこりと微笑む。
美和には嬉しいサービスではあるが…この状態でこの大きさは……。
瑞樹に大きなスプーンを差し出され、美和は少し複雑な気持ちでそれを受け取った。
「……やっぱり後にする?」
一応聞いてみる瑞樹に、美和は首を振ると、
「ううん! 今食べるっ」
…そう、気持ちはプリンを食べたいのだ。
頭も口の中もプリンを期待している。
テーブルにつっかえるほど膨らんだおなかでも、大好きなプリンを前にしてしまえば関係ない。
美和はスプーンでプリンを大きくすくって口へ運ぶ。
ぷるんっとした食感に、ほわぁぁっと口に広がる甘さとバニラの香り――…
美味しさと幸福を感じているのは美和の表情でよく分かる。
「おいしい?」
瑞樹の問いに至福の表情でコクコクと頷く。
瑞樹の作ってくれるプリンは美和の大好物の一つだ。
これを出されれば、必ず別腹モードを発動するくらいなのだから……現に今も。
別腹モードに突入した美和は、口いっぱいにプリンを頬張りつつ幸せそうだった。
だがすでに美和のおなかには軽く8Kgは収まっているはず…いくら大好物とは丼プリンを完食するには時間がかかっていた。
「…う…っぷ……げぇふぅ…ッ」
手は添えているが、美和の口からは大きなげっぷが。
あと一口、二口なのだが…苦しそうなのは明らかで、先ほどより膨らんでいるおなかをさすりながらやっとの思いで完食したのだった。
最終更新:2011年11月07日 12:56