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理想の現実


<4>

美和のおなかを愛でていた瑞樹だが、思い出したように手を止めて自分の服の裾をまくると、

「そうそう…ほら、触りたかったんだろ?」

「え…」

薄く筋肉の見える腹部に、そこだけ違和感がある……。
元々細身の瑞樹だが、今は全体的にいつもより太さ…というか厚みがあり、みぞおちの辺りから上腹部がぽっこりと膨らんでいた。
だいぶ緩められているベルトからして、普段よりもウエストは確実に太くなっているということなのだろう。
美和がそっと触れると、張っている胃袋の辺りから温かさと固さが伝わってくる。
どちらにしても、美和のおなかほどではなかった。

「まぁ、美和には負けるけどね」

くすっと笑う瑞樹。
瑞樹にとってもさすがに10Kgはそうそう食べる機会はないが、今の状態でもまだ余裕がある。
おそらく8Kgくらい食べている…その気になればままだ入るだろう……まぁ、今そうする必要はないだけなのだが。

「……なんか…やっぱりズルい…!」

自分ばかりたくさん食べた上に、恥ずかしい思いをするなんて……!
むぅっとする美和にクスクスと笑いながら自分は服を元に戻し、

「ほっぺもおなかと同じくらい膨れてるぞ~?」

と美和の頬をツンっとつつくと、改めて美和のおなかを観察するように…確認するように優しく撫でながら、

「…まさか本当に10Kg近く…よく入ったなぁ……」

感心や驚きに若干呆れたように呟く瑞樹に、

「じゃ…じゃあ、瑞樹も食べてみればいいじゃないっ」

精一杯の反撃に出た美和だが、

「ん? 俺も食べたことあるよ」

「え…あるの?」

あっさりと答えた瑞樹に、美和は思わず聞き返した。
……瑞樹は10Kg食べれるの?
と言わんばかりの視線に、瑞樹は苦笑をうかべて頷いた。

「うん、でも俺は厳しかったから…まさか美和が食べれるとは思ってなかったんだよ」

自分でも厳しいという量をまさか小柄な美和が食べきれるとは思ってなかったが――試してみたかった。
そして、それは現実のものとなって目の前で見ることができ、さらに触れることが出来た……。
これは、瑞樹にとっては自分が満腹になるよりも幸せなことだ。

「どう? 10Kg食べた感想は?」

興味深そう…というより、意地悪な感じがしないでもないが…美和は言葉を選びながら、正直に答えた。

「え……そう…だなぁ…なんだかおなかの中に胃がめいっぱいに詰まってる…というか…座っててもずっしり重たくて……」

「ふん、ふん…それで?」

「それで……ん…と、気持ち悪くはないけど…胃とおなかが張っててキツい…? ちょっと痛いかも??」

「そうなんだ…で、どうなの? 少し楽になったのかな? もう食べれそう?」

意地悪な気持ちを隠しきれない様子の瑞樹に、美和は慌てて首を振った。

「うっ…ううん…まだ無理だよっ…おなかいっぱいだし……破裂しちゃうよぅ……っ」

……そんなの聞くまでもない。答えなんて最初から分かっている。
それでも、わざわざ自分から言わせるのも面白いと思いつつ、瑞樹はにこやかに聞いていた。
自分で経験したものと比べているところもあるが、それより美和が一生懸命…しかも恥ずかしそうに説明しようとしているところが可愛いと思っていた。
とりあえず、美和のおなかが限界であることは見ただけでも分かるが言葉にされるのもある意味興奮を覚えてしまう。

「まぁ…美和の可愛い姿を見れて、俺はそれだけで大満足だよ」

にっこりと微笑む瑞樹に、美和は理解に苦しむといった表情で、

「…意味わかんない……けふっ」

小さな呟きと吐息が溜め息混じりにもれる。
それも可愛らしく見えて思わず頭を撫でてしまう瑞樹に、美和は迷惑そうだった。
だが、瑞樹としてはもう少し構いたくなって……

「まぁ…一応言っておくけど、食べたのは美和だからね?」

「…っ……そぅだけど……」

図星なだけに言葉に詰まる美和。

「あぁあ…せっかく柔らかい肌なのに…限界まで張って硬くなってるし……」

瑞樹の長くてキレイな指がつつつ…っと美和のおなかの曲線をなぞる。

「こんなにおなかがパンパンになるまで…動けなくなるまで食べたのは…美和自身だよ?」

改めて確認するようにそう言って、瑞樹は愛おしそうに赤面している美和を見つめる。

「ま……食べさせたのは、俺だけどね」

「……ッ!?」

釈然としない言葉を否定したくても言い返せないのは、別に瑞樹に唇を奪われているためだけではない…。

「――うん、プリンの甘い味がする♪」

瑞樹の言葉に、美和は恥ずかしそうに目をそらした。
その様子に瑞樹は上機嫌だ。

こんな風に、食後にいちゃつくのも悪くない。
美和が食べ過ぎて動けないことを良いことに、瑞樹は美和のおなかを撫でたりキスをしてみたり、その感触を言葉にして聞かせてみたり…――なかなか出来ることじゃないだろう。
美和も最近では恥ずかしがっていても嫌がる様子もなくってきた…かもしれない。
これはこれで二人の中では楽しんでいるように見えた。



最終更新:2011年11月12日 08:08