【Dianthus 第1輪 3/3】

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【Dianthus 第1輪 3/3】 - (2009/07/08 (水) 01:26:57) の編集履歴(バックアップ)


「・・・最後にもう一度確認しよう」
醒徒会会計監査、エヌR・ルール先輩は念を押してなのか先程告げた内容をもう一度簡易的に繰り返す。
青色のマッシュルームヘアーとサングラスを掛けたその相貌は、何を考えているのか今一分からない。早瀬君と違って、俺にとっては少し苦手なタイプだ。
あの時、モバイル手帳で呼び出され招集された俺達は醒徒会室に来ていた。
・・・正直、運が悪いとしか言えなかった。だって俺は今日パーティ加入の申請書を出したばかりなのに。
現在はラルヴァ討伐に向けての作戦会議の真っ最中だ。・・・といっても、喋っているのはルール先輩と撫子先輩を含む3人のリーダーだけだけど。
どうやら今回の作戦は俺達だけが赴かされる訳ではないらしく、他にも2つパーティが集められていた。
1つは、大学生らしき屈強な体格と眼帯を付けた青年男性がリーダーの7人パーティ。
もう1つは、撫子先輩達と同い年であるらしい気位の高そうな女の子がリーダーの4人パーティ。
何れも自信に溢れた優秀そうな面持ちのメンバー揃いだ。
「“スパローホーク”」
「はいよっと」
「“ダイアンサス”」
「はい」
「“クルセイダー”」
「はい、ですわ」
「本作戦に参加するパーティは以上の3つ。今回のメインアタッカーは“ダイアンサス”と“クルセイダー”。“スパローホーク”は他パーティのサポート役となる」
息が切れるという事を知らないのか、呼吸を置く間もなく喋り続ける。
「討伐対象はカテゴリーデミヒューマン下級C-2泥人形。相当な数が確認されているが力は弱く現代兵器も効くレベルだ。君達なら充分対処可能だろう」
・・・ルール先輩は何処と無く不機嫌そうに見える。俺の勘違いかもしれないけど。
「対象地区はI県の放棄されたゴーストタウン。建造物は年季が経っていることもあって脆く崩れやすいので留意をしておくように」
はい、と3人のリーダー達が返事をする。
「・・・以上が必要通達事項だ。何か質問はあるか?」
沈黙によって答えを示す。
「よろしい。・・・転送能力者は屋上に待機させてある、準備が整い次第出撃してくれ」
こうして、非日常が始まった。


「おい、少年」
屋上に向かって撫子先輩達と移動している途中で、“スパローホーク”のリーダー格らしい男性に話しかけられる。
「な、何でしょうか」
俺よりも身長が20cm近く高いところからナイフのように鋭い単眼の左目で見下ろされて、少し後ずさってしまう。
「ちょっと世間話でも。・・・悪いね彼女達、少年をちょっと借りてくよ」
「お話とは私達に聞かれると困るものなのですか?」
撫子先輩はそう聞き返してくれる。
「おう。男同士の語らいだから女の子は駄目」
「・・・分かりました、手短にお願いします」
「はいよ」
あの、俺の意思は・・・。
ガッといきなり肩を組まれる。ひぃっ。
「俺は大学部4年生の狩山猟兵。お前は?」
「ど、堂下です」
「よし、堂下」
肩を組んだ状態でグッと顔を近付けて来る。
「デフォルトで両手に花とはお兄さん羨ましいぞ。俺のパーティときたら全員むさ苦しい野郎共だから潤いが無いの何の・・・1人そっち方面に目覚めちゃったのも居るし」
「そ、そうなんですか」
「まぁ、俺の事なんだけどな」
「っ!?」
「泣きそうな顔で逃げようとせんでいい。冗談だ。・・・1人目覚めたのは本当だが」
「お、驚かさないでください・・・」
すっごい怖かった・・・。
「あの、お話ってなんですか?」
「そう固くなるなって。・・・お前、ラルヴァを殺りにいくの慣れてないだろ?さっきも1人だけ緊張してる様子だったから心配になってな」
あぁ・・・見事にバレてるし。
「大丈夫だ。泥人形といやぁ、カテゴリーこそデミヒューマンだが・・・ハッキリ言って滅茶苦茶弱い。知能も低ければ動きも鈍いし攻撃もただ殴ってくるだけだ」
醒徒会の会計監査さんも言ってただろ、と付け足す狩山先輩。
「お前らみたいな新米でも楽に倒せる典型的な雑魚だよ。捕らえたのを学園生徒の練習相手とかにも使ってるぐらいだしな」
・・・そうか、狩山先輩は俺を励まそうとしてくれてるのかな。
「それにお前の仲間や“クルセイダー”、それに俺達も付いてる。自分で言うのもアレだが、俺達は頼りになるぜ?ラルヴァ討伐実績も上から数えたほうが余裕で早いしな」
「有難う御座います。・・・あの、励まそうとしてくれてるんですよね」
「・・・そうだな、お前ら高等部ルーキーの面倒を見て必要なようなら仲裁するよう醒徒会からも指示されてるし」
・・・ん?仲裁って何だろう?

「坂上さん!貴方、これからラルヴァを倒しに行くという自覚が有りますの!?さっきからあの役に立たなそうな男のほうをチラチラと・・・見ていて不快なんですのよ!」
「・・・甘利には関係の無い事だろう。そう声を荒げないでくれ」
突然、通路の先からそんな声が聞こえてくる、
「あっちゃー、出発前からかよ・・・」
「え、何なんですか?」
「お前んとこのリーダーと“クルセイダー”のリーダーが喧嘩してんだよ。元から仲が悪いってんで、結束を深める意味でこの2パーティが討伐に選ばれたってのに・・・」
撫子先輩が喧嘩というよりも、どちらかといえば相手方に難癖を付けられているように感じたけど・・・。
っていうか、原因の役に立たなそうな男ってもしかしなくても俺だよね。こんなとこでも迷惑掛けてるよ俺。
「あのさ、甘利。事有るごとに撫子に突っかかるの止めてもらえないかな」
「吉明さん、また貴方?1人を相手に2人掛かりで口論しようという訳かしら。この甘利リス(あまり りす)、受けて立ちますわよ」
「甘利先輩、僕達もご助力します!」
「必要有りませんわ。貴方達はラルヴァ討伐に備えて体力と気力を大事になさい」
「・・・話全然通じてないし」
「あー、ストップ!そこまでにしとけよー。出発の時間も迫ってんだからな!」
睨み合っていたユリ先輩と甘利先輩?を狩山先輩が止めに入る。
俺も止めなきゃ・・・こんなところで言い争っても仕方ない。
「あの、撫子先輩、ユリ先輩。熱くなり過ぎないようにしましょう、これからラルヴァ討伐に行くんですから」
「私は熱くなどなっていない。ただ絡まれていただけだ」
撫子先輩は拗ねたように言う。
「なんですって!?・・・いえ、ラルヴァ討伐・・・そうですわね。坂上さん、こういうのはどうかしら」
「何だ」
「今回の討伐で泥人形を倒した数で勝負しましょう。負けたほうは今後一切勝った相手に逆らわない、という条件で。・・・それとも勝負を受ける自信なんてないかしら?」
「・・・良いだろう、その条件で受けてたつ。・・・カウントは中立であるスパローホークの先輩方、お願いできますか?」
「ハァ、ったく。仕方ねぇな・・・受け持ってやるよ。ただし、勝負相手への妨害やラルヴァを助けるような真似はするなよ。本来の目的を見失うな」
「分かっています」
「勝負が楽しみですわね」
狩山先輩はやれやれといった様子で受諾、勝負が成立してしまう。・・・いいのかな、それで。
「あの、良かったんですか。狩山先輩」
「しょうがねぇだろ、あそこで止めたって火に油注ぐだけだ。どっちが勝ってもあいつらなら酷い命令はしないだろうし、もしした場合は俺が仲裁する」
それに、と狩山先輩は続ける。
「一緒に背中合わせて戦う内に友情が芽生えるかもしれないだろ」
「・・・楽観的過ぎませんか?それ」
「前向きなんだと言い換えてくれ。俺、ポジティブシンキングが常だから」
「尚更不安になってきたんですが」
「あぁもう聞き分けのない子ね!そんなに嫌なら隣のタカシ君ん家の子になりな!」
「なんで怒ったお母さんみたくなってるんですか!」
「ハッハッハッハッハ!中々良いツッコミだな堂下、才能有るぜ。・・・ほら、もうそろそろ屋上に着くぞ。心の準備は出来たか?」
「ろくに出来ませんでしたよ・・・」
でも、少し気は楽になったかもしれない。撫子先輩と甘利先輩の勝負が気掛かりだけど・・・。

バン、と屋上の扉が開放された瞬間。風が乱れて吹き荒れる。
右腕で顔をガードしつつ、屋上に出ると。
「・・・ヘ、ヘリコプター?」
なんでこんなところに。
「あぁ、俺のパーティが使うんだよ。上空からラルヴァをバーン、とな。カッコいいだろ?」
ってことは、多分あのヘリも一緒に転送して向こうで乗り込むんだろう。
乗り物に乗ってラルヴァと戦うパーティも有るとは聞いてたけど、実際に見るのは初めてだ。
「準備はよろしいですか?」
そのヘリの傍から女性の声。外見からして大学生くらいかな、ユリ先輩を大人にしてもっと無感情にした感じだ。
「俺達はいつでもどこでも安心サポートの24時間対応だぜ。ところで彼女、この後お茶でも一緒にグボハァッ!?」
「こら猟兵ちゃん、女の子を困らせたら駄目でしょん。ゴメンなさいねぇお嬢ちゃん、“スパローホーク”行けるわよん♪」
「野太い声でその言葉使いは止めてくれって言ってるだろトラウマになるってのこのホモ野郎」
・・・狩山先輩が言ってたそっち方面に目覚めた人ってあの人かな。
「・・・はぁ。この方達で大丈夫なのかしら・・・“クルセイダー”もOKですわよ」
「大、ユリ。行けるか?」
「・・・はい」
「うん」
「分かった。・・・“ダイアンサス”、問題有りません」
「了承しました。では、転送致します」
言うと同時に、辺りが不思議な青い光に包まれる。転送の光だ。
ラルヴァ討伐は対象地区が学園内や近場の場所でもない限り、こういった転送で現場へと送られる。
中等部の時にも何度かこれで送り出された。
屋上の俺達を含めた一区画が青い光で満たされると、不意に視界が白く染まって・・・。


「着いたな」
左隣に居た撫子先輩が呟く。
目の前には、無人ビルや放棄された集合住宅など無数の廃墟で形作られた灰色の世界が広がっている。
「少し臭うね」
撫子先輩の右隣、俺の反対側に立っているユリ先輩が鼻をくんくんと動かして顔をしかめる。
「腐臭だろうな。放棄されたものが腐敗したものと、後は・・・」
「泥人形のものですかね。あれの悪臭は広範囲まで届くらしいですから」
「詳しいな」
「えぇ、まぁ。人よりは少しだけ詳しい方だと思います」
ラルヴァが怖いから沢山調べて詳しくなった、ってだけの情けない理由だけど・・・。

「さーてと、お仕事開始と行きますか」
少し離れた位置の狩山先輩がこの場に居る全員に行き渡る声で言う。
“スパローホーク”の他のメンバーは既にヘリに乗り込んでいるようだ。
「両パーティ、あんま無茶すんなよ。モバイル手帳の通信回線も開いとくように!ラルヴァもサポートもこの“鷹の目”こと狩山猟兵様に任せとけ!」
「アタシ達“スパローホーク”が空から見守ってるわよん!」
そっち方面の人(仮称)もヘリの中から身を乗り出して叫ぶ。
それに顔を顰めながら、叱咤激励の意味も込めてなのか先程よりも大きい声で気合を入れるように狩山先輩は吼える。
「死なない範囲で頑張れよ、ルーキー共!」
言い終えたのか、満足したような顔で右目の眼帯を外しながらヘリに乗り込んでいく狩山先輩。
それと同時に機体上部のローターが旋回を始め、空気を巻き上げ始める。
・・・なんか、嵐みたいな人だ。
「わたくし達も行くとしましょう」
「はい、甘利先輩!」
「“ダイアンサス”の方々も、もう勝負は始まってるんですのよ?」
「ああ、分かっている」
こっちはこっちで火花が散ってるし・・・。
甘利先輩達は走ってどんどん先に進んでいく。
「大、手を出せ」
「?」
「大の能力は自分の手に触れている人間にしか使えないんだろう?なら、常時手を繋いでおけばいつでも発動可能だ」
「あ、はい・・・って、えぇ!?」
繋ぐの!?撫子先輩の・・・手・・・あの、白魚みたいな綺麗で長い指の・・・柔らかそうな掌に・・・。
「何だ、私の手では不満か。繋げないのか」
「いえ!そんな事はないです、是非繋ぎましょう!」
手を差し出すと、撫子先輩の手に俺の手が繋がれる。あぁ、生きてて良かった・・・。
ユリ先輩のほうから何か凄い視線が向けられているような気がするけど流石に殺されはしないだろうし大丈夫だろう。・・・大丈夫だよね?不安になってきた。
喜んでばかりという訳にもいかないので、繋がれた手に集中する。
攻撃力は『一撃切断』が有れば必要ないだろうから・・・体力、防御力、速度を浅く広く強化する。
「んっ・・・どうも慣れないな、この感覚は」
「す、すいません」
「君が謝る事ではないだろう。むしろ感謝しているくらいだ」
「撫子先輩・・・」
「はいはい、良い雰囲気出してないでさっさと行くよ。甘利に負けちゃう」
「「なっ、良い雰囲気になんてなってない(いません)!」」
「・・・はぁ。先が思いやられる・・・」


「これで6匹目・・・!」
ズバ、っと撫子先輩の能力で作られた桃色の爪が泥人形を切り裂く。
左右に両断され崩れ落ちるそれは、地面に到達するのを待たずにただの泥と化す。
6体目の泥人形を倒した撫子先輩は、ふぅと息を吐く。
「私が倒したのも含めると8匹だね」
これは傍らに立っているユリ先輩の声。
そう、ユリ先輩もラルヴァを2匹も倒していた。およそ攻撃には向かなそうな『対象束縛』能力で。
あの黒い縄で泥人形を縛り、そのまま・・・なんというか、まるで空き缶のようにグチャっという感じで縛り潰していた。
泥に包まれているから分かり辛いとはいえ、人型のデミヒューマンである泥人形が全身を絞殺されていくのは視覚的にかなりグロく・・・。
今度からユリ先輩を絶対に怒らせないよう心に刻んだのは言うまでもない。
「ふふふ・・・これで邪魔者は居なくなった・・・」
「人の心を読まないでくださいユリ先輩。それと撫子先輩へのセクハラは全力で阻止しますから」
「くっ・・・私のハーレムを創造する日は遠い」
「そんなの目指してたんですか!?」
「冗談。私は撫子一筋」
「あの・・・お前達が何を言っているのかよく理解出来ないのだが」
「撫子先輩は理解しなくていいんです。そのままの貴方で居てください」
「・・・?」
撫子先輩は何処までも純粋だった。

『ほらほら、ラブコメはそこまでにしとけというか羨ましいから止めろお兄さん独り身だから悲しいの!』
そう突っ込んでくるのは狩山先輩の声。勿論、この場に狩山先輩は居ない。
声が聞こえてくるのは“ダイアンサス”全員のモバイル手帳からだ。
『そこから北東に1体居るぞ、気を付けろ!』
狩山先輩はリーダーだけあって指揮担当らしく、上空のヘリの中から索敵担当の能力者が発見した俺達の近場のラルヴァをこうして通信で教えてサポートしてくれている。
俺達だけじゃなくて“クルセイダー”にも同じ事を平行してやっているみたいだ。
「よし、行くぞ!」
俺やユリ先輩をしっかりと脇に抱えて持ち上げ、駆け出す撫子先輩。
廃墟から崩れ落ちた瓦礫の山を難なく避けて軽やかに移動していく。
・・・先程と違って手を繋いでいないのには理由がある。
撫子先輩は手加減こそしているものの、強化を施された肉体での移動はかなり早い。
顔に風が当たり髪が乱れ、繋いだ手が軋む。気を抜いたら振り落とされそうになるということも有り、手を繋いで高速移動をするのは危険だと判断したからだ。
女の子に抱えられるというのも情けなかったが、これはこれで悪くなかった。その・・・肩が丁度撫子先輩の胸に当たってるし。
「居た!」
視認すると同時に抱えていた俺とユリ先輩をゆっくりと下ろし、俺と再度手を繋ぎ合わせ強化された体で走り出す。
前方のラルヴァはこちらに気付いて戦闘態勢を取ろうとするがもう遅い。
ユリ先輩の縄に縛り上げられ、到達した撫子先輩の爪に触れて抵抗する術もなく切断される。この間僅か10秒にも満たない。
「これで合計9匹目、だ」
やっぱり、撫子先輩もユリ先輩も凄い。
あっという間にもうこれだけのラルヴァを倒してしまった。
俺は怖くて強化を維持し続けるだけが限界なのに。
2人だけじゃなくて、他のパーティも凄いんだけど。
狩山先輩の連絡では、“クルセイダー”が俺達と同じくらいの接戦で“スパローホーク”は既にそれの2倍近くのラルヴァを倒しているそうだ。
凄いな、皆・・・。

そこまで考えて、ある疑問が湧いてくる。
「・・・狩山先輩から次の指示が来ませんね」
「変だね。今まで倒したらすぐ連絡が来たのに」
「何かあったのだろうか?」
「こっちからの通信は出来ないのかな」
「うむ・・・どうも通じていないようだな」
何か言い様の知れないものが脳を巡る。俺に予知能力なんて無いのに。虫の知らせって、こういう事を言うのかな・・・。
段々体が震えてくる。撫子先輩がギュッと手を握ってくれるが、それでも震えは治まらない。
「落ち着いて。大丈夫」
ユリ先輩も励ましてくれる。いつもはからかったりばかりしてくるのに・・・。
「少し、進みましょう。・・・嫌な予感がします」


「坂上ちゃんパーティ、9体目撃破したわ」
「OK、良くやってくれてるみたいだな。じゃあ次の指示を」
「・・・ちょっと待って、おかしいわ。ねぇ、猟兵ちゃん」
「何だ?それとその呼び方止めろ」
「んもう、つれないわねん。・・・勘違いかもしれないんだけど、一応聞いてもらえる?」
「良いから早く言えオカマ」
「今回の敵って泥人形よね」
「今更何言ってやがる。実際もう俺達だけで15匹、ルーキー含めれば33匹は殺したじゃねーか」
「だからこそおかしいの」
「勿体ぶってねぇで早く言え。怒らないから」
「その・・・今の索敵で、泥人形の反応が空中に有ったのよん。泥人形は空を飛ばないし、アタシだって今まで誤認なんてした事無かったのに」
「・・・おい、確かお前の異能って電波を使った索敵だったよな」
「えぇ」
「何処に反応が有った、それ」
「北西に3km、甘利ちゃん達の近くね。念の為猟兵ちゃんの『視力強化』されてる右目で確認して欲しくて・・・って猟兵ちゃん!?何が見えたの!?」
「おい、アレってまさか・・・“クルセイダー”へ通信は!?」
「・・・駄目、ノイズが混じって全然通じてないみたい!」
「クソッ!ヘリをすぐ向こうに飛ばせ!手遅れになるぞ!」


「甘利先輩、そこにも居ます!」
「入れ食い状態ですわね、っと。・・・ふぅ、これでわたくし達が仕留めたのは10体目ですか。探せばまだまだ居そうですわね」
「あ、甘利先輩!た、たたた大変です!」
「何ですの、いきなりそんなに慌てて・・・見苦しいですわよ。また新しい泥人形が来ましたの?」
「あそこです!あっちの空に変な火の玉がっ・・・うわ、動いてる!」
「あぁ、カテゴリーエレメント下級C-1放浪炎じゃ有りませんの。・・・安心なさい、ただの雑魚ですわ」
「そ、そうだったんですか・・・なんだ、良かったぁ・・・」
「ええ。移動し続けるだけで害意もなく、触れてしまっても軽い火傷で済む程度。でも、少しおかしいですわね・・・放浪炎が確認されたなんて報告は有りませんでしたのに」
「学園側の手落ちじゃないですか?狩山先輩からの指示も無いし・・・ゆらゆら動いてて気持ち悪いから僕が消しちゃいますね」
「・・・!?待ちなさい!攻撃しては駄目!」
「え―――が、ハ?」


進んでいる最中。突如、前方からドガァァァン!と破壊の轟音が響いてくる。
それと時を同じくして、恐らく同一の場所から硝煙と火柱が上がる。
「・・・何、あれ!?」
「やっぱり何か有ったんだ、急ぎましょう!」
「ああ、分かっている!」
音が響いてきた方向は、先行していたダイアンサス以外の2グループが居た筈だ。
無事で居てください、皆・・・!


「放浪炎の突然変異体、彷徨炎・・・ね。攻撃しない限り放浪炎と外見の見分けが付かないのも厄介だな」
「か、狩山先輩・・・!」
「確か性質は『電波欺瞞』。だからモバイル手帳の通信もアイツの索敵もおかしくなるって訳かよ・・・反則過ぎるぜ。炎なら炎らしい性質にしとけよ」
「狩山先輩、わたくしは・・・」
「“クルセイダー”の生き残りはお前だけか、甘利。まぁ、さっきので“スパローホーク”も俺以外全滅した訳だが・・・あいつら、生きて帰れたら徹底的に鍛え直してやる」
「一度逃げましょう!それから学園に応援を要請して・・・」
「無理だな。お前は肉体強化能力者じゃないし、俺だって常に右目の視力が良くなるだけの力だ。今みたいに隠れる事は出来てもあれから逃げ切る事なんて出来やしない」
「そんな・・・」
「いや、待てよ・・・一つだけ助かる方法が有るな」
「何です!?」
「お前だけ逃げろ。“ダイアンサス”、あの『他者強化』能力持ちの少年のところにな。対象は1人限定らしいが、強化された奴に捕まって逃げれば何とかなるだろ」
「そ、それじゃあ狩山先輩は」
「あのラルヴァ、彷徨炎には特殊な習性が有るんだよ。俺が牽きつければ、感知出来るところにお前が居ない限り追っては来なくなる」
「・・・」
「直にここも気付かれる。俺が奴に攻撃したら脇目を振らずに足を動かせ、逃げる事だけに集中しろ。いいな」
「・・・了解しましたわ。貴方のご好意に感謝致します」
「そうだ、それでいい。・・・あぁっと、くれるのなら感謝よりももっと即物的なものが良いね。帰ったらデートでもしてくれよ」
「えぇ。それくらいなら」
「約束だぜ?・・・さてと、そろそろ行くぞ!」


到着、した。到着はしたけれど。
眼前には、爆発が起きたのか炎上してボロボロになったヘリとあちこちに横たわる“スパローホーク”と“クルセイダー”のメンバー達。
そして、こっちへ向かって一目散に走る甘利先輩、構えた短機関銃を目標に掃射するあちこちに火傷を負った狩山先輩、それと対峙し弾丸を受け続ける人型の燃え盛る炎。
あれは・・・!
「彷徨炎・・・!?」
昔、資料を調べていた時に見た覚えが有る。
カテゴリーエレメント上級C-1、彷徨炎。
古来より人魂、鬼火、ウィルオウィスプと呼ばれ伝承される放浪炎の突然変異体或いは上位種に位置付けられるラルヴァ。
何らかの要因で突然変異を起こしたのか、それとも放浪炎が生き続ける内に進化を遂げたのかすらラルヴァの研究学者間でも詳しくは判明していない。
というのも、色々な理由が有るからなのだとそこには記されていた。
その存在自体が過去数度しか確認されて居ないほど希少な上に、偶発的にしか発見出来ず、遭遇したとしても咄嗟に生け捕りなど不可能な強さを誇っているからだ、と。
そんな上級ラルヴァが、なんで今、此処に、こんな時に・・・!
あの爆発も、この惨状も恐らく、絶対にアレが起こしたものだろう。
俺達の到着に気付いたらしい険しい表情の狩山先輩は、一瞬だけ俺に視線を向けアイコンタクトで意思を伝えてくる。
そういう心得が無くとも、何を言わんとしているかぐらいは分かる。
ただ「甘利を連れて逃げろ」、と。
瞬間、紅蓮の炎で形作られた魔人・・・彷徨炎が己を攻撃する外敵に対して右腕を振るう。
爆音と業火のうねりを上げるその腕は、炎の金槌と化して狩山先輩に振り下ろされそうになり―――。

不意に、頭を過ぎる。
ラルヴァ討伐を前にして緊張していた俺を励まそうとしてくれた狩山先輩。
撫子先輩の天敵で少しばかり嫌味だけどメンバーに慕われていた甘利先輩。
横たわる他パーティのメンバー達も。
多分、皆良い人達だ。
・・・俺が今選択しようとしている道は至難を極めることになるだろう。
“ダイアンサス”のメンバーも危険に晒してしまうだろう。
・・・それでも。
見捨てる事なんて、出来る筈もない!
「先輩ッ!」
「ああッ!」
これは2人の先輩に向けた言葉だ。
それを分かってくれたのかユリ先輩も頷いて肯定の意思を示す。
「・・・ッ!」
炎の金槌が振り下ろされ狩山先輩に直撃する直前。
現れた黒色の縄が彷徨炎を捕らえようと襲い掛かる。ユリ先輩のものだ!
これで捕らえられれば、撫子先輩の能力で倒せる・・・!
幾ら強いとしても、これを決めれば倒せないラルヴァなんて!
ガチ、っと音を立て、非実体である彷徨炎を魂源力で構成された縄が縛り上げる!
「やった・・・!」

進んで、来た。
『対象束縛』の能力に捕らえられながら、なお。
悔しそうな表情で訪れる最期を待っていた狩山先輩も、振り返らずに走り続ける甘利先輩も無視して。
そこで、ふと思い出す。
資料の中の彷徨炎の項目、そこに載せられていた特殊な習性。
カテゴリーエレメント上級C-1のCというアルファベットが示すのは、知能。
Sで人間以上の知性を持ち、Aで人間と同等、Bで動物レベル、そして・・・Cは単細胞生物並。
故に、このラルヴァはいくら強くとも知能は単細胞生物並な訳だ。
そして、その1という数字が表すのは危険度。0が一番低く友好的で、5が最も危険で凶暴。
危険度の中において1は低いほうだ。定義の条件は『刺激しない限り無害』。
そう、刺激さえしなければ。
『刺激しない限り無害』。逆に言えば、それは一度刺激をしてしまえば即座に攻撃的に変貌するという事。
彷徨炎は、それに特化しているのだと。
ただ、己に攻撃した者を認識し次第に殺戮する。それが、彷徨炎の習性。
単細胞生物並の知能である彷徨炎は本能に従い、例え今まで自分と対峙していた者を無視してでも、直前に攻撃してきた者を何よりも優先して迎撃する。
つまり、次に狙われているのは・・・!

「ユリ先輩ッ!」
不味い・・・肉体強化も近接戦闘の訓練もしていないユリ先輩があれに襲われたら!
幸い、ユリ先輩と彷徨炎の間には俺達・・・撫子先輩が居る。
今強化すべきステータスは唯一つ。この場の何よりも早い、速度―――!
「撫子、先輩ッ!」
「・・・ッ、はぁぁぁぁぁっ!」
ユリ先輩に向かって縛られた体で突進する彷徨炎。
その視界には、俺達が入っていないのであろう。
速度を強化された撫子先輩の『一撃切断』を当てるのはそう難しくはなかった。
あまりの速度に振り落とされそうになったが、不恰好なのを承知で撫子先輩の胴体に両腕を回してしがみ付き強化を維持し続ける事も出来た。
なのに。

ガキィン!と劈くような鋭い音が耳に入る。
恐る恐る瞼を上げ、見えたものは。
「何・・・だと・・・ッ!?」
驚きの声を発する撫子先輩。
「そん、な・・・」
爪が、砕けていた。
彷徨炎を引き裂き、切断する筈だった桃色の爪、『一撃切断』が。
紅蓮の炎に触れた部分が、全て。
そして、先輩の言葉を思い出す。
『ただ、これは私よりも弱いラルヴァ・・・魂源力密度の低いラルヴァにしか効果が無いようなんだ。そういう意味では、あまり人に誇れる能力ではないのだが』
そういう、ことかっ・・・!
「・・・ッ!!!」
悲嘆する暇などない、撫子先輩を後ろから思いっきり突き飛ばす!
直後、炎上の爆音と共に俺達の元居た場所が炎の杭で打ちつけられる。
「な、・・・!」
「俺を抱えて逃げて!」
「だが・・・!」
「早く!」
「・・・っ、分かった!」
即座に俺を持ち上げて走り出す撫子先輩。
彷徨炎は・・・よし、追ってきている!
このまま、あれを皆から引き離して逃げ切れられれば・・・!
「・・・追ってきているな」
「ええ!このまま逃げ切りましょう」
「それは、どうだろうな」
「え・・・?」
その言葉に疑問を抱き、再び後ろを見る。
・・・変わっていなかった。ただ、さっきよりも距離を詰められているということ以外は。
「嘘でしょ・・・!」
未だユリ先輩の『対象束縛』は解けていない。俺の『他者強化』で撫子先輩の速度だって強化しているのに!
何で追い着かれそうになっているんだ!?
・・・いや、待て。なんで俺は今、喋れていた?
撫子先輩が今まで走っていた速度なら、喋る余裕なんてない筈なのに。
「何で」
「君が持たない」
俺の疑問に撫子先輩が先手を打って説明を始める。
「私が全力で走ればアレから逃げ切れられるだろう。だが、その速度に君の体は耐えられない」
そんな・・・!
「君が大丈夫な範囲の速度で逃げたところでどちらにしろ追い着かれる。だから」
・・・撫子先輩が何をしようとしているのか、気付いてしまう。
「まさか」
「私はラルヴァに詳しいほうではないが、あれの習性は見ていればよく分かった。攻撃してきた者をひたすら追ってくるというものだろう?」
・・・っ!

「君は、あのラルヴァに攻撃していなかったな」
嫌だ。
「私はこれから、君を置いて出来る限り遠くまであれを牽きつける」
嫌だ。
「強化されていない私の足ではまず追い着かれるだろうが、その時は建物の中に入って時間を稼ぐ」
嫌だ。
「その間に、君は狩山先輩や甘利と合流して逃げろ」
嫌だ。
「危険な目に遭わせてすまなかったな、大」
嫌だ。
「直に追い着かれる。次の曲がり角で君を下ろすぞ」
撫子先輩は、口を閉じる。もう言う事はない、ということなのか。

・・・これでいいのか、俺は。
嫌だ。
・・・また逃げて隠れて、人に押し付けるのか。
嫌だ。
・・・撫子先輩を失くして、いいのか。
そんなのは・・・!

「嫌だッッッ!!!」
「!?何を・・・!」
「そんな要求、受けられる訳が無いでしょう!」
「っ、今更!・・・私の言う通りにしろ!」
「お断りです!俺は、貴方に付いていくって決めたんだ!地獄だろうが何だろうが!怖くたって、辛くたって!どんなに醜くてもしがみ付いて絶対に離してやるもんか!」
「お前!ならどうするっていうんだ!」
「倒します!」
「どうやって!私の能力も通じなかったんだぞ!?」
「それは・・・!」

思い出せ。思考しろ。
何が足りない。何が要るんだ。
考えろ、考えろ、考えろ!

撫子先輩の能力は、何故効かなかった?
発動させる為に必要な物は一体なんだ?

・・・そうだ。答えは有る。
俺の能力はなんだ。この力は何の為に有る。
やるべき事は、唯一つだけだ!

「分かりました」
「何を!」
「アイツを倒す方法」
「無理だ!」
もう一度だけ、後ろを見る。
彷徨炎との距離は僅か20m程度。猶予も躊躇う時間もない。
「・・・撫子先輩。俺は5秒数えた後に一度強化を切ります。そうしたら、即座に反転してアイツに『一撃切断』を当ててください」
「どういう事だ?また能力を使ったところで、倒せる訳が・・・」
「大丈夫です。俺を信じてください」
撫子先輩の眼を、強く見つめる。
有りっ丈の思いと力を込めて。
「・・・分かった、大。君を信じる」
「有難う御座います」
「カウントは私がしよう」
「助かります」
「5」
・・・精神を集中する。
「4」
今強化しているのは速度。
「3」
それを維持しつつ、いつでもすぐ切れるようにしておく。
「2」
俺が次に強化するのは、もっと異質なものだ。
「1」
今まで一度も強化したことなんてなかった。
「0」
速度を切ると同時、撫子先輩は反転する。彷徨炎は射程圏内。
俺も、力を込める。
そう・・・撫子先輩の、魂源力を強化する為に!
「ハァァァァァッ!!!」
常より巨大化した5本の鉤爪が、彷徨炎に届き―――!

そこで、俺の意識は途切れた。


「ん・・・」
目が覚める。
ここは・・・俺の部屋、だよね?
軋むベッドに食卓テーブル、小型のデジタルテレビと衣類の仕舞ってあるクローゼット。その他諸々見慣れた家具。
啓吾に無理やり貼られたグラビアアイドルのポスターまで有るから、間違いない。
「え、夢オチ?」
違うよね?あれだけ大変な思いをしたのに夢だったの?
どこからどこまでが?まさか全部?
「そ、そんな馬鹿なぁぁぁぁぁっ!」
「何を騒いでいるんだ君は・・・もう大丈夫なのか?」
不意にそんな声が聞こえてくる。
透き通るような声色。凛々しい口調。
「って、えぇ!?なんで撫子先輩が俺の部屋に!?」
「あぁ・・・大はどこまで覚えている?」
「どこまで?」
「あの後だよ。あのラルヴァ・・・彷徨炎を倒した後、君は魂源力を使い過ぎて気絶してしまったんだよ」
「そうだったんですか・・・」
夢オチじゃなくて良かった・・・。
・・・そういえば、結局撫子先輩はなんで此処に居るんだろう。
質問しようとして、顔を向ける。
そこには、制服にエプロン姿の美しい撫子先輩が居た。
「どうした?」
「あの・・・どうしてエプロン?」
「一日半も寝込んでいて腹が減っているだろうと思ってな。医者から今日の朝には魂源力が回復して目覚めると聞かされていたし、朝食を作っていたんだ」
・・・撫子先輩の手料理だって!?
「有難う御座います!喜んで頂きます!」
「そうか、ならまずは顔を洗って口を濯いでから、だな」
「はい!」

時刻は朝の7時。
食卓テーブルに並べられた撫子先輩お手製の朝食を美味しく頂きながら会話する。
「えっと、あれからどうなったんですか?」
随分抽象的な質問になってしまったけど、具体的な事が言える筈もないので仕方ない。
胡瓜の漬け物を食べようとしていた撫子先輩は、一度箸を置いて「どこから説明したものか」と説明を始めてくれる。
「気絶してしまった君を抱えてユリ達と合流して、通信機能の復活したモバイル手帳で学園に救助を要請して助けてもらったんだ」
そうだったのか。
「幸いにも死人は出なかったようでな。学園に到着した後は狩山先輩のような重傷者は病院に運ばれ、君や私のような軽症者は自宅療養になったという訳だ」
「なるほど」
「それと、甘利との勝負には私が勝った事になったよ。泥人形を倒した数はあちらのほうが1体分多かったが、首級は彷徨炎のほうが上だしな」
「相当強かったですもんね、あれ」
「あぁ。それを倒したという事で、学園でも話の種程度にはなっているようだ」
「何だか恥ずかしいですね」
「ふふ、そうだな。それに君の『他者強化』、消耗が激しいとはいえ他人の魂源力の強化まで出来るとは思わなかったぞ」
「俺もあれまで試した事なんてなかったから、内心不安もあったんですけど・・・やらなきゃ、と思ったら出来たというか」
「それは凄いな・・・」

その後も、食べながら色々と話した。
学園の事。自分の事。友人の事。
食べ終わって「ごちそうさまでした」と合唱して、歯磨きも一緒にして(撫子先輩はマイ歯ブラシ持参)。
なんというか、とても幸せな時間だ。
何だか胸がドキドキする。顔も熱いし。
一緒に居ると楽しいし、話してると嬉しい気分になる。
あの時は撫子先輩が居なくなるのが凄く嫌でかなりの無茶もしてしまった。
今まで自覚はした事なかったけど、もしかしてこれが恋というモノなんだろうか。
・・・今なら勢いで言えるかもしれない。
「あの、撫子先輩」
「何だ?」
「す、すすすすす」
「煤?」
「す、すすすすき」
「薄?」
「す、好きな食べ物ってなんですか撫子先輩っ!?」
やっぱり駄目だった。俺のヘタレ。
「私か?洋食よりも和食が好みだぞ」
俺の心など知る由もなく、撫子先輩はそう答えてくれた。

・・・でも、今はこれでいいのかもしれない。
急ぐ必要なんてないんだ。
多分これからも、こういう日々が続いていくんだろう。
撫子先輩とユリ先輩と。
啓吾と道程と中館さんと。
狩山先輩や甘利先輩とも有るかもしれない。
ゆっくり、一歩ずつ進んで行こう。
「・・・よし、学園に行くぞ!」
「はい!」
そうして、俺は撫子先輩と一緒に足を踏み出した。



終わり





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