【逢洲等華の下着は白である】

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【逢洲等華の下着は白である】 - (2009/07/14 (火) 00:52:31) の編集履歴(バックアップ)


【遠野彼方は普通である】 その2おまけ小ネタ



「逢洲等華の下着は白である」
 そう主張する者達がいる。
 誰とは言うまい。個人にとどまらない集団であるのだから。
 彼らが主張するところの下着の使用者――逢洲等華。
 誰もが畏れる風紀委員が委員長その人である。

「逢洲等華の下着は白である」
 そう主張する者達がいる。
 彼女は学園の風紀を取り締まる集団の長である。代理にして代表の彼女が風紀の乱れである白以外の下着の着用など認められるわけがない。
 彼らはそう主張の正しさを掲げる。

「逢洲等華の下着は黒である」
 そう主張する者達がいる。
 黒――それは等華のイメージカラーである。もちろんその美しい艶やかな黒髪からくるもので、さらに加えるならば彼女の獲物が「月陰」「黒陽」二振り一対の刀であることからもきている。
「下着のデザインや色に対する規制は校則に取り上げられていない。よって風紀の乱れとするのは間違いである」
 彼らはそう主張の正しさを掲げる。

「下着は最期に身につける衣装である。その心のように白いふんどしであるべきだ」
 そう主張する者達がいる。
 白派黒派双方からそれなりの賛同は得られたものの、主流にはなりえなかった。

「まてまて、ここは清純派としては薄いブルーは譲れない」
「時代はいつになっても縞パンでしょう」

 主張はぶつかり合うばかりで決着をみない。
 確認してみれば良いのだ。ただそれだけで議論は終わる。
 何も覗きまでしろというのではない。逢洲等華は役職柄学内の様々な場所で見かけることができる。あるいはひょっとしたら、悪戯な風が吹くこともあるのでは? または階段を昇っている際に先にいたりするかもしれない。
 だがしかし。
 逢洲等華のスカートは鉄壁であった。

 動きやすさからか、本人の好みなのか逢洲等華のスカート丈はそう長くはない。膝上の丈でそこら辺の女生徒と変わりはしない。
 だが、そのスカートの裾がひるがえることはあってもその中身を目撃できた者は皆無であった。
 風紀委員という仕事柄、彼女は様々な場所で戦いを繰り広げることがある。
 学食で。昇降口で。廊下で。階段で。校庭で。
 逢洲等華は凄腕の剣士である。
 いかなる敵を前にしても退かず、ありとあらゆる場所を戦場とし、ありとあらゆる敵を打ち倒してきた。
 そして、美しくも激しい剣戟の場において、いかなる場合においてもそのスカートの中を衆目に晒したことがない。
 逢洲等華のスカートは鉄壁である。
 これが等しく認識されている事実である。
 それゆえに決着は着かない。
 答えを知る者となれば合法的に着替えの場に同席できるクラスメイトや親しい友人であろう。
 むろんその方面から真実をたぐろうとする者達はいた。
 しかし、逢洲等華。畏れられる風紀委員ではあるがそれ以上に友人達からは慕われていた。
 うかつな質問を口にしようものなら逆に目的を追求されて簀巻きにされるであろう。
 八方塞がり。
 それゆえに決着は着かない。
 だからこそ今日も議論は尽きず、また彼らの闘争(もうそう)はやまない。


 鉄壁といえばもうひとつ。醒徒会関係に鉄壁と呼ばれるものがある。
 醒徒会長藤神門御鈴の式神、「白虎」。
 その身に触れた者曰く。至高の手触りだという。
 多くの人間が愛してやまない白虎だが、それを目にする機会はあっても、その身にはなかなか触れることはできない。
 たとえ触れることがあるとしても事件に巻き込まれ、会長の活躍によって助け出されるというレアな体験を要するのだ。
 何しろ醒徒会と接触し、醒徒会長の元へゆき、さらに最強の式神へと手を伸ばさねばならない。こちらも鉄壁といわざねるを得ない。
 ビャコにゃんに触れること。それは並大抵のことでは叶わない偉業である。
 さて何故逢洲等華の下着について語っている際に白虎のことをあげたかというと……
 先日この鉄壁が破られたからである。
 醒徒会長藤神門御鈴の式神、「白虎」。その鉄壁と呼ばれる守りを抜けてその身に触れたツワモノとは。
 遠野彼方。ただの一般生徒である。
 猫狂いの妄想ではない。紛れもない事実である。
 彼が言うには、普通にお願いして触らせてもらった、ということだ。
 彼は普通の学生である。それがただ普通にお願いしたことで鉄壁を崩したというのだ。
 あまつさえダッコしてぎゅーなどと羨まし過ぎる行為にも及んでいる。

 つまり何を言いたいのかというと、我々は目的を追い求めるあまりに純粋な気持ちを忘れているのではないか、という問題提議をこの一件は示しているのだ。
 そう、我々はもう一度逢洲等華の下着が何色なのか、純粋な気持ちをもち確認せねばなるまい。
 邪な下心など捨てるのだ。
 鉄壁とは我々自身が生み出していた幻に過ぎない。
 無心に、普通にお願いすれば良い。

「逢洲等華さん、あなたの下着の色は何色ですか?」

風紀委員よりの告知
『以下の者、一週間の停学と謹慎処分。後に一ヶ月の奉仕活動を命ずる』
風紀委員長 逢洲等華


 逢洲等華のスカートは鉄壁である。
 それが故に真実を求める者は絶えない。



「逢洲等華の下着は白である」
 そう主張する者達がいる。
「黒など言語道断。そもそも黒が似合うのは豊満なボディでなければいけない」

「逢洲等華の下着は黒である」
 そう主張する者達がいる。
「てめぇら会長を侮辱する気か。精一杯の背伸びの良さが分からないのか」

「下着は最期に身につける衣装である。その心のように白いふんどしであるべきだ」
 そう主張する者達がいる。
 白派黒派双方からそれなりの賛同は得られたものの、主流にはなりえなかった。

「まてまて、ここは清純派としては薄いブルーは譲れない。ミントグリーンなら許す」
「時代はいつになっても縞パンでしょう。複数の色を受け入れる寛容の証です」


 逢洲等華のスカートは鉄壁である。
 それが故に真実を求める者は絶えない。
 そのスカートの中を確認出来るのは、二振り一対の刀「シャドウムーン」「ブラックサン」が振るわれるその場で、等華の前にしゃがみこむことが出来る者だけだろう。
 それ故に、逢洲等華のスカートは今日も鉄壁である。







 ――鉄壁を破った少年がいる。
 ビャコにゃんをダッコしてぎゅーしたツワモノと呼ばれる彼は、先日もうひとつの鉄壁をも破っていた。
「うーん(猫さんパンツのことは誰にも言わないでおこう)」
 遠野彼方は友誼に生きるのである。
 猫ダチであり恩人の逢洲等華の下着の秘密は、生涯その口から語られることはなかったという。



 おわり



フェードアウト
画面隅でビャコにゃんががおーと叫ぶ



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