シェアードワールドライトノベル『双葉学園』wiki内検索 / 「【キャンパス・ライフ2+ 第4話「あなたは誰 私は誰」】」で検索した結果

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  • 【キャンパス・ライフ2+ 第4話「あなたは誰 私は誰」】
      キャンパス・ライフ2+ 第4話「あなたは誰 私は誰」  うっすらと体中が火照ったのを感じたとき、布団の中で寝かされていることに気がついた。立浪みきは目を開いた。 「みきちゃん・・・・・・。よかったぁ」  左を向く。白い犬耳がピンと尖っている、小柄な女の子がいた。 「ふみちゃん・・・・・・? 私、どうしていたの?」 「空き地で倒れていたんだよ。風紀委員さんたちがここまで担ぎ込んでくれたんだ」  みきが気を失った直後、風紀委員が百名ほどの隊を組んで空き地に乗り込んできたという。委員長の一人が今回の野良猫惨殺事件に激怒し、日曜日にも関わらず中等部・高等部のメンバーを緊急招集して捜査に当たらせたそうだ。 「あなた、犯人と戦っていたようね。逢洲委員長が話を聞きたそうにしていたわ」  川又ふみの隣に、背の高い女性が立っていた。みきは初め、彼女が誰なのか理解できなかった。 ...
  • 【キャンパス・ライフ2+ 第6話「蛇足」】
     夜の町を私は走っています。  住宅街。もちろん誰も外を歩いてはいません。  いいえ、きっと私の正体を知っているから出てこないのでしょう。  私の罪をみんな知っているから、助けてくれないのでしょう。  ドンと、背後の上空から音がします。  あの人のバズーカ砲です。前に飛んで、転がって回避します。  交差点の真ん中に着弾し、爆発音が町を揺るがします。 (威力は並以下。でも食らったら死ぬね)  私の中の、もう一人の私が言いました。彼女は私とは違い、ニタニタと余裕たっぷりの笑顔を浮かべていることでしょう。  当然でしょう。この女の性格の悪さときたらありません。今のこの極限的な状況を楽しんでいるのです。彼女が口癖にするところの、 (「宿命」、だよ。立浪みき)  です。私は嫌な顔をして、 「宿命、ねぇ」  と呟きました。  開けた空き地に出てしまいました。まずい、と思った...
  • 【キャンパス・ライフ2+ 第3話「毒にも薬にもならない子」】
     お願い、出てこないで! 出てきちゃダメぇ!  ふふふ、もうあなたの出る幕はないの。そこで大人しく見ていることだね、弱虫みき。  キャンパス・ライフ2+ 第3話「毒にも薬にもならない子」  血濡れ仔猫の瞳は血の色をしている。  脆弱な人間どもを多数その手にかけてきただけあり、彼女の眼球はそいつらの生き血に浮かんでいるのだ。  呪いの象徴。殺人鬼の代名詞。立浪みきが生涯背負っていく、重たい過去。  それが、血塗れ仔猫である。 「いよいよおいでなすったな。覚えているかい、俺だよ? 夏場にドンパチしたグリッサンド様だよ」  オメガサークルの工作員「グリッサンド」は、ワイシャツを脱ぎ捨てた裸の状態で言った。胸板の真下からバルカンの筒が伸びている。顔も含めて全身が真っ赤に変色しており、浮き出る血管がピクピク波打っていた。出力を全開にしているのだ。 「俺と戦いやがれ。...
  • 【キャンパス・ライフ2+ 第5話「成長」】
    「おめーらマジで、コイツが人殺しだってこと知らなかったんだな」  この壮絶な場に居合わせてしまった一年B組のクラスメートは、数えてほんの数人ほど。  ファミリーレストランである程度勉強を終え、帰宅してしまった生徒たちはとても幸運である。なぜなら、立浪みきが『血塗れ仔猫』である真実を、知ってしまうことがないから。 「コイツはなぁ、ガキを七人もブッ殺した悪魔なんだぜ!」  みきがぐっと青いロープを握り締めたのを、クラスメートたちは見ていた。 「んで、お前らどう思ってんだい? こんな人殺しとクラスメートやれんのかい?」  オメガサークルの末端工作員・グリッサンドは嬉しそうにげらげら笑い、立ち尽くして動けない彼らに言う。「学園の品格を問われるぜェ!?」  みきは、自分の黒い影である血濡れ仔猫を倒すことによって、真夏の一件を乗り越えられたはずであった。そして醒徒会も理解してくれたから...
  • 作品保管庫さくいん 「あ行~た行」
    ...-1】【7-2】 【キャンパス・ライフ2+】 【1】【2】【3】【4】【5】【6】 【キャンパス・ライフ3】 【1】【2】 【キャンパス・ライフ特別編】 【1-1】【1-2】【1-3】【1-4】 【今日は楽しいエイプリルフール!】 【今日を夢見て】 【虚海】 【虚を刻む時計達】 【禁域の姉弟、瑠璃色の針】 【1前】【1後】【2前】【2後】 【緊縛少女と鏡の悪魔】 【前】【後】  【緊縛少女と従僕たる犬】 【1】 「く」 【くたばれ差別主義者】 【クラスメイトの話をしてみようと思う】 【クリスマスプレゼント引換券五枚綴り】 【群像ウィスタリア】 【氷鐘】【翠雨】【雨鈴】【鈴曲】 【ステラ・グローリア -Stella Grolia-】 【蜻蛉】 【文化祭の一幕】 【ソフィア・グローリア -Sofia...
  • 【キャンパス・ライフ2+ 第2話「迷える仔猫の、その後」】 
     双葉山の展望台にて、少女が一人たたずんでいる。  くっきりと雲が浮かんで見える、すっきりした秋の昼過ぎ。  立浪みきは、まだ真新しい慰霊碑の前に立っていた。今年の夏場に建立されたものである。自分の気持ちを「彼ら」に示すかのよう、静かに花束を置いた。  これは、血濡れ仔猫の事件で犠牲になった人たちの慰霊碑である。  真夏の日に、凶悪なラルヴァの毒牙にかかってしまった七名の少年少女。  みきは一人ひとりの刻印に指先を触れる。  彼が、彼女が、いったいどんな子であったのか。どんな声をしていたのか。  そして、どんな殺され方を「自分に」されたのか。  目を瞑り、一人ずつ思い出していった。  血濡れ仔猫の正体は、ラルヴァの血に目覚めた立浪みきである。黒装束を身にまとった彼女は太くて硬い鞭を振り回し、何の罪も無い七人の生徒たちをいたぶった。体を引きちぎった。粉々にした。 「私が、...
  • 【キャンパス・ライフ2+ 第1話「ショウ・マスト・ゴー・オン」】
    「にゃんにゃかにゃんにゃん」  立浪みきは鼻歌交じりに校門を出た。  地獄のような日から解放され、早くも一ヶ月が経とうとしていた。絶望に打ちひしがれていたあの頃では想像もつかなかった、充実していて楽しい学園生活をみきは送っている。  担任である春奈の支えもあり、学業も戦闘も本調子を取り戻しつつある。まるで、三年前の夏前に戻ってきたかのような幻さえ目に浮かぶ。 『あはは。そりゃいいことだよ、みき!』 「そうですね、姉さ・・・・・・」  そう、みきは立ち止まって、左を向いて言ってしまった。  閉店のため、シャッターを下ろしていた店主と目が合ってしまう。彼はものすごく怪訝そうな顔をして、奇妙な独り言を呟やいた女子高生を見ている。  シャッターが床面に衝突する乾いた音が、寂しく秋の夜の商店街に響いた。みきは少し涙ぐみながら、とぼとぼ歩き出した。 「秋の夜風はいじわるです」  そ...
  • 【キャンパス・ライフ2 その2】
       キャンパス・ライフ2 その2  らのらのhttp //rano.jp/1046  血濡れ仔猫は真夜中の住宅街を逃げ回っていた。  民家の屋根。アパートの屋根。電柱のてっぺん。空中を飛び回るがごとく重たいスカートを翻す。その顔は尋常ではない必死さに覆われていた。彼女はいつものように、獲物を追っているのではない。追われているのだ。  彼女に残る一抹の良心がそうさせたか、血塗れ仔猫は市街地戦を避け、学園のグラウンドに飛び込んだ。しかし、それが連中の計画通りだということを知らずして。  背後の夜が、白に閃く。  それはただの白なんて明るさではない。夜も眼球も焼き尽くす、世界の終わりのような真っ白さ・・・・・・。  生命の危機を直感した彼女は、ありったけの力を振り絞って真上に跳躍した。  容赦なく炸裂した原爆クラスの熱線。もしもまともに浴びていたら、黒ずくめの彼女...
  • 【ミストルティンの寓話騎士 第三話 二】
    ラノで読む 【case2 Eiserne Jungfrau】  これは、双葉学園とは別で起こった事件。  この世界《にちじょう》ではよくあることであり、そして隠蔽されることもまたよくある、  どこにでもある安っぽい悲劇。  その日、その女子高の生徒達が全員死んだ。ただそれだけ。  正確には、登校した生徒達全員。五百二十名、その悉くが殺された。  その惨劇を回避できたのは、病欠やサボり、そしてひきこもりの不登校の少女たちだけである。  その数、八名。  そしてその少女達は、ただ運良く回避できただけに過ぎない。  本当に、そうだろうか?  そう疑問が湧くのもまた当然。世界に運命という絶対律があり、偶然は必然ならば。 “そうね”  笑い声が響く。 “故に、あの子たちが生き延びた理由は一つ”  それは悪意を孕ん...
  • 【一人の戦士の終わり】
     シェア希望が出たので執筆したものです  2016年――。  人によっては「真夏の悪夢」を連想させる年だという。  上級ラルヴァが二体も高等部を強襲し、現場にいた異能者たちが血に染まった痛ましい事件。与田光一の機転と醒徒会の活躍がなかったら、学園は未曾有の大災害に巻き込まれていたとまで言われている。  当然、それは「表向き」の話ではあるが。  二年後。  工学部の会議室で、数人の生徒たちが疲れた様子で席についている。両肘を机について、ぐったりとうなだれていた。 「みんな、どうもお疲れ様。選挙の結果は残念だったけれど、どうやらこれも時代の流れのようだ」  目を瞑って、与田光一は静かに言った。すると、一人の男子生徒が机を殴った。 「冗談じゃねえよ・・・・・・! ラルヴァの擁護派め・・・・・・!」  彼に続くよう、残りのメンバーも苦笑と失笑を交えながら悔しそう...
  • 【立浪姉妹の伝説 第五話】
      らのらのhttp //rano.jp/1085    立浪姉妹の伝説 -その栄光と末路-    第五話 姉妹の約束 「ここは・・・・・・どこなのでしょう」  立浪みきは山道の途中にいた。湿った土の匂いは嗅覚を通じて、彼女の記憶と直結した。 「思い出した、私たちが育った神奈川県の田舎だあ」  懐かしい、とみきは微笑んだ。古い石造りの階段。トタン造りの民家。どこからか聞こえてくる飼い犬の吼える声。子どものころにみかと過ごした、昔懐かしい故郷の風景だった。  長い階段を上って、集落を抜けて。 「あ、見えてきた。おばあちゃんのお家」  青いペンキ塗りの屋根をした古い家が見えてきた。それは、彼女が養子としてもらわれて、育ってきた「実家」であった。  真っ白な洗濯物が、微風によってゆらゆら揺れている。ミンミンゼミがけたたましく鳴いている。うっすらと青い苔...
  • 【血を吸う灰被り】
    ラノで読む(ラノ向けに改行しているので推奨)  血を吸う灰被り  私は、長い長い独白台詞を言い切った。  スポットライトは私だけを映し出し、舞台には他に誰もいない。観客の視線はすべて私を注視して、その動きを見逃さないようにしている。今行われているのは『私の物語』なのだ。  私の手には、一本のナイフが握られている。それは偽物《イミテーション》ではなく、ちゃんと刃がついている、本物のナイフだ。服を切り裂くこともできるし、人を貫けば、勿論その人は死んでしまうだろう。  そして私は、今から人を貫いて、殺そうとしているのだ。このナイフで。  この舞台で、私は『|灰被りの姫《シンデレラ》』だ。意地悪な『義母』と『義理の姉』二人に虐げられている少女だ。みすぼらしい服しか着せられていない、雑用係。そのせいで、お城で行われる舞踏会に着ていくドレスも無く、三人に置いてい...
  • 【ミストルティンの寓話騎士 第三話 三】
    ラノで読む  双葉学園の生徒達は、今日、夢を見た。  正確には、生徒――ではなく、双葉学園にいる者、いや、この物語に関わるもの達が、である。  夢を見る。確かにそれはありきたりの普通のことだ。それ自体には、特筆することは何もない。  だが、同じような夢を、多数の人間が見た、それならば話は違う。  無論、全ての人間が、ではない。また、見たものの忘れてしまった者もいるだろう。途中で醒めてしまった者もいるだろう。  だが、それでも。  双葉学園の生徒達は、今日、夢を見た。  正確には、生徒――ではなく、双葉学園にいる者、いや、この物語に関わるもの達が、である。  だからその者の数だけ、この夢はある。  夢を見た一人一人が体験したエピソード。  これは、そのひとつである。  語来灰児は、目を覚ます。  目を覚ますというよりは、意識を取り戻すといったほうが正し...
  • 【Black of Luck】
     Black of Luck 「どうしよう」  そんな言葉を思わず口に出してしまったのは、あまりにも今の状況が進退窮まっているからだろう。  今の自分の状況、『ここは高級住宅地』、『一軒家の二階』、『広い部屋』、『目の前に女性の死体が置かれている』、『部屋中血塗れ傷だらけ』、『死体以外にこの部屋にいるのは私だけ』、『トドメにドンドンとこの部屋の扉を叩く音と「警察だ!」という声が聞こえる』。  ああ、うん、これ、やばい。  傍から見ても間違いなく私が殺人事件の犯人だわ。  『被害者』の女性の双眸は余程恐ろしい目にでも遭ったという風に見開かれ、しかも女性の腹部は“ヒラキ”になっていて内臓がない。生きたままそれが行われたことを示すように部屋中が血で真っ赤だ。猟奇殺人である。お腹の中から吐き気がしてくる。  ベランダの割れたガラス戸から吹き込む風だけが場違いに涼やかだ。 「...
  • 【キャンパス・ライフ2 その6-1】
     増築を重ねて段差のできた畳。恐らくタバコを吸うために取り付けられた換気扇。雅をとりまくこの世界はどれも灰色をしていて、色が付いていない。それはあたかもこの少女の心情をそのまま描写しているかのようだった。  雅はこの世界の片隅で引きこもっていた少女に、こう声をかける。 「僕は、遠藤雅といいます。立浪みくの友人です。あなたを救いにここまで来ました」 「みくちゃの・・・・・・友達・・・・・・?」  と、立浪みきはかすれた声で雅に言った。いったいこの部屋で、どれぐらい長いこと泣いていたのだろう。目元がとても赤く腫れていて、充血している。外に強く跳ねた後ろ髪と、みくとは違う、黄色と青のオッドアイが印象的であった。 「どうしてあなたがここに来れたの?」と、みきは雅にきいた。 「うーん・・・・・・。はっきりとした理由はよくわかってないけど」と、雅は答える。「君の話を聞いてあげたいと強く思っ...
  • 【僕の魔女マリ】
     自転車で夜の町を駆けると、耳がしびれたように痛くなった。  交差点のコンビニエンスストアでは、アルバイトの男が二人、店の前で簡素なカウンターを設置しケーキを売っている。一人がサンタクロース、もう一人がトナカイの、工夫の無いありふれた衣装だ。 「よくやるなぁ」  彼らの根性に感心し、僕は青信号を見て自転車のペダルを踏み込んだ。  せめてケーキでも買っていってあげようかと思ったが、やめる。先ほど進学塾の緊迫した授業を終えたばかりで、残念ながらそんな浮かれた気分にはなれない。  高校受験まで三ヶ月を切っている。日常的な自学自習のかいあり、僕は偏差値七十程度をキープできている。この調子で行けば僕は県内の有名私立高校に進学し、そこからさらに東大もしくは京大を目指していくことになるだろう。もちろん就職先も、それ相応のものに迎え入れてもらえるに違いない。  僕がそうなることで大喜びをするの...
  • 【キャンパス・ライフ2 その1】
       キャンパス・ライフ2 その1  らのらのhttp //rano.jp/1042  タクシーを降りると、昔懐かしい山のかたちが彼女を出迎えた。  坂道の側溝を流れ落ちていく水の音。空を埋め尽くす雑木林の緑。土の匂いに包まれながら、足元を注意深く見て、古い階段を上がっていった。  今にも崩落しそうなトタン作りの家が、山肌に付着するよう密集している。テレビの音声が聞こえてきた。今もなお、この集落には住人がいるのだろう。  麦藁帽子を被った白いサマードレスの少女は、ある家屋の前で足を止めた。  鍵のかかってない玄関の引き戸は、廃墟とは思えない滑らかさでからから開いた。幼少の頃に来たときと、まったく変わらない匂いがした。玄関に置いてあった割れている水槽には、昔、四匹ぐらい金魚が泳いでいた記憶がある。  居間は往時の状態を良好に保っていた。ホコリが積もっているぐらいで...
  • 【ザ・グレイト・フードバトル~三竦みすき身のごった煮~】
    【ザ・グレイト・フードバトル~三竦みすき身のごった煮~】 ラノで読む  双葉学園島の西側の一角を占める商店街は俗に「新世界」という名で知られている。  これは本来の名前が「西通商店街」という味も素っ気もないものであることがそもそもの原因であるが、それ以上に開発が遅れていたこのエリアに集った新参者たちが先住の商店街に対して追いつき追い越さんとする意思の表明という意味が大きい。  それゆえに、新世界に居を構える商店には総じて利益よりも派手さを重視したセールやイベントを好む傾向があった。  そして、この島が巨大な学生街であるという立地条件を加味すれば、新世界の飲食店が「~~を完食できたら無料」といったチャレンジメニューをまるで申し合わせたかのように揃って用意するのは最早必然といえた。  かくして、新世界はフードファイターの聖地として産声を上げ、数限りない闘争の坩堝は...
  • 【記念写真】
      記念写真  駅のホームを歩いていると、どうしても通過していく電車の形式番号に目が行ってしまう。  そんな悪癖を小田ユキヒロは非常に憎んだ。このどうにもしようがない癖が、一生自分を傷つけていくのかと思うとなおさら嫌になってくる。  普通の人は電車の形式番号なぞ気にして電車に乗るものだろうか? いや、そのようなことはないだろう。どうにかして彼らのようにはなれないものかと、ユキヒロは深く悩みながら階段を上がった。  ユキヒロは大学四年生。つまり就職活動・真只中であるはずの学生である。本屋の硬いビニール袋には、持て余した暇を潰すために買ってきた雑誌が入っている。 夜のふけた、静かな駅前広場に降り立った。コンビニの明かりがやけに目に付くぐらい、ベッドタウンの夜は暗い。  今日は会社説明会にお邪魔してきた・・・・・・わけでもなく。  面接に臨んできた・・・・・・わけでもない。...
  • 【メアリー・スー】
    ※この話は夢オチです※ らの  ある日のこと、おれは醒徒会の呼び出しを受けた。  醒徒会じきじきに呼び出しなんて初めてのことで、自分が何か悪いことでもしたんじゃないかとビクビクした気持ちで醒徒会室の扉を開けると、ちっちゃな醒徒会長がおれを出迎えた。 「お主を醒徒会専属特殊任務係に任命するのだ!」  ぴょこんぴょこんと椅子の上で跳ねながら醒徒会長の藤御門《ふじみかど》はとんでもないことを言いだした。おれは「はぁ?」と間抜けな返事をすることしかできない。 「あなたは異能力、それに人格や戦闘センスが見込まれて八人目の醒徒会員として選ばれたのです」  おれが茫然としていると藤御門の隣に立っている副会長の水分《みくまり》さんがそう補足する。だけどそれを聞いてもいまいちピンと来なかった。 「おれが……醒徒会ですか?」 「そうなのだ。お主のラルヴァ戦の戦果を見て驚いたぞ。た...
  • 【猫髭博士と怖い噂 四怪目「電波」】
    縦読み版  「電波」 「やあ猫髭《ねこひげ》博士。お隣いいですか?」  その晩、猫髭|京一郎《きょういちろう》がバーで一人酒をしていると、その前に一人の若い男が座った。  それは大学生ぐらいの青年であった。ぼんやりとした表情をしているが、勝手にカクテルを頼み、一杯飲んだだけで顔を真っ赤にしてしまった。 「キミは誰だね」 「誰でもいいじゃないですか。それより僕のお話を聞いて下さいよ博士」  男は猫髭が睨むのを気にせず、ゆっくりとした口調で語り始めた。 「ねえ博士。あなたはラルヴァの研究をしているそうですが、同時に異能についての研究もしているんでしょう。  なら僕が今からお話しする話は、きっとあなたの興味を引くものだと思います。  これは僕の友人の話。仮にAと呼びましょうか。Aは異能を持っていませんでした。この学園は異能者が集まる学園ですよね。...
  • 【反逆のオフビート 第三話:part.2】
    元が縦書きなのでラノをおすすめします part.2をラノで読む あと感想、批評をスレに書き込んでくれるとありがたいです(今巻き込み食らって返事返せないですが)     FLE.3〈キャスパー・ウィスパー侵略:part.2〉  西野園ノゾミがラルヴァ信仰団体“スティグマ”に入団したのはまだ十歳のときだった。  彼女の父は資産家で、大きな屋敷でノゾミは何不自由なく育ち、彼女の家庭は何も問題ない平和そのものだった。もちろん西野園ノゾミというのは双葉学園における偽名であって、この時にはまだ本名が存在した。だが、今はもう意味のないものである。  しかしそんな幸福な彼女の世界はある日音を立てて崩れることになった。  ノゾミに異能の力が目覚めたのである。  彼女はそれを両親には伝えなかった。  幼い彼女はその特別な力を得て確信した、自分は神に愛されていると、自...
  • 【ROND3】
     インターフェイスを経由していないかたは一度ご覧ください  できるだけラノのバージョンで読んでください      3 「ぬををおおおーーーッ!! ――よし、一匹は俺でなんとかなる。お前たち、あと二匹は頼ん だッ!」  クマ階堂悟郎が、満身の力を籠めた両腕で魔甲蜈蚣〈ダイア・ピード〉を押さえ込む。魔甲 蜈蚣の毒牙が悟郎の首筋に食い込んでいるようにも見えるが、ヒグマの分厚い毛皮が肉にまで 達するのを防いでくれているのだろう。  魔甲蜈蚣はおおよそ体幅が30センチ、そして節足肢の幅もほぼ同じくらい。長さは実に6 メートルにもおよぶ、実にラルヴァらしいラルヴァだった。  その毒々しい紅色の外殻は7・62ミリライフル弾を受けつけず、重火器以上の破壊力か、 心得のある異能者の、魂源力(アツィルト)をまとった攻撃によってのみ打ち砕くことができ る。といっても固さ...
  • 【ジョーカーズ・リテイク 愚者たちの宴:part.5】
    もとが縦書きなのでラノ推奨 ちなみにパート4とパート5はラノは一緒くたです ラノで読む              9  直は自分の失態に自分が嫌になる。  だが、今は自分を責めている場合ではない。バラッドにまたしても連れて行かれた弥生を助けなければならない。  必ず助ける。直はそう決意していた。 (しかし、奴はどこに行った。廃工場の奥に進んでいったようだが、あっちには逃げ場なんてないのに)  直は崩れた足場に気をつけながら、バラッドを追って進んでいく。  奥に進めば進むほど、なんだか妙な機械やパイプや鉄骨が入り乱れて迷宮のようになっている。ゴチャゴチャしているため、一体どこに自分がいるのかわからなくなる。 「バラッド! どこだ、藤森君を返せ!」  直は辺りを見回しながら叫ぶ。  焦燥。  敵は人の命をなんとも思わない改造人間だ。早くしないと弥生がどうな...
  • 【女子高生彩子の学級日誌 2日目】
     ラノhttp //rano.jp/1664  六谷彩子は自称「最強の女子高生」である。  非常に気の強い性格だ。中等部時代はクラスの男子を虐げてはこき使い、女子から羨望の眼差しをこれでもかというぐらいに集めて見せた。  そんな彼女は今年、双葉学園本校に復帰し、高校二年生に進級する。  新しいクラス、それは「二年C組」。 「ふふふ、どんなクラスか知らないけどぉ、この彩子様がみーんな支配下においてみせるわ! 六谷家の名にかけて!」    その三 委員長との喧嘩  双葉山がみずみずしい若緑に姿を変えて、ようやく暖かいそよ風もやってきた頃だった。 「くぉらぁ―――ッ! 召屋正行―――ッ!」  ズバーンという、教室の引き戸が縦に吹っ飛んだ音。  彩子は「ひっ」と肩を大きく動かし、恐る恐る後ろを振り向く。 「あんたって人は、また昨日も私の大切な千乃と一...
  • 【X-link ハロウィン特別編 Side2009 part1】
    [ラノで読む http //rano.jp/1460]]  Xーlink ハロウィン特別編 Side2009 part1 【Destiny’s Play / 少女のいたずらとパパのお菓子】 「ここが、我が双葉学園大学が誇る図書館でございます」 「はあ、そうですか」  夕方の双葉学園大学図書館のエントランスでは初老の男性と10歳前後の少女が話をしている。男性の方は仕立てのいいスーツに身を包み、頭髪も七三分けで奇麗に整え、いかにも仕事ができるサラリーマンといった感じの風体。少女の方は清楚な白のワンピースとジャケットを着て、いかにも上流家庭の親子といったように周囲には映る。  だが、男性は少女に対して丁寧な敬語を使い、不自然なまでにへりくだっており、いかにも不自然だ。 「どうでしょう?他のどの研究機関や大学にもひけを取らない蔵書量だと自負しておりますが。もちろん、ご...
  • 【僕はちょっとキモイ】
    ラノで読む  教室に行かなくなって何日が過ぎただろうか。  双葉学園に転校した日以来から、僕は教室に行くことをやめた。  どうやら僕はみんなに嫌われているらしい。  それも仕方ないかもしれない。  転校初日に教室に入って、周囲を見渡して僕は驚いた。みんなまるで漫画やラノベにでも出てくるキャラクターのように整った容姿をしていたのだ。特に女の子は僕の知っている女の子たちとは比べ物にならないほどに綺麗だった。  それに比べて僕は醜い。不細工だ。  僕はとても気持ち悪い。  整った容姿をしている彼らは、きっと僕のことを嫌悪しているに違いない。  僕が教室に入ってきた時に、騒がしかった教室が凍ったのを感じた。「かっこいい男子か、それとも可愛い女子か」と騒いでいた生徒も黙ってしまい、僕に奇異の目を向けていたのだ。  みんな僕から目を背けて、机についたら隣の子が「臭い」と...
  • PCへの質問テンプレ
    PCへの質問テンプレ 質問内容やそのシチュエーションについて自キャラがどのように応対するか回答してみましょう 真剣に考えるもよし、ユーモアに走るもよし、親御さんの自由な発想にご期待します 質問回答については書き手の任意参加で宜しくお願いします なお対PCへの質問集の回答に関しては書き手視点、PC視点のどちらでも自由です また質問に関しては随時スレで追加の質問を応募しています 対PCの質問集 簡単に自己紹介をお願いします 異能について教えてください 特技があったら教えてください 趣味や日課があれば教えてください 自慢話があればご自由にどうぞ 朝の挨拶は何ですか? 好物(食べ物)を教えてください 好きなおかずは最初に食べる?最後まで取っておく? 体で最初に洗う箇所を教えてください 犬派か猫派どっち? 家で落ち...
  • 【学校童子/『顔を貸して』】
    ラノで読む  幸福とは人の数だけ存在する。  枕木《まくらぎ》歩《あゆむ》が感じる幸せは随分とささいな事である。 「ふあー。おいしーなー」  右手にみたらし団子を三本、左手にあんこ団子を三本持って枕木は幸せな気分になっていた。口元にたくさんあんこをつけながら、顔がほころんでいる。  いつも枕木がやっている朝刊配達のアルバイト代が出たので、自分へのご褒美に月に一度はこうして贅沢をするのだ。今日は双葉区の下町にある屋台の団子屋で団子全種類三本ずつ食べて制覇しようと思っていた。 「それにしても坊主はよく食うなぁ。そんなにおれの作る団子は旨いか?」 「最高だよおじさん……むしゃむしゃ。むぐむぐ。みたらしもあんこ団子も天下一品だね。あっ、次は三色団子をお願いね」 「あいよ。若いので団子を好きってやつは最近じゃ珍しいからな。おじさんは嬉しいよ。ほら、お茶はサービスだから、喉痞...
  • 【セブンス・ギャラクシーデイズ】
    ラノで読む    【セブンス・ギャラクシーデイズ】  東京湾に浮かぶ双葉学園、そのはるか上空。成層圏の向こう側に人工衛星が浮かんでいた。しかし、その人工衛星の一角にあるはずのないものがそこにはあった。  それは人影であった。  少年らしき人物が宇宙服も着ずに学ラン姿で人工衛星の角に立っていたのだ。  その少年は黒い宇宙と輝く星々を背に悠々とそこに存在し、少年は片目が隠れるように長い前髪に、後ろ髪は流線形を描くようにウェーブがかかっていた。  一瞬宇宙人がそこにいるような、そんな神秘さを感じさせる雰囲気を感じさせる少年である。 『調子はどうだヒカル。能力に不具合は出ていないか』  その少年、一番星《いちばんぼし》ヒカルは通信機の声に答える。 「問題ないよ古畑先生。いつでも出撃可能だ」 『そうか、ならば作戦決行と行こうか』  先生と呼ばれた通信機の男は、声...
  • 【X-link 2話 part1】
    [ラノで読む http //rano.jp/1401]] Xーlink 2話 【Kiiller Queen(s)】part1 「喜多川《きたがわ》先生、あなたは何故ここに呼ばれたかわかっていますか」 「いえ、まったく」  机が並び、その前には3人の中年から初老の男性が並んでいる。  その視線の先には白衣を着込んだ若い女性が、彼らと向かい合うように座っていた。  先生と呼ばれているが、喜多川と呼ばれる女性は見た目には学生くらいの年齢でしかない。その点でも場に似つかわしくないと言えるが、さらに違和感があるのはその美貌とスタイルであった。意思の強そうな切れ長の瞳と整った鼻筋とまっすぐに伸びた艶やかな黒髪、そして一七〇センチメートル以上はあるかという女性としては長身な事とメリハリのあるグラマーなスタイルはモデル並で、白衣に包まれてもその見事さを主張している。 ...
  • 【MPE 8】
       8 「銃声だ」 「くっ! みんな無事であることを祈りますわ!」 「人の心配してる場合ぃ? 自分たちが危ないわよぉ」  次々と襲ってくる、灰色のクリーチャーたち。両腕から触手を投げかけてくるものもあれば、背中からたくさん伸ばしてくるものもいた。いずれの種も、どういう教育を受けたら生み出せてしまえるのかと感じるぐらい悪趣味で、気持ちの悪いものばかりだった。  タンクに入っていた化物を、シホは次から次へと解放していく。しかし××には××××××××という頼れる相棒がいた。××××が強力な熱線を使うたびに真っ暗な庭園が、雷が落ちたときのようにぱっと閃いた。  ××も、ヒエロノムスマシンの理論で作り上げたライトサーベルで不器用に応戦しているが、結局倒しきれずに××××に助けてもらうような戦いが続いていた。 「あんっ、もう、離してくださいましっ!」  背中に絡んできた化物...
  • 【白き魔女と傷だらけの道化師 第一話:後編】
    元が縦書きなのでラノ推奨 ラノで読む            3  藤森飛鳥は羽里由宇を好きだった。  彼は初めてカウンセリングを受けた時から彼女に魅かれていた。それはまだ中学生であった彼にとって憧れの対象でしかなかったかもしれない。それでも何度か彼女と話していくうちに、彼女の人間としての魅力、女性としての魅力に触れていき、男として羽里と付き合うようになっていった。  唯一自分を理解してくれる人。  肉親ですら、妹ですら彼の心を理解することはできないであろう。ましてや彼の両親は完全に飛鳥を見捨てている。  それに道化師の話を真面目に聞いてくれるのは羽里だけであった。  決してバカにせず、仕事関係なく彼の悩みを聞いてくれる女性のことを、立場を超えて好きになっていまうのは仕方のないことである。  彼は羽里の臭いのする保健室のベッドの上に寝転がり、そのまま深い眠り...
  • 【Avatar the Abyss 2 プレイヤーキラー後編】
    ラノで読む  7/  双葉学園の都市計画の途中で廃棄された廃路線がある。  鋼はそこに座っていた。理由は無い。だが何となく、ここだと思ったのだ。狩場はここだ、と。  そして…… 「よくここが判ったな」  果たして、獲物はやってきた。  新とベルだ。それが鋼と相対する。 「お前がゲーム内でPKしてるエリアだ」 「ほう」 「今までの被害者はそこに似てるところばかりだった。そしてそこをぐるりとローテーションしてる。なら次はここ、って訳だ」 「なるほど。知らなかったよ、自分では適当に選んでるつもりだったが……なるほどな、つくづく業が深い」  鋼は自嘲する様に笑う。なるほど、自分で気づいてみればなんともつまらないものだった。ただ無意識にゲームでの癖が出ていた。いや、まさにゲームと現実を混同していたという事か。 「そしてアヴァター使いが通りがからなかったら、ネットの掲示...
  • 【Avatar the Abyss 前編 死姫蛍】
    ラノで読む  1/  双葉学園都市、とある打ち捨てられた廃工場。そこは今、濃密な魂源力の波動に満ちていた。  そこにいるのは二人の学園生徒。  お互いに、小さなゲーム端末を手にしている。そのゲーム機自体はどこにでもある只のポータブルゲーム機だ。だが、そのはずなのに、そのゲーム機からは濃密な、そして強大な力が放出されている。  液晶モニターから浮かび上がる幾重もの文字が魔方陣を描く。そして空中に投影されるデジタライズな映像が、濃密な存在感をもって実体化する。  それは例えるなら神々かあるいは悪魔、もしくは精霊、魔獣……そういった幻想上の生物だ。いや、それは正しくは無い。なぜならその手のものは確実に現実として存在する事を、双葉学園の生徒達は知っている。  だがそれでも……これはあくまでも幻想上だ。架空だ。空想だ。妄想だ。  なぜならば、そう、なぜならば……二人の液晶...
  • 【猛る獅子と放課後の天使たち 『承』その2】
    『承』をラノで読む 『承』その1へもどる    ◇ ◇ ◇  ぐるぐるぐると目が回りそうです。  私は今階段を降りています。それは無限の螺旋階段。周りは世界を囲うような灰色の壁だけが見え、窓も無く、一体ここがどこなのかまったくわかりません。  ふっと螺旋階段の手すりから下を覗き込んでも、螺旋階段が延々と続くだけで、底があるのかどうかも不明です。それはまるで底なしの地獄に続いているかのようです。  鉄製のその冷たく錆びている階段に足を踏み出すたびにかつんかつんと、その空虚な空間に寂しく音だけが響き渡ります。 なぜ降りなければならないのかわかりません。ただ、自分はこの階段を降りていかなければならないという気がしてならないのです。  ですがもう何時間、何十時間、何百時間と階段を降りているような感覚がしますが、景色が変わることはありません。気が狂いそうです。...
  • 作品保管庫さくいん 「な行~わ行、英字」
    作品保管庫さくいん  な行~わ行、アルファベットで始まる作品はこちらです。 NPC紹介SS醒徒会(必読!) 委員会(必読!) その他NPCの作品 「あ行~た行」作品一覧「あ」行 「か」行 「さ」行 「た」行 「な行~わ行、英字」作品一覧「な」行 「は」行 「ま」行 「や」「ら」「わ」行 英字 「な行~わ行、英字」作品一覧 「な」行 「な」 【騎士の宿業】 【1】【2】【3】【4】【5】 【騎士の出張・パンプキンバスター】 【前】【後】 【流れ星を一緒に見よう】 【夏と花火と……】 【七の難業】 【1】【2】【3】【4】【5】【6】 「に」 【二階堂兄弟シリーズ】 【召屋正行の壊れた日常】【偽猫参り・惨】【偽・手のひらを太陽に。―空の守護者―】 【血塗れ仔猫異聞・合宿】【喫茶アミーガで今日も...
  • 【Avatar the Abyss 後編 生命 2】
    ラノで読む  6/ 「ひい、や、やめ……て、やめてよぉ!」  少女が叫ぶ。  ゆっくりと倒れるのは、巨大な蜘蛛の幻影。  そしてその周囲には幾つもの小さな光が幾重にも取り巻いている。  少女の視線の先には、光で出来た巨大な女性の姿。そしてその足元には流れる黒髪を陽炎のように揺らめかせる少女……篝乃宮蛍の姿がある。 「お願い、許して……謝るから、だから……ぁ!」  蛍は薄く笑い、手を掲げる。 「ひ……いやあああ!!」  死出蛍の群れが少女の蜘蛛のアヴァターに襲い掛かる。一体一体の破壊力は本物の死出蛍と大差ない。だが無限ともいえる無数の死出蛍が雪崩のように叩き込まれ、蜘蛛のアヴァタールは破壊される。  蜘蛛のアヴァター……ラルヴァが斃れ、それと同時にその宿主である少女もまた気を失う。その手のゲーム機からカードが落ちる。それを虚ろな瞳をした蛍が拾い、薄く笑う。 『こ...
  • 【翠玉の天使と三つの時 part2】
    京時が意識を取り戻したのは、学園からほど近い場所の、様々な店が軒を連ねたストリートにある、オープンカフェのテラスだった。京時はテラスの椅子に座り、彼の目の前の丸テーブルにはアイスコーヒーが入ったプラスチックのパックがある。  わけがわからない。  京時は確かに、佐々木に呼ばれて体育倉庫に向かったはずだ。そしてそれから彼に殴られて……。そこからの記憶がない。自分は、開放されたのだろうか。もしかして、殴られたせいで軽い記憶喪失になって、無意識的にここまで来たのか。いや、たとえそうだとしても自分が無意識のうちにコーヒーを飲むとは思えない。  なぜなら、京時はコーヒーが嫌いだからだ。  だいたい、オープンカフェでコーヒーをすするなどという行為は少なくとも京時の辞書にはない行動だ。 (ねえ、メタトロン。何があったのかな?) 『アンタ……もしかして、あのヘタレなの?』 (何を言ってるのか...
  • 【Little Drummer Girl】
      2015年 12月23日 水曜日――  今にもふとした拍子で粉雪が散りばめられてきそうなぐらい、寒い夜のことだった。  子供がカラスのラルヴァに追いかけられていた。肩から提げた手提げ鞄をばたばた揺らして、彼女は逃げ惑う。習い事の帰りに夜道を一人で歩いていたところを、襲われた。 「はあっ・・・・・・、はあっ・・・・・・!」  今晩は一段と冷えていた。全力で走っているので、鼻の中がつんと冷たくて痛い。胸の中が焼けどしそうなぐらい、熱い。  厚いジャケットを重ねて着てきたせいで、とても動きにくかった。それでも走らないといけない。すでに右肘のあたりをラルヴァの爪でえぐられてしまい、袖が赤く濡れていた。  寒すぎて、喉がからからに渇いて、頭がぐらぐらする。今、自分がどこのどの道にいるのかもわからないぐらい、彼女は激走を続けてきた。空気がとても乾燥しているので、走っていて瞳が濡...
  • 【X-link3.5 ハロウィン特別編 Side2019 part2】
    注意:この作品は現在投下していない三話と四話の間の話となっていますので、一部よくわからない記述もあると思いますが、そのへんは三話に期待してくださるよう、お願いします。 [ラノで読む http //rano.jp/1484]] Xーlink3・5 ハロウィン特別編 Side2019 Part2 【Destiny’s Play Re-Union/ 親子と見た花火と十年後の少女】  二〇一九年十月三十一日夕方『秋のレプリカ』  繋が委員長に半ば無理矢理就任させられてから、約一週間は本当にあっという間だった。  まず、飾り付けや当日必要な飲食物など、必要なものをリストアップし、予算を編成し、喜多川に予算のお伺いをたてる。生徒達の要望をなるべく取り入れたところ、予想外に費用が嵩んだが、喜多川博夢があっさりと予算を認可したために、僅か数時間の、一クラスのパー...
  • 【緊縛少女と鏡の悪魔 前編】
    ラノ推奨 ラノで前後編をまとめて読む   ◆◇プロローグ―部室にて1―◆◇ 「給水塔の変態女?」  夕日が眩しく差し込む高等部新聞部の部室で、綾鳥《あやとり》ひばりは新聞部の部長である長谷部《はせべ》亮子《りょうこ》と一緒に学園新聞の記事を考えていた。  ひばりは長い髪を三つ編みにしていて、度の強いメガネをかけている。クラスメイトからはガリ勉などと呼ばれるくらいに成績の良い少女であった。  短いポニーテールが特徴的な亮子は、ひばりと対照的にいかにも外交的な雰囲気を持っている。彼女はお気に入りのカメラを撫で回しながら、 「そうよ、今度の記事はそれに決まり! 夕暮れに現れる露出狂女! ただの変態か、それとも妖怪か!」  などと言いながらうっとりとどこか遠くを見つめている。ひばりはそれを呆れた様子で見ていた。 (まったく。また変な噂話信じて)  深い溜息を...
  • 【続 虹の架け橋 プロローグ】
      三周年記念作品   投稿週間中は大きな仕事が入っているため、事前投稿とさせていただきます   キャラ紹介、のようなもの  スポーツ刈りの少年が、すやすや寝息を立てている。  彼の名は朝倉太陽。双葉学園・初等部六年B組の男子児童だ。  町内の野球クラブに所属する、成長期真っ只中のスポーツ少年だが、こうしてパジャマを着て仰向けになっている姿は、ごく普通の子供と変わりないあどけないものである。 と、そこに誰かが部屋に入ってくる。 「いつまで寝てんのよ、太陽!」  きんきんとした甲高い大声に、彼はびっくりして起き上がった。  彼女は高等部の制服の上に「コンビニショップあさくら」のエプロンを身につけていた。太陽の姉、朝倉うさぎである。 「早く朝ごはん食べちゃってよ」 「っせーな、朝っぱらから!」  バタンと閉まった扉に、怒鳴り返した。  眠気が完全に飛ん...
  • 田中、鈴木
    田中 雛希  「ほんとどこでも寝るなこいつは。ほら、起きろ」 基本情報 名前 田中 雛希(たなか ひなき) 学年・クラス 高等部 1年B組 性別 女 年齢 16 身長 161㎝ 体重 51kg スリーサイズ B84(C),W62,H83 性格 自分より上と判断した人間には媚を売り、下と判断した人間には容赦ない。典型的な、長いものに巻かれるタイプ。 生い立ち 7年前、本土でのラルヴァ戦による被害によって双葉区へ転入する。一流ホテルレストランの元パティシエの父と喫茶店経営の母との三人暮らし。 基本口調・人称 ~ね。~だ。私。あんた。あいつ、こいつ。口先では~さん、~君(頭の中では呼び捨て)基本的に口は悪い(ただし男言葉は使わない)。両親のことはパパとママと呼ぶ。 特記事項 茶髪ギャル。鈴木彩七とは本土時代からの幼馴染 その他詳細な設定 噂話が大好きだが、斜《はす...
  • 【魔剣領域BladeZoneⅢ】
     【魔剣領域Blade ZoneⅢ】  日本に住み始めて一ヶ月経った。  時の流れが早い気もするが、俺から見ても本当に目まぐるしく過ぎていった一ヶ月だった。カルラとウルカさんが隣の部屋に住み始めてからも、この街では色々なイベントがあった。それも落ち着いて、今はルーチンワークのように護衛と家事を繰り返す日々。  ここで大問題がある。  現在の俺の仕事は護衛と家事。護衛も家事も一日も休まず続けなければならない。休めない。一ヶ月働き通し。ありえない。ブラック過ぎる。  そしてこのままでは怠惰キャラが崩壊する。俺はこんなに勤勉な人間ではなかったはずだ。 なので、そろそろ一日くらい休みが欲しいという旨を「私だって一日くらい休み欲しいのでーす!」と覚えた日本語で精一杯主張した。なんだか世の主婦のようだと思ったが閑話休題。  すると予想外にカルラから「では明日と明後日はお休みにしまし...
  • 【キャンパス・ライフ2 その7-2】
     キャンパスライフ2 最終話 “Good bye the Bloody Cat” 後編 「な、なんでェ、あれ・・・・・・!」  と、龍河も突然の事態に驚いていた。  そんな彼に対し、暴走を起こしたみくが飛んでくる。通常時よりも膨れ上がっていて、先が鷹のそれのように大きく曲がっている、恐ろしい鉤爪を向けて。 「やべえ!」  彼はとっさに雅を突き飛ばし、上体を反らしてその巨大な爪を回避した。  ポロシャツに切り込みが入り、雨に混じって細かい布がぱらっと飛んだ。  それを見た龍河のこめかみに、彼の表情が変貌するその前に、青筋がびしっと走る。 「・・・・・・てめえー!」  龍河は右腕を振った。みくが後ろに飛んでパンチを回避し、距離を取ったとき。彼は上半身の筋肉を強化させて、ポロシャツを吹き飛ばすように破いてしまった。 「血塗れ仔猫だか何だか知らねぇが、調子に乗ってもら...
  • 【怪物記 第九話】
    ラノで読む 怪物記    うーさーぎ、おーいし、かーのーやーまー                     ――ふるさと 「うなぎがたべたい」  ある土曜日の朝、八雲がそんなことを言ってきた。 「鰻か……」  鰻。白身魚の一種で、高蛋白かつ消化もいいのでスタミナがつき、夏バテにも効果があると言われている。  とは言うものの今はまだ六月。夏の到来はまだ先のことであり、うなぎを食べる習慣のある土用の丑の日もあと一月近くは先だ。  まぁ、今の時期に食べて悪いものではないがそれはそれとして……。 「何で鰻が食べたくなったんだ?」  八雲は子供だが好き嫌いがない、というかなさすぎる。放っておくと人間が食べないようなものまで食べてしまうので人前で食べないように注意しているほどだ。  そして逆に、自分から何か特定の食べ物を食べたいと言うことは珍しい。 「このま...
  • 【反逆のオフビート 第三話:part.1】
    元が縦書きなのでラノをおすすめします pat.1をラノで読む あと感想、批評をスレに書き込んでくれるとありがたいです(今巻き込み食らって返事返せないですが)     FILE.3〈キャスパー・ウィスパー侵略:part.1〉              ※  夜遅く、ひっそりと静まり返る醒徒会室で、青いサングラスをした長身の男が考え込むようにソファに腰をかけていた。  彼の名はエヌR・ルール。  ルールは双葉学園における黒歴史、オメガサークルの前身である兵器開発局が生み出した異能の力を持った人造人間だ。今まで魂を持たない人形しか生み出せなかった兵器開発局が何万体という失敗作の上に唯一造り上げることができた存在であり、魂を持つ者にしか許されない異能の力も彼は保有していた。  違法なる科学の遺物。  哀れなる運命の落とし児。  彼は先日に出会...
  • 【永遠の満月の方程式 -急- 後篇】
    ラノで読む 「着きましたよ、フフフ……」  到着した場所は島の真北に位置する場所。先程見た地図の六つのポイントの最後の一点となっている場所だ。  既に日は落ち辺りは暗い中、天空に輝く月は異様なまでの大きさに見えている。  車から降りた輝、睦月、天津甕星は、その最後のポイントで縛り上げられリガルディーの儀式の用意を見せられている。  陰陽五行などとも呼ばれる五大エレメンツだが、エレメントは実はそれだけではない。木火土金水、それに月と日(太陽)が合わさり六芒星とその中心を成す大魔法陣を描く事ができるのだ。  それにより最も強力な術式となった結界は、双葉学園島全体の生きとし生ける物から魂源力を根こそぎ奪い取る。そして睦月の式神の力を極限まで向上させる。  「もうじき完成しますよ、『永遠の満月の方程式』がね。フフフ……フフフフフ」  しかし太陽は既に西の水平線に顔を隠し今や...
  • 【世界が変わる日】
      世界が変わる日   ラノで読む  踏み出した足が地面を踏みしめ――ずるり、と滑るように崩れた。  もう片足を軸に必死に体勢を立て直す。どうにか踏みとどまることに成功し、俺はほっと安堵の息をつく。  カラカラカラ…と薄っぺらい音が下のほうに駆け下りていくのがおれの耳に入ってきた。どうやら落ちていた空き缶でも踏んでしまったらしい。  山にゴミを捨てる奴なんて死んでしまえ。  腹立ちを呪いの言葉に変えて吐き出す。全く冗談ではない。心の平穏を求めてこんな山の奥まで来たというのにこれでは台無しだ。もしこんな所で転んでいたらどんなことになっていたか。  いやいや、済んでしまった事にいちいち囚われていてはここまで来た苦労が水の泡だ。意識的に気分を切り替え、俺は再び歩き始める。  目的地はそこからそう離れてはいなかったが、さっきのように何か落ちてはいないかと神経を尖らせながら...
  • @wiki全体から「【キャンパス・ライフ2+ 第4話「あなたは誰 私は誰」】」で調べる

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