はじめに--ケルト民族のふしぎ(p9)
注目される、ケルトの文化
- ハルシュタット … 塩(ハル)を中心に出来た、高い水準の文化(B.C.700-450)。B.C.1300-600にダニューブ川から来たケルト人たちの文化
- スイスのラテーヌ文化
- 西ドイツのマンヒングの遺跡
「平原のケルト」「山岳のケルト」広い範囲に侵入していったケルト人(p16)
このように多くの地域に拡がっていたことは、ケルトという単一な民族は存在しなかったということでもあり、また多数の部族から成り立っていて、共通した言語や宗教・習慣・文化をもっていながら、一つの政治形態をもって定住しなかったことを示しています。(中略)長いあいだの移動や戦いのあいだに他民族と混ざり合っているので、純粋民族としてのケルトは存在していないともいえるのです。このことは見方をかえれば、ヨーロッパ各国にケルトが入っていることになり、ケルト文化は「ヨーロッパ文明の基礎」にある、ケルトは「ヨーロッパのルーツ」である、といわれるわけです。
「大陸のケルト」「島のケルト」(ローマ軍の侵攻のため、ローマ化、非ローマ化と見られる)
ケルトの人間性
- 「死を恐れず、死後も魂は滅びないという信念を持っているからだ」 ~ 好戦的な不気味な戦士たち(p18)
- 総じて、男性は好戦的で、情熱にかられ、興奮しやすく、論争好きだが、単純でだまされやすく、女性のほうは母性的で、多産だった(p20)
シーザーの記す神々(p24)
『ガリア戦記』のなかで、ごく簡単に述べられている。
ドゥルイド僧と修道僧
ドゥルイド僧 … 王の助言者として常に王座の隣に座をしめ、予言をおこない、オークの杖で魔術を起こす。多くの役割を持っていたが、およそ三役に分かれていった。
- 立法者
- 祭司と政治
- 詩人
詩人
20年間の修業、全知識格納庫、フィラ「語り部」ボエルジ「吟唱詩人」バード「吟遊詩人」 → メディアの役目
- 口頭伝承 ⇔ 「オガム」文字 ~ 「トィン」の物語を語るマアゲン(p34)
→700年くらいに「クーリーの牛争い」の文字化、11世紀頃から、キリスト教の筆写僧による写本
…聖パトリックによる布教(聖パトリックの経歴、ケルトにおけるキリスト教の特殊性、寛容なキリスト教
ドゥルイドの教義「霊魂不滅」「転生」(p40)
~太陽崇拝、汎神論
神話の中で、メタモルフォーシス、転生、見えない世界、種族の存在(生活に密着)
- ダーナ神族の神話(アイルランド最古)
- アルスター神話(1世紀頃)
- フィニアン騎士団(4世紀頃)
- 歴史(王たち)の物語
「天地創造神話」のない神話
地下から来た神々(p49)
- 天地創造神話はない(不在か喪失かは不明)
- 空や大地の重要性 ~ 「空が頭の上に落ちてくる」という恐怖
ケルト民族は、そうした宇宙の起源や原初の世界のあり方を想像するより、国土の成り立ちやそこに住むようになった民族について、より多く考えていたようです。日本の神話でいいますと、イザナミとイザナギ二柱の神による国生みの部分がなく、高天原の天孫降臨から始まっているような印象を受けます。しかし、日本の八百神が、天から下界の山へと下って来たと考えられているのにたいし、ケルトの神々は、地下から上へやって来たと信じられているのです。
- 「創世記」ノアの箱舟、唯一の生き残りフィンタン(語り部、5000年生きる)
西の国からパーホロン →ネメズ →フィルボルグ →トゥアハ・ダナーン →ミレー族 …→人間
入来し、支配した五つの種族の歴史、フィモール族(「海の下」、様々な怪物)との戦い
国造りを見た男トァンの話(p58)
疫病によって滅んだパーホロン族唯一の生き残りトァンは、転生の記憶を持っていて、今(6世紀)に至るまでのアイルランドの歴史を、聖フィネンに語る。
- 上陸したネメズたち。戦いに勇ましい。突然死に絶える。30人を残し、フィモール族との戦いの際、海に飲み込まれる。
- フィルボルグ(「皮を持つ人」)上陸
- ダーナ神族、姿を隠してやってくる。技術と知恵の力によって支配
- ミレー族(ビレ(地下の神)の息子ミレに率いられた神々)、ティルタウンの戦いにてダーナ神族を打ち負かす。ダーナ神族、地下と海のかなたへ逃げる。
→ミレー族のカレルが鮭を食べて、その魂が子宮に落ち、息子トァンが産まれる。
ダーナ神族の神話
ダーナの神々(p67)
昼と光と知恵を表わす良い神々、美しい姿、音楽の才、技術をもつ
フィルボルグとダーナ神族が争い、ダーナ神族が勝利し、支配。(武器がきらきらと輝いて鋭そうだった)
ダグダ、ヌァダ、ルー、マナナーン・マクリール、ディアン・ケヒト、ゴヴニュ、ミディール、オィングス、オグマ、モリガン、ヴァハ、ボアーン
ダーナ神族と妖精と常若の国(p75)
- 天候を支配する(魔法を使う)ダーナ神族 ←ドゥルイドの神の怒りに触れ撃沈、ミレー一族の敗れる
~詩人の能力の高さ(予言を実現、嵐を止めるect)
→ダーナ神族は地下「常若の国」(チル・ナ・ノグ)へ。ときどき地上に来たり、妖精になったり
「リンゴ」「豚」「エール」 ~ 常若の国の描写
(海のかなたの)「常若の国」 ~ 浦島太郎。フェバルの息子ブランの話(p79)
銀の腕のヌァダとブレス王(p81)
ターラにて、フィルボルグとヌァダ(「幸運をもたらす者」「雲を作る者」)率いるダーナ一族との戦い
→ヌァダ軍の勝利。片腕を失う。技術の神ディアン・ケヒトが銀の腕をつける。
→ヌァダ片腕のために王になれず。エリ(ダーナ神族)とエラサ(フィモール族)の子ブレスが王に。
→ケヒトの子ミァハがヌァダの腕を治す。(ミァハ、門番に猫の目を移植)ミァハの能力に嫉妬し、父ケヒトがミァハを殺す。ケヒトの子アミッドがミァハの亡骸から生えた365本の草を調合し、不老不死の薬を作ろうとするが、ケヒトに阻止される。
→ヌァダの腕も治り、王に。 ←ブレス王の悪政。詩人の力によって王座を下りる。
→ブレスの母エリは不満。フィモール族の魔眼バロール、インデッハに助けを求め、ターラを攻めることに。
→ヌァダ敗れ、フィモール族の支配、圧政に。
トゥレン三兄弟の試練の旅(p88)
→フォモール族の圧政。ヌァダのもとに、光と太陽の神ルーが来る。ルーがフォモール族の手下を殺し、戦いを挑む。バロール、恐れながらも出陣。
→ルーが父キャンとふたりの叔父に助けを求める。キャンとトゥレン三兄弟が戦い、キャンが殺される。
→父の仇として、ルーが三兄弟に償いを課す。とても思い償い。8つの要求。
→6つの要求をなんとかやりとげたとこでルーが意地悪をする。三兄弟落胆。それでも何とかやり遂げる。
→最後、三兄弟は傷を癒してくれと頼むが、ルー断わる。三兄弟とその父死ぬ。妹イーネがオガム文字で碑文に刻む。
光の神ルーと魔眼バロール(p98)
→ルーによってフォモール族を打ち下し、ダーナ神族を解放。ルー、フィルボルグのエオホズ王のもとからヌァダ王のターラに向かい、城に「何でもできる男」(イルダーナフ)として入城。
→陣を整え、バロールを殺す。
ルーとバロールのパターン(バロールは、ドゥルイド僧によって「孫に殺される」と予言)
- バロールの娘への密会でルーが産まれる。 →ルーが矢を打って、バロールに命中。
- マッキエーリ(キャン)がバロール(海賊)によって牛を盗まれた仕返しに、変装してバロールの娘の家に忍び込む。三人の子どもを産む。一人(ルー)を殺し損ねる。→真っ赤に焼けた鉄の棒で殺される。
かゆ好きの神ダグダ(p106)
ダグダ「良い神」… 大食漢、万能、巨人、活力と生産の神、豊饒の神、多産、おかゆ好き
≪棍棒≫死と生命を与える。≪大釜≫≪竪琴≫
愛の神オィングスの夢(p111)
オィングス(ダグダとボアーンの子。愛と若さと美の神)のもとに謎の乙女が訪れる。オィングス、恋の病に。
→ボアーン、ダグダにその乙女を探してもらうも、見つからず。ダーナ神族の王ボォヴに頼み、やっと見つける。
→妖精の丘に住むエタル・アヌバァルの娘カー。魔法の力によって白鳥に変身する。
→オィングスがカーを抱きしめ、二羽の白鳥となり、その後楽しく暮らす。
蝶になったエーディン(p116)
オィングスの養父ミディール。その妻ファームナッハ。
→国中で一番美しい娘、エーディンを第二の妻に。ファームナッハ、嫉妬しエーディンを蝶の姿へ。さらに城から追い出す。
→エーディン、城に入れてもらうもさらに吹き飛ばされ、アルスターのエタアの妻の杯へ落ちる。飲み込まれ、子宮に落ち、エタアの娘エーディンに。(エーディン1012年目の転生)
→アイルランドの王エオホズがアイルランド中で一番美しい娘エーディンを妻に。王の弟アリルも恋の病に。寝てたら治る。
→ミディールと再会。しかし、生まれ変わったエーディンの記憶はない。エオホズ王とミディールがチェスで戦い、ミディールがエーディンと暮らすことに。
→エオホズ王、エーディンを諦め切れず、ドゥルイド僧ダランに頼む。50人の中からエーディンを探す。エーディン名乗り出る。
→エーディン、エオホズ王、幸せに暮らし、娘エーディンを生む。
白鳥になったリールの子(p124)
ダーナ神族がミレー一族に敗れ、地下の国に逃げたとき、新しい国の王として、「赤毛のボォヴ」が選ばれる。
→海の神マナナーン・マクリールの父リールが選ばれずに腹を立てる。新王ボォヴ、和解のために一番目の娘イーヴを嫁にやる。
→双子を二組生み、イーヴ亡くなる。二番目の娘エヴァをさらに妻に。
→エヴァ、突然四人に嫉妬し、殺そうとするが、白鳥に変えることに。リールの子白鳥にされ、呪いをかけられる。
→リールが見つけるが呪いは解けず。エヴァ、「空気の悪魔」に変えられる。白鳥、300×3年過ごす。
→途中、父リールの宮殿を見るも、既に崩れかつての姿は見れず。
→白鳥、教会で四人の老人になり、死が急速に近づく。四人一緒にお墓に入り、オガム文字で名まえを刻まれる。
大地と河の女神--エスニャ、エリウ、ボアーン(p137)
- 丘や山、野原などの地名の由来や起源にまつわる神話、神々。地下の世界に住む、土地に関係のある女神たち。
- 「クリーナーの波の浜べ」~乙女クリーナーと恋人キーヴァンはマナナーンの国から逃げたが眠っているすきに、大波によって連れ戻される。
- エスニャの丘 ~ 豊作と稔りの女神。エスニャ祭のはなし。エスニャの息子ゲラルド。(魔法に驚く)
- アイルランド ~ 「エリン」、バンバ、フォトラ、エリウ(島を私の名前で呼んでください)
- ガラボーグの河 ~ キリスト教の伝道師、聖ロナンがスウィニィを鳥にし、ガラボーグがスウィニィに競争で負け、湖に身を投げ河となって流れていく。
- ボイン河 ~ ボアーン。神も食べてはいけない「知恵の木の実」
戦いの女神--モリグー、バズヴ、ヴァハ(p148)
メイヴ女王「酔った女」…情熱的な戦いの女神と性愛の女神との両面を持つ
- モリグー ~ 様々な姿に変身し、ク・ホリンの邪魔をする。
- バズヴ ~ 魔術を巧みに使う。死ぬ人の名を教える。戦士たちの身辺にいて、運命を左右する。
- ヴァハ ~ 「烏」、敵の首を食べる。「ヴァハの木の実のえさ」
モリグー、バズヴ ~ 凶暴や殺戮・破壊・復讐・死を司る無慈悲な女神
ヴァハ ~ 戦いの女神でありながら、活力や豊饒・性愛・支配や産土の神
ヴァハの三つの話
- 入島して来たネメズ種族の首領の妻
- キンボイスの妻として王の城砦であるエヴァン・ヴァハを作った
- 人間の農夫クルンチューの妻
- ケルトの女神たちは、男性から独立して力づよく行動し、強い個性を持っている
アルスター神話
赤枝の戦士たち(p161)
光の神ルーの子ク・ホリン(p166)
1."英雄の誕生"
コノール王の妹デヒテラのもとに男の子と二匹の馬が。男の子はすぐに死ぬ。
→デヒテラの飲み物の中に小さな虫が入り、子宮に落ち、セタンタが生まれる。(父は太陽神ルー)
2.ク・ホリンの元服
王の館の番犬を素手で殺す。ク・ホリン「猛犬」と呼ばれるようになる。
→元服。普通の武器は使い物にならず、王の武器戦車を貰う。
3.エマーへの求愛
ク・ホリンに妻を探す。6つの美徳を持つエマー。結婚の前に立派な戦士となるように。
→エマーの父フォーガル「影の国」のスカサハに師事するように諭す。
4.「影の国」での修業
ク・ホリン「不幸の原」へ。橋を渡るにはスカサハから教えてもらわねばならぬ。
→エマーの言った「鮭とび」の意味が分かる。反対する父フォーガルを倒し、ク・ホリン、エマー結婚
5.ク・ホリンと息子コンラの一騎打ち
スカサハと女戦士オイフェの戦いにク・ホリンも出陣。オイフェとク・ホリン一騎打ちでク・ホリン勝つ。勝利の条件で子どもコンラを生ませることに。
→アイルランドを攻めるときに、我が子コンラを自らの手で殺してしまう。
6.クーリーの牛争い
コノートのアリル王とメイヴ女王(戦いの女神)の財産比べ。アリル王の素晴らしい雄牛に嫉妬。メイヴ女王、同じ牛を手に入れることに。(これら牛、もとは人間で、様々な転生を経た超自然的な牛)
→牛を手に入れるために戦う。コノート軍とアルスター軍。アルスター軍率いるク・ホリンが勇壮な活躍を見せ、短い命を終える。
- 「トィン」の物語では、英雄は死なない。二匹の牛は死ぬ。メイヴは殺されるetc話が違う。
7.戦場のク・ホリン
コノート軍、ドゥルイド僧と予言者に占わせる。ク・ホリンと毎日一騎打ちさせることに。
→アルスターを襲う疫病、呪い。ク・ホリンの禁制(ゲッシュ)によって、時間稼ぎ。
8.戦いの女神モリグーの復讐
戦いの女神モリグーが邪魔をする。ク・ホリン傷を負うも、父ルーのおかげで傷を癒す。
9.親友ファーディアとの一騎打ち
強敵ク・ホリンを討つべく、親友ファーディアを送り込むメイヴ。ファーディアは頑なに拒むが、メイヴが嘯き、ファーディア騙され、戦場に向かうことに。
→激しい戦い。ク・ホリンに致命傷を与え、ファーディア懺悔とともに息絶える。メイヴ歓喜。ク・ホリン傷を癒す。
10.英雄の最期
ク・ホリン、メイヴ女王を捕まえるも、女は殺さない、と逃がす。
→新たな刺客を送り、ク・ホリンを討つ。ゲッシュを破り、犬を食べ半身が痺れる。弾唱詩人の思うままにされる。
→槍がク・ホリンの脇腹を貫く。はらわたを洗って身体に収める。立ったままの死を望む。その肩にモリグーの烏が止まる。ク・ホリン絶命。
悲しみのディアドラ(p205)
IVフィアナ神話
フィンとフィアナ騎士団
ク・ホリンを中心とする「赤枝の戦士団」の物語が、大らかで素朴であるのに比べますと、フィンやオシーンの神話群は、繊細で美しくロマンの香りが濃くなってくるようです。英雄のいさおしや勇ましい死を讃えるよりは、愛や離別、戦いや自然を中心に、神秘的な夢と幻想の世界が広がっています。(p220)
フィンと知恵の鮭
フィンと妖精サヴァ
常若の国へ行ったオシーン
浦島太郎、竜宮城。
妖精にたのまれた戦い
ディルムッドとグラーニャの恋
あとがき
文庫版あとがき
最終更新:2009年02月28日 15:43