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メリーの居る生活 四日目 - (2005/11/08 (火) 23:14:44) の1つ前との変更点
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*メリーの居る生活 四日目
>2スレ目>>891
>作: ◆Rei..HLfH. ID:y0XCGtJz
>『[[メリーの居る生活 三日目]]』の続編
>寝ているメリーを置いて、学校に行った僕。
>なんら日常と変わらなく、ぼーっとしている内に下校時間に突入した。
>早いとこ帰ろうとした僕を、奴が止めた。
>
>「友よ、帰ろうではないか」
>「お前…、委員会の仕事はどうした?」
>「そんな物、昼休みに片付けた」
>「ち…」
>メリーが僕に憑いてから、鬼委員長は普段以上に寄ってくるようになった。
>もしかしたら、僕は、こいつにも憑かれているのかもしれない。
>
>「さて、今日は商店街でバザーが開催されるようだが、行ってみるか?」
>「僕は早く帰りたい…」
>「帰って…どうするのだ?」
>「そりゃ帰ってメリーと…」
>「メリーと?」
>…よく考えてみたら、何もする事ないな。
>帰ったところで、いろんな物投げられるし…。
>
>「んじゃ、…バザー行くか」
>「お前も大人になったな」
>「わけわからんわ」
>一部現実逃避の理由で、バザーに向かう事にした。
>ザワザワザワザワザワザワ
>「うっへぇー、相変わらず人多いなぁー」
>商店街のバザーは、月に一度のイベントだ。
>その日は、商店街にあるほとんどの店が閉まり、その前におびただしい数の露天が並ぶ。
>
>「このまま突っ込んでも、良い買い物は期待できぬな、一度引くか?」
>「まいったなぁ、…ん?」
>「どうした?…お?」
>僕らが見つけたのは、裏通りに繋がる細い道。
>その細い道の曲がり角から少しだけ見えた露天だった。
>
>「行ってみるか?」
>「もちろん、裏通りから本通りに行けるしな」
>僕らは好奇心に任せ、その裏通りに足を踏み入れていった。
>
>曲がり角を曲がり、その露天の前に立つ。
>その露天は、形容しがたいセンスが散りばめられた、ある意味見事な領域だった。
>「これは…なんとも」
>「…何屋なんだ…これ」
>
>その露天の主だろうか…
>フード?を深くかぶり、一言も喋らない。
>「……………」
>寝ているのか?
>
>「…にしても、気味悪いな…」
>「ふむ…、蝋で作られたドクロ、錆びたナイフ、古びた書物…。その手の人間には堪らない逸品だな…」
>いわゆる魔法使いの婆さんが開いてる闇魔法ショップな感じだ。
>
>「……あれ?」
>「ん?どうした」
>「あの、奥でぶら下がってる人形」
>「人形?………!!」
>似ている…、金色の髪、左右から足れた縦ロール、眠っているが端正な顔立ち。
>「…メリー」
>無意識に、その名を口にした。
>途端に主が、口を開いた。
>「アンタは…この人形を知っているのか…?」
>声は掠れていたが、何とか聞き取れた。
>
>「人形は知らないけど、その人形に似たやつなら…」
>「あぁ、俺も知っている」
>
>それを聞いた老婆は、しばらくモゴモゴと何かを喋っていた。
>断片的にだが、「大丈夫か…」「見つけられずに…」「かわいそうに…」と聞こえた。
>しばらく、モゴモゴしていた主は、今度はハッキリとした口調で言った。
>
>「おぬし等の知っている者の所に急ぎなされ…」
>あまりにハッキリと言うものだから、逆に驚いた。
>「え?」
>「この本を持っていくといい…」
>「え?ちょっと、おばあさん?」
>「……………」
>それきり店の主は、一言も喋ることはなかった。(死んだわけではありません)
>
>『おぬし等の知っている者』…メリーのことか?
>でも急げってどういう事だ?
>「ふむ…、とりあえずメリーの所に行ってみるか」
>「あぁ、そうだな。おばあさんが言ってたことが妙に気になる…」
>胸騒ぎがしてきた…。なにかフラグが立ったようだ…。
>「とにかく、急いで家に帰ろう」
>「だったら、ここから行った方が近道だ」
>すぐ横の塀を飛び越える。
>「委員長に知らない事はない…か」
>僕もその塀によじ登って、委員長の後を追った。
>
>
>「ぜぇ…ぜぇ…確かに早かったが…」
>「これくらいでバテる様では、メリーの修行もまだまだだな」
>「と…とにかく、家に入ろう…。ただいまー」
>「お邪魔します…おや?誰もいないのか?」
>家に入り、すぐに部屋に直行する。
>「あぁ、二人は土産を渡しに回ってるんだよ」
>「なるほど」
>ガチャ…
>「メリー…」
>「…………」
>部屋に入る。
>
>…静かだ。…おかしい。
>普段ならテレビを見てるメリーがそこには居ない。
>
>
>メリーは眠っていた。
>
>
>ガクッとうな垂れた。
>心配して損した…
>「あーったく…、骨折り損ってやつか…」
>「……………いや、待て」
>俊二が緊張した面持ちで言う。
>「隆一、お前は学校に来た時、メリーは寝てたんだよな?」
>「あぁ、それがどうかしたか?」
>「部屋を見てみろ」
>「部屋…?別に、起きてきた時と何も変わりは………って、あ!!」
>「あぁ、メリーは部屋で何らかの行動は起こしていないようだ…」
>「まさか!!」
>メリーに駆け寄る。
>「おい!!メリー!!起きろよ!!オイ!!」
>起きない…。いつもは昼までには起きていたはず。まさか…。
>「静かに………脈はあるな」
>「…はぁ…、何度も心配させるなよ…」
>心臓いくつあっても足りねぇ…
>
>「…とりあえず、生きてはいるんだな?」
>「まぁ、そうだな」
>「はぁ…、よかった…」
>「さっき渡された本。貸してみろ」
>「あいよ」
>あのおばあさんから渡された本を俊二に渡した。
>「…妙だな」
>「見た目は確かに奇妙だが、読めるのか?」
>「…表紙がボロボロなのに、頁の紙だけ新品同様だ…」
>「………まぁ、あのおばあさんが持ってた物だ。おかしくないだろ」
>「…あー…この文字は…」
>「どうだ?」
>「日本語だ。お前にも読める」
>「っ…今思いっきり『ズコー!!』と言ってヘッドスライディングをしたい気分だ」
>「と言っても、これは…理論学?関係なさそうだが…」
>そう言って、俊二は本を読み続けた。
>
>数分後
>「…どうだ?何か解決策でも載ってたか?」
>「これは凄い…」
>「何だ!?何か載ってたのか?」
>
>「乗客全員が犯人だったとは…」
>「その本返せ役立たず」
>
>「まぁ、待て。この本の2章が医学書のようだ。ここに『寝たまま目覚めなくなった』という症状が記されている」
>「メリーと同じか…。解決策は?」
>「どうやら、このケースは何らかの精神…心の欠落によって起こる症状のようだ」
>「…心の欠落?なんか胡散臭いな…」
>「そう言うな、信じる手がかりは、これしか無い」
>「…で、その解決策は?」
>「記されていない」
>「無責任な…なんとかならないのか?」
>「わからんが、1章の理論学に、『心の欠落は必然的なもの。他人にそれを埋めてもらい、人は生きて行ける』と書いてある」
>「宗教くさい…」
>「さらに、3章の精神学には、『睡眠時に、互いの精神の波長が合えば、精神が共同できる』とも」
>「それ…何の本だ?」
>
>「…全くもって、不思議な書物だ。出版社も書いていなければ、著者も不明…」
>「その『精神が共同できる』って、どういう事なんだ?」
>「平たく言えば、『夢の共用』だろうな」
>「…夢の中に入れるってやつか?」
>「それを利用すれば、メリーが昏倒状態になった理由も解るかもしれないぞ」
>「…やってみるか」
>「詳しい手順を言う。その通りに行動する事」
>「解った」
>「相手に触れた状態で寝ろ。以上だ」
>「その本共々焼けてしまえ」
>
>
>……………………………………
>vision1
>
>一面の花畑で、金髪の少女が嬉しそうに飛び跳ねている。
>…メリー?
>その幼い顔には、見覚えがある。
>間違いない、メリーだ。
>【メリー!!】
>…!!声が出ない!?
>もちろん、彼女にも聞こえていない。
>【…ここはメリーの夢の中…?】
>なら聞こえもしなく、見えもしないはずだ。
>僕は彼女の夢を覗いているだけで、彼女にとっては、存在しない物なのだから。
>
>少女は蝶々を見つけて追いかけている。
>…周りに目をやる。
>どうやら日本ではないらしい。
>
>少女に目をやる。
>…いない。
>【やべ、どこ行った?】
>少女は消えてしまった。
>
>辺りを見回したが、見つけることが出来なかった。
>
>だが、僕は見てしまった。
>花畑の外から、険悪なムードで会話をする女性たちを…。
>
>急に、目の前が真っ白に弾けた。
>【な…なんだ!?】
>
>vision2
>
>『おかーさん!!』
>…髪の長い少女が母親らしき女性に甘えている。
>『ねぇ、今度編物教えて』
>『えぇ、いいわよ』
>『わーい!!』
>…メリーなのか?あれが…
>今のメリーとは、全然キャラが違う…。
>ここは…屋内か。
>けして立派ではないが、しっかりとした暖炉。
>テーブルと、椅子が3脚ある。
>…これは、ヨーロピアンテイスト?
>さっきの花畑からみた建物も英国辺りかと踏んでいたが…。
>
>まぁ、日本では無いわけだ。
>地理は苦手だ。
>
>彼女はまだ、母親にくっ付いている。
>とても幸せそうだ。
>
>『ねぇ、お母さんの指輪ってキレイだね』
>『これは、お父さんから貰った、大切な指輪なの』
>『何で大切なの?』
>『これが無いと、メリーにおまじないが出来なくなるのよ?』
>『えー。じゃあそれ無くしちゃダメだよ?』
>『大丈夫。お母さんがずっと着けてるもの』
>
>【家族の夢見て起きたくない…ってなわけないよな…】
>刹那、辺りが闇に包まれた。
>【やれやれ、またか…】
>
>vision3
>
>【な…っ!!】
>何が起きているんだ?
>暗闇から抜けたと思ったら、想像を絶する光景が僕を待っていた。
>
>僕の知った姿のメリーが、数人の人間に追いかけられている。
>追手の手には、それぞれ獲物が握られている。
>【何で…何で追いかけられているんだ!?】
>『キリストの名に置いて貴様を連行する、待たんか魔女め!!』
>
>魔女狩りだ!!
>
>『私は、魔女なんかじゃない!!』
>『嘘こけ!!匿名で情報が入っているんだ!!言い逃れはできん!!』
>魔女狩り…中世ヨーロッパで起きた、惨劇。
>何の根拠も無い噂や狂言から、多くの人々が拷問・処刑された。
>今、メリーは、その魔女として追い立てられている。
>【止めろ!!】
>止めに入る。だが、僕の体を擦りぬけて、追手はメリーを追いかける。
>【…くそ!!】
>追手を追いかける。
>無駄だとは解っていた。…その後の結末も。
>
>『えぇい、忌々しい!!矢を放て!!ここで息の根を止めてやるのだ!!』
>まずい!!
>【避けろ!!かわすんだー!!】
>メリーに向かって声の無い叫びを上げる。
>ピュン!!
>矢は放たれ。
>
>少女の背中を貫いた。
>
>そのまま少女は力なく崩れ落ちた
>【あ…あ…メリー!!!】
>近づく。
>起こそうと思ったが、すり抜ける。
>
>彼女の口がパクパクと開く…
>『お…かあ…さ…ん』
>虚空に手を伸ばす…その手は何も掴む事は無く、生命を失い、地に落ちた。
>それ以降、彼女はピクリとも動かなくなってしまった…。
>彼女は、何も罪の無い彼女は、孤独と共に、その短い生涯を…閉じた。
>【そんな…、クソ…、畜生!!チクショウ…ッ!!】
>
>生まれてこの方、こんなに憎しみを抱いたのは初めてだった。
>僕がここに居たら…。あいつ等を刺し違いてでも皆殺しにしてやろうとも思った。
>
>涙で視界が歪む…。
>
>vision4
>
>『おぉ…メリー…何てこと…』
>視界が晴れると、そこには少女の骸を抱いた母親の姿があった。
>場所は一転して、暗い家の中。
>さっき見た家なのに、随分と印象が違う。
>
>…待て。
>おかしい、この家には照明という照明が無い…。
>窓すら無くなっている。
>ここは、彼女の家ではない。
>ここはどこだ…。
>
>『待っていて…必ずあなたを、生きかえらせる…』
>そう言うと、そのまま奥に消えていった。
>
>母親は黒いコートを被って戻ってきた。
>『ここから遠く離れた樹木に、あなたの体を守ってもらうわ』
>『時が経てば、あなたの体は元に戻っているはず』
>『あなたにも、魔女の血が流れているなら…自然が守ってくれるわ』
>
>【魔女…?メリーが魔女だと?】
>話が上手く飲みこめない。
>今、重大な発言が来たというのに…。
>
>『それまで…お休みなさい…』
>
>
>……………………………………
>
>「……!!」
>「お、起きたか」
>「ハァッ…ハァッ…!!何だ今のは…」
>「…何か掴めたか?」
>「あぁ、…認めたくないがな…」
>「大丈夫か?随分と疲れてるようだが」
>「…これくらい、特訓に比べれば楽なもんだ」
>「で、これからどうするんだ?」
>「ちょっと、行く所がある」
>「…あの露店か。俺も行くぜ」
>「いや、お前はここに居てくれ」
>「ぬ?…解った。早く行って来い。バザーが終わっちまうぞ!!」
>「あぁ、行ってくる!!」
>今は5:58か…閉会が6時…マズイな。
>間に合うか!?
>
>「ハァ…ハァ…ハァ…」
>無い…。
>露店が消えている…。
>「くそ…」
>救う手段が無くなってしまった…。
>主のおばあちゃんは消えてしまった。
>「もう…ダメなのか…?」
>「誰をお探しかね?」
>「………!?」
>老婆の声!!
>振りかえる。
>
>「おばあちゃんかよ…」
>「おやおや、随分な御挨拶じゃなぁ」
>まてよ…。
>「ねぇ、おばあちゃん。ここの露店の人どこに行ったか解らない?」
>「ここの露店の人かい?それなら裏山で見たって聞いたよ」
>「ホント!?サンキュー!!おばあちゃん!!」
>「裏山行くなら、クリーニング屋の間を抜けて行くと近道じゃよー」
>流石女王…。
>
>おばあちゃんの言いつけ通り、クリーニング屋の間の抜け道を通る。
>凄い近道だ…もう山が目の前だ。後で遅刻回避ルートに組み込もう。
>階段で山を登る。
>あの木が、俺の知っている木なら、必ずあそこに居る。
>山頂についた!!
>「ゼェゼェ…なんか…今日…息切ればっかしてる気が…」
>顔を上げる。
>
>あの怪しい露店の主…、メリーのお母さんはそこに居た。
>
>フードを羽織り、桜の木を見つめている。
>「桜は…来年の春まで咲きませんよ、おばさん」
>「あら、よくここが解ったわね」
>「僕のおばあちゃんの情報網は、町内ならNASAにも負けないんでね」
>「あの子は…?」
>「家でまだ眠ってるよ」
>「………」
>「メリーの夢を覗かせてもらったよ」
>「………」
>「とても…悲しい夢だった」
>「………」
>「聞きたい事があるんだ。いいかな?」
>「どうぞ…」
>
>
>「なぜメリーは人を襲うような事をしていたんだ?」
>「…本当は、私が立ち会って、この木から解放されるメリーを受け止めるはずだったの」
>「…会えなかったのか?」
>「ズレが生じて、予想よりずっと早く、この木から開放されたの」
>「………」
>「それで、暴走が始まって、人を襲うように…」
>「なんで暴走なんかするんだ?」
>「…精神の影響でしょうね…」
>「精神?」
>「あの子は、人を殺めることで、自分の精神を守りつづけていたの」
>「………!!」
>「恐らくは、自分を殺した者への復讐心でしょうね…」
>「………」
>「人を…つまりアナタを殺すことを否定した結果、自分の精神を保てなくなり…」
>「昏睡状態に陥った…と?」
>「そういう事になるわね…」
>「なるほど…」
>「メリーはアナタを鍛えようとしているみたいだけど…何故だかわかるかしら?」
>「……さっぱり」
>「アナタとメリーは…同じだったのよ」
>「…解らん」
>「そのうち解るわよ」
>
>「おばさん…あなたは何歳なんですか?」
>「中世ヨーロッパ以前から生きてるわ」
>「…ホンマもんの魔女だね…」
>「結構面白い物よ?」
>
>「さて、僕はメリーを助けるんだ。おばさん、どうすればいいか教えてくれ」
>「あなたに…守れるの?」
>「…どちらかと言うと、メリーから守ってほしい」
>「…余裕ね」
>「実際は結構切羽詰まってるけどね」
>「これでしょ?アナタが欲しい物」
>それは、露店の奥でぶら下がっていたメリーに似た人形だった。
>「それがヒントよ。あとは自分だけで解決なさい」
>「あ!!まだ聞きたいことが!!」
>その時、咲いているはずの無い、桜の花…桜吹雪が僕を飲み込んだ。
>
>僕は自分の家の前に立っていた。
>あの人形を抱いて。
>
>ガチャ!!
>「俊二!!」
>「…って瞑想中かよ」
>肝心な時に…。
>仕方ないので一人で謎を解くことに。
>くそ…人形がヒントったって…?
>『あとは自分だけで解決なさい』
>僕が解決…つまり僕しか解らないことなのか?
>となると…夢の中か…。
>…お母さんが登場したのは、2と4。…
>2の内容は、親子と……お守り……。
>
>お守り!!
>
>まさか、この人形にお守りが隠されているのか?
>慌てて服を引っぺがしてみたが、指輪は見つからない。
>「ねえじゃんか!!…って、お?」
>腕にキラリと光るアクセントを見つける。
>指輪が腕輪となって人形についていた。
>
>これが、お守りか…。
>外した指輪を見る。
>
>『アナタとメリーは…同じだったのよ』
>…そうか。
>あの時の言葉をやっと理解した。
>逃げることしか…できなかったよな…僕は…。
>…もう逃げない。
>「この指輪に誓う。俺はもう逃げない。何にとは…言えないが、とにかく逃げない」
>
>そして、お守りをメリーの指にはめた。
>
>
>「ンン…ッ」
>「ふぁ~…あら、おはよう」
>「よぉ、こんばんは」
>「?」
>時計を差し出す。ついでにカーテンを開ける。
>時刻はPM8時を指していた。
>「……え~と…私こんなに寝てたの?」
>「そりゃもう、ぐっすりと」
>「なんで起こさないのよ!!」
>「起きないからだ」
>「うるさいわね!!」(ブンッ!!ゴッ!!
>「ウガァッ!!」
>8時の時計が僕の額に導かれた。
>「ふ…起きたら起きたで騒がしいものだな…」
>「イテテテ…お前…いつまで家にいるんだよ」
>「あら、俊二。アナタも来てたのね」
>「まぁ、俺はもう帰っておく、二人の邪魔は野暮だからな」
>「わけわからん」
>「………」
>「それではアディオス!!」
>「玄関から帰れ!!窓開けるな!!」
>「…ち」
>「『ち』じゃねぇ!!」
>ズルズルズルズル…
>隆一が俊二を引きずって部屋から出て行く。
>
>「…(ボー)」
>低血圧なので、頭が回らない。
>「………」
>目を擦る
>「?」
>まぶたに堅い物が当たる。
>指を見る。
>「……!?」
>眠気が吹っ飛んだ。
>「こ…これお母さんの…」
>
>自分の寝ている間になにが起きたか、隆一に白状させよう。
>ついでに、床に転がっている、自分に似た半裸の人形の事も含めて。
>
>その日、町内には夜中に悲鳴が数十回に渡り響いたと言う。
*メリーの居る生活 四日目(修正版)
>2スレ目>>891
>作: ◆Rei..HLfH. ID:y0XCGtJz
>『[[メリーの居る生活 三日目]]』の続編
>寝ているメリーを置いて、学校に行った僕。
>なんら日常と変わらなく、ぼーっとしている内に下校時間に突入した。
>早いとこ帰ろうとした僕を、奴が止めた。
>
>「友よ、帰ろうではないか」
>「お前…、委員会の仕事はどうした?」
>「そんな物、昼休みに片付けた」
>「ち…」
>メリーが僕に憑いてから、鬼委員長は普段以上に寄ってくるようになった。
>もしかしたら、僕は、こいつにも憑かれているのかもしれない。
>
>「さて、今日は商店街でバザーが開催されるようだが、行ってみるか?」
>「僕は早く帰りたい…」
>「帰って…どうするのだ?」
>「そりゃ帰ってメリーと…」
>「メリーと?」
>…よく考えてみたら、何もする事ないな。
>帰ったところで、いろんな物投げられるし…。
>
>「んじゃ、…バザー行くか」
>「お前も大人になったな」
>「わけわからんわ」
>一部現実逃避の理由で、バザーに向かう事にした。
>ザワザワザワザワザワザワ
>「うっへぇー、相変わらず人多いなぁー」
>商店街のバザーは、月に一度のイベントだ。
>その日は、商店街にあるほとんどの店が閉まり、その前におびただしい数の露天が並ぶ。
>
>「このまま突っ込んでも、良い買い物は期待できんな、一度引くか?」
>「まいったなぁ、…ん?」
>「どうした?…お?」
>僕らが見つけたのは、裏通りに繋がる細い道。
>その細い道の曲がり角から少しだけ見えた露天だった。
>
>「行ってみるか?」
>「もちろん、裏通りから本通りに行けるしな」
>僕らは好奇心に任せ、その裏通りに足を踏み入れていった。
>
>曲がり角を曲がり、その露天の前に立つ。
>その露天は、形容しがたいセンスが散りばめられた、ある意味見事な領域だった。
>「これは…なんとも」
>「…何屋なんだ…これ」
>
>その露天の主だろうか…
>フード?を深くかぶり、一言も喋らない。
>「……………」
>寝ているのか?
>
>「…にしても、気味悪いな…」
>「ふむ…、蝋で作られたドクロ、錆びたナイフ、古びた書物…。その手の人間には堪らない逸品だな…」
>いわゆる魔法使いの婆さんが開いてる闇魔法ショップな感じだ。
>
>「……あれ?」
>「ん?どうした」
>「あの、奥でぶら下がってる人形」
>「人形?………!!」
>似ている…、金色の髪、左右から足れた縦ロール、眠っているが端正な顔立ち。
>「…メリー」
>無意識に、その名を口にした。
>途端に主が、口を開いた。
>「アンタは…この人形を知っているのか…?」
>声は掠れていたが、何とか聞き取れた。
>
>「人形は知らないけど、その人形に似たやつなら…」
>「あぁ、俺も知っている」
>
>それを聞いた老婆は、しばらくモゴモゴと何かを喋っていた。
>断片的にだが、「大丈夫か…」「見つけられずに…」「かわいそうに…」と聞こえた。
>しばらく、モゴモゴしていた主は、今度はハッキリとした口調で言った。
>
>「おぬし等の知っている者の所に急ぎなされ…」
>あまりにハッキリと言うものだから、逆に驚いた。
>「え?」
>「この本を持っていくといい…」
>「え?ちょっと、おばあさん?」
>「……………」
>それきり店の主は、一言も喋ることはなかった。(死んだわけではありません)
>
>『おぬし等の知っている者』…メリーのことか?
>でも急げってどういう事だ?
>「ふむ…、とりあえずメリーの所に行ってみるか」
>「あぁ、そうだな。おばあさんが言ってたことが妙に気になる…」
>胸騒ぎがしてきた…。なにかフラグが立ったようだ…。
>「とにかく、急いで家に帰ろう」
>「だったら、ここから行った方が近道だ」
>すぐ横の塀を飛び越える。
>「委員長に知らない事はない…か」
>僕もその塀によじ登って、委員長の後を追った。
>
>
>「ぜぇ…ぜぇ…確かに早かったが…」
>「これくらいでバテる様では、メリーの修行もまだまだだな」
>「と…とにかく、家に入ろう…。ただいまー」
>「お邪魔します…おや?誰もいないのか?」
>家に入り、すぐに部屋に直行する。
>「あぁ、二人は土産を渡しに回ってるんだよ」
>「なるほど」
>ガチャ…
>「メリー…」
>「…………」
>部屋に入る。
>
>…静かだ。…おかしい。
>普段ならテレビを見てるメリーがそこには居ない。
>
>
>メリーは眠っていた。
>
>
>ガクッとうな垂れた。
>心配して損した…
>「あーったく…、骨折り損ってやつか…」
>「……………いや、待て」
>俊二が緊張した面持ちで言う。
>「隆一、お前は学校に来た時、メリーは寝てたんだよな?」
>「あぁ、それがどうかしたか?」
>「部屋を見てみろ」
>「部屋…?別に、起きてきた時と何も変わりは………って、あ!!」
>「あぁ、メリーは部屋で何らかの行動は起こしていないようだ…」
>「まさか!!」
>メリーに駆け寄る。
>「おい!!メリー!!起きろよ!!オイ!!」
>起きない…。いつもは昼までには起きていたはず。まさか…。
>「静かに………脈はあるな」
>「…はぁ…、何度も心配させるなよ…」
>心臓いくつあっても足りねぇ…
>
>「…とりあえず、生きてはいるんだな?」
>「まぁ、そうだな」
>「はぁ…、よかった…」
>「さっき渡された本。貸してみろ」
>「あいよ」
>あのおばあさんから渡された本を俊二に渡した。
>「…妙だな」
>「見た目は確かに奇妙だが、読めるのか?」
>「…表紙がボロボロなのに、頁の紙だけ新品同様だ…」
>「………まぁ、あのおばあさんが持ってた物だ。おかしくないだろ」
>「…あー…この文字は…」
>「どうだ?」
>「日本語だ。お前にも読める」
>「っ…今思いっきり『ズコー!!』と言ってヘッドスライディングをしたい気分だ」
>「と言っても、これは…理論学?関係なさそうだが…」
>そう言って、俊二は本を読み続けた。
>
>数分後
>「…どうだ?何か解決策でも載ってたか?」
>「これは凄い…」
>「何だ!?何か載ってたのか?」
>
>「乗客全員が犯人だったとは…」
>「その本返せ役立たず」
>
>「まぁ、待て。この本の2章が医学書のようだ。ここに『寝たまま目覚めなくなった』という症状が記されている」
>「メリーと同じか…。解決策は?」
>「どうやら、このケースは何らかの精神…心の欠落によって起こる症状のようだ」
>「…心の欠落?なんか胡散臭いな…」
>「そう言うな、信じられる物は、これしか無い」
>「…で、その解決策は?」
>「記されていない」
>「無責任な…なんとかならないのか?」
>「わからんが、1章の理論学に、『心の欠落は必然的なもの。他人にそれを埋めてもらい、人は生きて行ける』と書いてある」
>「宗教くさい…」
>「さらに、3章の精神学には、『睡眠時に、互いの精神の波長が合えば、精神が共同できる』とも」
>「それ…何の本だ?」
>
>「…全くもって、不思議な書物だ。出版社も書いていなければ、著者も不明…」
>「その『精神が共同できる』って、どういう事なんだ?」
>「平たく言えば、『夢の共用』だろうな」
>「…夢の中に入れるってやつか?」
>「それを利用すれば、メリーが昏倒状態になった理由も解るかもしれないぞ」
>「…やってみるか」
>「詳しい手順を言う。その通りに行動する事」
>「解った」
>「相手に触れた状態で寝ろ。以上だ」
>「その本共々焼けてしまえ」
>
>
>……………………………………
>vision1
>
>一面の花畑で、金髪の少女が嬉しそうに飛び跳ねている。
>…メリー?
>その幼い顔には、見覚えがある。
>間違いない、メリーだ。
>【メリー!!】
>…!!声が出ない!?
>もちろん、彼女にも聞こえていない。
>【…ここはメリーの夢の中…?】
>なら聞こえもしなく、見えもしないはずだ。
>僕は彼女の夢を覗いているだけで、彼女にとっては、存在しない物なのだから。
>
>少女は蝶々を見つけて追いかけている。
>…周りに目をやる。
>どうやら日本ではないらしい。
>
>ふと、蝶々を追いかける足音が消えた。
>少女の目の前には大きな樹木がそびえ立っていた。
>少女はその樹木を見つめたまま動かない。
>【デカイな…。昔からここにいるのか?】
>ふわっと、ピンク色の葉が目の前を落ちていった。
>【…?】
>目の前を落ちていったのは、葉っぱではなく、花びらだった。
>
>少女に目をやる。
>…いない。
>【やべ、どこ行った?】
>少女は消えてしまった。
>
>辺りを見回したが、見つけることが出来なかった。
>
>だが、僕は見てしまった。
>花畑の外から、険悪なムードで会話をする女性たちを…。
>そして、全員が一点の方向…おそらく少女の向かった方向を見ていたのを…。
>
>急に、目の前が真っ白に弾けた。
>【な…なんだ!?】
>
>vision2
>
>『おかーさん!!』
>…髪の長い少女が母親らしき女性に甘えている。
>『ねぇ、今度編物教えて』
>『えぇ、いいわよ』
>『わーい!!』
>…メリーなのか?あれが…
>今のメリーとは、全然キャラが違う…。
>ここは…屋内か。
>けして立派ではないが、しっかりとした暖炉。
>テーブルと、椅子が3脚ある。
>…これは、ヨーロピアンテイスト?
>さっきの花畑からみた建物も英国辺りかと踏んでいたが…。
>
>まぁ、日本では無いわけだ。
>地理は苦手だ。
>
>彼女はまだ、母親にくっ付いている。
>とても幸せそうだ。
>
>『ねぇ、お母さんの指輪ってキレイだね』
>『これは、お父さんから貰った、大切な指輪なの』
>『何で大切なの?』
>『これが無いと、メリーにおまじないが出来なくなるのよ?』
>『えー。じゃあそれ無くしちゃダメだよ?』
>『大丈夫。お母さんがずっと着けてるもの』
>『メリーには、大切な物。あるのかしら?』
>『うん!!私ね、あの広場に立ってる木。あの木が大切なの』
>『あら?それは何故?』
>『あの木はね、私をいつも見ていてくれる気がするの…変かな?』
>『全然、変じゃないわよ。むしろとても素敵なことだわ』
>『本当?』
>『そうよ、私達一族は自然の原理をとても大切にしなきゃいけないの。自然と仲良くするのはとても、とても良い事なのよ?』
>『?』
>『それに…ここだけの話、あの樹は、魔法の樹なのよ?』
>『魔法?』
>『そうよ。春になると花が咲いて、夏になると葉を付けて…』
>『……………』
>【目をキラキラさせてる…。まぁ、まだ子供だしな…】
>『それと、あともう一つ…』
>『まだ何かあるの?』
>『あの樹はね、ずっと昔に、お母さんとお父さんが二人で育てた樹なのよ』
>『…じゃあ、私のお姉ちゃん?』
>『そうね…。だからメリーのことを見守ってくれてるのね』
>『えへへ…なんだか嬉しいな…』
>
>【家族の夢見て起きたくない…ってなわけないよな…】
>刹那、辺りが闇に包まれた。
>【やれやれ、またか…】
>
>vision3
>
>【な…っ!!】
>何が起きているんだ?
>暗闇から抜けたと思ったら、想像を絶する光景が僕を待っていた。
>
>僕の知った姿のメリーが、数人の人間に追いかけられている。
>追手の手には、それぞれ獲物が握られている。
>【何で…何で追いかけられているんだ!?】
>『キリストの名に置いて貴様を連行する、待たんか魔女め!!』
>
>魔女狩りだ!!
>
>『私は、魔女なんかじゃない!!』
>『嘘こけ!!匿名で情報が入っているんだ!!言い逃れはできん!!』
>魔女狩り…中世ヨーロッパで起きた、惨劇。
>何の根拠も無い噂や狂言から、多くの人々が拷問・処刑された。
>今、メリーは、その魔女として追い立てられている。
>【止めろ!!】
>止めに入る。だが、僕の体を擦りぬけて、追手はメリーを追いかける。
>【…くそ!!】
>追手を追いかける。
>無駄だとは解っていた。…その後の結末も。
>
>『えぇい、忌々しい!!矢を放て!!ここで息の根を止めてやるのだ!!』
>まずい!!
>【避けろ!!かわすんだー!!】
>メリーに向かって声の無い叫びを上げる。
>ピュン!!
>矢は放たれ。
>
>少女の背中を貫いた。
>
>そのまま少女は力なく崩れ落ちた
>【あ…あ…メリー!!!】
>近づく。
>起こそうと思ったが、すり抜ける。
>
>彼女の口がパクパクと開く…
>『お…かあ…さ…ん』
>虚空に手を伸ばす…その手は何も掴む事は無く、生命を失い、地に落ちた。
>それ以降、彼女はピクリとも動かなくなってしまった…。
>彼女は、何も罪の無い彼女は、孤独と共に、その短い生涯を…閉じた。
>【そんな…、クソ…、畜生!!チクショウ…ッ!!】
>
>生まれてこの方、こんなに憎しみを抱いたのは初めてだった。
>僕がここに居たら…。あいつ等を刺し違いてでも皆殺しにしてやろうとも思った。
>
>涙で視界が歪む…。
>
>vision4
>
>『おぉ…メリー…何てこと…』
>視界が晴れると、そこには少女の骸を抱いた母親の姿があった。
>場所は一転して、暗い家の中。
>さっき見た家なのに、随分と印象が違う。
>
>…待て。
>おかしい、この家には照明という照明が無い…。
>窓すら無くなっている。
>ここは、彼女の家ではない。
>ここはどこだ…。
>
>『待っていて…必ずあなたを、生きかえらせる…』
>そう言うと、そのまま奥に消えていった。
>
>母親は黒いコートを被って戻ってきた。
>『ここから遠く離れた樹木に、あなたの体を守ってもらうわ』
>『時が経てば、あなたの体は元に戻っているはず』
>『あなたにも、魔女の血が流れているなら…自然が守ってくれるわ』
>『…そう。あなたのお姉さんが…守ってくれるわ…』
>
>【魔女…?メリーが魔女だと?】
>話が上手く飲みこめない。
>今、重大な発言が来たというのに…。
>【メリーのお姉さんって…たしか…】
>
>『それまで…お休みなさい…』
>
>
>……………………………………
>
>「……!!」
>「お、起きたか」
>「ハァッ…ハァッ…!!何だ今のは…」
>「…何か掴めたか?」
>「あぁ、…認めたくないがな…」
>「大丈夫か?随分と疲れてるようだが」
>「…これくらい、特訓に比べれば楽なもんだ」
>「で、これからどうするんだ?」
>「ちょっと、行く所がある」
>「…あの露店か。俺も行くぜ」
>「いや、お前はここに居てくれ」
>「ぬ?…解った。早く行って来い。バザーが終わっちまうぞ!!」
>「あぁ、行ってくる!!」
>今は5:58か…閉会が6時…マズイな。
>間に合うか!?
>
>「ハァ…ハァ…ハァ…」
>無い…。
>露店が消えている…。
>「くそ…」
>救う手段が無くなってしまった…。
>主のおばあちゃんは消えてしまった。
>「もう…ダメなのか…?」
>「誰をお探しかね?」
>「………!?」
>老婆の声!!
>振りかえる。
>
>「おばあちゃんかよ…」
>「おやおや、随分な御挨拶じゃなぁ」
>まてよ…。
>「ねぇ、おばあちゃん。ここの露店の人どこに行ったか解らない?」
>「ここの露店の人かい?それなら裏山で見たって聞いたよ」
>「ホント!?サンキュー!!おばあちゃん!!」
>「裏山行くなら、クリーニング屋の間を抜けて行くと近道じゃよー」
>流石女王…。
>
>おばあちゃんの言いつけ通り、クリーニング屋の間の抜け道を通る。
>凄い近道だ…もう山が目の前だ。後で遅刻回避ルートに組み込もう。
>階段で山を登る。
>あの木が、俺の知っている木なら、必ずあそこに居る。
>山頂についた!!
>「ゼェゼェ…なんか…今日…息切ればっかしてる気が…」
>顔を上げる。
>
>あの怪しい露店の主…、メリーのお母さんはそこに居た。
>
>フードを羽織り、桜の木を見つめている。
>「桜は…来年の春まで咲きませんよ、おばさん」
>「あら、よくここが解ったわね」
>「僕のおばあちゃんの情報網は、町内ならNASAにも負けないんでね」
>「あの子は…?」
>「家でまだ眠ってるよ」
>「………」
>「メリーの夢を覗かせてもらったよ」
>「………」
>「とても…悲しい夢だった」
>「………」
>「聞きたい事があるんだ。いいかな?」
>「どうぞ…」
>
>
>「なぜメリーは人を襲うような事をしていたんだ?」
>「…本当は、私が立ち会って、この木から解放されるメリーを受け止めるはずだったの」
>「…会えなかったのか?」
>「ズレが生じて、予想よりずっと早く、この木から開放されたの」
>「………」
>「それで、暴走が始まって、人を襲うように…」
>「なんで暴走なんかするんだ?」
>「…精神の影響でしょうね…」
>「精神?」
>「あの子は、人を殺めることで、自分の精神を守りつづけていたの」
>「………!!」
>「恐らくは、自分を殺した者への復讐心でしょうね…」
>「………」
>「人を…つまりアナタを殺すことを否定した結果、自分の精神を保てなくなり…」
>「昏睡状態に陥った…と?」
>「そういう事になるわね…」
>「なるほど…」
>「メリーはアナタを鍛えようとしているみたいだけど…何故だかわかるかしら?」
>「……さっぱり」
>「アナタとメリーは…同じだったのよ」
>「…解らん」
>「そのうち解るわよ」
>
>「おばさん…あなたは何歳なんですか?」
>「中世ヨーロッパ以前から生きてるわ」
>「…ホンマもんの魔女だね…」
>「結構面白い物よ?」
>
>「なぜ…桜の木を育ててたんだ?」
>「長生きすると、いろんな場所に行きたくなってね…」
>「それでジパングに来たときに見惚れた…とか?」
>「そうそう…あの人と出会ったのも…思えば日本だったわね…」
>「………」
>
>「さて、僕はメリーを助けるんだ。おばさん、どうすればいいか教えてくれ」
>「あなたに…守れるの?」
>「…どちらかと言うと、メリーから守ってほしい」
>「…余裕ね」
>「実際は結構切羽詰まってるけどね」
>「これでしょ?アナタが欲しい物」
>それは、露店の奥でぶら下がっていたメリーに似た人形だった。
>「それがヒントよ。あとは自分だけで解決なさい」
>「あ!!まだ聞きたいことが!!」
>その時、咲いているはずの無い、桜の花…桜吹雪が僕を飲み込んだ。
>
>僕は自分の家の前に立っていた。
>あの人形を抱いて。
>
>ガチャ!!
>「俊二!!」
>「…って瞑想中かよ」
>肝心な時に…。
>仕方ないので一人で謎を解くことに。
>くそ…人形がヒントったって…?
>『あとは自分だけで解決なさい』
>僕が解決…つまり僕しか解らないことなのか?
>メリーの弱点を攻めると起きるとか…
>…弱点ってあったか?
>メリーと人形に関する可能性のある行動をあらかた試したが、どうにも変化はなかった。
>となると…夢の中か…。
>…お母さんが登場したのは、2と4。…
>2の内容は、親子と……大切な物……お守り……。
>
>お守り!!
>
>まさか、この人形にお守りが隠されているのか?
>慌てて服を引っぺがしてみたが、指輪は見つからない。
>「ねえじゃんか!!…って、お?」
>腕にキラリと光るアクセントを見つける。
>指輪が腕輪となって人形についていた。
>
>これが、お守りか…。
>外した指輪を見る。
>
>『アナタとメリーは…同じだったのよ』
>…そうか。
>あの時の言葉をやっと理解した。
>逃げることしか…できなかったよな…僕は…。
>メリーが来たとき、僕はパニックに陥ってて何がなんだか分らなかった。
>まぁ、ある意味結果オーライで終わったのだが。
>彼女も、あの時、逃げずに凛とした態度で反論していれば、殺されなかったかもしれない。
>あれだけ、素直で可愛らしい娘だったんだから…。
>メリーと僕は、追っ手からの『死』メリーからの『死』から、間違った選択肢を選んでいたんだ。
>…もう逃げない。
>同じ過ちは繰り返さない。
>「この指輪に誓う。俺はもう逃げない。何にとは…言えないが、とにかく逃げない」
>
>そして、お守りをメリーの指にはめた。
>「指輪が…」
>「光っているな…神々しい…」
>「もう少し瞑想しててくれ。お前は感動のシーンに相応しくない」
>「邪険にするな…ん?この匂いは…?」
>「桜の香りだな…」
>「ほぉ…、奇跡の極みと言ったところか」
>「姉さんが起こしてるんだよ…優しくな」
>
>
>
>「ンン…ッ」
>「ふぁ~…あら、おはよう」
>「よぉ、こんばんは」
>「?」
>時計を差し出す。ついでにカーテンを開ける。
>時刻はPM8時を指していた。
>「……え~と…私こんなに寝てたの?」
>「そりゃもう、ぐっすりと」
>「なんで起こさないのよ!!」
>「起きないからだ」
>「うるさいわね!!」(ブンッ!!ゴッ!!
>「ウガァッ!!」
>8時の時計が僕の額に導かれた。
>「ふ…起きたら起きたで騒がしいものだな…」
>「イテテテ…お前…いつまで家にいるんだよ」
>「あら、俊二。アナタも来てたのね」
>「まぁ、俺はもう帰っておく、二人の邪魔は野暮だからな」
>「わけわからん」
>「………」
>「それではアディオス!!」
>「玄関から帰れ!!窓開けるな!!」
>「…ち」
>「『ち』じゃねぇ!!」
>ズルズルズルズル…
>隆一が俊二を引きずって部屋から出て行く。
>
>「…(ボー)」
>低血圧なので、頭が回らない。
>「………」
>目を擦る
>なにやら色々な夢を見た…。
>花畑で遊ぶ夢…大好きなお母さんと話してる夢…思い出したくない…あの夢…。
>けれど、最後に見た夢は不思議な感じだった。
>「お姉ちゃんが…起こしてくれた気が…」
>ふと、自分の肉親に姉が居ないことを思い出す。
>「私とした事が…相当寝ぼけてるわね…」
>「……?」
>まぶたに堅い物が当たる。
>擦っていた指を見る。
>「……!?」
>眠気が吹っ飛んだ。
>「こ…これお母さんの…」
>
>自分の寝ている間になにが起きたか、隆一に白状させよう。
>ついでに、床に転がっている、自分に似た半裸の人形の事も含めて。
>
>その日、町内には夜中に悲鳴が数十回に渡り響いたと言う。
拍手っぽいもの(感想やら)
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