カースト

ヒンドゥー教にまつわる身分制度

カーストとはポルトガル語で「家柄」「血統」を意味する
カスタ(語源はラテン語のカストゥス(castus))に由来する言葉である。
インドではカースト集団を「生まれ(を同じくする者の集団)」を意味する
ジャーティという語で呼んでいる。

紀元前13世紀頃に、アーリア人のインド支配に伴い、
バラモン教の一部として作られた。
カースト制度によって定められる個々の身分もカーストという。
カースト制度は基本的には
の4つの身分(ヴァルナ)に分けられているが、その中で更に細かく分類されている。

カーストという単語はもとポルトガル語で「血統」を表す語「カスタ」(casta)である。
そこからインドにおける種々の社会集団の構造を表す言葉になった。
結婚、食事、職業などに関する厳格な規制のもとにおかれた排他的な社会集団で、
カーストを経済的な相互依存関係と上下の身分関係で結合した制度をカースト制度という。
カースト間の移動は認められておらず、また、カーストは親から子へと受け継がれる。
結婚も同じカースト内で行われる。

インド以外の身分制度もカーストの名で紹介されることがある。

カーストは古い起源を持つ制度である。
現在は1950年に制定された憲法で全面禁止が明記されているものの、
実際には人種差別的にインド社会に深く根付いている。

ちなみに、カーストが成立した時期には存在しなかった職業などはカーストの影響を受けないと言われる。
IT関連産業などは、当然カースト成立時期には存在しなかったので、カーストの影響を受けない。
インドでIT関連事業が急速に成長しているのは、
カーストを忌避した人々がこの業界に集まってきているからと言われている。

以下、カーストという語をジャーティの意味に用い、バルナについてはこの呼称をそのまま用いた。
ただしバラモンという呼称のみは、カースト、ヴァルナいずれの範疇(はんちゅう)にも用いられる。

結婚
結婚に関する規制はカーストごとに多様であるが、原則的に言えば、
カーストの成員は自分と同じカーストに属する者と結婚する義務がある(内婚)と同時に、
同一カースト内の特定の集団に属する者とは結婚できない(外婚)。
内婚の範囲はカーストの大小や地理的条件によって多様であるが、
大きなカーストの場合、
その内部がさらに幾つかの内婚集団(サブ・カースト)に分かれていることが多い。
ただし、上位カーストの男性と下位カーストの女性との結婚がおおめに見られる。
例外的に異カーストの間の通婚関係が慣行として定着した例もある。
カースト内部の外婚の禁止は、まず近い親族がある。
通婚は原則として禁じられるのであるが、例外もまた多い。
カースト制度のもとで配偶者の選択の範囲はきわめて限られている。
しかし、ヒンドゥー教徒の父親にとって、
子どもをふさわしい家柄の異性と結婚させることは宗教的義務であった。
かつてインド社会で広く行われていた幼児婚の風習の主たる原因はここにある。

食事
ヒンドゥー教徒にとって食事は一種の儀礼であり、
けがれから食事を守るために細心の注意が払われる。
原則的には、他カーストの者といっしょに食事すること、
および下位カーストの者から飲み水や食べ物を受けることが禁じられる。
飲食物の種類について言えば、高いカーストほどタブーとされるものが増え、
バラモンのなかには完全な菜食主義を守るサブ・カーストも多い。
中位・下位のカーストは一般にヤギ、鳥、魚などの肉を食べるが、
牛肉食は一部の不可触民カーストに限られている。
近年、食事に関する規制は全般的に緩和されつつある。
とくに都市においてこの傾向が著しい。

職業
カーストはしばしば固有の職業をもち、成員はその職業を世襲する。
したがってカースト名には職業に関係するものが多い。
たとえば、鍛冶カーストのローハールは「鉄」を意味するローハ、
陶工カーストのクンバールは「陶器」を意味するクンバを語源としている。
また農作業はほとんどのカーストに開かれている。
近代になり伝統的な経済関係が崩れ、カーストと職業の結びつきは緩んだ。
今日のインドでは共和国憲法のもとで、原則的には職業の自由が保障されている。
しかし、インドの人々がカースト固有の職業を離れても、
カーストそのものから離脱したことにはならず、出身カーストへの帰属意識は依然として強い。

自治機能
各カーストには、結婚、食事、職業に関する独自の慣行が掟として存在している。
それらの掟に違反した仲間に対しては、長老会議(カースト・パンチャーヤット)や
成員の集会(サバー)によって、罰金支払を含むさまざまな制裁が加えられた。
制裁の方法として、しばしば採用されるものにカースト外への追放がある。
一時的追放の場合は贖罪行為や浄化儀礼(沐浴など)のあと復帰できた。
しかし、永久追放された者は、他カーストから受け入れられることもなく、
また家族からも見放された。
インド人はカーストから追放されない限り、貧富や成功、失敗に関係なく、
生涯自分のカーストから離れることができない。
彼らは村落や都市の成員であると同時に、
村落や都市を超えた地域社会のなかに住むカースト仲間と結ばれており、
交際の親密度から言えば、カースト仲間との結びつきの方がはるかに強い。
カースト制度のもとで個人の自由は厳しく制限されるのであるが、
他方、カーストに属し、先祖伝来の職業に従事する限り、最低の生活は保障される。












最終更新:2007年07月28日 10:08
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