【序章】アルガ方面  2004年12月22日

●アルガの城
忙しなく動く無数の人、人、人。
ジリュウの動きを察知したアルガの国では、その迎撃に向けた準備に追われていた。
しかし、ジリュウが本気で動いたとなるとアルガの勝ち目は薄い。

兵力差もそうであるが、2つのグリモアとその周囲に配していた砦を失った事は、

アルガ本領の守備の面から見ても痛恨であったのだ。
そんな折、配下の者から届けられた急報にトキタダの眉根がピクリと動く。
「ほう、あの『鬼姫』の配下の者だと?」
一瞬、トキタダの瞳に憎しみの篭った色が浮かぶが、それはすぐに冷徹な軍略家の

それに替わる。
「ふ、決死隊を募る手間が省けるか……よかろう、会ってやるわ」
その言葉の冷たさに配下の者の動きが固まる。アルガ国王トキタダ。

この男もセイカグドに覇を称えた男の1人である。
その脳裏には、この窮地を乗り切る為の策謀が渦巻いていた。

●会見
周囲を武装した兵士たちに囲まれ、尚且つ身に付けていた武器も

全て取り上げられた上で、使者とトキタダとの会見は始まった。
「今は明かせませんが、独自のルートで……」
「御託はいい。ジリュウの派兵に対して、我がアルガの為に援軍を出す、

そう言う事か?」
笑撃の・アルベルト(a01269)の口上をトキタダが冷徹な口調で遮る。

交渉の主導権は握らせない、と言った所であろうか。
「はい。そう思って戴いて構いません」
供に交渉の席に着いていた村人その壱・エン(a00389)が代わって答えを返す。
「殊勝な事だな。此度は我らに恩を売って、我がアルガの国をも奪うつもりなのか?」
「そんなつもりは……ただ私たちの言葉、いえ、ツバキ姫の言葉を

お聞き届け戴きたいのです」
厳しい口調で続けるトキタダの言に、しかしエンは真っ向から言葉を返す。

エンが予想していた援軍拒絶という気配は今の所は見受けられない。
 だが、それだけに心が許せない事も確かであった。
「ならばそう言う事にしておこう。して、如何程の数が援軍として参るのだ?」
 トキタダの眼が怪しく光る。
「私たちが出立する時点では後続で20名程が馳せ参じる予定です。

後々増えているだろうとは思いますが」
「……たったそれだけか?」
 慎重に言葉を選びながら返答するアルベルトだが、明らかに落胆した表情で

トキタダが言葉を返す。
「ふん、まあよかろう。ただし、その方らを城に入れる事は出来ん。

我が軍の将兵の中には、お前たちの事を心底恨んでいる者もいる。

斯様な者たちを同じ戦場で戦わせる訳には参らぬだろう」
「援軍を断る、と言われるのですか?」
 続くトキタダの言葉に、来たかと身構えるエン。だが――
「汚名をそそぎたいのであろう? ならば、それ相応の武勲を見せて

もらわねばならぬ。その為の先陣の任を与えようと言うのだ。不満があると

言うのならば、早急にマウサツへと帰るがいい。此度は見逃してやろう」
 そのトキタダの言葉に込められた毒が、エンの顔から血の気を失せさせる。
その条件を半ば予想していたアルベルトも厳しい表情をトキタダに向ける。
 そして、その答えは後続の者たちが到着するまで、遂に出せなかったのである。

(ツバキ姫と同行と申し出ていた方は、時間軸的に後続部隊として扱わせて戴きます)

 


最終更新:2007年05月07日 00:47