「イーブイ、何処だァァァァァッ!!!」
23番道路で警備員も鹿さんも驚くような声を上げて草むらをぐるぐる爆走する俺。
――そして飛び出したのはイーブイ!
「げんがー、任せたぞ!」とイーブイの目の前にげんがーを繰り出す。
「おっけ~ま~かせて~。……あ、でも、ますた~こいつ♂みたいですぜ~」
げんがーは相手のイーブイを見てそう言った。
「けむりだま使っちゃえ」
「いえっさ~。うりゃ~」
げんがーはけむりだまを投げて逃げ切った。
「あー、ぐぞぉぉぉぉっ!! メスのイーブイは何処だァァァァァッ!!!」
そう叫んだ時、鹿さんのいる方向からかわらずのいしが飛んできた。
「……ミキヤくん、五月蝿いよ。次叫んだりしたら本気出すよ……?」
鹿さんの声音には怒りのオーラがあった。
「サーセン……じゃねぇ、すいませんでした」
明らかに怒っている鹿さんの顔を見てサーセンと言って済ませるはずがない。
そうしたら、どうなる。レベル100の萌えもんたちにフルボッコにされる。
そんな未来予知が出来てしまうぐらい……かな。
……とまあ、そうやって粘ること数時間。
メスのイーブイ発見。即保護。
そして、その足でタマムシデパートまで行く俺。……途中で頭を冷やしたが。
「……ったく、相棒の暴走振りには頭を抱えるぜ」
「すまんな、毎回苦労かけてよ」
「全くだ。……で、そのイーブイを何に進化させるんだ?」
「シャワーズだよ」
「えっ、シャワーズ!?」とステディが出てきた。
「こらこら、勝手に出てくるな、ステディ。
……まあ、スターミーに変わる水の萌えもんが欲しかったからな」
と、ステディに言って俺は水の石を買ってイーブイに当てる。
『おめでとう! イーブイは シャワーズに しんかした!』
◇
「……これがアクアとの出会いの顛末」
俺はアクアにミックスオレを渡して、自分もソレを飲みながら言った。
「……今、思ったらみーくんキモい……。なにも血眼で捜さなくても……」
アクアは溜め息をついた。
「だってよぉ、お前がメスじゃなかったら嫁って言ってないからよ。
それに……こんなに好きなんだぜ、俺。暫くはお前に構っていないけど」
「み、みーくんっ、抱きつきながらソレを言わないで! ……恥ずかしいんだから」
アクアの身体の水がぬるいな……。普通は冷たいのに……。
「ああっ、もうっ、みーくん!」
「ン、どうした?」
「ここでキスさせて!?」
――ぶっ!
今さっき口に入れたミックスオレを思いっきり吹いた。
「げほ……ごほっ! ちょっ、アクアッ!」
「だ、だって……みーくんが……好きだっていうから……」
そういう彼女の目は真剣だった。
「……はぁ。仕方ない」
「そんなのだからみーくん大好き~」
心の中でやれやれだぜ、と思いながらアクアの唇に触れる俺。
「……ずっと傍にいるからね、みーくん」
「あぁ……」
寂しがりな子だから、離れるのが嫌なんだろうな……。
「ふと、思ったことがある」
「どうしたの、みーくん」
「なーんで、お前の事を『嫁』って言い出したんだろうなァってさ」
瞬間、アクアがぷふぇーと顔を赤くする。
「え、えええぇぇっ!? よ、よよよよよよよ嫁ぇっ!?」
<シャワーズと俺>
「よ、嫁ぇっ!?」
「大事なことなので二度言いました、ってか。いや、マジだからな」
「はわ、はわわわわわわわわわわわわわわわわわっ!!」
アクアはかなり慌てている。
「み、みみみみみみっ、みーくんっ!?」
「どうしたんだよ、慌ててさ」
「だ、だって……嫁って! わ、私でいいの!?」
「――だったらキスしてない。好きじゃなかったらしつこく愛の言葉なんて囁かない」
そう断言すると、アクアの顔がますます赤くなった。
「どうしよう……みーくん……好きって気持ちが……」
「アクア……」
彼女を抱きしめていう。
「みーくん、キスしたい……。してもいい?」
「ああ、いいぜ」
俺が言うと、アクアは肩に置いた腕を首元に持ってきて俺の唇に触れた。
唇は水の様に冷たかったけど、気持ちは温かかった。
「ねえ、みーくん」
「ん?」
「キス……したらさ、凄く優しい気持ちになるよね」
「そう……かもな」
アクアはその後、にっこりと笑った。
◇
そして、そこからアクアは俺に溺愛し始めた。常に腕に巻きついてくる。
「アクア、甘えるのはいいけどボールとか投げにくいから勘弁してくれ」
「あ、それはごめん」とアクアは腕から離れた。
……とまあ、こんな感じになってしまっている。
添い寝? 当たり前になってきている。平気でキスもするし。
こうなったらこの勢いで結婚か?
その時……一例を思い出して少し笑ってしまった。
「みーくん、どうしたの? 笑ったりなんかしちゃってさ」
「いや、なんでもないよ」
俺が言うと、アクアはニヤニヤしながら「幸せだから?」と言った。
「かもな」
「うふふ♪ 私も幸せだよ、みーくん♪」
アクアは腕に巻きついて笑顔を見せる。
まあ、いいか……。
彼女の屈託のない笑顔を見るとそう思えてしまう自分がいる。
突然ですが、嫁と言っていたアクアと結婚しました。
◇
……なんで結婚したかって?
それは、恋人以上の関係に進みたかったのと、アクアとずっと一緒にいたかったから。
その話をするとアクアは、凄く喜んで抱きついてきた。
……まあ、結婚式はこっそりとしましたよ。身内だけで。
ワイワイとするのもいいと思うけど、いつの間に結婚したのと思われたかったから。
「……にしても……相棒」
「ン、どうした?」
「冬の時、抱きしめたら冷たくて凍えないか?」
「ばかやろう」とみ○み○のキャラっぽく相棒に言う。
「だったら、グレイシアはどうなる。冷たくて凍えるってレベルじゃないだろうが。
それにな、相棒。お前がオスだったからこうなったとしか言いようがない」
「それはどういうコトだよ」
「お前がメスだったら……」
そこで俺は口をつぐんだ。
「メスだったら……?」
「なんでもねぇよ」
「いえよー」
「言うか、バカ。んじゃ、嫁と寝てくるから邪魔するなよ」
「あいよ」
◇
結婚初夜。
「……みーくん」
「普段やってる添い寝だけど、緊張するのか?」
そう聞くと、アクアは頷いた。
「そっか……」
「うん。みーくんと添い寝するってさ、恋人同士のときは気軽だったけど……今だったら……」
「まあ……夫婦だもんな。そりゃ、起きる物も起きてしまうよな」
それに頷くアクア。
「だからさ……」
「――でもね、手は出さないよ。
悪い言い方かもしれないけど、手を出さないで何処まで持つか試してみたいんだ。
何処まで身体の付き合いなしでアクアを愛せるか、ってね」
「みーくん……」
ベッドの中で抱きつかれる俺。
「それにさ、イーブイを生まなくてもいいだろう?」
「そうだね……。暫くは二人でこうしていたい……かな、みーくん」
「アクア……」
そう言って抱きしめ返す。
「大好きだよ」
「私もだよ……みーくん……」
その後、アクアの唇を奪う。
それは今までしたキスよりも長く、愛情に溢れていた……。
嫁のアクアと結婚したけど、変わらない日々。
今日はレベル上げも休んでブイズと相棒で羽を伸ばししてみた。
場所は5の島のゴージャスリゾート。
「流石、ナナシマ。快適だぜ」
「ああ、そーだな」
潮風が心地よく、波の音が癒してくれる。
嫁と会うまでジムリーダーやらロケット団やら四天王やらライバルやらでクタクタだった。
あまり落ち着いたこともなかったと思えてくる。
◇
しーんとしていたので、無意識の内に眠っていた。
ふと目を覚ますと、嫁が俺を見てにっこり笑っていた。
そして後頭部がひんやりしていることに気づく。
膝枕……か。
「アナタの寝顔、凄く可愛いよ……」
「ちょっ……アクア……」
「大好き」
そのままの表情で嫁は言った。
照れ隠しにそのまま眠る俺。
……夢を見ていた。
エリアス、セリア、ステディ以外のブイズに囲まれて、幸せそうな笑顔を浮かべる俺と嫁の姿が。
やれやれといった顔をするエリアス。
セリアとステディは、子供のイーブイを見て頬擦りしたり可愛がっている。
そして俺と嫁は、最初に産んだイーブイを抱きながら何かを話しているが、聞こえない。
幸せな夢でよかった。
◇
「……相棒、起きろよ……相棒ってば」
「――ふぇ?」
再び、目を開けると俺は相棒の背中に乗っていた。
「あ、あれ、なんでここに?」
「アクアが乗っけたんだよ。最も、ブイズたちは自分でボールに戻っていったけどな」
「そ、そうなのか……。この辺でいいよ、相棒」
「あいよ」
相棒は5の島の萌えもんセンターに降り立った。
「ここからシーギャロップに乗って帰るのか?」
「勿論だよ。嫁の波乗りでは遠すぎるし、お前の飛行でも遠いだろ?」
「確かに。それじゃ、俺もボールに戻るぜ」
「ああ」
◇
実家のあるマサラタウンへ戻ってきた。
2階が俺と嫁の愛の巣といったところか。
何処かに住んでも良いと思うけど、何処に住みたいかが決まっていないから、とりあえず実家で生活している。
「ねえ、アナタ」
「ん?」
「また行きたいです、5の島。快適で暫く住んでいたいぐらい」
「そっか……。で、アクア、何処に住みたい?」
「ナナシマだったら何処でも良いですよ。ここと同じぐらい快適ですから」
「ナナシマ、か……考えておくよ」
嬉しいと嫁は言ってベッドの中で抱きついてきた。
「お、おいっ」
「愛してるよ、アナタ」
ちゅっ……とキスされる。
……なんか、嫁のキスがいつもより激しい感じがするのは気の所為か?
なんというか、その、舌が絡まるというか。少しやらしいぞ、これは。
つまり……そこまで俺の事を愛してくれているって証拠なのか?
「ぷはっ……。えへへ……」
その後、少し申し訳なさそうな顔をする。
「……アクア」
キスし返す代わりにぎゅっ、と抱きしめる。
そして嫁の心地よい冷たさの両腕が俺の腰に回る。
「アナタ……大好き」
「俺もだよ」
いつもの様に、そのまま眠りにつく。
翌朝、うっすらと目を開いて肌触りが違う事に気がつく。
そっか嫁はもう起きて朝飯を作っているのか……、それじゃこれは一体。
良く見たら末っ子のセリアが、アクアの場所にいて眠っていた。
末っ子だもんな、これぐらいの甘えはあってもいいか。
「起きたか、ミキヤ」
「……エリアスか。で、なんでセリアがここで眠っているんだ?」
「アクアがそう仕向けた。私ばっかり構うのもいいですけど、他のブイズにも構ってあげてだってさ。
まあ、欲をいえば、私だって構って欲しいがそうもいかんだろ?」
「だな」
そしてステディが目を覚まして、俺の布団に乗り込んできた。
「おはよう、みーくんっ!」
「う、おっ……、おー、おはよう、ステディ。お前は元気だな」
「うんっ」
「……ん? あ、あれ……ここ、ますたぁのベッド……?」
「そうだぜ、セリア。何処で眠っていたと思った?」
「ますたぁのベッドの近く。誰がこんな事をしたの?」
「私だ」とエリアス。
「もう、エアにぃってばやめてよ……。アクア姉さんが寝ていた場所にあたしをいれるの」
「すまんすまん。寝言で『マスター、マスター』言うから」
なるほど。セリアはブイズでは末っ子だから、構って欲しい時期なのか。
「……さてと、それじゃ今日は嫁とセリア中心に遊びに行くか?」
「うんっ、いこーよ、ますたぁ♪」
満面の笑みを浮かべるセリア。
「――ご飯が出来ましたよ」と嫁の声が聞こえる。
今行くと言って俺はブイズと共にリビングに降りた。
トレーナー名はミキヤですが、中身はシャワーズの人です。
パーティの面子
シャワーズ♀:名前はアクア。嫁。寂しがり屋さん。その所為か溺愛しやすい体質に……
リザードン♂:名前は相棒。冷静。的確に突っ込みを入れる。
ゲンガー♀:名前はアストレア。冷静。唯一の常識人かも……
サンダース♀:名前はステディ。初代ではよく使っていたからステディ。のん気。
エーフィ♂:名前はエリアス。やんちゃな性格だが、冷静に突っ込む。フーディンの後釜。
ブラッキー♀:名前はセリア。慎重な性格。ブイズの中では一番末っ子。
とまあ、ブイズの多くがパーティに入っているんですがね(笑)
唯一王は俺的センスでは ハ ブ ら れ る 。(ぁ
既に炎はいるし、炎なのに攻撃>特攻とかどんだけ……。
ブースターは初代で進化させたけど唯一、放置された子。
・呼び方
<アクア>
一人称:私
俺:アナタ
それ以外:~さん
<相棒>
一人称:俺
俺:相棒
アクア、アストレア、エリアス、ステディ:呼び捨て
セリア:セリアちゃん
<アストレア>
一人称:私
俺:マスター
それ以外:~さん
<ステディ>
一人称:ボク
俺:マスター
それ以外:愛称(例:相棒→相棒さん、アクア→アクアさん、セリア→セリアちゃん)
<エリアス>
一人称:私
俺:ミキヤ
それ以外:呼び捨て
<セリア>
一人称:あたし
俺:ますたぁ
アクア:アクアさん
ステディ:おねーちゃん
エリアス:エアにぃ
アストレア:アス姉
相棒:相棒さん
最終更新:2008年03月08日 20:56