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概要
大英帝国(the British Empire)はイギリスとその植民地・海外領土などの総称である。
"empire"あるいは"imperial"という言葉はさらに古くから使われてきたが、一般に大英帝国という場合、始まりは16世紀あるいは17世紀とされる。その正否は問わないこととしても、海外への拡張という事実のみに着目すると、1585年のロアノーク島への植民が、また、実際に成功し、後世への連続性をもつという点からすると1607年のジェームズタウン建設が、それぞれ大英帝国の開始点となる。ただ、いずれにせよ大英帝国が帝国としての実体を備えるには北米植民地とカリブ海植民地の設立が一段落する17世紀半ばを待たねばならず、大英帝国が「イングランドの帝国」でなくなるには1707年の合同を待たねばならない。
17世紀から18世紀にかけての帝国はイギリス第一帝国あるいは旧帝国とも呼ばれ、19世紀以降の帝国、特に19世紀中葉以降に完成する大英帝国と比べると、アメリカおよびカリブ海植民地中心、重商主義政策による保護貿易、およびプロテスタンティズムによる紐帯の3点を特徴としている。航海法や特許会社の独占など、重商主義的政策による保護貿易は、いまだ脆弱なイギリス経済と植民地経済をよく守り、そして結びつけた。また、名誉革命以降のイギリスは国内外のカトリック勢力を潜在敵と見なしており、当時の帝国はフランス、スペインといったカトリックの大国を向こうにまわした「プロテスタントの帝国」と考えられていた。
その後、アメリカ独立戦争を経てイギリス帝国はインドへと重心を移し始める。また1760年代より進行した産業革命により、イギリス経済は次第に保護を必要としなくなり、自由貿易へと方向転換していった。19世紀前半の大英帝国は自由貿易さえ保証されれば、植民地獲得を必ずしも必要とはせず、経済的従属下に置くものの必ずしも政治的支配をおこなわない非公式帝国を拡大していった。この時期の大英帝国の方針は自由貿易帝国主義と呼ばれる。
19世紀半ばになるとドイツ、アメリカといった後発工業国の経済的追い上げを受け、またフランスやドイツの勢力伸張もあり、イギリスは再度、植民地獲得を伴う公式帝国の拡大を本格化した。インド帝国の成立を以て完成する新帝国はイギリス第二帝国とも呼ばれる。帝国主義の時代とも言われるこの時期ではあるが、イギリスは自由貿易の方針を堅持していた。ドイツなどの保護関税政策に対し、イギリスにも同様の政策が求められなかった訳ではない。19世紀末から20世紀初頭にかけて、大英帝国内での特恵的関税の導入を求める運動がイギリス産業界から起こされ、1887年に始まる植民地代表を集めた帝国会議でも度々議題にあがったが、結局、この種の保護政策は導入されることはなかった。
第一次世界大戦は大英帝国再々編の転機となった。大戦前より、各植民地、特に白人自治植民地の経済力は向上し、発言権も増していたが、大戦中の総力戦体制は植民地からの一層の協力を必要とするとともに、その影響力をより大きなものとした。
そして1992年の第五十三回帝国会議において王冠の下自治領と本国の対等な関係が決定された。これにより大英帝国はイギリスの帝国から王冠の下に集う国際組織へと変化した。
自治領
大英帝国において自治権を認められた準独立国。独自の政府、自治権などを持つがイギリス国王が元首を務める。国際法上、"Dominion" の訳語として使われる。特にインド、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ連邦の5つの白人自治領を指す。
植民地
大英帝国において自治権を認められていないイギリス本国による統治地域。本国から派遣された総督の下、総督府により統治される。稀に制限された自治権を認められることもあるが、その場合は自治領へと移行しうるかどうかのテスト期間としての意味合いが大きい。
また自治領へと移行するためにはイギリス本国または自治領の推薦を得たうえで帝国会議で認められなければならない。
帝国会議
大英帝国における最高議決機関。インド、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ連邦の5つの白人自治領とイギリスで構成される。
帝国会議の下には各種専門委員会が置かれ、帝国会議の決定に基づき詳細について話し合われる。
各種専門委員会
軍事委員会
大英帝国の統帥権を付託された機関。
構成地域一覧
ヨーロッパ
イギリス
北アメリカ
アンティグア・バーブーダ
カナダ自治領
グレナダ
ジャマイカ
セントクリストファー・ネービス
セントビンセント・グレナディーン
セントルシア
英領ドミニカ
トリニダード・トバゴ
英領バハマ諸島
バルバドス
英領ホンジュラス
南アメリカ
英領ギアナ
アフリカ
ウガンダ
ガーナ
南カメルーン
ガンビア
ケニア
ザンビア
英領シエラレオネ
スワジランド
英領セーシェル諸島
タンザニア
ナイジェリア
ナミビア
ボツワナ
マラウイ
モーリシャス
モザンビーク
レソト
南アフリカ自治領
アジア
インド自治領
英領
シンガポール
ブルネイ
マレーシア
英領モルディブ諸島
オセアニア
オーストラリア自治領
英領ギルバート諸島
英領サモア
ソロモン諸島
英領エリス諸島
トンガ
ニュージーランド自治領
バヌアツ
パプアニューギニア
英領フィジー
最終更新:2009年03月20日 18:15