「ルアルネの女… 殺す… 俺をなめた奴は… 必ず全員、殺してやる…」
遺跡に侵入してくる一人の男。 ギィと戦闘をしたあの仮面の男だ。 傷だらけになり完封なきまで叩きのめされたが、彼はギィやその仲間に復讐するためだけに彼女を追ってきたのだ。
「アハハハハハ… 」
「あ? 誰だ…」
遺跡の通路の奥に進むと笑い声と共に男は聴きなれた声が聞こえる。しかし、暗がりのせいで認識できていないのか問いかける
「ひ! 何だ!?」
その男が目にしたものは、普段ではありえない異形であった。
数千数万の芋虫がその声の主を取り囲み、うごめいていたのだ。
「その声は… 生きてたの? 甘いな~ あの嬢ちゃんも… こんなの死んでも、お話に何の支障も出ないのに…」
「てめえ、その声まさか
ディメスキンか! い… 一体何なんだ「そいつら」はよぉ!!」
体中の数千の蟲を振り落とす素振りも見せず、立ち上がりディメスキンは男に近づいていく。
「ここから先は俺ちゃんの選んだ出演者しか、通っちゃ駄目なわけよ… 分かる?」
「っていうか… 変に登場人物が多いとお話がこじれちゃうわけよ。 そうならないために… 名前も考えてないあんたは通る資格は無いわけよ ねぇ?」
パチンッ! 指を鳴らすと蟲はディメスキンの体に取り付くのをやめ、今度は向こうの男の体に飛び掛る。
「ヒ! ヒイイイイ! やめろ! 離れろぉ!!」
男が引き返そうとするが、退路には床が見えなくならほどの蟲で覆われており逃げる事も出来なかった。
少しずつ、少しずつ… 体を覆うように蟲は全身を這ってくる感触に狂乱状態になり転げまわって抵抗するも全く効果がない。
「あそこで伸びてればこんな目に遭わずに済んだんだけどね~ 安心しなって、その血肉は供物となるんだ! くだらない戦いで死ぬよりよっぽど名誉ある事なんだぜ?」
嫌悪と恐怖に駆られ転げまわる男を嬉しそうに見下し、虫たち貪られるその姿を静観する
「やめろ! やめてくれ! 死にたくねぇ…! アアアアア!」
「出来るだけ苦痛を… それこそが我が神の供物なり…」
すでに叫び声しか上げられなくなった男は、ディメスキンに懇願し助けを請うが体を食いつぶされていきその叫びも長くは持たなかった。
一瞬にして骨だけになった男の頭蓋を踏み砕くと、それと同時に遺跡が軋み轟音が響き渡る。
「おっとと…! これからどうなるか高みの見物と行こうかね!」
デェメスキンは不敵な笑みを浮かべると、薄暗い通路の奥に消えていった。
明け滅ぼしがその気圧の爆弾を大地に発射しようという刹那、動きが止まり静かに息を静かに吐き出し始めた。こちらを見下ろしたまま動かずに静止している。 呆けた様に口を小さく開けて息を噴き出したあと、空中を漂ったまま「太陽」の命令を聞こうとしない。なぜ?
その明け滅ぼしの様子に太陽は狼狽する
「一体何故だ 奴はアレを操りきれていないのか?」
「どうした! 私の命令が聞けないのか!?」
空に漂う「明け滅ぼし」はそのまま、地面をじっと見ているだけで太陽の命令を一向に聞く素振りを見せない。
「なに!? た、竜巻が!? これは一体どういうことだ!」
それどころか、攻撃から身を守る竜巻も突然消えてしまいうろたえる太陽。 自分にとっての予想もしていなかったコノ状況にひたすらうろたえている。
「チャンス!」
「あ…! ギィーラ殿危ない!」
竜巻が消えたことを良い事に、無防備になった太陽に向かって攻撃を仕掛けに行くギィ。 味方の制止も振り切り太陽に向かって渾身の飛び蹴りを喰らわせる。
「ゴラァ!!」
「ガボ!?」
うろたえていると横っ面に強烈なけりを喰らって、きりもみ回転しながら吹き飛ぶ太陽。
そのまま壁に鈍い音と共に激突するとピクピクと白目を剥いて気絶する。
「これで終わり!?」
あの一撃で完全に意識を失った太陽に飛び蹴りを食らわしたギィ本人も愕然し、彼女以外の皆も開いた口がふさがらない…
「拍子抜けにも程があるニダ… 作者は何を考えているニダ!」
まさにニーダの言ったとおりの拍子抜け。 これからという時なのに決着をつけたのは一発の攻撃というのは何とも…
大ブーイングを発する皆を尻目に
ヒッキーは全身から嫌な汗が出てくることに気付く。ヒッキーは今まで感じた事のないこの気配に自分でも青ざめていくのが分かった
「ヒッキー、顔色が悪いよ? どうしたの?」
「寒気がするんだ… なんで?」
太陽は気絶して今はライツァー将が様子を見ている… もう敵は残っていないはずだ。
「…明け滅ぼしとかいうの、いつまでここに居るつもりなんだろ? 主ももう倒されちゃったのに…」
「!」
その言葉にハッとすると、ヒッキーは敵はまだ残ってる事に気付く。 そして、寒気の正体に気付いた… 自分に向けられた憎悪に満ち溢れた「殺意」
「あいつだ…! あいつが…!!」
「どうしたニダ、ヒッキー? さっきから凄い震えてるニダ…」
ヒッキーだけにしか分からないその特殊ともいえる殺意に、体から震えが止まらなくなる。
ギャシャールが心配してくれているが、恐怖のためかうまく言葉が出ない。明らかな敵意を感じ焦っているのか、なかなか話す事が出来ないヒッキーは空を指す
「地震!?」
ヒッキーが殺意にさらされる中で足場全体に響く振動に足を取られる皆。 ヒッキーは突如襲うその激震に体制が保てなくなり四つんばいになって耐え、すかさず顔を上げる。
そこに見えたのは太陽の周辺から先ほど起こした風とは比較にならないほどの突風が迫って来る光景だった。
「うわああああああああ!」
床に落ちていた細かい塵を掬い上げ、巨大な砂塵を発生させた風はそのままヒッキー達をその叫び声ごと飲み込んでいく。
砂塵の幕が下り、周辺の視界が遮られる。 皆はおのおののその状況を判断しようと必死だった。そして、いち早く視界を取り戻したライツァーは愕然とする
「馬鹿な… 我々は竜巻の中心いるのか?」
まるで生き物が雄叫びを上げ、低く唸り上げる風の流れを目にして体が固まる。
職人石の事と言いすでに理解の範疇を超えている
「一体どういうことだい?説明しなって」
「見ての通りだ。我々はどうやら奴の発生させた竜巻に取り込まれたらしい。」
「そんなアホ …なことじゃないか。 」
渦巻く風は天高くまで届き、風の頂点からかすかに明け滅ぼしが見える。この状況なら夢だと感じていても良いのだが、周りに巻き起こる轟音や舞い上がる砂の降りかかる不快感がいやおうにも現実に彼女達を連れ戻す。
「太陽のやろう死んだフリをしていたって事かい? ふざけたマネを…」
「兄さん! それにギィーラ殿、ご無事でしたか!」
ギィが憤慨する中、体の砂を払うレフティスは二人の無事を安心し、薄くなった砂煙の中からライツァー駆け寄り状況の確認をする
「レフティス参謀… ! あいつ等はどうした!?」
「向こうです! 無事とは言いがたいですが、皆健在です。」
ギィがそう焦るって質問すると、レフティスが指を差した先にニーダとヒッキー、それにギャシャールもいる。とりあえず皆は皆の健在を知り安堵する。
「怖かったニダ~! 」
「本当の恐怖はこれからじゃない? この竜巻は絶対あいつがつくったもんだよ。」
ギャシャールは強く震えるヒッキーを介抱し、腰が抜けて立てないニーダに追い討ちをかけるようにつぶやく。太陽から突風が発生したのだから、奴もまだ戦うことができるという事だ。
「どうかしたのか!?」
「ヒッキーの様子がおかしいニダ! 何か尋常じゃないって言うか…」
「世話かけさせやがって… 大方腰でも抜けたか、ちびっちまったかのどっちかだろう?」
遠目に見ていると分からないが、近づいてみると確かにヒッキーの様子がおかしい。
「兄さん… 奴は一体何故こんなことを?」
ヒッキーのことはギィやギャシャールに任せて、レフティスは瓦礫にもたれ掛かった意識のない太陽を注意深く観察する。
死んだフリ、ではないが… 狸寝入りをしているならいつ襲ってくるかも分からない。 「明け滅ぼし」は上空に顕在している事から、竜巻の原因は奴なのは間違いないのだが…
「分からん。 それに奴が自分の意思で行った事なのかも定かではない。もしや、あれに操られて クッ!!
おそらくは自分達を逃がさないためのコノ突風だが、なんにしても大掛かりだ。 外の様子は風のせいで全く見えないが、おそらくこの一帯は竜巻により壊滅しているに違いない
自分達の部下もおそらくは巻き込まれているに違いない。こんな事になるのならば、後退の指示を出しておけばよかったものだと悔しそうに歯を食いしばり自分を責める。
「物凄い風ニダ! あの職人石とかいう力なら是非ともどういう仕組みなのか知りたいニダ!」
ニーダは試しに発生している風の石を放り投げると、巻き込まれた石は粉々となり遥か上空へ消えていく。人が巻き込まれれば命はないだろう…
それを見て無邪気にはしゃぐニーダにギャシャールは小石を投げつける。
「一体、どうしたの? 」
「あいつは僕達を皆殺しにするつもりなんだ! ギャシャール!」
「だから、あいつって誰…?」
先ほどギィが言っていたが、太陽のアレは相手を欺くために気絶をしたのではない。明らかにアレで意識を失っていたはずなのだ。
しかし、それでも殺気が止まらないのは間違いなく新たに敵意を持つものがあの場に現れたという事だ。
「災イヲ…」
皆の頭に突如その言葉が聞こえてくると、静かに腕を上げる太陽は掌に空気を収束しそれをヒッキーに向かって放つ
「死ネ。」
その瞬間突風が発生し、周りをなぎ倒していく。
「ラクトロン!エイフ! 避けろ!!」
「え?」
「こういうことか…!」
突風は間違いなくヒッキーとギャシャールの狙っている。
太陽から放たれた風は地面の岩ごとめくりあげて高速で彼らに降りかかる。恐怖に引きつるヒッキーの背中の襟を掴むとギャシャールは強引に引っ張り避けようとする。
風によって舞い上がりバランスを崩したギャシャールは、受け身が取れず崩れ落ちた瓦礫の壁に叩きつけられる。
「物凄い突風…! 避けなきゃ、後ろの竜巻で
ミンチになってたたところ… ゴホッ!」
背中から叩きつけられ、体に走る鈍い痛みをこらえる。鋭い痛みが発生する箇所を押さえ強く咳き込む
(やばい… 今の肋骨にひびが入ったかも…)
「ギャシャール!?大丈夫?傷が…!」
幸いにも打ち所の良かったヒッキーは、軽く膝を擦る程度ですんだが彼女の
ダメージは戦闘の素人であるヒッキーから見ても大きい事が分かる。
脇に手を当て何度もむせるギャシャールの介抱に向かおうとするが、その二人に立て続けに風による攻撃が放たれる
「逃シハセン!」
際ほど以上とも思える突風を目の当たりにしたヒッキーは、恐怖のためか足がすくみその場に立ち尽くしてしまう。
「!」
「うわあ!」
彼女は横からヒッキーにタックルを食らわせ風の延長線上から無理矢理ヒッキーをどかすが、代わりにそのまま風に飲み込まれていく
「ギャシャール!」
突風に巻き込まれ砂塵が巻き上がる中、彼女の名前を叫ぶヒッキー。 放たれた突風は竜巻に当たり打ち消されるがその風の中に彼女の姿はない。
「死んだフリから
不意打ちなんて、ふざけた事してんじゃないよ!」
第六感が働きヤバイと本能的に察知したギィは。意表をつくために太陽に温存していた「流星手戟」を今ここで渾身の力を込めて太陽に放つ
「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!! バーカ!!」
「ッチ!攻撃が弾かれた!?」
舌を出して狂ったように笑い出す太陽は風を使って、無理矢理投げられた武器の軌道をそらすと罵声と共に反撃を繰り出す。それを避けて投げた「流星手戟」を手元に引き戻すと、先ほどまでとは別人の様に理性のなくなった太陽に驚く
「ハァァ!!」
果敢にも槍を従えて突撃するライツァーだが、再び風が巻き起こり砂塵を巻き上げる。
「邪魔!! 邪魔ァァァァァ!!」
自身の体を爪で自傷する太陽は叫び声と共に全方にかまいたちを発生させて、間合いを詰めようとしたライツァーは舌打ちをしながら退く。
「殺スアアアアアアァァァァァ!!」
完全に我を忘れて、だれもいない方向に風を放ちヒステリックに雄叫びを上げる太陽にもはや誰も近づけない。
自身の発した風によって発生した砂塵で視界が遮られていくと、苛立ったように再び叫ぶ。
「「忌ミ子」ハ何処ダアアアァァァ!? 時ヲ経テナオ!!」
「意味不明なんだよ!黙りな!」
再度の攻撃を繰り出して、ギィは何とか狂乱状態の太陽にダメージを与えようとするが先ほどと同じく風により遮られ体に届く気配が全くない。
「吹キ飛べ!」
暴風によってライツァーとギィは吹き飛ばされ、再び砂塵巻き上がる
「皆! …どうしよう …っ!」
砂煙が濃く、寸分先しか見えないこの状況で仲間を探すため目を凝らしているヒッキーに人影が近づいてくる
「貴様ヲ… 我ラガ…」
「う… あああ…」
悪い事にもその砂煙の陰の正体は太陽であった。
(僕は死ぬのか? ここで…)
太陽は狂喜して何か叫んでいるが、死の恐怖で自失状態になったヒッキーには何も聞こえない。皆どこかに行ってしまった… もう自分助けてくれるものは誰も居ない…
「サア、死ネ!呪ワレシ…!」
今まさに攻撃が放たれようとする瞬間、ゴスン!っと太陽の頭から鈍い音を響くと太陽は頭を押さえ地面に跪く。
「ううう… やったニカ?」
その後ろには、石を持ったニーダが立っていた。
隙の出来たその内に涙目になりながらも攻撃を加え、見事ダメージを与える事ができたニーダだが、太陽の意識を断ち切るには至らず、憤怒に顔をゆがめる太陽は先ほどと同様に風を両手に溜めはじめる
「コロス。 …オ前カラ殺シテヤル!」
「ご、ごめんなさいいいい!!」
バタバタとその場から逃げ出したニーダへ太陽はその背中へ向かって渾身の一撃を放とうとする。
「や、やめろよおおおおお!!」
ニーダの悲鳴?に自分を取り戻したヒッキーは背中から攻撃しようとする太陽に力の限り叫ぶ。
「ヒィ!?「忌ミ子」メ! 目覚メサセテタマルカ!」
ヒッキーのその叫びに身をすくませる太陽は、先ほどの憤怒の表情とは打って変わって、逃げる彼を捨て置きヒッキーに恐怖を感じたように顔を引きつらせる。
再び標的を変え、ニーダを助けようと叫んだヒッキーへ風の一撃を放とうとするも…
ゴキン! っと再び後頭部を岩で強打される。さっき逃げたはずのニーダが新しい獲物を携え、再度に攻撃を加えたのだ
「コノ…」
「太陽め! こ、こっちを向け!」
「「忌ミ子」! 今コソオ前ヲ…」
ゴチキン!
「オゴオオ…! 貴様ラアアァァァ… 」
「太陽! 僕はここだぞ!!」
「こうなったらヤケクソだニダ! 喰らえコンチクショ! コンチクショ!」
ゴン!ガン!ゲン!
石による攻撃で確実にダメージを与えていく二人。
しかし、流石に太陽もこれ以上の攻撃を受けたくないのかヒッキーのことは捨て置き、先ほどから後頭部へ集中攻撃を食らわせてくるニーダに睨みつけ服を掴んで逃げられなくする。
「調子ニ乗ルナ!」
ヒッキーが何度も叫ぶが、標的を完璧にニーダに変えた太陽はニーダを吹き飛ばさんと逃げられないコノ状況で風の一撃を加えようとする。
「ウリが調子に乗ってました! だから、まずは話し合いを…」
「グチャグチャニ… グアアア!」
突如悲鳴を上げて手を押さえると、風を集中するその手に向かって投げナイフが深く刺さり、突如の事に戸惑う。
「手癖の悪いのは、その手?」
ヒッキーはすかさずナイフが投げられてきた場所を見ると服がボロボロのギャシャールとレフティスが立っていた。
「助けてくれてありがとう、レフティス参謀」
「危ないところでした… しかし、もう動いて大丈夫なのですか?」
ナイフを引き抜き彼女を凝視し、ニーダの服を離すと、忌々しげにする太陽
「…グ ググ! 許サ…」
ギャシャールとレフティスに向かって攻撃を開始しようとした矢先に今度は鎖で絡めとられて動けなくなる。
「いいから!おとなしくしてろゴラァ!!」
「貴様等ァァァァァ! 邪魔ヲスルナアアアアア!!」
「今こそ覚悟せよ! ウオオオオオオオ!!!」
ギィのその言葉と同時に、砂塵を掻き分け瞬速で太陽に突撃するライツァーは、捨て身の一撃を喰らわせる
「ギャアアアアアア!」
深々と槍が突き刺さり鮮血滴るなか、断末魔の悲鳴と共に太陽はそのまま後ろに大の字に倒れる
「やったか? …!」
太陽が倒れてすぐに周りを囲う竜巻は消え、それに顕在していた明け滅ぼしもすでにどこかへ行ってしまっている。 完全勝利かと思ったのだが…
「あのこれって…」
突然辺りが暗くなり、空を見上げると竜巻によって巻き上げられた大小無数の石つぶてが落下をしてくる。頭に喰らえば即死するような大きさのものも数多く存在し、このままだと間違いなく押しつぶされる。
「なんという死亡フラグ… 皆コンクリートに叩きつけられた蛙の様に…」
「嫌だニダァァァァァ!!!」
石つぶてを見て半ばヤケクソ気味にギャシャールがつぶやくとニーダの叫びもむなしく、石の雨は無情にも彼らを押しつぶして行った
「うう… ウリたちは今頃、石つぶてで哀れなタンパク質の塊に成り果てたニダ… そのタンパク質は自然の浄化作用によって自然へ帰り、きっと数年後にはウリ達の亡骸の上には大きな大樹が緑散漫と咲き誇って、やがて来る世界の滅亡を左右する大いなる聖樹として
古よりも語られる戦争を終焉させたとして人々によって永遠に崇められ… ウフフフ、アハハハ …痛ぁ!」
「とりあえず、落ち着け!」
「…あれ? ウリは確か研究所で研究中だった筈ニダよ。 何でここに居るニダ。」
「ああ、まだ正気に戻らないみたいだね。 もう一発叩きゃあ直るかな?」
「ウリ達は今、太陽を倒す事に成功したニダ! が結局は発生した竜巻によって巻き上げられた巨石に叩き潰されそうになってえらい事になろうとしてるニダ! 思い出したから叩くのはやめてくださいニダ!」
支離滅裂、現実逃避、誇大妄想のトリプルリーチ展開中のニーダもようやくギィの言葉で正気に戻る。
「岩がすべてこちらを避けた…?」
「風が吹いて… そして…」
ヒッキーやニーダの様に目をつぶっていては分からないが、落石から目を離さなかったほかの4人は確かに上空にあった岩は、猛突風で自分達を避けていったが見えていた。
「僕達ってまだ生きてるの?」
ヒッキーはニーダとギィのやり取りを聞いて、固くつぶっていた目を
ゆっくりと開き辺りの様子をおそるおそる確認する。
目に映るのは、竜巻によって吹き飛ばされ、自分の居た場所以外を除いては全て跡形もなくなったカリアインの大きな遺跡。そして、落岩の難を逃れた5人の姿だ。
「ヒッキー… 死人に口は無いよ…」
一番手前に居た彼女は壁に叩きつけられた時に痛めた脇を押さえ、静かにヒッキーにそう諭す。
「まあ、少なくとも皆仲良くあの世って訳じゃないみたいだね。」
いくら自分でもあの岩を避ける事などできるはずが無い。ギィは今回ばかりはやばかったとため息をこぼす。
「ああ神様は居たニダ! これはきっと哀れなウリを救うために神が奇跡を起こしてくれたニダね… 感謝感激ニダ…」
「あれ? まだ世迷い言いってる。 まったく、こりゃあもう一発拳骨だねぇ」
「ギィは色々疲れたでしょ? 今度は僕が代わりにやってあげるよ?」
「ちょ、ちょっと! ソレってウリを殴るための口実じゃないニダ!? 勘弁して欲しいニダ。」
へっぴり腰で後ずさりするニーダを見て、自然と皆から笑い声がきこえて来る。 ああ… これで終わったんだ全部… とりあえず、太陽を倒す事が出来たんだ。 これで反乱軍の動きも大きく鈍るはず…
「大丈夫…か…? お前ら…」
「え? うわあ!」
聞きなれない声の主へ顔を向けるとそこには、ライツァーの一撃で致命傷を負った太陽が血を流し横たわっていた。
慌ててヒッキーは太陽から離れて、情けないのを承知でギャシャールの後ろに隠れる。自分に執着して殺そうとした太陽が再び目を覚ましたのだ。一目散に逃げる。
「へへへ… 死に底無いの… 俺でも… あん位の風は起こせるんだ…」
尊大な口調はいつの間にか無くなり、今はフランクな… もっと庶民的なものに変わっている。 その変化にコノ場の全員が疑問符を出し、太陽を心境の変化に戸惑う。
「貴様まだ息があったのか。」
「兄さん! 止めてください!!」
まだ息のある太陽へ武器を向け、とどめを刺そうとするライツァーをレフティスが慌てて静止し、ギィが呆れた顔をして諌める
「レフティス参謀の言う通りさ。 落ち着きなって。瀕死の相手に鼻息あげなくても大丈夫だっての もっと冷静になりな。 それとも、あんた戦うだけしか脳がないのかい? 」
「まさか、貴様にそのような事を言われるとはな。 だが…」
「ウリからもお願いするニダ。 太陽の話を聞いてあげて欲しいニダ。」
馬鹿かこいつらは? っと一瞬言葉に出しそうになったライツァーはそれを内に引っこめる。あんなもの、自分達を油断させるための芝居かもしれない。
岩で押しつぶさなかったのも、自分の手で我らを討ち取り武勲を上げる為だけかもしれない行動かもしれないのに…
「「明け滅ぼし」に… おれは… 操られていたのか? くそ…」
レフティスとギィの二人に阻まれるライツァーを尻目に、ニーダがゆっくりと太陽のそばに座るともう焦点の定まっていない彼に静かに言葉をかける
「正気に戻って何よりニダ…。」
「…」
強面で睨みつけるライツァーは依然として武器をおさめようとしない。こいつのおかげで落石からは助けられたが、竜巻で部下が多く巻き込まれた可能性がある… それを考えると怒りがなかなかおさまらない。
「殺…してくれも… 構わん もう、助からん…」
「ちっ…」
しかし太陽の言葉を聞いて武器を下ろし、背中を向けると、結局は非情に徹し切れず感情に流される己への不甲斐なさから、自分に対して舌打ちをする。
討伐のはずが、その目標に情けをかけたのだ… 軍将としてあってはならない事である。
「本当は死に行く人に尋問なんて、したくないニダ… でも、それでも教えて欲しいニダ。 太陽さんが助けてくれたニダ?」
「助けたなんてもんじゃ… ねぇ… ただ、迷惑かけたから… その侘びのつもりだ…」
「なんで、太陽さんは職人石を持ってるニダ?操られてたってどういう事ニダ?」
「職人石? この石のこと…か? 俺にもよく分からない… ただ… 気がついたら家に… そしたら声が聞こえて… 石の力で… 皆を救え、助けてやれって… グフッ… はぁはぁ…」
太陽は苦しそうに咳き込み血をゴホゴホと吐き出す。 大量の吐血がもう彼の命が灯火である事をうかがわせる。
「…」
かなり無理をして喋っていてくれたのだろう、吐血の苦しみから苦悶する太陽を目にしてこれ以上質問が出来なくなる
「ニーダ。」
後ろからギィの声が聞こえ、その声に対してニーダは振り返り静かにうなずく。
「うんニダ。 あと、石で殴られて痛かったニダね… 許して欲しいニダ」
「ごめんさい。太陽さん。」
一言、ヒッキーとニーダは謝罪をして太陽から一歩後ろに下がる。
「はは… 殺そうとした相手に「ごめん」か… もっと… 罵倒してくれて… 構わ…ない。 俺のせいで反乱軍が… ちくしょう…」
太陽という存在を得た事で反乱軍の士気が高まり、結果戦火を広げる事になってしまった。 それが皆を助けたいと思った彼の思いとは全く逆の結果になった。
自身のあまりの愚かしさに涙する太陽は、もうほとんど動かないはずの指で地面を引っかく。
「反乱軍はこちらで説得を試みます。 これ以上、戦いが起きないように此方からも妥協案を視野に入れた話し合いを考えたい。」
ニーダとは入れ替わりに太陽の横にたたずむと耳元でそう提案をする。
「お前は… 確か… 」
太陽は朦朧とする中でレフティスを見ると彼は強い決意の表情で自分の横に立っていた。 戦う前に彼はレナド大将軍の言葉を堅守して、自分相手にも全く引こうとはしなかった。
それが半ばテロリストの自分達に妥協案を持ちかけてくれるなんて…
「レフティ…! 」
「私は本気です。」
怒鳴りつけるライツァーを遮るように静かに力強く言い切るレフティスに皆は驚く。 普段の態度からは考えれば当然の事だ。
一方自分が何度も反対したのにこの戦いに無理矢理ついてきたくらいのレフティスだ。普段が素直な分、こう言う時の強情さなら筋金入りなのをライツァーは知っている。
額に手を当てたライツァーは諦めのため息をつく
「はぁ… もう言い出したら聞かんか… レナド大将軍を説得するのは並大抵の事ではないのだぞ?」
「もともとは、同じハニャンに居た民です。きっとレナド大将軍も分かってくださいます。 私一人では説得が無理でも二人なら… 」
「…俺も巻き込むつもりか? 停戦など、私が進言できる範囲を超えている。 いくらなんでも…」
レフティスの提案は半ば馬鹿げている。 一国の君主に意見するというのははっきり言って、自殺行為だ。 容赦の無いあの方なら尚更ではないのか? 自分を巻き込んでもらっては困る…
「俺からも頼む… そんな義理はないのは分かってる… でも…」
「ライツァー将」
「ライツァーさん!」
「こういうときは自分に正直になるニダよ、ライツァー将!」
「上に立つ者として責任があるのも分かる。でもね… 今は男を見せるときじゃないのかい? ライツァー将殿。」
太陽に続いて他の4人も懸命に説得をする。
「全くお前らは、他人事だと思って…」
無責任な連中だ… しかし、自分だって闘いを望んでるわけではない。 武器を持ち戦いを終わせるため力だが、武器を下ろして戦いが終わるのなら、そのほうが確かにこの国のためになる。
多少言いくるめられた気がしなくとも無いが、内に目覚めた停戦を望む気持ち… ニーダの言うとおりに今は素直に受け入れる事にしよう。
「一時の感情に流されている程度ではまだまだ未熟者だな俺は… 負けだ。」
「じゃあ!」
「太陽、その頼み しかと心得た。」
「ありがとう兄さん!」
「止めを刺さなかった時点で、迷いがあった。 ふん… 未熟者なら未熟者らしく馬鹿げた事この提案を受け入れよう」
武器をしまいこみ腕を組むと太陽に背を向けライツァーはそう発言する。
「へぇ… カッコイイじゃないかい。そっちの方が普段のすかしている時より数倍イイよ。」
「言ってろ。」
ギィのその言葉に多少のテレを感じているのか、ぶっきらぼうにのそう応えるライツァー。
「よかった… 良かったね… 太陽さんのおかげで皆がこれ以上傷つかずにすむんだよ?」
「ヒッキー…」
「ありがとうよう… これで… 安心して…」
「だ~め、だめだめだめ、だ~めだめ!! 」
静寂の中で太陽は静かに目を閉じようとする刹那、けたたましい大声が聞こえてくる。
「ブラボー! エクセレント! こうして、ハニャンの選ばれし勇者たちは無事にラスボスを撃破する事が出来ました!」
「お前は!」
「その声… 「あの時」の…? まさか、お前が…!」
その大声を発するその男は、奇妙に積みあがった岩の上に立ち、仰ぐように空を見上げていた。
太陽はその声を聞いて、顔色を変えている。 太陽が言う「あの時」って言うのはいったい何のことだ?
「しかし、何だ!? 何でそいつが生きているの? ラスボスが改心して、めでたしめでたし… 何てお話はいらな~い」
「通路で血だらけになってた奴ニダね! 生きてたニカ!?」
突然の思っても見なかった登場者に、皆驚きを隠せなかった。あの竜巻に巻き込まれたと思っていたのに…
「このゲームの企画者としてはそんなエンドは望んでないわけ! 悪い魔王はぶち殺されてこそ皆がすっきりするモンだぜ …というわけで、ライツァー! 悪い魔王をザクザクッと切り刻んであげなさぁい!」
血を流し横たわる太陽を指差しながら、そいつはライツァーに愉快そうに命令する。
太陽が正気を取り戻し、反乱を起こしたくて起こしたわけでもないと話した矢先のその発言に、皆の治まっていた怒りに火がつく。
「貴様は!?」
「ニーダ以上に空気読めない奴め… 失せろ一生童貞。」
「オウ! 皆武器、取り出して… もしかして、怒らせちゃった…? 何が気に入らなかったのかな、ん~?」
理由を察しているにもかかわらず、なおもそうやって挑発するそいつはそう言って考えた素振りを見せる。
「そうか! イライラしてる原因が分かった! そいつが死んでないからだ… はい、これな~んだ?」
「その悪趣味なスイッチ… たしか遺跡の入り口で! 何をするつもりなんだ!」
それは遺跡の入り口で太陽に、外の異常を知らせると言うスイッチだ。 それを脅しにギャシャールに如何わしい事をしようとして大逆襲にあったが… そのスイッチを何故今ここで?
困惑するヒッキーは声に出してその理由を問い詰める。
「正解はこちら! この髑髏スイッチをポチッとな 警告! ラスボスの半径5m以内から離れなさい! アハハハッハハ! 」
「!」
スイッチを押す刹那に、太陽はハッと顔色を変える。 そして、自身の今ある力を振り絞り職人石の力で突風を巻き起こす。
「うわッ!」 「太陽さん!」
体が浮き上がり、太陽のそばに居た皆は吹き飛ばされると、その太陽の真意を確かめるべく立ち上がる
「皆を頼む…」
そう一言。 その瞬間あたり太陽の居たその場所一面に爆発が起き黒煙を上げる。
爆発の爆風で職人石が吹き飛び、奇妙にも男の手前にコトンと落ちる。
「なんだよ~ 太陽と一緒に巻き込まれて死んでれば気持ちよかったのにな…」
職人石を拾い上げると深いため息を発して男は残念そうにつぶやく。
「そのゴミじゃあ、この力を完璧に制御できなかったみたいだね。 まったくもって、拍子抜け… 爆死がお似合いだよ~ん。」
「あ… ああ…」
「てめえ!」
風を起こしたのは自分達を逃がすためだった… 彼は最後の最後まで反乱を起こした人たちのことを案じていた。それなのにこの男は…!
ギィが鋭く睨みつけて威嚇する。
「貴様… さっき企画者といっていたな。 お前がこのたびの反乱を先導した張本人か?」
ライツァーは冷静そうに見えるが、その声の怒張は今までに無い。 太陽に武器を向けて問いただす。
男はそれも全く意に返さぬ様子で、いきなり片言となりながら説明する
「なかなか りかいが はやい。
おおくの モノたちが ヒーローに なれずに きえていきました。
しすべき うんめいをせおった ちっぽけな のうみんが ひっしに
いきぬいていく すがたは わたしさえも かんどうさせるものが ありました…」
「だから このかんどうを あたえてくれた のうみんたちに
おれいがしたい! だから どんなねがいをも かなえてあげようと したのです」
「貴様がたぶらかしたのか…?狡猾な…!」
「それが どうかしましたか? しょせん は ごみ でしょ?」
レフティスも声を張り上げるが、愉快そうにそう聞き返す。
「いいかげんにしろよ… 動けなくなるまでそのツラぶん殴ってやろうか…?」
すでに何を言っても男を斬るつもりでいるギィは、男へ向かって歩き出す。
「やれやれ… ゲームの きかくしゃに ケンカをうるとは‥‥ どこまでも たのしい ひとたちだ!どうしても やる つもりですね これも いきものの…」
「うるさい! 太陽さんは… ゴミなんかじゃない!」
太陽のあまりにも無残な死に様に、ヒッキーも黙っていられなかった。しかし、男から馬鹿した返事が帰ってくる
「ん~ ヒッキー君ってゴミの事を今まで「太陽」、「太陽」呼び捨てしてたのに、改心したらいきなり「さん」付け? まったく、調子がいいな~」
「許さないぞお前! このぉ!」
男の悪びれないその態度に居ても立ってもいられなかったヒッキーは、近くにある石をを男に向かって全力で投げぬく。
「痛っ… おい、なんだよ? ちょっと「成功作」だからって調子に乗るなよ… 骨だけにしてやろうか?」
「うげげ… 何あれ!! 気持ち悪いニダ!!」
石が顔面を捉え、それにより怒る男は手を差し出す。 するとそこから、毒々しい斑点のある緑の芋虫がわきあがるように這い出してくる。
その様子に嫌悪したニーダは堪らず叫ぶ。
「…せっかく面白おかしく戦況を混乱させているのに、お前らがゴミを倒したせいで全部、苦労が台無しになりました~ それなのに何? なんでお前がそんなに怒ってんの? 馬鹿なの?死ぬの?」
「許さないぞ! 」
他人にたいしてのここまでの怒りをもったのは初めてだ。 居ても立ってもいられずにヒッキーは男へ近づいていく
「ヒッキー! 落ち着いて! うかつに近づくのは危険だよ!」
「そ、そうニダ。 コイツ、めちゃくちゃキモイニダ!!」
「でも、こいつは太陽さんを…!」
感情的になり息を荒げるヒッキーを二人は止める。 彼ではあの正体不明の力を持つあの男に殺されるのがオチだ。
「…や~めた、やめた。 面倒くさい。やっぱり逃げるわ。 お腹がね… お腹が痛くなったから… コノ喧嘩はまた今度に!」
自分に近づいてくるヒッキーを見て、好戦的な態度から一変して、手のひらを返してお腹を押さえだして、逃げようとする。
「逃げる気か!」
「おまえ、ディメスキンって奴だろ?」
逃げようとする男を引き止めるようにギィがその名前を呼ぶと、ピクリと反応をしめすディメスキンと呼ばれるその男。
「気品溢れるその名前を何でお前が知ってるの!?」
「あたいが戦った男がつぶやいてた… もしかしたらと思ったが、あんただったかい。」
「そんな超カッコ良い名前なんて知らない、知らな~い! 俺ちゃんの名前はドウミテモ=ガイジン、デース!」
ゲラゲラ笑い出してバタバタと手足を動かす。 おそらくは自分が面白い事を言ったと思って、自分の冗談に自分でうけているようだ。
「貴様と話していると脳が溶けそうだ…!」
「寒いんだよ、蛆虫! これでも喰え!」
先ほどからふざけとおしの、その男にとうとう我慢が出来なくなったギャシャールは、手に持った投げナイフをディメスキンに放つ。
放たれたそのナイフを何処からともなく取り出したハリセンで2発、「パン、パン」と軽快な音と共に器用に弾き飛ばす。
しかし、残りの一本はハリセンをすり抜けてその男の脳天を捉える。
「ギャアアアアアアアアア!」
「ナイス、ギャシャール!」
男の絶叫と共にザクリと小気味良い音を響かせ、突き刺さるナイフ。 どうあっての致命傷のはず… ギィも、ガッツポーズを浮かべるが…
「そして痛みは快楽に♪」
絶叫を上げた男は、何事もなかったかのようにグジョリと突き刺さったナイフを抜き取り、あろう事に軽口まで叩いている。
「凡乳ちゃん… 刃物はまだ早いって教えてもらわなかった? ちなみに蛆虫じゃないんよ、この子達は…」
脳天を捉えたはずのナイフには、先ほど男が生み出したと思われる芋虫が突き刺さっている… ディメスキンはその芋虫を放り投げるとナイフ共々、跡形もなく溶けてなくなる。
「ハリセン如きで投げナイフを… それに芋虫?」
「アレが邪魔して、投げナイフが刺さらなかったのか?」
奇怪なのその技を見て固まっていると、巨大な鷹が姿を現す。 あれはシレモンで飼ってた鷹だ!?
「アハハハハハハ! じゃあね「成功作」と愉快な仲間達! 次に遭うときはゼッタイに痛い目に合わしてあげちゃうよん! バイバーイ!」
男は放たれた投げナイフや流星手戟をひらりとかわすと急使の鷹に乗ってあっという間に消えていった…
「くそ! なんなんだよ! 死ぬときくらいなんでそっとしてあげないんだよ…」
「あの男、ゆるせん…」
「…」
「もうここにはする事とは無くなった。 シレモンへ帰ろうぞ…」
ライツァーが笛を吹くとしばらくして兵士達が廃墟から簀巻きにされた敵を抱えて続々と顔を出す。
突風と瓦礫による隊員の被害報告を受け、ライツァーは勝鬨を上げると兵士達は一斉に雄叫びを上げ捉えた敵を従えて王都シレモンへ帰ることとなった。
「…」
「ヒッキー。 もう行こう。」
「うん。」
太陽のその爆発の跡の近くで無言で立っていたヒッキーに、ギャシャールはそういう。
ヒッキーは静かに頷きライツァーの元へ戻っていった。
最終更新:2009年05月03日 01:16