仕返しの為のリコールレイション
279 名前:名無しオンライン 投稿日:2007/07/09(月) 02:38:43.81 2h4bUVnl
ビスク西の路地裏に、ボロボロの服をまとったもに子がうずくまっている。
今では見る影も無いがこのもに子はそこそこ名の知れた鍛冶屋だったのだ。
「3次MINシップ装備とオーアをつけているといい作品が作りやすいもに!」
「だけど召喚魔法や魔法熟練をあげるのは大変もに」
「
時の石にスキルをつめたものを売ってもらえば一瞬もに!」
彼女はあまり友人の多いタイプではなかったが、
この友人には特別の信頼を置いていた。
親友から勧められた彼女は決心し、
コツコツと貯めたお金を全てはたいて時の石を買う契約を結んだ。
取引当日。彼女は指定されたビスク東で大金を持って待っていた。
気がついた時には全てお金はなくなっていた。
何度も相手に謝り、ヨロヨロと帰路についた。
280 名前:名無しオンライン 投稿日:2007/07/09(月) 02:39:25.31 2h4bUVnl
事件から数日経ったある日、彼女は人気のない通路で誰かが話している声を聞いた。
「これがあんたの分け前もに」
「ひい、ふう、・・あんたも悪よのう、もに」
物陰から覗いた彼女は驚いた。
先日の取引相手と友人が大金の受け渡しをしているのだ。
「フフン、あの鍛冶屋がかなり前からシコシコ金を貯めてたのは知ってたもに」
「銀行からお金を出させる方法を考えるのは苦労したもに」
「時間をかけて仕込んだだけの成果は十分出たもにね」
「まったく、毎度あんたの外道っぷりには反吐が出るもに!」
「それほどでも、もに!」
- 絶望した彼女は採掘にも力が入らず、物も作れなくなってしまった。
露店をしなくなり、次第に忘れ去られていった。
こうして廃人同然になった彼女は食べ物を買うことも出来ず、
ひとり路地裏で死を待っていたのだ。
281 名前:名無しオンライン 投稿日:2007/07/09(月) 02:40:26.30 2h4bUVnl
- 誰かの話し声が聞こえる。たまにビスクの情勢を語っているあの二人だろう。
彼女にはノアストーンだとかイルミナとアクセルの確執だとか、
そんな話はどうでもよかった。・・が、一応耳は傾けていた。
「・・処分場、って知ってるか?」
「聞いたことはあるけど・・でもただの噂でしょ?」
「いや、ガードたちが密かに話しているのを聞いた奴がいるらしい」
「・・。」
「なんでも横暴なエルモニーを捕獲しては『処分』して肉塊にしてる施設なんだそうだ」
「リコールレイションで呼び出される肉はそこから来てるって噂だ」
「・・横暴って、例えばどんな?」
「そうだな・・所謂『貢がせ』とか『詐欺師』とか・・か?」
詐欺師・・!
とうの昔に諦めていた感情だ。
あのエルモニーに復讐をしてやる。
猛烈な勢いでヘビー弾を作っては売り、その金を全てノアダストに変えた。
そして彼女は辺境の地で一心不乱にリコールレイションを唱え始めたのだ。
朝も、夜も、休むことも無く詠唱を続ける。
彼女の後ろには物凄い量の謎肉が積み上がっていった。
282 名前:名無しオンライン 投稿日:2007/07/09(月) 02:41:03.07 2h4bUVnl
処分場では想像を遥かに越えた謎肉の消費に管理者が困惑していた。
「・・素体が足りなさ過ぎる、このままでは供給がストップしてしまう」
そして、職員たちは『消毒』活動を強化した。
次々と御縄にかかるエルモニーたち。
謂れのない理由で捕らえられ、『処分』されるものも居た。
ギルドの情報網からの報告で、シェル・レランのマスター、シレーナはこの状況を知っていた。
「もし詠唱者の存在が公になれば、真似をして謎肉を召喚するものが増えるかもしれません」
「なんとしてでも見つけ出して葬り去りなさい」
もに子は詠唱を続けていた。
最早いつ果ててもおかしくない。
肉体を凌駕した精神のみでもっているといった風だ。
283 名前:名無しオンライン 投稿日:2007/07/09(月) 02:42:10.03 2h4bUVnl
「すごいよな、最近の『消毒』」
「ああ・・ちょっとやりすぎじゃないかって感じだけどな」
「そうそう、ついにあの詐欺師が処分場行きになったらしいぜ」
「へえ・・って、どんな奴だっけ」
「時の石で詐欺をしたりしてた奴だね」
「狙った奴と仲良くなって油断させたりする非道な奴だったってさ」
「ああ、なんか友達に裏切られた!とか言ってた鍛冶屋が居たけど本当だったのか」
ああ、やったんだ。
復讐を果たしたんだ。
もう彼女は詠唱をやめていた。
そして、その場で倒れこんだ。
厨房服を着た戦闘員が数名やってくる。
最終更新:2007年08月14日 20:39