豆太郎その3 豆太郎ともに子
名無しオンライン sage 2006/07/14(金) 10:02:39.66 ID:iCFvhLUL
あぁ今日も品物が売れ残ってしまう、
日が傾き一面オレンジ色に染まるビスク西、私は無理やり着せられたスイムスーツ姿でソワソワと焦りだす、
彼の元で露店の売り子をさせられ1週間、今日こそは全部売り切れると思っていたけれど・・・
地面に並べられた品物はあとバナミル10本と揚げパン3つ
あの人が来るまでに誰か買って!私は必死に声を上げ客を呼び止めるが人々は通り過ぎていく。
ここ一週間慣れない食べ物屋の売り子に四苦八苦していた。
最初の2~3日は酷い有様で、商品の殆どが手付かず。
手持ちにモニコン受けする服が無いのでとりあえず下着姿で売れ、
と服を取り上げられ下着のまま人通りの多いビスク西に放り出された事も原因の一つだった、
余りの恥かしさに声がだせず、まともに接客できない、
折角買ってくれそうなお客さんがいても応対が出来ず買ってもらえなかったこともあった。
そして極めつけは自動飲食で品物に手を付けてしまったこと、何とか誤魔化そうとした物の
売上と売れ残りの数が違うと指摘されあっさりバレてしまった。
それに比べればここ数日はかなりマシになってきてはいる。
元々数百から千単位の商品の量、それを数十単位まで売り切れば普通の露店なら上出来だと思う、
しかし私の場合はそうはいかない、あくまで彼の命令は”完売”少しでも売れ残れば待っているのは一晩中続く酷い虐待。
幸いにも私の扱っている品物の価格は良心的だ、むしろ相場より安めと言っても良い。
私が露店を開くビスク西の食べ物屋付近では私と同じ境遇であろうもにおくんやもに子ちゃんが露店をさせられていた、
誰も買いそうも無い品物を常識外れの高額で露店に並べる子、
謎肉謎水を不眠不休で一晩中詠唱させつづけ昼間はそれを露店で売る屈辱的なことをさせられている子
そういった子達が必死に、中には泣きながら声を張り上げ客を呼び止めている。
彼がお金儲けの期待を私にかけている点は、そういう子達に比べれば私はまだ幸せなのかも知れない、
しかしこうやって売れ残る現実、1日かけても売り切れない商品の量、
むしろお金儲けと虐待を両立させるためのこの膨大な品物の量なのではないか?私はそう思うようになっていた。
そんなこんなでここ一週間はまさに死ぬ思いだった・・・
ただ叱れるだけならばまだ我慢できる、しかし彼のお仕置きは執拗にして陰湿、私を虐める事を楽しんでいる。
彼は私を殺そうとは決してしない、逆にいえば死ななければなんだってする、
どんなに酷い重傷を負おうがHAで元通り痣すら残らないからだ、だから私に対するお仕置きは何時も絶命寸前まで続く・・・
最初この島に来た時には、大陸では見た事も無い高度な魔法技術がこんなにも身近にあることに感動すらした、
しかし今ではその身近さが恨めしくて仕方ない、魔法さえこんな身近に無ければ私がここまで虐待されることも、
エルモニーを謎肉や謎水にして召還させ供給させようなどという計画も生まれてこなかったのだから。
そんな虐待の恐怖、自分の境遇の不幸さ、世の中に対する恨みつらみが頭の中をグルグル巡りながら私は焦りをつのらせて行った。
私の焦りに気づいたのか
豆太郎も必死にお客さんを呼び止めようとグェグェと飛び跳ねている、
しかしそんな豆太郎が急に殺気立った、あぁ時間切れだ・・・。
ここ数日の彼の私に対する暴行を一部始終目の当たりにしている豆太郎は彼をすっかり敵視するようになっていた、
今にも襲いかかろうとする豆太郎を何とか制止して私は彼を迎える。
名無しオンライン sage 2006/07/14(金) 10:04:00.46 ID:iCFvhLUL
「今日も売れ残ったのか糞もにこ、ふざけやがって。」
口調とは裏腹に彼の表情は明るい、きっと私の暗く沈んだ表情を見て喜んでいるのだろう。
「す、すみませんもに・・・で、でも今日はバナミル10本に揚げパン3つだけで後は全部売り切ったもに!」
あくまで昨日よりは売れ残りは少ないと言う成果を強調して許してもらおうとするが・・・
「だからどうした?糞もにこ」
冷たく言い放つ彼、やはり無駄だった。
私は重たい表情と手つきで後片付けを済ますと殺気立ち興奮する豆太郎をケイジに戻し彼につれられ帰宅の途につく。
帰宅すると今日の売上、売れ残った品物と交換に夕食のミニブレットとミニウォーターボトルを受け取る、
そして汚れるからと言う理由で着ていたスイムスーツを無理矢理脱がされ、下着姿で私は小部屋に閉じ込められた。
部屋に戻ると豆太郎をケイジから出し、二人で少ない食事を分けあう、
今日はどんな仕打ちを受けるのか…半分に割ったミニブレットの欠片を持つ手がガクガクと震える。
そんな私を心配したのだろう、豆太郎がパン切れを口に咥えながら私にすり寄ってきた。
「だ、大丈夫もに、心配は要らないからパンをお食べもに、豆太郎には痛いことは絶対させないもにから。」
明らかに不自然な引きつり笑いを浮かべ豆太郎を安心させようとするが、
頭の良い豆太郎はそんな私を見て一層心配そうな表情になり体をすり寄せてきた。
ガチャリ
そんな中重たい扉が開き彼が入ってくる
「もうメシは食ったか?そろそろお待ちかね、お仕置きの時間だ。」
まだ食事を貰って数分しかたっていいないのに彼が嬉しそうに笑いながら入ってくる
「ま、まだ食べてる最中ですもに、だからまだ・・・もにぃいいい!!!!」
1髪を捕まれそのまま放り投げられる私
手に持っていたパンと一緒に私の体も宙を舞い床に叩きつけられる。
「飯の時間はもう終わりだ、もに糞。」
床に倒れた私の顔を踏みつけると彼はそういった。
「も、もにぃぃぃぃ・・・許してくださいもに、許してくださいもに・・・」
体を打ち付けられ苦痛に耐えながらも必死に謝る私。
「一週間でいい加減気づけ、そんな謝罪の言葉は無意味な事を。」
そういいながら私の体を蹴ろうとした時だった
「グェー!」
彼の足に小さい影が飛び掛る、豆太郎だ!
豆太郎は私を蹴り飛ばそうとした彼の足に噛み付き離れ様とはしない
「ああああ!!!畜生が!離れろ!離れろ!」
悲鳴を上げて足から豆太郎を引き剥がそうとする彼、しかし豆太郎は離れない。
「やめるもにぃ、豆太郎!」
私が一番最初にペットにしたイクシオン、豆太郎。
長い間育て上げた豆太郎の強さは並のイクシオンとは比にならない、そんな豆太郎に噛まれ苦痛の表情を浮かべる彼。
このままでは豆太郎まで酷い目に合わされる、
しかし私の制止命令にも従おうとしない豆太郎、彼を噛む力は一層強まる。
名無しオンライン sage 2006/07/14(金) 10:04:55.69 ID:iCFvhLUL
「この魚人が!」
本気で痛そうな表情を浮かべながら彼は魔法を詠唱を始めた。
集中もそれなりにあるのだろうか、苦痛に顔を歪めながらも彼の詠唱は止まることは無い。
「カオスフレア!!!!!」
足に噛み付く豆太郎目掛け放たれるカオスフレア、至近距離だから出きる大技を食らい勢いよく吹っ飛ぶ豆太郎。
足から豆太郎が離れると彼はラピキャスを発動し素早くHAを唱え全快、
吹き飛び傷だらけになりながら、なおも向かって来る豆太郎目掛けメガバーストの詠唱を始めた、このままでは殺されてしまう!
「メガバースト!」
「止めて!!!!」
私は豆太郎と彼、両方に向かい叫び、間に入る形で豆太郎を抱くようにして庇う、放たれたメガバは私の背中に命中した。
「ぎゃあああああ!!!!」
巻き上がる爆炎、倒れこむ私。
豆太郎は突然の私の介入に驚いたのか倒れこむ私を見ながら立ちすくんでいる。
「ちっ!邪魔するんじゃねぇバカもにこ!」
彼は倒れこむ私の側で棒立ちになっている豆太郎に目掛けて間髪いれずに二発目のメガバの詠唱し始める。
「豆太郎は私の大切な家族で親友ですもに・・・どうか許して下さいもにぃ・・・」
力ない声で答える私、
「そんな危ないイクシオンを生かしておけるかよ!」
ラピキャスをかけている彼の詠唱は速い、このままでは豆太郎が・・・
「ま、豆太郎の事は謝ります、どんな・・・どんな罰でも私が受けますもに!」
今度は精一杯の声を張り上げて言う私、それを聞くと彼の詠唱は止んだ。
「とんだお人好しだな、反吐がでるぜ、そんなに自分が罰を受けたいって言うならお望み通りそうしてやる。」
彼はそう言うと倒れている私にHAをかけ回復させる。
HPが回復して何とか立ち上がる私に対して彼は豆太郎を攻撃しないようケイジ詰めておけと命令した。
「大丈夫もにぃ、心配しないで豆太郎はケイジに入って今日はもうお休み」
自分の仕出かしたことで大変な事になってしまったと分かっているのだろう、
私がケイジに入れようとしても中々入ろうとはしない豆太郎、
そんな豆太郎を何とかケイジの中に入れ、それを部屋の隅に置く。
「飼い主とペットの愛情物語か、お涙頂戴だな。」
何時ものように軽薄そうな笑いを浮かべそう言う彼を私はキッと睨みつける。
私は怒っていた、私は何をされても構わないでも豆太郎だけは!
吊り上った2顔を一層吊り上げる、彼に対して初めて見せる反抗の眼差し。
「おいおいそんなに怖い顔するなよ、
実はなお前達を見てたら気が変わった、お前と豆太郎の様に俺もお前と家族や親友の様に仲良くなりたいんだ。」
私は怒りの表情から一点呆気にとられる、彼から出た意外な言葉。
しかしそんな呆然とした私を何時ものように張り倒す彼、やはり嘘だったのか・・・
名無しオンライン sage 2006/07/14(金) 10:05:35.13 ID:iCFvhLUL
「何期待してるんだよもに糞、だがなお前と仲良くなりたいのは本当だ、ペットと飼い主としてな!
だからお前をテイムしてやる。」
彼はポイズン クラウドを私にかける。
「お前も豆太郎を瀕死になるまで散々痛めつけてからテイムしたんだろ?同じ事してやるよ!」
そして毒で青ざめている私にメガバーストを何度もぶつけだした。
頭を抱えしゃがみこみ必死に飛んでくる火の球に耐える私、
しかし放たれる火球は下着姿の私に当たると派手に燃え上がり私の皮膚を無残に焼いていく。
「あちぃもに!許してもに!お願い許してもに!熱い、熱いもにぃいい!!」
私は謝罪の言葉を必死に並べるが彼の詠唱は止まない。
「・・・許してもひゃぁっ!」
頭を抱えうずくまる私を下から蹴り上げる彼、吹っ飛び床を転がると私は仰向けになり彼と目が合った、
目が合うと彼は嫌らしい微笑みを浮かべ私の顔目掛けて火球を投げつけた。
「もぎゃああああ!!!!!」
投げつけられた火球は顔面に直撃する、そして顔全体を覆うように爆炎が湧き上がった。
今ので目をやられたのだろう、激痛と共に一気に視界が失われる。
HPはみるみる減り段々と意識が薄れていくのが分かった、
もうダメだ・・・後一発食らえば確実に死んでしまう、放っておいても毒のダメージで時間の問題だろう、
絶命を悟り床に倒れ込むとそのタイミングで彼の詠唱が止まった、そして素早くアンチトードが私に対して詠唱される。
「もう逆らいません・・・何でも言う事聞きますもに・・・だからゆる・・・して・・・も・・・に・・・」
私は全身黒焦げになりながら床にうずくまり、うなされるかの様に服従の言葉を呟き続けていた。
「ハハハ、これで俺とお前も家族で親友だな、これからよろしくなもに子!」
彼はわざわざマンカインドフェタライズの動作をすると笑いながらそう言った。
「そうだ俺、早くお前と仲良くなりたいから忠誠度を上げてやるよ。」
そういって彼は今日売れ残ったバナミルと揚げパンを隣の部屋からもってきた、
「最近パンと水だけだったからな、嬉しいだろ?ほらさっさと食え!」
黒焦げで動かない私を足で仰向けにし口にバナミルを注ぎ揚げパンを無理矢理ねじ込み、口を踏みつけて押し込んでいく。
しかしこんな状態で食べられる訳も無い
むせる力もない私は黄色い液体とパンの塊をボトボトと口からこぼすのが精一杯だった。
「やっぱこんな状態じゃ無理か」
「自分がどれだけおかしな事言ってるか分かったか?
散々酷い事して従わせた癖に何が親友だ!何が家族だ!お前は処分場や俺の仕打ちを心底恨んでるんだろうが、
テイマーであるお前が豆太郎や他のペットに対してやってきた事と何ら変わりないんだぜ。
しかもお前はそれ全てを一人でやってきた、お前は一人で処分場と一緒なんだよ」
彼はそう言うと私に背を向け扉の方に歩きながらHAを詠唱した、扉が閉まると同時に私にHAのエフェクトが沸き上がる。
私の黒焦げの体は一瞬で元に戻り失われた視力も回復する、
体力は全快になったが私は立ち上がる事が出来ずにそのまま気を失ってしまった。
名無しオンライン sage 2006/07/14(金) 10:06:01.29 ID:iCFvhLUL
私は夢をみた。
ここはエイシスケイプ、今日の為にタルタロッサを沢山倒しイクシオン達の友好は取ってある。
しかしあんなに凶暴だったイクシオン達が本当に襲ってこないのか?近くにいたイクシオンガードに恐る恐る近づいてみる、
近づいてもイクシオン達は襲ってこない、みんなグェグェと鳴いているだけ、私は嬉しくなり目的の場所に駆け出す。
エイシスの滝壷にある目的の場所にそのイクシオンはいた。
とてもイクシオンとは思えない小さな容姿、エルモニーである私の腰ぐらいしかない、エイシスイクシオンだ。
「いたもにぃ!やっぱ可愛い~ペットにしたいもに!」
ダイアロスに来て間もない頃初めてこのイクシオンを見たとき、
私はテイマーになる事を決めた、そして初めてペットにするのはこのイクシオンにしようとも思った。
城門のネズミでひたすらテイムの練習をした日々、今日やっと念願が叶う。
私は持っていたチョッパーを振り上げ目の前にいる小さなイクシオンに切りかかった。
「グェ!痛いグェ!許して、許してグェ!殺さないでグェ~!」
体中を切り刻まれ、悲鳴を上げてグェグェと命乞いをするイクシオン、しかし私の攻撃は止まない。
チョッパーで何度も切りつけながら毒で調節して相手をフェタライズできる瀕死になるまで痛めつける。
「止めてグェー!何でも言う事聞くから殺さないでグェー!」
そこで目がさめる。
ハッとして回りを見回すがそこはエイシスの洞窟ではなく私がどじこめられている何時もの小部屋。
小さな小窓からは朝日が差し込み、もう朝だという事を告げていた。
昨日は気を失って彼はそのまま出て行ってしまったのだろうお仕置きの時倒れこんだ床にそのまま寝ていた、
しかし昨日のお仕置きで散らかった部屋は綺麗に片付けられている、
そして私の体には何時も私が使っている継ぎはぎだらけの布切れがかけられていた。
その布きれに一緒に包まるように豆太郎が隣で寝息を立てている。
豆太郎がやってくれたのだろうか?確かケイジに入れたはずなのに…。
私の悲鳴が聞こえなくなり心配でケイジを壊し出てきてしまったようだ、近くには食いちぎられたケイジの残骸。
「豆太郎・・・ゴメンもにぃ・・・」
昨日彼にカオスフレアでつけられた痛々しい傷に
さっきまで見ていた夢の情景が重なり思わずポロポロと涙が溢れ豆太郎に落ちる。
名無しオンライン sage 2006/07/14(金) 10:07:01.56 ID:iCFvhLUL
イクシオンは人語も通じるとても頭の良い種族、エイシス内で王国を築き文明を持っていた。
普通の人間となんら変わらず、私達エルモニーやニューターなどと同じ1人種と見てもおかしく無い。
私はそんなイクシオンを時には殺し肉や爪を売ったり食べたりし、
時には豆太郎のように可愛いという理由だけで瀕死の重傷を負わせ力ずくで従わせ人生を奪う、
そうやって従わせた豆太郎を無理やり戦わせ死なせてしまったり、
捕まえた豆太郎の友達達をケイジに詰め、それを他人に売った事さえもあった。
豆太郎に至っては現在進行形でこんな事にまで巻き込んでいる。
『お前は一人で処分場と一緒なんだよ』
彼に言われた言葉が重く圧し掛かる。
テイマーであった私は私達の自由を理不尽に奪い謎肉にしたりケイジに詰めて売りさばいたりするエルモニー処分場の存在も、
そんな私達を処分場から引き取り、虐げる彼のような人たちの事も批判なんて出来ない
だって私は豆太郎に、ダイアロスの生き物達に同じ事をしていたのだから・・・
ペット達と同じ立場に置かれ始めて分かる気持ち、私に自分の不幸な境遇を呪う資格なんてこれっぽっちも無い・・・。
「うぅ・・・ゴメンなさい、ゴメンなさい豆太郎・・・ひっくっ」
1滴2滴と豆太郎目掛けて流れ落ちる涙は、何時の間にか嗚咽を漏らしながらの涙の大洪水にかわる、
私の涙と嗚咽で目が覚めたのか寝ていた豆太郎は目を覚まし心配そうに顔を覗き込んできた、
そんな優しそうな目でこちらを見つめられると罪悪感で余計に涙が溢れ出してくる。
豆太郎はそんな私の顔にそっと水かきのついた手を近づけると涙を拭ってくれた。
「・・・こ、こんな私を、豆太郎に沢山酷い事して挙句こんな事にまで巻き込んだ私を許してくれるもに?」
ハッとしながら豆太郎に問い掛ける私。
「グェッグ~エ~!」
豆太郎は頷くと私の顔に抱きつき何度も頬ずりをしてくれた。
「ありがとう、ありがとうもに・・・」
こんな私でも許してくれる優しい豆太郎、罪悪感が嬉しさに変わったが涙は一向に止まらない。
豆太郎だけは絶対に守ってみせる!
私はそう胸に誓い今朝も露店の準備に取り掛かった。
最終更新:2007年07月28日 22:06