60 名前:名無しオンライン 投稿日:2006/10/31(火) 15:47:24.55 hlpNaUUw
「まわせまわせ~!」
棍棒を手にしたパンダが私を罵る。
少しでも手を抜こう物なら、その棍棒が振り下ろされる事になる。
当然、色仕掛けもゴマすりも通用しない、血も涙もない地獄の獄卒の様な連中だ。
なぜこうなってしまったのだろう?
どこで何を間違ってしまったのだろう?
そのような事を考えていると、即、棍棒の餌食となってしまう。
ドサリッ
重たい音と共に吹っ飛んだモニ子は、意識が消えかけるのを感じていた。
しかし、それすらも許されてはいなかった。
獄卒パンダの一人がマイナーヒーリングをかけ頬を数回殴りつける。
意識が戻るのを確認すると、再び仕事に戻される。
疲労がたまって倒れたとしても、魔法によってそれを癒され再び仕事に戻されるだけだ。
そして、その光景を高台にある貴賓室から冷たい視線で眺めている男が居た。
「この施設が完成したのも、あなた達の調査のおかげですね。」
コグニートの男に対して、この施設の者だろうニューターの男がお辞儀をした。
「私は誇り有るビスクのために行った事だ、礼を言われる筋合いはない。
その様な事よりも施設の運営はどうだ? 順調にいっているのかね?」
その言葉を裏付ける様に、コグ男の胸にはビスクの紋章が刻まれたバッヂが付いていた。
後にビスク軍の階級章とされる物の原型であるが、コグ男はこれを処分場、養殖場建設の
立役者と言う事で賜っていた。
コグ男の言葉に、ニュタ男が答える。
「至って順調ですよ。
あなたのレポートしたエルモニーの生態調査、他の方々の提案してくださったこの施設、
どれも完璧すぎて、少々退屈な職務とも言えますが…」
言うと指をパチンと鳴らした。
それを合図に、部屋の中に数人のおびえた様な目をしたモニ子が現れた。
その姿を見てコグ男の表情が歪む。
「しかし、この様な連中を貴賓室に入れるというのは気に入らんな…」
男はこのエルモニーの生態調査によって、極度にこの種族を毛嫌いする様になっていた。
知れば知るほどに嫌悪感が増して行くのを身をもって味わったのだ。
「こいつらは子供が産めない欠陥商品でしてね、養殖されず即刻処分される所を私が飼っているのです。
まぁ、上手く躾ければ便利という所でしてね…」
言いながらもニュタ男が給仕の指示を出す。
「安心してください、来客に対して謎肉、謎水は出しませんよ。」
そう言いながら微かに笑った。
「それでは準備ができるまでの間、他の施設も見てみますか?」
コグ男は視察を兼ねて、他の場所も見て回る事にした。
61 名前:名無しオンライン 投稿日:2006/10/31(火) 15:48:02.03 hlpNaUUw
「ここがあなたの調査によって作られた養殖場です。
しかし、放っておけば勝手に繁殖する種族のため、手はかからないですがね。」
高台の監視室から眺めたそこは、またしても地獄の様な有様だった。
汚らわしいエルモニー共が皆半裸で互いに犯し有っている。
泣き叫ぶメスにオス共が群がり、その体液や糞尿などの汚物にまみれた者共が、
まさしくケダモノの様に蠢いていた。
「今から試験が始まるみたいですね…」
ニュタ男の指さす先では、数人のモニ男がパンダのガードに連れられて養殖場の内部に入ってきた。
策で区切られた外側から内部の様子を覗かせている。
「一体何を試験しているのだ?」
「単純に生殖能力です。
優れている者は種親として彼らの言う楽園に残し、そうでない者は労働部屋送り。
どちらに行ったとしても壊れれば処分されますがね。」
【楽園】か…何とも皮肉の効いた言葉であろうか。
確かに何ら生産性のないエルモニーにとって、餌と性だけは満足できる状況というのは
楽園なのかも知れないがな…
「しかし、労働部屋にはモニ子もいたようだが…」
「あなたのレポートにも有ったように、彼らは一回の出産で大量に子供を作ります。
しかし、その影響で母体に悪影響が出やすい……つまり壊れやすいのです。
その生殖能力を失ったモニ子は労働部屋送りですね。」
なるほど、確かに納得できる話ではある。
母体は壊れやすい。
その影響がモニ男の異常な性欲があるとすれば、常に新しい性の対象を求めるという事で
健全な母体を確保し、種の繁栄を保とうとする本能なのかも知れない。
「アレは何をしているのだ?」
コグ男が何かを発見し指さす。
その先では一匹のモニ男がパンダに頭を捕まれて居るのが見える。
パンダは片腕で軽々とそれを持ち上げると、勢いよく壁に叩き付けた。
「あぁ、きっと孕んだモニ子に惚れたモニ男でしょう。
たまに居るのですよ、犯したいが為だけに腹を蹴りつけ堕胎させようとする輩が…
基本的には自由にさせていますが、孕んだモニ子は一応財産ですので…」
ニュタ男はいつもの事のようにそれを説明した。
「そんな事が普段から有るのか?」
「まぁ、日に数件…と言った所ですね。
連中は学習能力が無いので…毎日繰り返されてしまうのです。
しかし安心してください、アレでも死んだらきちんとリサイクルしていますので。」
コグ男は軽い目眩を覚えた。
「一応、奴らの事は人よりも知っているつもりだったのだが…
ここまで酷いとはな…」
そこで一つの仮説が思い浮かんだ。
エルモニーには学習能力という物がない。
オークでさえも学校という文化があったのに対し、エルモニーにはその様な文化は無いらしい。
もしかするとオークの方が人間的なのかも知れないな…
その様な事を考えていると、ニュタ男が時計を目にし養殖場の一角を指さした。
「そろそろ餌の時間ですね…とは言っても不良品の謎肉に小麦粉や雑穀で水増しした物ですが…
あちらから投入されます。
ここからが本当の地獄ですよ…」
「いや、もう良い…
あの種族のおぞましさは正直、常に想像の上を行く。
きっとこの先の光景も、見たいと思えるような光景ではないのだろう。」
コグ男は目眩する頭を軽く小突きながら、ニュタ男の後を追うように通路を歩いていった。
62 名前:名無しオンライン 投稿日:2006/10/31(火) 15:48:49.53 hlpNaUUw
「ここが加工場です。」
次に案内されたのは巨大な縦穴だった。
その下には何があるのか少々暗く目にする事はできないが、きっと見たいと思えるような物ではない
剣呑な物体があるのだろう。
そして最初の部屋の動力でわかるように、機械仕掛けで動くような物が…
そこに数人のモニ子達が入ってきた。
彼女たちは皆、今までの糞尿まみれの姿ではなく、汚れを落とし香草で編んだ衣を身につけていた。
「そう言えば、この部屋のガードはバンデモスではないのだな…
今までの部屋では、その屈強な肉体から好んで使われていたようだが…」
「えぇ、しかし彼達は既にパンダに対しての恐怖が培われてしまっています。
死ぬ瞬間には恐怖よりも、リラックスしていた方が肉が軟らかくなるのですよ。
そして、見ていてください…あのガード達は良い仕事してくれていますよ。」
そのガード達に目を向けると、モニ子達と軽く話をしているようだった。
モニ子が希望に溢れた目で、ガード達を見つめ、言葉をかけているのが見て取れる。
ガード達もそれに「うんうん」と頷き…
そして縦穴に叩き落とした。
その悲鳴は、施設のガラス越しにこちらにも聞こえてきた。
「……何をしていたんだ今のは!?
しばらく話をしていたかと思ったら…そのまま縦穴に突き落としたぞ!?」
「それが彼らの熟練の技ですよ。
美味しい謎肉を作るためには彼らの巧みな話術と、それによって幸せな気分のまま死ぬモニ子は必要不可欠なのです。
さて、そろそろ良い時間でしょうか?」
貴賓室に戻ると、テーブルの上には次々に豪華な料理が並べられて行く。
そしてグラスにワインをつごうとした所で一人のモニ子が体勢を崩した。
咄嗟にモニ子の腕が、なにかに捕まろうと伸ばされる。
その方向はコグ男の居る方向だった。
コグ男は顔をしかめはした物の、一応そのモニ子を支えてやる。
それをニュタ男が意外な物を見たという表情で見つめている。
「そう言う顔をするな、私だって人の子だよ…
例えエルモニーとはいえ、彼女たちは君の使用人なのだから…」
コグ男はそのモニ子を立たせると、こぼれたワインを軽く払いのけた。
「しかし、それは純粋に使用人をしているというのならば…と言う前提も付くがな!」
言いながらモニ子の腕を捻り上げる。
そこには彼の胸に付いているはずだったビスクの紋章が握られていた。
「これが私がこの連中を嫌う理由だ!」
「ご主人様…これは偶然モニ…
モニ子は悪い事してないモニ……」
咄嗟にモニ子は主人のご機嫌を窺おうとする。
「さて、君はこの始末をどう付けてくれると言うのだ?」
主人と呼ばれたニュタ男は、顔色一つ変えずにテーブルから立ち上がると口を開いた。
「予定が変わりました。
一緒に縦穴のガードをやりに行きましょうか?」
これも一つの経験としては面白いかも知れない。
コグ男に断る理由などはない。
コグ男もテーブルを立つ事にした。
最終更新:2007年07月29日 21:11