始める前に
Mops.dicまたはPowerMopsの浮動小数点数を利用可能にしたバージョンは、適切なソースファイルをロードした後に、その結果を保存するだけでコンパイルすることができます。これは、普通はもとのMopsとは別個のプログラムとして保存します。このマニュアルでは、そのような浮動小数点数バージョンを、MopsFP.dicあるいはPowerMopsFPと呼びます。そのソースファイルは、もっともな名前だと思いますが、Mops-68k用は‘floating point’という名前、PowerMops用は‘zfloating point’という名前で、ともにMops sourceフォルダのサブフォルダであるSystem sourceフォルダにあります。
万が一、Mopsウィンドウを少し探ってみた後でもやり方を‘直観’できないときのため、もう少し後に、ソースをコンパイルしてその結果を保存するための方法を説明してあります。
注意:以下のキーボードの例においては、すべて、Mopsコマンドはいつも<enter>で終わります。<enter>は<return>と同じではありません。多くのMacアプリケーションはこれら二つのキーを同等なものとして扱っていますが、Mopsではそうではありません。Mopsをしばらく使えば、この特性が有用なものであることが解ってくるでしょう。
バックアップ
バックアップをとることの重要性は、いくら強調しても十分とはいえない程です。あなたがハードディスクを使っているなら、定期的にバックアップすべきです。プログラミングにおいては、特に、システムクラッシュは日常茶飯事です!【--- もっとも、OS Xになってからは、OS自体がクラッシュすることはほぼ皆無になりましたが。】しかし、ディスクを定期的にバックアップしていれば、怖れることはありません。
オリジナルのMops配布ファイルを、ディスク上のものであれインターネットからダウンロードしたものであれ、特別にバックアップしておくのも良いでしょう。そうすれば、もしMopsシステムを壊してしまったとしても、もう一回全部ダウンロードする必要なく、ちゃんと動くシステムに容易に戻ることができます。
エディターの利用
Mopsは組み込みのエディターは持っていませんが、QuickEdit(クイックエディット) と緊密に恊働します。QuickEdit(以下、QE)はDoug Hoffmanが、特にMopsのために開発したもので、‘QuickEdit ƒ’フォルダーに含まれています。MopsとQEがともに走っているときには、互いにアップルイベントで通信して、たくさんの役に立つ機能を遂行します。Mopsからは、QEに特定のソースファイルを開くように依頼できますし、エラーが起ったときには自動的にそれが行われます。QEからは、テキストを送ってMopsで解釈実行できますし、Mopsがソースコードの箇所を特定し、それをQEで開くように命令することができます。QEはまた、オンラインのMops語彙集をも含んでいます。ですから、QEを是非試してみるよう、お勧めします。
QEでオンライン語彙集を使うには、あるワードをハイライト(選択)して、Mopsメニューの中のGlossaryを選ぶか、Command-Y キーを打つかしてください。あなたが見つけたいワードの名前を打ち込み始めたならば、あなたはGlossaryウィンドウの中にも赴くことになるでしょう。QEのもっと詳しい使い方は、‘QuickEdit ƒ’フォルダのReadmeにあります。
補足すれば、QEはMopsプログラム自体のための正規の独立ソーステキストエディターでもあります。
Mops — オブジェクト指向言語
Mopsでは、プログラミングの多くの部分がオブジェクトにメッセージを送ることによって行われます。Mopsオブジェクトは、見慣れた現実世界の対象のシミュレーションとみることができます。:長方形、Macintoshウィンドウ、芸術家のカンバス、銀行口座、のような。Mopsプログラムが走る時、インストラクション(機械命令)の比較的小さなリストによってプログラムの実行がオブジェクトのフレームワークを走り抜け、オブジェクトに命を与えます。:長方形は自身をスクリーン上に描き;ウィンドウが現れ;マウス制御されたブラシが芸術家のカンバスに絵を描き;銀行口座は入金と支払いを報告します。
Mopsそれ自身が予め定義された多くのタイプのオブジェクトを含んでいます。この既存のフレームワークのおかげで、二つのワードを打ち込むという簡単な操作で複雑なオブジェクトを生成することができます。さっそくやってみましょう。そうすれば、Mopsがあなたのために用意してくれているものについて雰囲気がつかめるでしょう。これは単なるデモンストレーションであって、レッスンではありません。ですから、私達にならってタイプ(または、コピー&ペースト)し、何が起るかを観察してください。各ステップを覚えようとすることはありません。
(‘Mops’と‘Mops.dic’の二つのファイルをもつMops-68KとPPCネイティブなPowerMopsとがありますが、どちらのアプリケーションを使っているかは関係ありません。手続的にはどちらも外形的には同じです。一番の違いは、Mops-68kを起動するにはMops.dicファイルをダブルクリックするというところです。私達がここ述べることは全て両方に同じように当てはまります。)
Mops ƒ フォルダを開いてください。Mops-68KではMops.dicアイコンを見つけ出し、それをダブルクリックしてください。PowerMopsではPowerMopsアイコンをダブルクリックします。しばらくすると、Mopsウィンドウが現れます。このウィンドウの中身についてはレッスン1で詳しく説明しますが、今のところは、rectangle(長方形)オブジェクト —boxと名付けます— をメモリー(記憶装置)上に生成しましょう。次のようにタイプします:
rect box
(最後に<enter>を打つことを忘れないでください。)
boxに、スクリーン上の何処に現れるべきか、また、どの程度の大きさであるべきか、を知らせる必要があります。Mops内のrectangleフレームワークは、これらの命令を、対角線の二頂点、左上角と右下角のスクリーン座標の形で行うことを要求しています。わたしたちは、左上角を20, 10、右下角を100, 50に選ぶことにします。これらの数値をboxのメモリーに入れます。要素間の空白とコロン":"に注意して、次の行をタイプします。
20 10 100 50 put: box
この行はメッセージと呼ばれます。これはまさにboxへと送られています。さて、わたしたちは、boxにメッセージを送って、それ自身をスクリーン上に描画するようにしたいわけです。しかし、まず、それを描画するためのウィンドウが必要でしょう。メモリー内にウィンドウオブジェクト—‘ww’と名付けます—を設定するには、次のようにタイプします:
window ww
Machintoshウィンドウは、それをスクリーン上におくことができる前に、たくさんの情報を必要とします。その中には、ウィンドウの長方形の枠取り、ウィンドウのタイトル、ウィンドウのタイプ、見えるようにするかどうか、クローズボックスをつけるかどうか、が含まれています。その後でも、Machintoshツールボックスは、もっとずっと多くの情報を必要としますが、これはMopsが自動的に供給します。Windowを含むMopsのいくつかのクラスは、そのクラスのインスタンスを、典型的な値でもって表示する、テストないし例示メソッドを持っています。いま生成したウィンドウをみるには、次のようなメッセージを打ち込んでください。:
test: ww
あなたのスクリーンは、上と似たような風に見えるはずです。実を言うと、私は横着して、命令をブラウザから選択してドラッグしました。
普通のMacウィンドウ同様、wwをリサイズしたり、スクリーン上をドラッグ(引き回し)したりできることに気付くでしょう。しかし、wwが表面にでている間にキーを打っても何も起りません。これは単に、wwに対してキーをどう処理するのか教えていないためです。ですから、wwを邪魔にならないところに動かしてMopsウィンドウをクリックすれば、続きのコマンドをタイプできるようになります。必要ならば、wwが見えるようにMopsウィンドウをリサイズしてください。
さて、次のように打ち込んでください:
set: ww draw: box
メッセージ‘set: ww’は、今度の描画はww上で起るということをシステムに対して知らせています(しかし、それを表面に持ってくることはしません)。boxは今やww上に現れるべきことになるので、あなたのスクリーンはこのように見えるはずです(もちろん、wwを異なる場所においたかもしれませんが)。:
(わたしたちは、背景のboxが見えるように、ウィンドウの幅を縮めたのです。)
実験が終わったなら、Fileメニュー【(OS Xではアプリケーションメニュー)】からQuitを選ぶか、
bye
とMopsウィンドウに打ち込んで、Mopsを終了してください。
さて、チュートリアルをこの先へと進みましょう。あなたがMopsは面白いと思ってくださることを、わたしたちは希望しています。
最終更新:2018年12月04日 09:10