スメラギ×ティエリア(女体)
……初陣。自分にとってもヴァーチェにとっても記念すべき時だったのかも
しれないが、ティエリア本人にとっては単にひとつの通過点にしか過ぎなかった。
プトレマイオスに帰投してソレスタルビーイングの声明を聞いた時も、
同じ、ただ通過するべき点を超えたと言うことだけだった。
自室に戻って簡単に身仕舞いを整え、ベッドに寝ころんだ。
そう余裕があるわけではないから眠るしかないのだが、妙に神経が高ぶって
いる。薬でも飲んで無理矢理寝てしまおうか等と考えていたとき、
ノックの音がした。
「はい」
「ティエリア、いる?」
「……スメラギさんですか」
彼女も休んでいる時間の筈だった。何の用だろうといぶかりながら、ティエリアは
ドアのロックを解除する。
「はぁい」
「酔っているんですか」
「ええ」
しれっと、自他共に認める最高の戦術予報士である女性は答えた。
「何の用ですか」
「あら、冷たいのね」
「酔っ払いを相手する義務はありません」
「困った子」
くすくすと笑いながら、長い髪をゆらしてスメラギは入ってくると、ティエリアが
なにか言うより先に勝手に寝台に腰をかけた。
「はい、こっちおいで」
ぽんぽんと自分の隣をたたいてみせる。
「ですから、何の用です……うぁ」
近寄ると、不用意に腰の辺りに抱きつかれた。
「んー、若い子はいい匂いー」
「スメラギさん!」
無防備だったから妙に声が裏返る。ティエリアはじたばたともがいたが、
スメラギはおかまいなしで、くすくすと笑っている。
「まったくー、このお嬢さんはー」
「ですから!やめてください酔っ払い!」
……一応、艦内では男だと言うことになっているのだが、バレるとしたら
この人の不用意な発言からなんじゃないかという気がしている。
「んふふふー、可愛いんだからぁ」
「やめてください、ってば……あ」
尻を撫で回されて、思わず変な声が出た。
「敏感ね」
「スメラギさん!怒りますよ」
「はいはい」
ティエリアの抗議などおかまいなしで、スメラギは自分の片膝をティエリアの
両膝の間に押し込んで、ちょうど彼女の脚の上にティエリアが跨るような形にさせた。
「眠れないんでしょう?エッチなお嬢さん」
……反論したところでどうせ聞いては貰えまい。相手は酔っ払いだ。
だが割り込ませた脚を軽く揺すられて、思わず唇を噛む。背中を柔らかく撫でさすられて、
さっきから感じていた得体の知れない違和感に火がついた。
「……ん」
濃いアルコールの匂いが鼻をつく。ティエリアはアルコールが苦手だ。スメラギは、
ティエリアの胸元に顔を埋めて、なにがおかしいのかさっきから、しきりにくすくす
笑っている。薄いシャツ1枚を挟んで、それがしきりに刺激してきていた。
スメラギが顔を上げる。どちらからでもなく唇が重ねられた。ティエリアも彼女の背中に
腕を回して、お互いの脚が秘部をこすりあわせるように絡んだ。狭い寝台の上にもつれる
ように転がる。たっぷりアルコールを含んだキスが苦しい。
「おねだりしてごらんなさい、お嬢さん」
「……して下さい」
「こういう時だけやけに素直よね」
酔っ払い相手に嫌がっても喜ばせるだけだ。そう思って返事したのにかえって喜ばせて
しまったようだった。
ティエリアを改めてベッドに押し倒し、スメラギが婉然と微笑む。その時だった。
『スメラギさあぁん、どこにいるんですかぁ?』
館内放送が響いて、二人は動きを止めた。
『また酔って廊下で寝てるんですかぁ?スメラギさん!通信出て!』
「クリスったら。無粋ね」
見れば、床に艦内通信用のカムが落ちている。着信を示すランプが激しく明滅していた。
「残念でした。続き、また今度ね」
「……お断りします」
口の中がアルコールの苦みで気持ち悪い。なによりも。
「素直じゃないのね」
そう言うスメラギの表情が、まるで自分を気遣うように見えて、ティエリアには
不快だった。
ひらひらと手を振って、そしてスメラギは部屋を出て行った。
ひとり部屋に残されて、ティエリアはため息をつく。
「全く」
どこもかしこもお酒臭いし、中途半端に放り出されて眠るどころではない。
何よりも、傍若無人な酔っ払いの変な気遣いの仕方が、不愉快だった。
これは、単にひとつの通過点にしか過ぎない。
始まってしまったことを、今更どうにもかえられやしない。
そんなことは、分かっているはずなのに。
寝台に寝ころんで、ティエリアは軽く指先を噛んだ。
最終更新:2008年01月03日 02:50