コーラサワー×ティエリア
学パロ
こんな青空の下で授業になんて出ていられるものか、と
コーラサワーはひとり校舎外に出た。
授業が始まって五分。そんな時間に体育倉庫裏に来る
ものなど誰もいない。それもコーラサワーにとっては
都合がよかった。これで誰にも見られることなく目的も
達せられるというもの。
にやつきつつコーラサワーは暗がりに近づいた。
そこへ。
「パトリック・コーラサワー!」
足音を潜めて背後に近づいていた人物に呼び
咎められ、コーラサワーはびくりと背筋を伸ばした。
聞き覚えのある声は、彼が苦手とする委員長の
ティエリア・アーデだ。
「こんなところで何を……というのは、愚問だろうな。
酒か?煙草か?」
ティエリアは眉をひそめる。コーラサワーは、その
どちらにもまだ手を染めたことはなかった。しかし
つい売り言葉に買い言葉の性格と要領の悪さと何よりも
バカなせいで、潔癖な委員長に誤解されることがあった。
「なんでここが……」
「君が最近ここに頻繁に出入りしているとは聞いていた。
まったく、授業くらい出ろ。ただでさえ成績が悪いんだ。
教師の心証まで悪くしてどうする」
よく聞けば、ティエリアがコーラサワーのために
なることを言っていることは明白だ。しかしそれが
わからないのが、コーラサワーがコーラサワーたるゆえんだった。
「わかった。出るさ。だからあっちいけ」
邪険に追い払われて、ティエリアの勘が働いたようだ。
コーラサワーの意に反して、ずずっと近寄る。
「何を隠している?」
「なにも!」
コーラサワーは嘘が苦手だった。
「見せろ」
ずずずとティエリアは更に近づく。それはコーラサワーに
密着するほど近く、いい香りがするのはどうしてだと
彼があせればあせるほど、ティエリアは近づいてくる。
ニャー。
コーラサワーの背後で、気の抜ける音がした。
「こら!隠れてろ!」
ニャー。
「猫……?」
その子猫はずいぶんコーラサワーになついていて、
奥へ押しやろうとした彼の手にじゃれついている。すっかり
毒気の抜かれたティエリアは、あきれたように白い毛玉を
見下ろしていた。
「校内も寮内も動物の飼育は禁止だ」
「そりゃ知ってるけど」
ニャー。
「だいたい授業をさぼってまですることか」
ニャー。
「聞いているのか、コーラサワー」
ニャー。
「ええい、うるさい」
ニャー。
ティエリアは、足下にじゃれる子猫を抱き上げた。
うれしいのか、子猫はティエリアの制服にすりよる。
「こ、こら、毛がつく」
ティエリアが押さえ込むと、よけいにうれしがって
子猫はじゃれついた。
「こら、くすぐったいだろうが……」
美少年と子猫の夢のコラボにコーラサワーが
みとれていると、なんと子猫はティエリアの
制服の胸元へと飛び込んだ。
「ちょ……こ、こら!」
ぐっじょぶ、子猫。とコーラサワーが心の中で
親指を立てる。
「ん……くすぐった……ぁ」
ティエリアの声がうわずった。
頬は紅潮し、目が潤む。制服の胸元だけがごそごそ
動いていて、扇情的な光景にコーラサワーは思わず
生唾を飲み込んだ。
「あ、や、そこは……だめ」
どこなんだよ!とコーラサワーはティエリアの胸元を
凝視した。
「あ……あ…………っ!」
ティエリアの押し殺した声は、それでも高く響く。
ティエリアは、がくりと膝を付いた。肩で息をするほど
呼吸が荒い。
そして、同じくへたりこんで自分を見ているコーラサワーに
気付いた。
「あ…………!」
小さく叫んで。
ティエリアは、脱兎のごとく逃げ出した。胸に子猫を
抱え込んだまま。
コーラサワーはそれを追うこともできなかった。
なぜなら……ティエリアの声だけでのっぴきならない
事態になってしまったからである。一部が。
「男の声で勃っちまうなんて……」
本当のことを知らないコーラサワーが、自己嫌悪に
陥るのは無理のないことだった。
彼を責めることなんて、誰が出来るだろうか。
その後、胸元をふくらませたティエリアが涙目で
走り去るのを何人も目撃し、やはり女だったのかと
噂がたったが、子猫をとりはずした胸を見て
「なんだやっぱり男か……」
とみんな落胆することになるのだった。
「どうしてみんな納得するんだ……っ!」
と、サラシにやつあたりするティエリアとそのサラシに
じゃれつく子猫がいたことは、内緒。
最終更新:2008年01月03日 04:43