俺×ティエリア(ふたなり)
裸でのしかかってくるティエリアの顔に手を伸ばし、親指の腹でその唇を擦った。
「たまには口でもしてくれない?」
柔らかな弾力と少し濡れた感触がいい。ティエリアはきれいな顔にあからさまな
不機嫌の表情を浮かべた。俺の言葉に耳を貸している様子はなく、顔を触られた
のが不愉快な模様。
構わず俺はそのまま唇を割って親指を口中に突っ込み、歯列をなぞる。
「お前がその口で俺のを咥えて、舐めて、俺はお前の口の中に射精する。まだ
やったことないだろ」
ティエリアの目が物騒に光る。乱暴に俺の手を掴んで自分の口元から引き剥がした。
「断る」
「言ってみただけだよ」
俺は苦笑した。
「お前はキスもさせてくれないからね。いま噛み付かれずに済んだのは僥倖だった」
「お前の指を味わうなどごめんだ。ましてそんな汚らしいもの」
地上の任務がなく、プトレマイオスからいつまでも出られずにいると、色々と溜ま
るものがある。そういうときは、ティエリアを使うのが船内の男達の暗黙の了解に
なっている。こういう閉鎖された環境で女性の取り合いになると後が厄介だからだ。
それを承知しているティエリアは、協力的とは言わないまでも仕事の一つと捉え
て拒否はしない。こっちとしても、ティエリアは男とはいえ、あの顔だし、体もいい。
わりとうまくいってはいた。
ただ問題は、ティエリアの態度だった。悪いというか、ルールが厳しい。
コンドーム絶対装着は仕方ないが、キス、口淫も不可。体にはほとんど触らせな
い。こっちはマグロになっていろというわけだ。後孔も自分でほぐしてしまうから恐
れ入る。確かに男相手にまともなセックスを求めるのもどうかと思うが、それでも多
少のつまらなさは否めなかった。
などと思いながらも、ゴム付でもティエリアの中は締まりがよく最高に気持ち良
かったし、根本的に真面目なのか手淫の腕前もいやに熟練して来ていて、正直は
まり気味ではある。
「もう少しサービスしてくれても罰は当たらないとは思うけどね…」
「これ以上? 付け上がるな。お前の性欲処理には付き合うが、奉仕してやる気はない」
凍り付くような目で言い放ちながら、ティエリアの白い手が、俺の股間の茂みに沈
む。幹から亀頭にかけて両手で包みこむように撫で下ろし、職人じみた慎重さと繊
細さで指先を使って、力強く擦り、握りに緩急をつけて揉み上げる。これが結構クる。
快感に顔を歪めてティエリアを見下ろすと、伏せた睫毛の影が白く端正な面に落
ちるのが見て取れる。全くいい眺めだった。
(これは奉仕の名に値するよ、ティエリア)
その辛辣な言葉ばかり発する口が俺のものを咥えるのも、ぜひ見てみたいものだったが。
意外にチャンスは早くやって来た。
地上ではティエリアは俺たちの相手をしない。理由がないからだ。しかし今夜は
俺が来いと言うと大人しく頷いて付いて来た。
いつも通り、裸でのしかかるティエリアに俺は言った。
「今日のお前は酷かったね、ティエリア」
ティエリアの目が険しくなる。気を悪くして横を向こうとする顔に手を伸ばし、顎を
掴んで強引にこちらを向かせた。
「お前も自分で自分に相当腹を立てているみたいだけど、俺としてもちょっと勘弁な
らないね。お前のせいで太陽炉の秘密が明らかに、俺の命も危ないところだった」
「……すまなかった。謝罪する」
「それだけ? 自分が命令違反者や失敗者にどんな態度を取って来たか忘れたわ
けじゃないだろ」
「だから、何だ。確かに酷い失敗をした。撃ち殺されても文句はいえない。それをし
ないのはお前たちの生温さだろう」
押し殺した声の余韻がわずかに震えている。
俺たちがティエリアを撃ち殺さないのは、彼に代わりがいないから、そして何より
も人間は失敗する生き物だと知っているからだ。それを理解していないティエリア
は自分を許さない。
全ての権利を持つに値しない心境なのか、いつものように、俺の手も振り払わない。
「確かにロックオンたちは生温いね。だけどあいにく俺は違う。お前は罰を受ける
べきだよティエリア」
先日のように親指で唇を擦ると、ティエリアははっと目を見開いた。瞳がぎこちな
く揺れるのが恐れているようで自然微笑が漏れる。
俺はことさら穏やかにティエリアを見つめ返した。
「もちろん、逆らわないね」
みじろぎもせず、静かにティエリアは頷いた。
本当に誰にもやったことがないらしい。俺の足の間に腹這いにさせて、目の前に
肉棒を突きつけると当惑に満ちた表情を浮かべた。どうすればいいか分からない
といった様子で俺の顔をうかがう。
「ティエリア」
あえて指示はせず、名だけ呼んで促すと、意を決して顔を俺の股間に近付け、目
をぎゅっとつむって亀頭に唇を押しつけた。
「……それじゃ駄目だよ」
「わかっている!」
息がかかるのがいい。赤い舌がチロリと覗き、玉の裏をなぞるようにそっと舐め
る。稚拙な真似だったが、俺は頭がカッとなるほど興奮した。
「ティエリア。咥えて。舐めて」
「……了解した」
そして、俺の分身は熱くぬめった口内に導かれた。
意地で何とかこらえたが、ティエリアが白い背中と尻をさらして俺のを咥え、舌を
這わせながらしゃぶっている光景は刺激が強すぎた。
「出るっ」いつの間にか一心不乱になって口淫に集中していたティエリアは反応が
遅れる。中途半端なタイミングで口を離したので、口元を中心に顔中に精液が飛び散った。
ティエリアは口の中に飛び込んだ精液が不愉快な様子で、吐き出そうとティッシュ
に手を伸ばそうとする。俺はその手を捕らえた。
「駄目だよ、ティエリア。飲んで」
はっきり、ティエリアの顔が歪んだ。首が振られる。ティエリアは口の中に入れる
ものについては、断固として拒否反応を示すものが多い。他人の精液など問題外
だろう。戸惑うようにひとつ瞬きをして俺を見上げた目は完全に懇願だったが、譲
る気はなかった。振り払おうとする力を押さえつけ、一語一語はっきりと言った。
「罰だといっただろ。逆らわないんじゃなかったのか?」
ティエリアの表情がこわばる。抗う力が抜け、ぱたりと手がシーツの上に落ちた。
わずかに眉が寄せた表情は、明らかに嫌悪を示している。だが今日のティエリアは従順だった。
ゆっくりと喉が動く。飲み下されるのが見て取れた。嚥下した瞬間、ぶるりと全身
が震え、瞬きをしない目が潤んで、薄い水の膜が張る。普段の姿を思えば、これも
凌辱だろう。打ちのめされた表情が哀れで嗜虐心を誘う。
涙の滲む目を隠すようにティエリアは顔をそむけ、硬い声で「戻る」と言って、立
ち上がった。その手首をつかむ。白い顔が紅潮した。
「いい加減に……!」
つかまれていない方の手を振り上げる。珍しく短絡的な暴力に走るとは、相当追
い詰められているようだ。その手が俺を打つ前に、俺の手がティエリアの頬を叩い
た。バシンと思ったより大きな音が鳴る。みるみる赤くなる頬を興味深く眺めた。さ
すがに白いと目立つ。
茫然から激怒までの移行は早かった。いつもなら氷の散るような冷やかさで弾劾
するところだが、今日の失敗と先ほど精液を飲まされたショックが後を引いて冷静
さを失っている。シュッと音を立ててわりといい拳が飛んできたのを捕らえ、体勢を
入れ替えて細い体をベッドの上に引き倒すついでに、まとめて両手首を握って頭
上に縫い付けた。完全に頭に血を上らせてむやみに暴れる体を組み敷いて、力尽
くで押さえ込む。
ひとしきり抗って、ティエリアの息が切れた頃に、俺は低い声で言った。
「いい加減にするのはそっちだよ。お前は何でこんなことをされてると思っている?」
面白いほど簡単に動きが止まる。
「逆らうかい? ティエリア」
「……」
しばらくの間があってから、ティエリアは首を振った。
「俺に何をしろと」
「黙って大人しくしていてくれればそれで」
首の後ろに手を差し込み、うなじから肩、腕まで掌を滑らせると、滑らかな感触が
心地いい。室温が高いからか、肌が熱く少し発汗でしっとりしている。
「緊張するなよ、処女みたいだ」
俺が笑うと、ティエリアは首を倒して顔をそむけた。主導権を相手に握られたこと
がないのか、困惑と不安が漂っている。
「……早く、挿れればいい」
「それじゃいつも通りで罰にならないだろ。いいから黙って」
「しかし、」
耳を貸さないで唇を塞ぐ。口内を犯して奥歯の裏まで舐めまわし、震える舌に絡
んだ。そのまま、手を膨らみのない胸へ這わせ、乳首をつまんで指先で転がして
みる。キスに気を取られて、力が抜けかけていた体に緊張が走り、ビクビクと震え
始めた様子からすると感じるらしい。口端から唾液がこぼれたのを機会に、口を開
放し、次は乳首に口をつけた。さっき指でいじって尖らせた先にしゃぶりつく。
「……ぁ、んっ」
ティエリアが声を出すのをはじめて聞いた。
「イヤ……だ、触るな。そん…んっなところ……!」
「感じてるみたいだけど」
火がついたようにティエリアの顔が耳まで真っ赤に染まる。喉でくつくつと笑って、
俺は手をさらに下へ滑らせた。小さなヘソを親指の腹で擦って、さらにその下へ進
める。腰を引くのを追いかけて捕まえ、性器をしごくと他人の手に慣れないのか、
すぐにむせび泣くような喘ぎ声を放って達した。後孔を探しながら、下肢の繁みを
指でいじっているといやに濡れている。男は濡れないんじゃないのか?一瞬、疑問
に思って指を進めて合点する。
「お前、ヴァギナ持ってたの?」
女のそれと変わらない割れ目をなぞる。脱力して死んだように投げだされていた
体がビクンと震えた。尻でいざって俺の手から逃れようとする。
「そこは駄目だ。俺は女じゃない」
「でもこれ、女性器だね?」
「肉体的には両性具有だ。でも、俺は……やっ」
「わがまま言うなよ」
身を起こそうとする体を押さえつけた。
「今のお前に拒否権はない。そうだろ」
「でも!」
「大体、これ洪水みたいになってるんだぜ。それでいやって」
「イヤだッ……!」
さっきまでの従順さをかなぐり捨てて、必死で逃れようとするのを無理やり体の下
に組み敷くのはぞくぞくした。これまで体を触らせなかったのは、女性器の存在を
隠すためか。この嫌がりようを見ると、ここは処女なのかもしれない。しばらく揉み
合いが続いたが、体格的にも体力的にも、敵うわけがない。しだいに抵抗が弱くなる。
「駄目……ぁあっ、イヤだ……っいや……」
「いい感度だ。きついけど、その分だとお前も楽しめるよ」
前戯は十分と判断して、中でかき回していた指を抜くと、俺は白い腿をつかん
で、きついその穴に俺自身を強引にねじ込んだ。
「やっ―――――!」
ティエリアの甲高い悲鳴が尾を引いて響いた。すごく狭いが気持ちいい。ドクドク
と血流の脈動が緩急をつけて俺を締めつける。ティエリアの顔を見ると、苦痛と
ショックで言葉もない風情だった。瞳を大きく見開き、唇を噛み、シーツを握りしめ
て痛みに耐えている。かわいそうになって、頬に触れ、唇を親指で擦った。反応し
て目がこちらに向けられる。視線が合うと、栓が切れたように涙が浮かび、盛り上
がって端からこぼれ落ちた。細い声が懇願する。
「お願いだから、抜いて……」
一本どこかヒューズが吹っ飛んだ。
前置きなしに、俺はいきなり前後運動を開始した。ティエリアの瞳が衝撃と絶望
に染まる。奥まで突き入れては引き、また突く。くちゃぬちゃと激しい水音からして
も、ティエリアが感じているのは明らかだった。熱い内壁が収縮を繰り返して俺を包みこむ。
「いやっ、ああっ、抜い……っ、やだ、いやだ、いや、いや! やめて――……!」
涙交じりの懇願は逆効果以外の何物でもない。俺はティエリアの言葉を無視し
て、いつまでも引いては突き、引いては突き続けた。嬌声じみた悲鳴を聞きなが
ら、やがて、俺はかつてない快感と時間をかけて射精し、あらんかぎりの精子を
ティエリアの中に注ぎ込んだのだった。
気を失ってシーツの上に倒れ伏すティエリアの顔は、精液や叩かれた跡、涙や
涎でぐちゃぐちゃになっている。
湯で濡らしたタオルでそれを拭いてやりながら、それでも深く刻まれたようだった
眉間の皺がなくなっていることにほっとした。
「まったく……馬鹿なティエリア。かわいいティエリア」
狭すぎる価値観に閉じこもるから、俺なんかに簡単にいいようにされる。
噛みしめている間に切ったのか、血が滲んでいる唇を親指の腹で擦る。
目覚めたお前は俺にカンカンだろう。それでいい。
人に人以上の所業を求めるソレスタルビーイングの信念のためなんかに、これ
以上自分を責める必要はない。
明日からは、また傲然と顎を上げていればいいさ。
本当に、馬鹿でかわいい奴だ。
俺はくつくつと笑った。
最終更新:2008年01月03日 04:51