俺×ティエリア
新婚生活
あの幸せな結婚式から3ヶ月。
世界は平和を取り戻し、俺達は艦を降りてユニオン郊外、
森の中の小さな白い家で、新生活を楽しんでいた。
これはティエリアの願いだった。
長い戦いでティエリアは心身ともに疲弊し、穏やかな生活を送る事を
心の底から願っていたから…。
「ん…。」小春日和の日曜日。
もう日は既に昇り、暖かな日差しの中で俺は目を覚ました。
隣に並ぶピンクのまくらに、ティエリアの可愛い頭は既に無かった。
俺は大きく伸びをして、まだねぼけまなこで一階に下りて行った。
キッチンからすごくいい匂いがする…。
「ティエリア?」
そう言いながら、俺はキッチンに入っていった。
エプロン姿で、髪を軽く結んだティエリアの後姿が目に入った。
今日は薄いブルー基調に白抜きで花柄がデザインされたエプロンをしている。
「あれ?もう起きちゃったのか?」
ティエリアが俺の足音に気付き、調理の手を休めずに振り返った。
そして「おはよう。良く眠れたみたいで良かった。」
と、にっこりと微笑みかけてくれた。
(うっ…可愛い…)
一緒に住んで三ヶ月もたつのに、俺はまだティエリアを嫁に出来た事が
信じられずにいた。
「何作ってるの?」
俺はありえない幸せに大テレにテレながらティエリアの後ろから手元を覗き込んだ。
ボールの中に、おそらく小麦粉と牛乳、砂糖あたりで出来たタネが入っている。
そんなに膨大な量でもないのに、ティエリアの細い手が、
まるで結構な重労働をこなしているみたいに、タネをようやくかき回していた。
「大変そうだね。」
俺は口元に広がる笑みを押さえようも無く、
ティエリアの肌が触れ合う距離まで近寄り、後ろからそっと抱きしめた。
ティエリアから、バニラの香りがわずかに漂う。
ティエリアの顔がぱっと紅潮したのが分かった。
そのまま、柔らかい耳たぶに唇を押し当てる。
「…んんッ・・・」
ティエリアがくすぐったそうに身をよじって、顔を横に向けた。
二人の唇が自然に重なり合う。
クスクス…。そのまま軽いキスを何度か繰り返し、
ティエリアがうれしそうな微笑みをこぼした。
「今日はマドレーヌを作ってみようと思って。」
そう言うティエリアを、俺は後ろからぎゅっと抱きしめたまま、
首筋に顔を埋め、ちょっと左右に揺さぶるように力を入れた。
「あ…ッ!ダメだよ。まだ途中なんだから…。」
ティエリアが嬌声を上げる。
ティエリアの細い体がわずかに浮き上がり、俺の力に合わせて、左右に動いた。
俺はティエリアを床にそっと降ろし、再び優しく抱きしめた。
「随分前からやってるの?」聞くと、
「ううん…。朝ごはん早くに作っちゃって、時間余ったからやってるだけ。」
そう言って、隣のガス台を示した。
なべに味噌汁と、煮物が見えた。
「おなかすいただろ?温めるから…。」
俺がまだ抱きしめたままだったから、体全体を必死で伸ばすように手を伸ばし、
スイッチを入れようとした。
しかし、ティエリアの体温と甘い匂いで、既に俺は朝っぱらから
むらむら来てしまっていた。
「…後でいいよ…。」
囁いた俺の言葉に、淫らな響きが漂う。
ティエリアが敏感に気付いて、体を固くした。
「でっ…でも…。あさごはん…」
ティエリアを抱きしめる手に力がこもる。
「あっ…」ティエリアが思いがけず色っぽい声を出した。
そのまま、顔を恥ずかしそうに伏せてしまった。
ティエリアもまだ二人の生活に緊張しているのかも知れない。
我慢できずに、ティエリアのエプロンの後ろをほどいた。
「や…やだ…ッ…。いま…?」
ティエリアが体をこわばらせて聞いてきたから、俺は耳元で出来るだけ低く、
欲情を誘うように囁いてやった。
「そうだよ…。今。また明日から残業続きだし…。」
「で…も…」
「俺はすごく寂しかったのに、ティエリアはぜんぜん平気だったの?」
「そんな事…。」
ティエリアが一瞬寂しそうにうつむいた。
しかしその後、不意に体を反転させると、ぎゅっとしがみついてきた。
「ずっと寂しかったよ…!君なんかよりはるかに…!!」
そう言って、突然にはらはらと涙を流した。
俺は戸惑い、ティエリアの顔を両手で優しく包んで、
親指でそっと涙をぬぐってやるしか出来なかった。
「ご…ごめん…。俺…」
何か気の聞いた言葉をかけてやらなければいけないことは分かっているのに、
出てくるのは何の意味も無い言葉の羅列にしか過ぎなかった。
自分でも情けなくてほとほと嫌になる。
ティエリアが嫁に来てくれたって言うのに…。
この世で一番幸せにしてやる。そう誓ったはずなのに…。
ティエリアが俺の胸に顔を埋めて、まだふるふると細い肩を震わせていた。
俺は艦を降りてすぐに転職した会社の研究室で大事なプロジェクトを任され、
終日深夜帰宅が続いていた。
昨日も土曜だというのにフルで出勤した上、帰ってきたのは真夜中1時。
ティエリアは毎日気をつかってマッサージしたり、
アロマキャンドルを焚きながら癒し効果があるという
音楽を掛けてくれたりしていた。
びっくりするほど上手な料理だったが、それがティエリアなりに
必死で覚えたものである事は、新生活最初の頃に、
ティエリアの指についた傷で良く分かっていた。
俺はそういうティエリアの努力に甘えていただけなのかも知れない。
仕事の忙しさにかまけて、居心地いい生活に浸り、
ティエリアの心情に配慮が足りなかった。
毎日一人で過ごす日常がどれだけむなしかったか…。
なのに俺は、今日も俺のために早くから料理をしてくれるティエリアに感謝もせず、
自分の欲望を押し付けようとした。
現実的に見えるけど、ティエリアが本当は
ものすごいロマンチストだって事はよく分かってたのに…。
ティエリアの涙を見ながら、後悔の波が押し寄せた。
つい、涙が出そうになってしまった。
ティエリアが涙ぐむ俺の顔を心配そうに見上げて、
「ごめん…。仕事だったら仕方ないのに…。
おれのために頑張ってくれてるのに、泣いたりして…。」
そういうと、背伸びして優しくキスをしてくれた。
俺はたまらず強く抱きしめた。
まだ温かいティエリアの涙が、俺の頬を濡らした。
「ごめん…!ティエリア…!!俺、最低だ…!」
心の底からそう思って、なんとか気持ちを伝えようと必死で言葉を探した。
「俺は…、お前がいてくれたら、何だっていいんだ。
お前がいつも待っててくれるから、仕事だって何とかこなせてる…。
なのに、お前を一人でほっといて、今だって自分勝手な事ばっかりして…。
幸せにするって言ったのに…!」
言葉が空回りする。気持ちの半分も、表現できていない。
俺はもどかしさに唇を噛んだ。
すっとティエリアの手が俺の背中に回り、抱きしめられる安心感に包まれた。
「ティエリア…?」
「…うん。よく分かったよ。」
ティエリアが俺の胸にぐっと顔を埋めて、静かに言った。
「…君の気持ちが離れていない事。大事に思っててくれてる事…。」
「ティエリア…。」
ティエリアが体全体を俺に預けたまま、顔だけ上に向けて
たまらないほど可愛い泣き笑いの表情を浮かべた。
「確かに寂しかったけど、おれ達、もう家族なんだ。
君が、ずっと健康でいてくれたら、時間はたっぷりあるんだから…。
絆っていうの、ちゃんと深まるよ、きっと…。」
自分に言い聞かすように軽く頷きながら、ティエリアが言った。
俺はもう完全に陥落していた。ティエリアのおでこにそっとキスを落とす。
胸が一杯で、言葉は何も出てこない。
ティエリアが潤んだ瞳でじっと見つめてきた。
「でも…。たまにはこうやって抱きしめて欲しいよ…。
それに、ゆっくり話す時間も作って欲しい。大変だと思うけど…。」
そう言って、恥ずかしそうに目を伏せると、しっかりと俺を抱きしめてくれた。
俺は身も心もとろけるような、甘い感情に包まれていた。
結婚が人生の墓場だなんて言った奴は大馬鹿だ。
そいつはきっと、愛する事も愛される事も知らずにいる、負け犬にしか過ぎない。
俺達はその後、二人でゆっくり時間をかけて朝ごはんを食べた。
マドレーヌをオーブンで焼いている間、俺は食器の片付けを手伝った。
ティエリアが皿を洗い、俺がふきんで皿を拭く。
些細な話にも、自然に笑いが起こる。
確かに俺たちの間には、穏やかな時間が流れていた。
午後から、ティエリアの焼いてくれたマドレーヌをバスケットに入れて、
近くの丘にピクニックに出かけた。
陽だまりの中、幾家族かがみんな楽しそうに談笑している。
走り回る子供と犬たち。
この世のすべての平安が現れているような、そんな光景に、
俺たちはソレビの活動が確かに意味があった事なのだと、
お互いの視線だけで確認しあった。
暖かい日差しが肌に心地いい。
俺は芝生に寝転がって、空を舞う鳥の数を数えた。
「おれも…!」
ティエリアが元気に言って、俺の横に寝転がった、
そのまま俺の手をきゅっと握ってきた。
横を向いてティエリアを見ると、優しい微笑をたたえて、俺の顔をじっと見ている。
その表情が本当に可愛くて、俺は慌てて顔をそらした。
俺の気持を見透かしたように、ティエリアがくすくす笑いながら、
ぎゅっと身を寄せてきた。
「気持ちいいね」
ティエリアが俺の肩に額を押し当てて、ぼそっと呟いた。
二人の体がぴったりと寄り添う。
芝生の青い匂いが、少年時代に帰ったような、妙に懐かしい気分を思い起こさせた。
俺はぎゅっと手を握り返してあげた。
「…あ…ん…ッ…!」
ティエリアが短く喘ぐ。
満点の星空が輝く夜空の下、いつもの小さい家の寝室で、
俺たちは久しぶりの二人きりの時間を楽しんでいた。
すでにお互い一回達したのに、まだ体が満足しない。
荒く息をして、舌を舐めとり絡め合わせ、ティエリアの体をまさぐった。
ティエリアの体にどんどん熱が篭もってくる。
俺の指がティエリアの敏感な所を突付いた。
「あ…ぁああ…!!や…ぁ…!」
ティエリアの腰が跳ね上がって、汗が飛び散る。
数を重ねるごとに、ティエリアの体を知っていく歓び…。
二人で秘密と思い出を積み重ねていき、やがてお互いに離れられない関係になる。
それが絆という物なのかもしれない…。
ティエリアの肌の感触も、味も、そして感覚も、全て味わうように、
全身に舌を這わした。
ティエリアは俺以外誰も知らない。
でも、もう俺以外では絶対に満足できないと、
それどころか俺以外の男には一片の興味さえ涌かないという位、
深い快楽を与えてやりたかった。
俺は精一杯の手練手管で、ティエリアを愛した。
「ひゃあ…あぁあん…!」
ティエリアが俺の一突きごとに身をよじり、淫らに声をあげる。
お互いの肌がぴったりと触れ合い、最初から一人の人間であったかの様に
錯乱してしまう。
ティエリアが俺の両腕を掴み、与えられる快楽に耐えられないという様に
いやいやと首を振った。
「ティエリア…。すごく可愛いよ…。何も心配要らない。
俺がそばにいるから…。」
苦しそうに喘ぐティエリアの耳元に、熱い息をかけながら囁いた。
ティエリアはその言葉に感じたのか、きゅっと締め付けを強くした。
もう俺は三こすり半の、情けない男じゃない。
俺の人生は全てティエリアのためにある。
もちろん、俺の悦楽だって全てティエリアに捧げる。
俺は必死で我慢し、何度も何度も奥までしっかり突いてやった。
「あぁああ…!あ…う…ぅ…ぁあん…!!」
ティエリアの声が切羽詰ってきた。
俺の背中に両腕を回し、強く抱きついてくる。
大きく開けたままの口から、熱い息が吐き出され、俺の首筋にかかった。
俺のストロークの間隔が短くなり、より腰に力が入った。
ティエリアの熱い体内が、さらに熱を帯びたみたいに熱くなり、
ぐりぐりと俺を締め付けて放さない。
「ティエリア…!いくよ…!」
遂にたまらなくなってしまった。ティエリアが必死で頷く。
「うああ…ッ!」「あぁぁあああ!」
同時に大きな声を出して、一緒に欲を吐き出した。
はあはあ…。
荒い息を吐きながらも満ち足りた気持ちで、俺たちは見つめ合った。
ティエリアが軽く口角をあげて微笑みかけてくれた。
俺は今までにこんなにきれいなものを見た事がなかった。
多分これからも、無いだろう。
「ティエリア…。このプロジェクトが終わったら、休暇がもらえると思う。
まあもらえても一週間だと思うけど、その時はどこかに旅行に行こうよ。」
俺はティエリアのまだ火照ったままの体を優しく抱きしめた。
「うん…。そうだね…。すごく楽しみだ…。」
ティエリアがはにかみながら俺の胸に顔を埋めた。
その後、俺たちは旅行の計画を話し合った。
火星に行きたいとか海に潜りたいとか、今の所無理っぽい願望まで飛び出して、
俺たちはおおいに抱きあって、笑いあった。
「もう寝ないと、明日きついだろ?」
そうやってティエリアに諭されても、俺の興奮はしばらく収まらなかった。
やがて月が傾き星の位置もいくらか変わった真夜中、
俺はティエリアに優しく抱きしめられて、穏やかな眠りに落ちた。
<終わり>
最終更新:2008年01月03日 05:03