部屋の主の性分を表したような殺風景な部屋に、パソコンのキーを叩く音だけが響く。
ベッドの上、乱れたシーツを整えもせず、一糸纏わぬその身に閨事の跡を色濃く残したまま。
されど、事後の甘やかな空気など微塵も感じさせずに、部屋の主であるティエリアは趣味であるというプログラミングに没頭する。
そんな彼に、同じく事後の痕跡を残したまま、ベッドサイドに腰を下ろした刹那が憮然とした顔を向けていた。
「……文句があるなら出ていけ」
一瞥すらせず、勿論手も止めずにそう告げるティエリアの態度に、刹那の眉間の皺が更に深くなった。
「何だ。用は済んだんだろう?なら後は何をしようと俺の勝手の筈だ」
――取り付く島もない、とは正にこの事。といったティエリアの言葉に、刹那は無言で立ち上がった。
出ていくのかと思いきや、ぎし、とベッドを軋ませて、膝立ちのままティエリアの上に乗り掛かる。
無防備に寝そべっていたせいで、あっさりとそれを許したティエリアの表情が俄かに険しくなる。
抵抗を試みるには些か不利な体勢で、それでも首だけを動かして相手を睨みつけると、こちらに背を向けて馬乗りに跨った刹那が目に入った。
「……どういうつもりだ」
霜が降りるような声にも、当の刹那は全く動じない。
それどころか。
「俺の勝手だ」
「……な」
「そっちが先に言ったんだ、勝手にすると。だから俺も好きにさせてもらう」
一方的にそう言い放つと、刹那はティエリアの細い足首を掴む。
「何、を……ッ」
皆まで言いきらないうちに指先が暖かく濡れた感触に包まれて、ティエリアが息を飲む。
そのままねっとりと指の股に舌を這わされ、その背が小さく跳ねた。
「ん……っ、く」
五本の指を順に、丁寧にねぶられて、快感、と一言で表すには何処か足りない、紙一重の感覚が背筋を走り、肌が粟立つ。
既にプログラムどころではない。震える手でノートパソコンをベッド脇ののサイドテーブルに戻すのだけで精一杯だ。
そのまま崩れるように倒れ込み、両手でシーツを握り締める。
「もう終わりか」
「……っ、誰の、せいだ……ッ」
身をよじり、気丈にも潤んだ瞳で睨んでくるティエリアに構わず、刹那の舌は足の裏を絶妙な加減でなぞっていく。
その感触に、触れられてもいない下肢が少しずつ熱を持ってティエリアを苛む。
「……いい加減に、っ」 ふいに、足首が解放されたかと思うと、ぐい、と両手で双丘を割り開かれる。
暴かれた秘処に痛いほどの視線を感じてティエリアの身体が羞恥に竦んだ。
「あぅ……ッ」
奥まった場所に指があてがわれ、そのまま無遠慮に侵入してくる。
先刻の行為で過ぎるほど慣らされたそこは、すんなりとそれを受け入れた。
「あ、あ」
いやらしい音を立てて抜き挿しを繰り返される内に、知らず知らずの内に腰が浮いて、その先をねだる。
――しかし、ひとしきり中を掻き回した指は、彼を高みへ導く事なく、あっさりと引き抜かれた。
「んぁ」
思わず名残惜しそうな声を漏らし、身を震わせるティエリアの肩を刹那が掴む。
小さな身体に似合わぬ力で些か乱暴に引っくり返され、細い裸身が露になった。
「く……っ」
紅潮した頬と情欲に潤んだ瞳を見られたくなくて、反射的に顔を背けようとするが、当然の如くそれは赦されない。
それどころか、逆に鼻先が触れるほど近くに刹那が顔を寄せてきた。
「……何だよ」
「顔が見えないとつまらない」
大真面目にそんな台詞を吐くその表情は、普段とさして変わらないのに何故か嬉しそうに見えて。
そして、触れる肌と吐息の熱で、昂ぶっているのは自分だけではないことにどこか安堵している自分がいて。
「……莫迦」
照れ隠しにその額を小さく小突いて、ティエリアは自分から刹那に接吻た。
「ん……ふ、ぅ」
深いキスの合間に、時折鼻にかかった甘い声が混じる。
息継ぎもままならないほど執拗な、奪うような接吻は、ティエリアに辛うじて残っていた理性を飛ばすには十分過ぎて。
それを見計らったかのように、胸の突起を摘まれ、予期しない刺激にびくん、と身体が跳ねた。
「はっ……ぁ」
漸く唇が解放されたと思えば、刹那の唇は首筋を辿って、先の行為で付けた朱印を更に濃くしていく。
降りてきた唇が空いたもう片方を捕らえると、そこは直ぐに弾力を持って膨れ上がった。
その感触を愉しむように、舌で転がし、押し潰される度、ティエリアの息が上がっていく。
「く、ぅ……ふぅ」
次々と湧き上がる愉悦に、縋るものを求めて刹那の頭を掻き抱くと、僅かにずり上がってきて耳朶をやんわりと咬まれた。
「ん……っあ!」
散々放置された自身を握り込まれて、ティエリアの声が一際大きくなる。
余程焦れていたのであろう、たいして間を置かず、高い声とともに刹那の手が熱く濡らされた。
「は……っ、ぅ」
濡れた指が後ろを這うのを感じ、ティエリアはとっさに刹那の腕を掴んだ。
「いい、から……早く」
それだけ言うと、真っ赤になって俯くティエリアを、可愛い、と刹那は思う。
――言ったら怒るのは目に見えているので黙ってはいたが。
「――ッ、あ、あぁっ!」
繋がる瞬間、ティエリアは少しだけ柳眉を寄せたが、その表情は直ぐに喜悦に取って代わる。
「はっ、あ、あ」
律動に合わせてベッドが軋み、抑えきれない艶めいた声がその音に混じる。
「ん、く……ぁ、っあ」
感じるままに嬌声を上げるティエリアの痴態に、刹那の腰の動きが徐々に遠慮の無いものになっていく。
「あ、んっ――な、に」
ふと、刹那の視線に気付く。
「気持ち、好さそうだな」
思わぬ言葉に、かぁっと全身が熱くなる。
「う――うるさ、いっ、集中、しろっ、ぁ」
切れ切れに憎まれ口を返すと、返事の代わりにぐ、と突き上げられてティエリアの背がのけ反った。
ぎりぎりまで引き抜いて、再び、じわじわと内壁を犯していくと、ティエリアの腰が揺らめき、淫らに同調する。
互いの腹に擦られていたティエリアの中心に指を絡めると、途端にきつく締め付けられて刹那が小さく呻いた。
「く、ぁ――ッ」
最奥まで深々と貫かれ、更に自身を強く扱かれて、ティエリアが達する。
「あ……ぁ……」
ほぼ同時に、刹那の欲望が中に吐き出されたのを感じて、ティエリアの身体が二度目の絶頂を迎えたように震えた。
「はぁ、はぁ……んっ」
繋がったまま、どちらからともなく唇を重ねる。
まるで互いを確かめ合うように抱き合って、二人は暫くそのまま動かなかった。
最終更新:2008年02月09日 01:35