誰か×ティエリア
誰かのMS視点
ヴァーチェが「とうとうラブホにされた」と泣いていたのは、ついこの間の事だった。
笑うに笑えなかったのは、明日は我が身だったからだろう。
でも、泣き言ながらヴァーチェが嬉しそうだったのも確かだ。
俺の主人とティエリア・アーデが付き合い始めた日、俺もその場所にいた。
俺の目の前で、どらともなく抱き合いキスしたのを見届けて、俺はあの日、
感涙にむせび泣いた。
主人のそれまでの日々を、俺はあれこれと思い浮かべずにはいられなかったのだ。
今振り返っても、甲斐甲斐しい努力だった。
あまりに哀愁漂う背中を何度見てきただろう。
業務連絡さえ無視され、
無視じゃなければ嫌味三昧。
呼んでも返事が無いなんてざら。
ほっぺを叩かれた日もあった。
急所に蹴りも入れられていた。
鳩尾に拳を何度食らっていただろう。
まあ、それは早急すぎた主人の性欲が悪いと言えなくも無いけどな。
でも、主人は本当にティエリア・アーデが好きなんだってことは、
俺が一番よく知っている。
でなきゃ、ヴァーチェには悪いが、あの俺たち以上の冷徹マシーンは落せないだろう。
思い出すなあ… あの日の、二人だけの結婚式。
ティエリア・アーデを懐に抱いて、主人は何度も何度も、確かめるようにキスしていた。
でも、突然、思い出したようにどっかに行っちまって。
独り取り残されたティエリア・アーデは凄く寂しそうだった。
唇に何度も触れて、じーっと主人の姿を見送って、待ってた。
波際から海の音がして、髪が揺れて、信じられないくらい、奴の背中が小さく感じた。
俺でさえ、心配でしょうがなかったくらいだ。
しばらくして戻ってきた主人は、なんかひらひら、ずるずるしたレースの塊を持ってきて、
それをやつの頭からかぶせた。
真っ白いレースが、夜の月に映えていた。
花嫁って言ってたな。
やっと付き合い始めたばっかりなのになって呆れたけれど、でも、二人とも幸せそうだった。
白いベールを改めてすくい上げて、主人は、ティエリア・アーデにもう一度、
その日で一番長いキスをしたんだ。
ぴちゃぴちゃって鳴ってる音は激しかったけれど、
パイロット・スーツを来て、殺人兵器の前で結婚式なんてなあって思ったけれど、
でも俺も、ついていたならチャペルみたいな鐘を鳴らしてやりたかったくらいだ。
俺だって、ヴァーチェに負けないくらい主人が好きだ。
あの日から、主人は一番大切な伴侶を手にいれたんだ。
ある日。俺はトレミーで待機していた。主人は仕事で、地上に三日間ばかりの単身赴任。
そんな時だった。ティエリア・アーデが、こっそりと俺の所にやってきたのは。
スーツも着ずに、普段着のままでひょこりと現れたやつは、寂しげな瞳で俺を見詰めた。
ああ、そっか… 俺たち留守番だもんなあ。
確かヴァーチェの奴が入れ替わりで戻ってきてたから、実質一週間は主人と会ってないのか。
電力がまわって、俺のコクピットのハッチが開く。そこに、ティエリア・アーデが
心細そうに登ってくる。
仕方ねえなあ、と俺は見て見ぬ振りをした。
本来なら主人以外が乗る所じゃねえけど…今回ばかりは許してやるか。
コクピット自体は、ガンダムならどれでも作りは変わりない。
それでも、ぎこちなくあちこちに触れて、主人の名残を捜すようにあちこちに擦り寄る
ティエリア・アーデは、なんだか飼い主を亡くした猫のようだった。
たまに零れる主人の名前が切ない。
それが湿り気を帯びて、瞳を揺らすから余計だった。
愛されてんなあ…主人。
…何やってんだよ。
「………」
呼んだって主人はこねえけど、でも、ちゃんとあんたを愛してるよ。
俺は知ってる。主人の端末にみっしり押し込まれたあんたの写真を。
特にお気に入りだったのは、あんたの寝顔だよ。あんたが知らないあんただ。
主人がぼけーっとした顔で眠るあんたを見守ってた時にさ、あんたが無意識に
主人を呼んだんだって。
幸せそうに胸に擦り寄って、かわいらしく微笑んだんだってさ。
他にも数え切れないくらいある。
なにせ俺にまでその映像をつもうとしたくらいだ。トレミーの連中にばれるからやらねえだけで。
できるなら、多分主人はこのコクピットをあんただらけにすると思う。
大事なあんたを、毎回見てから出撃するんだぜ?
振り返ってもらえない時から、変わってない。
俺が人間だったら何度おでん屋台で愚痴聞いて励まして酒奢って自宅までよろよろ運搬しただろう
って思うくらいの愛情を、主人はちゃーんとあんたに注いでるよ。
「…」
かちゃんと外されたベルトの音に、俺はぎょっとした。
するりとその細い足を曝け出して、奴はシートに深々と腰を落ち着けなおした。
え゛… ちょっと待て。それは止めろ。やるなら主人のベッドに行け!
脱ぎ落されたズボンが虚しく床に落ちる。
ティエリア・アーデの指が、そろそろと自分自身のそこに触れた。
「あ…ぁん」
たくし上げられたシャツの下で、乳首を摘んでくにくにといじる。
片手で大きく広げた足の間を弄って、ちゅぷちゅぷと徐々に水音を響かせ始める。
ぎゃーっ! 勘弁してくれ! 俺は叫んだ。けれど、声になんてなる筈も無い。
くねくねと身悶える様が実にいやらしい。
「あんっ あ…う」
唇を噛み締めて快楽に酔う、というよりは、なんか…さがしてるみたいだ。
「…っぅ」
擦る動きを続ける指は、時々、何かを思い出したように探り方を変えていた。
撫で上げるのも、こねくり回すのも、ひとつひとつ確かめているようだ。
指先のひとつひとつまで、ぴんと張り詰めて、動いている。
主人のやり方を真似てるんだと、俺は理解した。
上気していく体と同じに、いやらしい粘着液はどんどん溢れてくる。
ああ…俺が錆びる… シミが付く… なんだよもう! 怒れねーじゃねーか!
「―――」
俺も呼びてーよ。どうにかしろよ主人。
いくらなんでもこんなマークいらねーだろー!?
うわあぁぁ。出てきた。いっぱい出てきた。つーかイクのか? その前に防水シート敷いてくれー!
「はあぁぁぁぁん…っ」
「…ティエリア…」
へ?
声に、俺もティエリア・アーデも止まった。
うわ…本当にきた。
何で来るんだよ…あんた地球だろ、今。どんな受信機積んでんだよ、ウチの主人。
「ティエリア」
「あ…」
突然に現れた主人に、ティエリア・アーデは呆然とした後、はっと気付いて
全身を抱くように小さく縮こまった。
反応しまくりつんつんな火照った体も、俺を汚す体液も(泣)隠しよう無いもんなあ。
あ、主人、もう勃ってる。
「ティエリア」
「すっ、すまない、こんな…その、」
混乱して、もうどうしようもないって感じだ。
シートで小さくなってふるふるしてる姿なんざ、お仕置きを待ってる子供みたいだ。
こら主人、見蕩れてるな。
あ、やっぱ早く気付け。俺を汚すコイツの股から垂れてるものに気付いてくれ!
「もう、しないから、こんなつもりじゃ」
「…」
怯える体を、主人が優しく抱きしめる。
おお。これで股間が反応してなきゃ100点だろうになあ。
「怒ってない」
「…ふ」
「ごめん…ティエリア」
全身で抱き締められて、ティエリア・アーデは今度こそ泣き出してしまった。
我慢してたものが噴出したのか、それこそ、今まで見たこともない顔で主人に必死に縋ってる。
長かったんだなあ、一週間。今までなんにも知らなかったからなあ。
主人も、よく頑張ったよな。さ、そのまま二人して部屋に…って、
…おい、ここで押し倒すなよ。
キスは許すよ。でもここ、コクピットだよ。あんたらの命掛けて戦う場所だよ。
つーか、俺、ガンダムなんだけど…
もはや俺に出来る事は、ヴァーチェと同じ、空調を回すことだけだった。
ぐちゅぐちゅずちゅずちゅうるせーよ。あんたら、ほんと股間処理はベッドでやれよ!
はあぁ~、虚しい… これで俺もラブホのベッド…
わざと冷房掛けてやろうかこの野郎。
心で泣きながら、俺は必死で空調を回し続けた。
ふざけんなよほんと…
あー…明日ヴァーチェにグチろう。
「あっ あっ あっ」
「ティエリア…」
「うぅ…ん」
グチって、それから、安心しろって言ってやろう。
少なくとも、ティエリア・アーデは幸せだからな。
なにせウチの御主人が、世界で一番愛してるんだ。それだけは確かだ。
いいよな。殺人兵器が幸せ願ったって。
俺の主人は、股間は我慢弱いけど世界一の男だからな。
最終更新:2008年01月03日 05:01