身体がだるい。
動きたくない。
俺は、ガンダムマイスター失格だ…。
トレミーに回収されたあと、ティエリアは真っ先に自室へ戻ってきた。
着替えもせずベッドに身を投げ出し、今日起こったことを思いかえす。
(俺が、ヴェーダの計画を狂わせた。俺が…)
天井が歪んでみえる。
また俺は泣いているのか…。
「弱いな」
無機質な部屋に声が響く。
それがまたむなしくて…
――コンコン
控えめなノックの音が聞こえる。
――コンコン
まただ。今は寝させてほしい。
――コンコン
ああもううるさい。俺に構うな。ほっといてくれ。
「ティエリア」
低い、しかしまだ大人になりきれていない声が自分の名をよんだ。
それは多分、今1番会いたくない男だ。
「ティエリア」
もう1度名前をよばれる。
…誰が出るか。
「泣いてるのか」
…今のは聞き捨てならない。腹が立つ。
「なんの用だ」
ドアを開けると、そこに居たのは年の割りに幼い顔つきで、自分より随分と背の低い男だった。
やはり、こいつか…
「まだ着替え、してなかったのか」
刹那がいつもと変わらない様子で言う。
こいつは人の話を聞いているのか?
腹が立つ。
「何の用だと聞いている」
「…差し入れ」
その手には暖かい湯気がたつスープ。
「いらない」
「持ってけって、クリスに言われた。何も食べてないだろうからって」
さっさと受け取って、さっさと帰ってもらおう。
とにかく今は誰にも会いたくない。
スープを受け取り、一応尋ねてみてやる。
「用はそれだけか」
刹那は黙ったまま動こうとしない。
ただじっと、こちらを見つめているだけだ。
「…なんだ?…ッ!!!」
ティエリアの柔らかな髪に、刹那の指が触れる。
そして優しくぽんぽん、とされた。
――撫でられた?
「やっぱり、泣いてた…」
刹那の表情が少しだけ歪んでいる。
そういえば、目がまだ熱い。多分相当腫れているのだろう。
――本当にこいつは、訳がわからない。理解不能だ。
喋るのもその手を振り払うのも億劫で、ティエリアは動かないでいた。
――こいつはなんだ。俺を笑いに来たのか?
マイスター失格だとでも言いに来たのか?
自分を優しく撫でている少年を見下ろす。真っ直ぐな瞳が自分を見つめてくる。
「…生きてて、よかった」
――え。
掠れた声。
真っ直ぐな瞳に捕らえられる。
目をそらせない。
動けない。
「…ん」
柔らかな、触れるだけの幼い口づけ。
唇が離れる時、また頭を撫でられた。
「用は、それだけ」
少年は用を済ますと、さっさと自分の部屋へ帰ってしまった。
――ティエリアは部屋に戻るとベッドに腰かけ、先ほど刹那から差し入れされたスープを飲んだ。
少し冷めてしまったが、まだ温かい。
「生きてる、か…」
――全く…
唇に触れてみる。
少年の温もりが残っているようだ。
「…理解、不能だ…―」
最終更新:2008年03月11日 00:11