もしティエリアがサッカーに参加したら
─ソレビが武力介入を始めて、数ヶ月。
スメラギの元にエージェントを介して、国際軍サッカー連盟から2ヶ月後の次期大会への正式な参加要請が届いた。
国際軍サッカー連盟は、その名の通り、各軍隊が加盟するサッカー団体で、
国・クラブチームのそれとは一線を画す存在である。
ユニオン軍・人革連軍・AEU軍及び第三勢力である中東連合軍が、4年に一度
一堂に会し、互いのサッカー技術の優劣を競う。
各軍の親睦と友好を図り、それによって可能な限り軍事的衝突を避けようというのが、
開設当初の理念であった。
しかし回を重ねるごとに、大会はただの友好スポーツイベントではなく、国対抗のワールドカップをしのぐ勢いで、
各連合の威信を掛けた抜き差しならぬ国威発揚の場へと転じていたのであった。
当初は情報秘匿のためマスク着用が義務付けられていた本大会だが、回を重ねるごとに
プレーの邪魔になるマスクを付ける軍は徐々に減少していき、遂には各軍から選抜された
エースたちが、惜しげもなく顔面を晒し、本格的な競技を行うようになっていた。
実際にただの友好イベントという理念はすでに形骸化しており、各軍が4年間みっちりと
訓練した、優秀な選手達はワールドカップの優勝国の選手と比べても見劣りしない技術を有していた。
選手の個人情報は完璧なセキュリティによって保護され、またここで得られる
他軍等の各種の情報を、自国の利益に還元する事は紳士協定で禁止されていた。
大会自体は、軍部の要請により原則非公開であったが、早い時期から人民の関心を集め、
多くの人間が戦況予測をカフェで、家庭で、職場で、戦わせていた。
映像こそ流れないものの、試合の経過及び結果などはリアルタイムで放送され、
高い視聴率を集める人気イベントとなっていたのである。
各軍がエレベータを挟んでにらみ合っているこのご時世、軍対抗戦である本大会は、
まさに絶対に負けられないという覚悟のもとで行われている。
実際に無様なオウンゴールでもかまして負けようものなら、軍内はもちろん平和なはずの公園の散歩さえ満足に出来ないほどの切迫ぶりであった。
大会の規定要綱のコピーをじっくり読み上げながら、トレミークルー達がテーブルに座り、
参加に関する会議を行った。
「この大会に招かれたという事は、ついに私達が国際社会に認められたと言う事ね…。」
スメラギが感慨深げに言った。
彼女だけでなく、ほとんどのクルーがサッカーを少なからず愛している。
みんな一様に幸せそうな表情を浮かべていた。
表情を曇らせているのは、地上人の趣味嗜好等にはほとんど関心のない、ティエリアだけであった。
「俺は反対です。たかがサッカーの試合とはいえ、我々の姿を晒すなどありえない。」
ティエリアが当然のごとく反対した。
「でもね、この大会は秘匿義務が課せられているの。だから、たいした問題はないわ。
どこの軍もエースを投入してくるし…。」
スメラギが説得にかかり、他のクルー達が熱く見守った。ティエリアが舌打ちする。
「秘匿義務?ただの紳士協定でしょう。罰則さえ満足に定められていないというのに…。」
「今までの数百年、その協定が反故にされた事は一度もないわ。」
「しかし…。」
「伝統の重みというのを甘く見てはいけないわ。各軍が威信をかけて参加する大会なのよ?」
押され気味のティエリアに、クルー達の顔がどんどん明るくなっていく。
「ぐ…っ。しかし、我々は正規軍ではなく、私設武装組織です。
世界ではテロリストとして認知されているはずだ…!そもそもこの大会への参加資格など…」
「だからだよ。」スメラギの言を留めて、サッカー大好き人間のロックオンが熱く語り始めた。
「ティエリア、これはすごい事なんだぞ!?今までテロ組織が招かれた事なんて一度もないんだ…!!
俺たちが軍に匹敵する武装組織だって、国際社会が認めてくれたんだぜ!?」
「うん、僕もそう思うよ。」アレルヤが穏やかに同意した。
「この大会は世間の注目を集めている。まあ最近は各軍の代理戦争みたいな面も
確かにあるけど、一応建前は友好親善スポーツイベントだ。
僕たちがただの危ないテロ集団ではなく、きちんと理念をもった組織だって事を
証明するチャンスだよ…。それに、たとえ1勝でもすれば、国際社会の評価も高まる。
参加する意義は大いにあると思う。」
「……。」どうやら、全員の意見は一致しているようだった。
それでも不満げなティエリアに、刹那がぼそっと呟いた。
「ユニフォーム…。お前のパーソナルカラーにしても…いいと思う…。それに…10番もやる…。」
「…………。」
「そうね。ユニフォーム作らなきゃよね…!うん。紫で行きましょ。
他チームともかぶらないし。エースナンバーもあなたにあげる。ティエリア、いいわね?」
スメラギはじめ全員が期待に満ちた表情でティエリアを見つめる。了承しないわけには行かなかった。
「…。分かりました。ただし、やるからには、当然優勝を狙う。
準備不足は言い訳にはならない。特訓が必要です。
それなりのメンバーを選抜して行わねばなりません。」
「問題ねえよ。俺たちはヴェーダによって選ばれた存在だぜ?
いくら訓練積んだとか言っても、地上の兵士どもに負けるわけねえ。
実際俺は4歳からプレーしてる。」
ロックオンが嬉しそうに言った。
「うん。僕も研究所でみっちりしごかれたよ。身体機能の強化だっていう名目で…。」
アレルヤが切なげな目をした。
「俺の…唯一の楽しみだった…。」刹那が遠い記憶に思いをはせた。
その後、クルーがサッカー体験を語り始め、プロからのスカウトを
マフィアの抗争のために蹴った過去のあるラッセ・アイオンはじめ、
全員が何らかの経験を積んでいる事がわかった。
現段階で参加可能なのは、マイスター4人組、スメラギ、クリス、フェルト、ラッセ、
リヒテンダールのブリッジクルー及び整備のイアン・ヴァスティだ。
「ああ、私は無理だぞ?もう年だからな。」クルーの中で最年長のイアン・ヴァスティが、辞退したが、
彼には地元のユースチームを長年指導した過去があったため、満場一致で監督に推された。
「とりあえず9人か…。あと最低2人は確保しないと…。王留美にかけあってみるわ。
イアンさん、ヴェーダと作戦協議お願いします。」
「任せなさい。私が監督する以上、確実に勝てる戦略を練り上げてみせる。
各人、早速今日から練習を行ってもらう。あと2ヶ月しかないが、みんな私の望む次元にまで成長してくれるものだと信じているぞ…!」イアンが発破を掛け、全員が奮い立った。
トレミーが一気にスポ根臭に華やいだ。
スメラギが即座に王留美に連絡を取り、選抜の依頼を行い、メンバーがそれぞれ
ジャージに着替えてトレーニングルームに集まり、練習のためのスペースを確保した。
「じゃあ、早速みんなの実力を確かめる。ラッセが上手いのは分かっているが、
まずは全員、基本のボールタッチを見せてもらおう。」
イアンが笛を片手に厳しい目つきでチェックに入る。
「ボールがありません。」
紫ジャージに着替え準備万端のティエリアに、ロックオンが余裕で応じた。
「何言ってる?ちゃんとあるぞ、そこに。」
ロックオンの視線の先に、ハロとその弟4体がぴょこぴょこ飛び跳ねていた。
「………。まさかアレを使うつもりか?全く…。これじゃ先が思いやられるな…。」
「な~に…。見てなって。」
「ア~~。」
呆れて物も言えないティエリアに見せ付けるように、ロックオンがハロを抱え、
颯爽とリフティングをはじめた。
軽やかにハロが宙を舞い、ロックオンの足に的確に吸い寄せられる。
永遠に続くのではと思わせるほど、乱れのないボール捌きに、全員が目を奪われた。
「さすがだな。いつも練習してるの、知ってたぞ?みんなも見習いなさい。」
イアンが感心して言った。さすがのティエリアも魔法のような脚の動きに、舌を巻いた。
「へっ…!ティエリア、ハロはサッカーボールに合わせたサイズで作られてんだ。」
ロックオンがリフティングを続けながら言った。
「大きさも重量も国際標準に同じ…!しかもハロなら地上のあらゆるコンディションに
応じたボールの動きの再現が可能ってわけさ…。天候、湿度、芝の重さ…。
日頃まともなトレーニングの出来ない俺たちには、最高のパートナーだ。」
ロックオンが言い終わると、すでに100回を優に越したリフティングを中断し、
ティエリアにハロを蹴ってよこした。ティエリアが両手で受け取る。
「やってみな。」メンバー全員が期待に満ちた表情でティエリアを見守った。
「………。」無表情のまま、暫くハロを見つめていたティエリアが、おもむろにリフティングをはじめる。
「ア───!!」ハロの悲鳴が響き渡った。
ティエリアが力加減も出来ずに思い切りハロを蹴飛ばしてしまったのだ。
ハロが吹っ飛び、壁にぶつかり鈍い音を出した。
ティエリアの動きは誰が見てもど素人と分かるものだった。
「もしかして…経験ないのか?」
表情を凍らせたイアンの言葉に反抗するように、ティエリアがつんと顔を上げた。
「別に大した問題ではありません。サッカー技術のマスターなど、ガンダムの扱いに
比べたら取るに足りません。」
「しかし…試合まで2ヶ月だぞ?他のみんなはラッセやロックオンほどとは
行かないまでもそこそこの実力があるから問題ないが…あまり足を引っ張るようだと…」
「言っておくが、俺は絶対に出場します。こんな重要な大会、他人には任せておけません。
2ヶ月あれば十分です。必ずチーム随一のレベルにまでなって見せます。失礼。」
肩をそびやかして踵を返し、早速ルール確認のためにヴェーダのデータルームに向かい、
わずか数十分でルールと基本テクニック及びかなり高度な攻撃・守備パターンを
脳みそに叩き込んだ。あとは、この知識を練習で体に覚えさすだけだ。
確かな道筋がはっきり見え、ティエリアはミッションの成功を確信した。
それから2ヶ月。ティエリア達は確かな進歩を遂げていた。
彼らの実力は4年前の優勝チーム、ユニオン軍に比べても見劣りしないものとなっていた。
全てはイアン・ヴァスティとヴェーダの提案する効率的な練習と、あらゆるパターンに
応じた動作を行うハロのおかげだった。足りなかったメンバーも、地上から補強した。
加わったのは王留美のボディーガード紅龍と、アレハンドロ・コーナー子飼いの不思議少年リボンズだ。
やる気満々の紅龍はともかく、気の抜けた様子のリボンズは不安要素ではあったが、
アレハンドロお墨付きの技術に、イアンはしぶしぶ了承した。
「補欠には私とコーナー様を登録しておいて下さって結構ですわ。
私たちもサッカーは大好きですが、なにぶん実戦からは遠のいております。
皆さんが退場などして出場なんて事態は、避けてもらいたいところですけど。」
王留美が相変わらずの生意気調子で言って、それがメンバーを一層奮い立たせた。
─大会3日前。例年通り試合直前に対戦カードが決定した。
参加資格が軍隊のため、死者や負傷者によるメンバー変更をギリギリまで回避するためである。
5チームが参加する今大会で、ソレビ代表はかなりの強運を発揮し、2回勝てば優勝という、いいポジションに入った。
一回戦の相手は参加チーム中最弱の中東連合だ。
このチームは近接8大会、全て初戦敗退の憂き目を味わっていた。
今大会でもたいした実力アップはなされていない見込みで、普通にやればソレビ代表の
圧勝は確実とヴェーダとイアンが予測した。
順当に勝ち上がれば、その次の対戦相手はユニオンだろうとヴェーダが予測した。
優勝候補ユニオンは一回戦でAEUと対戦、おそらく2‐0で勝利。
その後一回戦を不戦勝の人革連と対戦、1‐0で辛勝とのヴェーダの予測に、イアンも同意した。
早速イレブンが最も手強いユニオンを見据えての、最終調整を兼ねた練習で汗を流す。
ヴェーダとイアンが構築したシステムはオーソドックスな4‐4‐2。
DF4枚にクリス・フェルト・リヒテン・ラッセの日頃から統制のとれている
ブリッジクルーを配し、守備的MFにはアレルヤとリボンズ。
司令塔はダブル看板のロックオンとスメラギだ。
二人は状況判断に優れ、個人技で攻めあがる事も可能だ。
FWは小さいながらも、こまめなドリブル突破で得点力のある刹那と、
素人あがりながらシュートコースの見極めにはやけに鼻が効くティエリア。
そして守備の大黒柱、KPには身体能力に優れ、敵味方構わず無言の圧力をかけまくる
妙な気合充分の紅龍という布陣になった。
全員でシステムの確認を行い、実戦さながらにボールを廻し、意思疎通を明確にした。
最後にPKの練習を念入りにこなし、この分なら優勝も不可能ではないという手応えを全員が感じていた。
いい汗をかき、練習終了が近づいたその時、ロックオンが重大な事を思い出した。
FKとCKである。当然、チームでもっともコントロールの上手いロックオンが、FKを蹴る。
ロックオン自身は2ヶ月前から毎日あらゆるコースで、練習を重ねていたので、
その精度には何の問題もなかったが、忘れていたのは壁の練習であった。
相手にFKを与えた場合、上を抜かれるか下を抜かれるか。その後のポジショニングは…?
やる事はたくさんあったのに、ロックオンのFK連習中、各人の個人トレーニングを
優先するあまり、壁の練習を怠っていたのだった。
早速イアンに進言する。イアンが表情を曇らせた。
「今からだとやれる事は限られているが、FKは相手にとっても重要な得点源だ。
みんな、直ちにポジションを確認しなさい。」
イアンが指示を出し、さっそく練習に入る。
ハロがあらゆるコースで、相手の狙ってくるであろう弾道を的確に再現した。
その内に、素人のティエリアにも段々とディフェンスのコツがわかってきた。
「ティエリア、やるじゃないか。この分だと、壁も充分任せられるな。」
ロックオンに褒められて、「問題ない。必ず随一のレベルに達してみせると2ヶ月前に言ったはずだ。」
内心嬉しかったが、決して表情に出す事無く、いつも通り淡々と答えた。
最後に、ロックオンが強烈な弾丸FKを練習したいと言い出した。
雨でぬかるんでいる場合などは、ヘタにコースを狙うより相手の穴を通す方が有効な場合もある。ティエリアも壁に加わり、ロックオンのキックに備えた。
床に置かれたハロ目がけ、ロックオンが数メートル後ろから助走をつけて走りこむ。
ザシュッ!!思い切り蹴飛ばした。
ハロがものすごいスピードでゴール目がけ直線に飛び、壁にぶち当たった。
ぼかっという嫌な音と共に、「ぐああッ──!!」大きな悲鳴が響き渡った。
声の主はティエリアだ。床にうずくまり、体を震わせている。
大事な選手が故障─!?補欠が足りないというのに…!
イアンとロックオンがすぐさま駆け寄り、状態を確認する。
まわりの選手が心配そうに覗き込んだ。ティエリアは股間を抑えて痛みに悶絶している。「おい…!!お前手でガードしてなかったのかよ!?」
ロックオンが慌てて記憶をたどり、壁の様子を反芻した。
刹那やアレルやは確かにキックに備え、股間を手で抑えていた…。
スメラギはむしろ腹あたりをガード…。
ティエリア…ティエリアは……ガードしてねえ…!!
ロックオンがイアンと顔を見合す。
「ダイジョーブ!?ダイジョーブ!?」ハロがピョンピョン飛び回った。
イアンが即座に対処する。
「ティエリア。医務室に行ってチームドクターに診てもらいなさい。おい、担架!」
刹那とアレルヤが担架を取りに走るのを、ティエリアが止めた。
「く…。も…問題ない…。歩いていける…。」
「おい…大丈夫か?」
覗き込むロックオンの後ろで、くすっと失笑ぎみに笑うリボンズの姿が目に入り、
ティエリアは必死で強がって立ち上がった。
「一人で…大丈夫だ…!みんなは…最終チェックを…!!」
よろよろと歩き出したティエリアの後姿に、ロックオンが勇気付けるように大声で叫んだ。
「一応ハロを付き添わせる!ハロなら、健康状態の把握も可能だしな。
俺たちは弟で練習するから…!!」
ハロと色違いの同形メカが、ティエリアとすれ違ってロックオンの元へ飛んでいった。
痛む股間に余計な刺激を受けない様に、しずしずと医務室に向かう。
(く…!こんな時期にこの様な事態になるなんて…なんという失態だ…!
たいした事がなければいいが…。次は確実にガードしなければ…!!)
ハロがティエリアを見守るように、後ろから静かについて行った。
「う~ん。大した事ないね。ま、多少痛むかもしれないけど、明日には腫れも引くだろう。」
ドクターの見立てに、ティエリアは安心してほっと息を吐いた。
「ただし、今日は安静にしておきなさいよ。大事な場所だからね?」
「了解しました。」
「ヨカッタ!ヨカッタ!」嬉しそうなハロに、心が不意に安らいだ。
たとえ機械でも、知能は人間並みだ。こ
んな時にはうざったい人間よりも、むしろメカの方が心安い。
飛び跳ねるハロの姿に、ふっとティエリアの表情が緩んだ。
「しかし、随分荒っぽい練習をしているのかな?
てっきり親善試合程度だと思っていたのに…。今からでは遅いが、練習に立ち会った方がいいな。
選手の健康状態もチェックしなければ…。」
ドクターが救急セットを手早くまとめ、ティエリアに向き直った。
「俺は構いません。行ってください。」
何か言う前に、こちらから進言し、ドクターが軽く頷くと、医務室を去っていった。
一人残されたティエリアがベッドに横たわったまま、ハロを見つめる。
「ティエリアイタクナイ?イタクナイ?」
「大丈夫だ。痛くない。」思いがけず優しい声が出た。
ハロが嬉しそうに目をピンクに点滅させ、ベッドに飛びあがり、ティエリアの腹の上に乗ってきた。
「ぐっ…!」
軽い衝撃でしかなかったのに、腫れあがった股間を刺激されて、鋭い痛みが走った。
「ゴメン!ゴメン!」ハロがわずかに浮き上がり、ティエリアの歪んだ表情を伺った。
「く…。平…気だ…」痛みがまだ続いていたが、それでも何とか強がった。
ハロの目が状態を探るように、急に点滅をはじめた。
既に20回は点滅しているのに、まだ点滅が治まらない。
(故障…か?)ティエリアが不安になり、ハロの状態を確かめようと手を伸ばした。
その時ハロの点滅が更に激しくなり、ティエリアの手をさっとかわすと、ぴょんっと飛び上がった。
「ティエリア、疼痛ゾッコウチュウ!ハロチリョウカイシ!」
1mほど上からティエリアを見下ろすと、そのまま急降下し、布団に一気にもぐりんで来た。
「……!!」
何か柔らかいものが肌に触れたかと思ったら、一気に下着とズボンを脱がされてしまった。
布団の中から、ズボンとパンツが放り出される。
何がなんだかわからず混乱するティエリアに、すぐに新たな刺激が加えられた。
「ああう…ッ…!」
一瞬下半身の痛みを忘れ、快感が走った。びくんと腰が跳ね上がる。
この感触…。冷たく濡れた何かが、敏感になった下半身にまとわりついている─!?
快感の大元を確かめようと、ティエリアが布団に手を掛けた。
「は…やあああッ…!」ペニスに絡んだ何かが、緩やかな蠕動運動をはじめたらしく、
急速に広がった快感で、大きな声が出てしまった。
自身がどんどん形を変えていくのが分かる。
布団が心なしか持ち上がり、その中で自身が完全に勃起した事を教えた。
冷たい粘着質のものが、勃ち上がったペニスに強く絡みつき、今度は急速に上下に
扱き上げはじめ、堪らず声が出てしまう。
「く……ッ…あ…ああッ…!」快感に表情を歪めながらも、なんとか布団を剥ぎ取った。
「───!!」目に飛び込んできたのは、やはりハロだった。
しかしいつもとは様子が違う。
ティエリアのわずかに開いた太ももの間に陣取り、妖しく目を点滅させながら、
ぱかっと開けた口から、オレンジ色の触手を何本も出していた。
冷たく湿っている細い触手が、太くひとまとめになってティエリアの下半身を
くねくねと扱き上げている。
「な…ハ…ロ…!?あ…ああッ…!!」
その光景はティエリアの理解を遥かに超えていた。
冷静に思考しようと思うのに、与えられる快感でまるで頭が動かない。
それでも何とかハロを引き離そうと、がしっと捕まえたが、その瞬間にハロの触手が
ぎゅっと締め付けてきて、強い快感が走り、腕から力が抜けた。
「シンパイナイ!シンパイナイ!ティエリア、キモチイイ!」
ハロの機械的な声の示す通り、ティエリアは完全に性的快感にやられてしまい、
抵抗も出来ずにきつく目を閉じて下半身の快楽に酔った。
「うう…あ…あああ…」
耳に届く声は自分で聞いてもいかにも気持ち良さそうで、乱れる呼吸と共に余計に情欲を煽る。
ハロがさらに締め付けながら、触手の上下運動を速めた。
「ぁああ…ああ…!」
熱い息を吐きながら、ティエリアの腰が前後にいやらしく揺れ始め、
その度にベッドがカタカタ軋んだ。
「ティエリア、フルボッキ!モウイク!モウイク!」
ハロの声が響く。
「く…うう…」ふと目を開けると、
目の前に完全に勃起し、ヒクヒク痙攣しながら発射直前の様相を呈す、いやらしい自身が目に入った。
(すごい…)思わず感心した次の瞬間、すすっと上下に大きく扱き上げられ、限界が急に訪れた。
「あ…ッ…!イ…ク…!!」
びしゅっ!!ティエリアが叫ぶのと同時に、飛沫が勢い良く数回発射され高く宙を舞った。
「ハロ、サイシュ!サイシュ!」
がくっと力が抜けたティエリアから触手をさっと外すと、飛沫の着地点を予想して
ポジションを変更し、大きく口を開けた。
「………。」言葉も出ないティエリアの目の前で、ハロが全ての白濁を
完璧に口中に受け止めた。
ハロが満足そうにごくっという妙な音を出した。
すぐに、今度は緑色に目が点滅し始め、ウイインというかすかな機械音が聞えてきた。
「シンタイジョウホウ、カイセキシマス!カイセキチュウ…カイセキチュウ…」
「…。」ハロが電算を開始する。
「カイセキシュウリョウ!カイセキシュウリョウ!」
ピピッと音が鳴り、ハロが嬉しそうにティエリアの目の前で飛び跳ねた。
「データ、テイキョウシマス!」ハロが報告をはじめる。
「ヒケンシャ、ティエリア・アーデ。ダンセイ。スイテイ16サイ。
ホンジツノセイエキブンピツリョウ…」
「余計な事はするな!!」
ティエリアがようやくまともな思考回路を取り戻して、恥ずかしい解析をはじめた
ハロを片手で跳ね除けた。
「ア~~!!」
ハロが吹っ飛ばされ床に転がり、脱がされたティエリアのズボンと下着の近くに着地した。
「く…!」ティエリアが即座にベッドから飛び降り、下着に手をやる。
既に元に戻ったペニスが、ハロの出した得体の知れない液体でまだ卑猥に光っている。
「くそ!」テーブルの上にあるティッシュを取り、素早く液体を拭き取った。
もう、痛みはなかった。
「ハロ、チリョウシタ!チリョウシタ!ナンコウヌッタ!ナンコウ!」
ハロがティエリアの下半身の前に飛びあがり、ぱたぱたと手をはためかせて自分の功績をアピールする。
「く…余計なお世話だ…!」
顔を真っ赤にしながらさっさとパンツとズボンをはく。
その時、誰かがドアをノックした。驚いてティッシュをゴミ箱の一番下に紛れ込ませ、
苦い匂いをごまかすために布団をばほばほする。
「ティエリア、俺だ。ロックオンだ。」
部屋の外で、ロックオンが律儀にティエリアの返事を待っている。
その声に反応し、ハロが再び緑色に点滅する。
「ロックオン・ストラトス。24サイ。ゼンカイノケンサケッカオシラセシマス。
ヒケンニチジ…フツカマエ…セイエキブンピツリョウ…ア~!!」
ティエリアのパンチが再び容赦なく飛び、ハロが扉にぶち当たった。
「お…おい…?ティエリア…?」ドア越しに、ロックオンの戸惑った声が聞える。
(ロックオン・ストラトス…。まさかいつもこんなふざけた事をしていたのか…!?
ハロは仮にもデュナメスの機能を一部担う存在だぞ…!
ボールにするだけでは飽きたらずよりによって体液を混入させるなんて…故障でもしたらどう責任を取るつもりだ?
まったく、適性に欠けるとしか言いようがない…!!)
怒りがふつふつと込み上げる。
ロックオンがいつまで待ってもない返事に、遂に待ちきれず、
「ティエリア…入るぞ…?」一応声を掛け、そっと中に入ってきた。
「う…」途端にティエリアに睨みつけられ、たじろぐ。
「ティエリア、練習は無事終わった…。みんな心配してたぞ?大丈夫か?」
ボールを思い切り蹴りつけられた事を、まだ怒ってるんだな…。
ロックオンが完全に勘違いしながらも、大人の対応で優しく声を掛ける。
ティエリアがつんっと顔を背け、脇をつかつか通り過ぎ、さっさとドアを開けた。
「別に心配など必要ない。そっちこそ、今後一切ふざけた行為は止めろ。
我々が少人数で戦闘を行わねばならない、武装組織であるという事を決して忘れるな。」
「あ…ああ…。悪かったよ…。すまなかった…。怪我させて…」
勘違いした会話だったが、気の咎めるロックオンが、謝った。
「ロックオン、チガウ!ロックオン!」
ハロが会話に乱入してきて、怒り心頭のティエリアがぎろっと睨みつけた。
「おいおい、ハロは悪くないぞ?…そうか!!」
ロックオンが、ハロの言葉に妙案を思いついた。
「ちょっと待ってろ!」そう声を掛けると、急いで自室に戻り、大事にしまっておいた
プロテクターを取り出し、全速力で医務室に走る。ティエリアは既に廊下を移動中だった。
「おい、待てよ!ほら、これ。下半身ガード用のプロテクターだ。
お前はディフェンスに慣れてないし、FWだから相手のDFの攻撃をモロに受けるだろ?
これさえあれば下半身の守りは完璧ってわけだ。」
「……。」ロックオンの差し出したプロテクターに、嫌な悪寒が走る。
「ロックオン・ストラトス…。もしやこれを使用したという事は…。」
「…?使ったに決まってるだろ?別にたいした事じゃ…」
「……。辞退する。俺にはまったく必要ない。明日はもう移動日だ。休ませてもらう。」
冷たく言い放って、後は一切振り返らずに自室に戻り、興奮した頭を冷ますように、
試合のイメージトレーニングを念入りに行った。
地上に移動して2日─。各チームとも最終調整を終
え、いよいよ大会が開幕した。
ソレビ代表は緑に映える紫のユニフォームを着込んで、意気揚揚と会場に乗り込んだ。
民間非公開のため、観客は軍関係者のみだ。
ソレビはその特殊な組織形態に加え、初出場の情報不足により、他チームの注目を集めていた。
多くのスコアラーがスタンドに詰め掛け、詳しいデータを取るべく目を光らしている。
異様な雰囲気の中、第一試合のソレビ対中東連合戦が始まった。
「いいか?我々には世界の注目が集まっている!勝ちは絶対条件だが、
ここで圧倒的な勝利を収めれば、かなりのプレッシャーを与えられる…!いいな!!」
「おおーー!!」円陣を組んで気合を入れ、いよいよキックオフとなった。
試合は、ヴェーダの予測どおりソレビの圧倒的優位で進んでいった。
前半の早い時間帯、簡単にティエリアが2得点し、DF陣は完全に相手の攻撃を封じ込めた。
中東連合は完全に試合を支配され、防戦一方でシュートさえ満足に打てない状態であった。
前半終了間際、相手DFを華麗なドリブルでかわし、刹那がゴールを決めた。
2分後、笛が鳴り、前半終了。ロッカーに戻り、後半の試合展開の打ち合わせをする。
優位に立つため、取れるだけ点を取らねばならない─。選手がさらに奮い立った。
そして、後半。中東連合は打つ手を完全に失い、哀れなほどの惨状だった。
ティエリアがミドルシュートで得点して、ハットトリックを達成した後、
刹那が続けて2得点してハットトリックを達成。
その上、ロックオンがCKを鮮やかに2回も決めた。
ピーッ!大きく笛が鳴って試合終了。結果は8‐0の、圧勝だった。
想像以上の実力にスタンドが息を呑み、しーんと静まり返った。
ピッチに疲れ果てて座り込む中東連合の選手の脇を悠々と、勝ち誇って横断する。
その様子を見ながら、観戦していたグラハム・エーカーが、ビリー・カタギリに囁いた。
「カタギリ…。奴らは思った以上の実力の持ち主のようだな…!」
「ふっ…。初出場にしては…だろう?」
カタギリが余裕の笑みを浮かべた。
「君なら、抑えられるというのかね?特に、あの小さいFW…。
ドリブルが上手いが、それ以外にも妙なセンスがあると見た。
ああいう選手は何をするか予測がつかんから、厄介だ。」
グラハムが刹那の後ろ姿を眺めた後、伺うようにカタギリを見つめる。
「ふふ…。君は生粋のレジスタだからね…。でも、問題ないよ。忘れたのかい?
僕は4年前のMVPだよ。どんなファンタジスタでも、止めて見せる。」
カタギリの瞳が眼鏡の奥で妖しく光った。
「というかむしろ僕はあの女みたいな顔をした10番の方が気になるね…。
動きは素人臭いけど、試合勘は抜群だと思うよ…。
まるで上から見下ろしてるみたいに3次元でピッチの状態を把握できてるみたいだ。
彼は厄介だよ?…対戦することになったら、僕が彼に付こう。」
「ふっ。さすがに頼りがいがある…。いいだろう。君のDF能力、しっかりと見せてもらう。」
「その前に、AEU戦があるのを忘れてないかい?その後は人革戦だ。先走るのは、君の悪い癖だよ…。」
「カタギリ。私の推測はいつも正しいのだよ。
AEUも人革もソレスタルビーイングに比べれば我々の敵ではない。
奴らの情報は皆無に等しい。今からソレビ戦に備えておく必要があると思うがね。」
ふっと、カタギリが不適な笑みを浮かべる。
二人並んでスタンドから、ピッチ上を悠然と横断するソレビの面々を見下ろした。
「勝つさ…。どんな手を使っても…ね。」
カタギリが意味ありげな笑みを浮かべたまま、遠くのティエリアをじっと見つめた。
それから5日の内に残りの試合が行われ、優勝を賭けたソレビの対戦相手が決定した。
やはり、下馬評どおりの実力を見せた、ユニオンである。
スコアは対AEU戦で2‐0、対人革戦で1‐0。
ヴェーダの予測どおりの結果となったが、ユニオンは司令塔グラハム・エーカーはじめ、
ダリル・ダッジらフラッグファイターを惜しげもなく投入し、点差以上の強さを誇った。
守っては、DFとしてのMVP獲得は史上3人目の快挙という、ディフェンスの鬼ビリー・カタギリがラインを統率し、高いDF個人能力でも、相手を完全に封じ込めた。
「げに恐ろしきは、このビリー・カタギリだ。年はいってるが身体能力は4年前と
なんら変わりない。しかも、DF能力は更に研ぎ澄まされている…。」
イアンが滞在中のホテルの一室に選手を集め、最後の作戦を練った。
「それだけじゃない。」
こちらのDFの要、ラッセ・アイオンが備え付けのTVにデータを映した。
カタギリの、ディフェンス風景がアップで映っている。
「こいつのすごい所は、この反則ギリギリのラフプレーだ。
やばくなるとギリギリのプレーで止めてくる。
審判も分かってるが、どれだけ注意していても必ず死角を作って止められる。」
イアンが同意して続ける。
「しかも、シミュレーションが抜群に上手い。最近は厳しくなっているから露骨な事は
せんようだが、不用意な接触は避けないと、一発レッドという事も充分ありえる。」
スローで、カタギリのシミュレーション風景が映し出された。
相手の足は体に触れていないのに、カタギリがいかにも後ろから足を出されました、
という感じで派手に転んでいる。
即座に審判がレッドカードを提示し、相手選手の抗議を問答無用で却下した。
イレブンがぐっと息を呑んだ。
スローだから分かるものの、これを現場でやられたらどうなるか…。
ましてやラフプレーの名手ときている。ティエリアはその動きを、素早く頭にインプットした。
「特にFW陣、気をつけろ。おそらく奴がマークにつくのは、ティエリアだろう。
出来るだけ刹那にボールをまわして、ゴールを狙う。
刹那はドリブラーだし、ボールを持っていれば反則も受けにくいからな。」
別に自分が決めなくても結果としてチームが勝てば、それでいい。
FWとしては得点王を狙いたい所だが、至上命題である優勝のためには
多少の自己犠牲もいとわない。ティエリアが刹那と目を見交わして、強く頷いた。
「ミンナガンバレ!ゼッタイカテル!ユウショウ!ユウショウ!」ハロが勇気付ける。
全員から闘志が湧き上がり、今、完全にチームが一体となった。
──明日は必ず勝つ!!
そして夜が明けた。天候は全く問題のない五月晴れ。
湿度も、芝の状態も完璧なコンディションだ。
入場の音楽が鳴り響き、2チームの選手がピッチに入場していく。
ティエリアがふと横を見ると、水色のユニフォームを纏ったカタギリと目が合った。
にっこりと微笑みかけられて、思わず目をそらしてしまう。
さすがに前大会MVPの迫力なのか、明らかに中東連合とは別格の趣のある、
ユニオン代表の中でも、カタギリは一際大きな威圧感を放っていた。
イアン・ヴァスティがユニオン代表監督の名伯楽、レイフ・エイフマンとピッチサイドで握手を交わす。
「初出場でユニオンと戦えるなんて、本当に名誉な事です。
満足な試合が出来るかどうかも分からない新参者ですが、胸をお借りしますよ。」
エイフマンが老人とは思えない強さで、握ったイアンの手をぎゅっと握り返した。
イアンの顔が歪む。エイフマンが、握手とは裏腹に丁寧に応じた。
「またまたご謙遜を…。初戦を見ればそちらがどれだけの実力の持ち主かぐらいは
この老眼にもちゃんとわかります。日頃のいさかいは忘れて、今日はお互いいい試合をしましょう。」
監督同士が、力強い握手を交わし、鋭い視線で牽制し合った。
審判を挟んで整列し、コイントスの後、いよいよキックオフの瞬間がやってきた。
相手FWのダリル・ダッジがゆっくりとボールをグラハムに回す。
両選手がピッチに広がる。
やはり、イアンの予測どおり、ティエリアにはカタギリがマークについた。
予想通り、中東連合のDFとは大違いの能力だ。
ティエリアに、決してスペースを与えない。
その上、ラインを完璧に統率してオフサイドトラップを仕掛ける。
「く…ッ」
動きを封じられるもどかしさに、ティエリアが唸るのを不適な笑みを浮かべて
挑発する様に見つめてくる。
しかしそれ以外の両チームの実力は、拮抗していた。
お互いに攻守がめまぐるしく入れ替わり、両方に決定的なチャンスが数回訪れた。
それを互いのDFとKPが、必死に守り抜く。
試合はその激しさとは裏腹に、前半15分を過ぎてもなお0‐0のままであった。
やがて、心なしかソレビが押しはじめた。
初出場のため過去のデータが満足にないのが幸いしたのか、意表をついたパスや
ドリブル突破が面白いように決まり始めた。
相手のDFラインが崩れる。
カタギリが何度もフォローにまわり、ティエリアへのマークがおろそかになった。
マークのきつくなった刹那に代わり、ティエリアにボールが集まり始める。
カタギリが決して反則を取られない強さで、体をぶつけてくる。
最初は簡単に封じ込められていたティエリアだが、何度も対戦するごとに、
カタギリのクセが分かってきた。昨晩のデータ研究が役に立ったのもしれない。
ティエリアが華麗にターンドリブルでカタギリを交わす。
すぐ目の前に、敵ゴール。
「く…!」カタギリが慌てて反則覚悟で手を伸ばした。
が、ティエリアの加速の方が遥かに早く、一瞬で置き去りにされた。
呆然と見送るカタギリの目の前で、ティエリアが強烈なシュートをゴールネットに突き刺した。
完全なアウェーの会場が、一気に静まり返った。
沈黙の中、イレブンが歓喜の表情で駆け寄り、ティエリアを担ぎ上げ、興奮して走り回る。
あのカタギリが簡単に抜かれてしまった…。
前半20分の時間帯にもかかわらず、あまりに衝撃的なその光景は、
ユニオン軍に敗退の2文字を予想させるに充分だった。
「カタギリ…。」グラハムが、屈辱に打ち震えるカタギリの背中におずおずと声をかける。
あんなに見事に抜き去られたのは、長い付き合いの二人の記憶でも、遠い昔の事以来だった。
カタギリがきつい目をしてグラハムを振り返る。
まるで見たことのない、冷たい目つきにグラハムが思わず緊張した。
しかしすぐに、カタギリがいつもの微笑を浮かべ、いつも通りの物腰柔らかな物言いで
グラハムに向き直った。微笑が、余計に怖い。
「だから、言っただろう?あの10番の方が気になると…。たいした選手だね、彼は。
正攻法だけでなく、足や手まで使って止めようとしたのに、抜かれてしまうなんて…。
あれ以上やると、さすがに審判に笛を吹かれる…。」
「カタギリ…。」
「ふふ。問題ないよ。必ず、止めるさ。
……新しい技を使う事にするよ。僕はもう代表引退を考えている。そんな年齢になった。
有終の美を飾って、ピッチを去りたいんだ。」
カタギリの目に強い意志が宿ったのを、グラハムが敏感に察知した。
若い選手の台頭により、ベテランがユニフォームを脱ぐ。
力づくで押しやられる事もあれば、自分で限界を感じ、身を引く事もある。
カタギリにとって、今がその時だった。
(あえて有終の美という言葉を使ったが…。
なりふり構わぬプレーで、自分の限界を知りたいのだな?
自分で、選手人生を終わらせるために…。)
グラハムが、カタギリの背中に、男の哀愁を見て取り、思わず目頭を抑えた。
「ディフェンスは僕に任せてくれ。君は、一刻も早く得点を頼む。」
カタギリの決意を秘めた言葉に、グラハムが奮い立った。
試合が再開された。
グラハムの思惑とは裏腹に、相変わらずソレビの優勢で、試合が進んでいく。
ほぼ完成形のユニオン代表とは違い、ソレビ代表は明らかに試合の中でもどんどん成長していた。
スメラギからティエリアに、ボールが渡った。
カタギリがぴったりとマークについてくるが、ガードしながらドリブルで
左サイドを駆け上がっていく。
刹那があのスペースに走りこむ、その直前でセンタリング─。
頭の中で、ボールのコースが予想された。
蹴るぞ…!
大きく左足を振り上げたその時、「ひゃあああッ!!」思わぬ刺激で体がよろめき、
コントロールを失ったボールがゴールラインを割って転がっていった。
きっと、カタギリを見る。何食わぬ顔で、カタギリが走り去った。
(あいつ…!今何をした…!?)
唇を噛みながらも、相手キーパーのゴールキックについていく。
自陣ゴール前で、ラッセ・アイオンとフェルトが、ダリル・ダッジをガードした。
すぐに、大きくクリアしたボールをロックオンがトラップし、
スメラギ→刹那とボールを回した後、ティエリアにパスをよこした。
さっきの二の舞は避けるべく、カタギリを振り切るようにドリブルを開始する。
審判が、後方に回った、その時、再びカタギリが手を出してきた。
「ああッ…ん…っ!」
審判から絶対に見えない位置で、なんとカタギリの右手がティエリアの股間を刺激した。
絶妙な手技に、運動中にもかかわらず、下半身が簡単に反応し、顔が紅潮する。
思い出すのは医務室でのハロとの一件だった。ボールが再び、とんとんと転がっていった。
「く…」内股気味にピッチに座り込んで、目の前で仁王立ちするカタギリを見上げた。
ふっ…と、カタギリがいやらしい笑みを浮かべ、背中を向けて去っていく。
「何やってんだティエリア!!2回目だぞ…!!」
ロックオンが怒りの形相で近づいてきた。
「あいつ…!反則だ。あんなの!」
顔を真っ赤にして抗議するティエリアに、ロックオンが言い聞かす。
「カタギリのDF能力は知ってるだろう?
このぐらいのレベルになれば多少のラフプレーも戦略の一つだ。
さっきは上手く抜けてたじゃねえか…!ちゃんとやれ!!」
「うう…」ティエリアが何とか立ち上がった。
ユニフォームの下にはスパッツを履いているので、決して股間の不自然な盛り上がりが
露見する事はなかったが、それでも走るたびに下半身が擦れて、
どんどん反応していく悪循環に陥ってしまった。
不自然な走りをするティエリアの様子に、目ざとくカタギリが気づいた。
これで、あの10番のFWは完全に封じ込めた。
いかさず殺さず、生殺しの状態で放置しておけば、牙のないライオンも同じだ─。
カタギリが、ほくそえんでティエリアに迫る。
その後の約15分間─。
ソレビは徐々に押し込まれ、気が付くとユニオンに何度もエリア内に進入され、
必死にピンチをしのぐしかない状態にまで陥った。
カタギリが、決してティエリアをフリーにささず、下半身が落ち着くヒマも与えずに、
定期的に股間を刺激していった。
「あん…ッ!」その度にティエリアが短い悲鳴をあげ、堪らず動きを止めて固まった。
もう何度触られたか分からない。
たまりかねたティエリアが、遂に反撃に出た。
カタギリに強引にボールを奪われたあと、ドリブルしていくポニーテールを掴んで
引き倒してやった。
カタギリがもんどりうって派手に転び、すぐさま審判がイエローを提示しながら走り寄ってきた。
「ティエリア!!」
ロックオンとスメラギが慌てて駆け寄り、審判に一応の抗議をしたが、当然認められない。
判定は覆らずに、審判が去っていった。
「何考えてるんだ、ティエリア!?あんなのレッドでも文句言えねえぞ!!?」
ロックオンが乱暴な口調で責め立てる。
「だって…!あいつ…」
「さっきも言っただろ!?反則はサッカーには付きものだ。
いちいち反撃してたらすぐに退場になるぞ?
カタギリと何とか距離を取って、上手くやれ!」
試合が再開され、ソレビ代表がぎくしゃくした動きを修正できないまま、前線で
ダリル・ダッジが見事なミドルシュートを決め、会場が地鳴りのような歓喜に包まれた。
ソレビはリードを守りきれず、1-1の同点になってしまった。
その間にも、上手く距離を詰められカタギリのラフプレーが続き、
ティエリアは爆発寸前になって遂に動きを止めた。
「やる気あるのか…」
刹那が不機嫌に寄ってきたが、膝に両手を当てて俯いたまま身動きも出来ない。
スパッツに締め付けられた自身が、激しい熱を持っているのがはっきりと分かる。
いつも違う様子にさすがに心配になった刹那が、スメラギとロックオンに進言した。
「どうやらカタギリのラフプレーで限界に来てるみたいだ…。交代させた方がいいと思う…。」
「しかし…。」ロックオンが、ベンチに目をやる。
両手で大きく×印を示すイアンの横で、丸テーブルにゆったり座り、紅茶を飲みながら
クッキーをかじり、人事のようにのんきに観戦している王留美とアレハンドロ・コーナーの姿が目に入った。
「………」だめだ…。全員が、諦観に包まれた。
「ティエリア、交代要員は誰もいないわ。」スメラギがティエリアに声をかける。
「そうそう!俺たちは少数精鋭のソレビ代表だぜ?やり遂げなきゃ、いけねえ。」
ロックオンが励ました。
「しかも、マイスターだし…。」刹那の言葉に、使命感が燃え上がる。
「やります…!この位問題ではない…。前半終了まであと5分…。
ロスタイムを入れてもおそらく7分…。何とか持ちこたえてみせる。」
「その意気だ!試合は振り出しに戻ったが、絶対勝てるぞ!!」
顔を力強く上げたティエリアに、ロックオン達がそれぞれ勇気付けて、走り去っていった。
その後7分間、ティエリアは何とかカタギリの股間タッチを振り切り、必死でピッチを走り回った。
一度、チャンスが訪れたが、惜しくもシュートを外した。
ピーッと前半終了のホイッスルが鳴った。
選手達がゆっくりと控え室に戻る中、ティエリアだけは全速力で控え室に向かった。
一刻も早く火照った体を冷まし、後半に備えなくては─。
誰よりも早くロッカーに飛び込む。
目的のものを素早く探した。いた!!
「コウハン、ガンバレ!コウハン、ガンバレ!」
ハロがわざわざ行くまでもなく、向こうから近づいてきてくれた。
「アッ!」即座にハロを引っつかみ、そのまま荒っぽくドアを空けると、
トイレに全速で向かう。途中選手達とどんどんすれ違った。
「ティエリア…」ハロを掴んだティエリアが、声を掛けて来たロックオンを
完全に無視して、大慌ててで走り去っていく。
「……。」ロックオンがその後姿をしばらく見つめていたが、やがて小走りに後を追いかけた。
トイレに駆け込み、ティエリアは素早く個室に飛び込んだ。
吐く息がはあはあと、誰もいないトイレに荒く響く。
助かった…。では、早速やるか。
個室の鍵をかけようとしたその時、「ロックオン!ロックオン!」
ハロが嬉しそうに声をあげ、ロックオンが体当たりするようにドアを力づくで押し開け、強引に中に入ってきた。
「な…!」目を白黒させるティエリアに、全てを知っているかのような、
意味ありげな笑みを浴びせる。
「ピーンときたんだ。ハロ、使うつもりだろ?」
ロックオンが何を言わんとしているか、即座に理解し、ティエリアが顔を真っ赤にする。
「カタギリの野郎、新しいラフプレーできやがったって事だな?
まあ、さすがに誰にでもやるわけじゃねえだろうが…。」
言いながら、ティエリアの股間に手を伸ばした。
「あう…っ!」快感が走り、びくんと体を硬直させる。
「やっぱりな…。でもすごい事だぞ?ティエリア。認められたって事だよ。世界のDFに…。」
「な…何言ってる…!こんな反則技…全然嬉しくなんかない…!」
ロックオンの感激したような言葉に、ティエリアが憤然と抗議したが、
「あああんッ!」
ロックオンの手が大きく股間を撫で上げて、思わずいやらしい声を出してしまった。
「ジカンナイ!ジカンナイ!」ハロが、飛び跳ねる。
「そう言うことだ。さっさと出して、ミーティングに加わらなきゃいけねえ。」
「あっ!!」
ロックオンが、当然の事のようにティエリアのズボンを一気に降ろした。
スパッツに加え、下着まで一気におろされて、ひんやりした空気が熱くなったペニスを撫で上げる。
「や…やめ…ッ!あ…ああんんっ!」
ロックオンが抵抗の余地も与えず、ティエリアの勃ちあがったペニスを素早く擦り始める。
焦らされ続けたそこを急激に扱かれて、一気に快感が沸き起こり、
膝ががくがくして立っていられないほどだった。
ロックオンが腰をおろし、片手でティエリアの腰を支えた。
「下のもんの体調管理に目を光らすのも、先輩の役割だからな。
何も心配しなくてもいいぞ?ちゃんとイっていいからな?」
ロックオンが、優しく声を掛け更に扱くスピードを速めた。
「ハロ!手伝ってくれ!」
「リョウカイ!リョウカイ!」
ハロがティエリアの後ろに回り、例の触手を伸ばすと、そのままティエリアの後ろから、
ぬぷぬぷと中に入ってきた。
新たな刺激で「あああ…ああう…!」大きな声をあげて、のけぞる。
「おい!聞えるぞ!!」
ロックオンが咎めるように言って、手を止め、外の様子を伺う。
ミーティングの真っ最中なのか、誰もトイレに入ってくる気配はなかった。
「あ…」ティエリアがかすかに震えながら、自分で刺激を得る様に、
ロックオンの掌に自身を擦リ付け、わずかに腰を揺らし始める。
人気のなさに安心したロックオンが手の動きを再開し、ハロが触手で前立腺を刺激した。
今までよりも大きな快感が訪れて、ティエリアがたまらず自分で口を抑え、漏れる声を我慢した。
「後ろも刺激してイクと、しばらくは満足して反応もないと思う。
カタギリは後半も同じ攻めで来るだろうから、有効な対策だと思うけどな。」
ロックオンの言葉がぼんやり耳に聞えて、ティエリアが声を押し殺しながらとりあえず
頷いた。
「もう一つ、ハロに対策させるから、それで完璧だからな?
絶対、優勝するぞ。いいな?ティエリア。」
快感を貪るように腰を揺らしながらも、ティエリアが紅潮した顔で何度も頷いた。
射精感が強くなってくる。堪えきれずにティエリアがロックオンの肩を強く掴んだ。
「あ…ああ…あああんんッ!!」
口に手を充てていても、抑えきれない声がほとばしり、ティエリアがロックオンの
手の中に、大量の白濁を放出した。
ロックオンの言葉どおり、深い満足感で満たされる。
大きくゆっくりと息をして、その充足感に酔った。
ロックオンが、ペーパーで丁寧に白濁を拭き取り、トイレに流した。
「もう平気だろ?ちゃんと、後半も戦えるな?」
「ああ…。」
ロックオンが安心したように大きく息を吐いた。
「あ、そうだ。プロテクター、やっぱり使った方がいいんじゃないか?
俺、持ってるからさ。」
ロックオンが思い出したように言う。
性的満足感で理性のレベルが落ちているティエリアが、それもそうだなと思ってしまった。
「そう…させてもらう。」
「よし。じゃあ準備する。ハロ、中と外に性欲抑制剤を塗布してやれ。
それで、セクハラ対策は完璧だ。」
「マカサレテ!マカサレテ!」
ハロがティエリアの後ろに触手を突っ込んだまま、目を点滅させた。
すぐに中から2,3本の触手が出てきて、ティエリアのペニスに絡みつく。
さっき派手に果てたおかげで、ティエリアが反応する事はなかった。
「薬剤、ホウシュツシマス。」
ハロの口から粘液状の薬らしきものが分泌され、触手に吸い上げられてティエリアの体に向かった。
それを確認したロックオンが、ズボンを下ろす。
素肌に直接、プロテクターが巻かれていた。
陰部に直接触れたプロテクターを借りるなど、普段のティエリアには
ありえない行為だったが、先ほどの性行為で、2人の間には妙な連帯感が出来ていた。
ロックオンが汗の滲んだ腰部からプロテクターを外すのを、文句も言わずに見つめる。
ハロが、ティエリアに薬液を塗りこみ始めた。
冷たい感触で、身が震えたが抵抗せずに身を任す。
「薬剤トフシュウリョウ!シュウリョウ!」ハロが触手を引っ込めた。
ロックオンが、早速プロテクターを付けてやろうと、準備する。
「ほら、足上げ…」
しゃがみこんだロックオンが、すぐに異変に気付いた。
「あ…なん…か体…がおかし…い…!」
ティエリアが荒い息を吐きながら、潤んだ目で体の異常を訴える。
一度果てたにも関わらず、彼の下半身は既に再び大きく持ち上がっていた。
「ハロ…!!抑制剤じゃなく促進剤塗りやがったな!!」
ロックオンが瞬時に推測して、ハロを睨み付けたが、ハロは全く動じない。
「ハロ、抑制剤ヌッタ!ヨクセイザイ!」
「おい、待て!」
ハロがピピッと目をピンクに点滅させると、ぴょんっと飛びあがり、
個室トイレの壁を飛び越して、ピューッと飛び去ってしまった。
「あいつ…最近どうも調子がおかしいと思ってたが、やっぱり故障してやがる…。
おやっさんに診てもらわねえと…。」
ロックオンが立ち上がって、ハロの飛び越えていった個室の壁の上の隙間を見ながら、
独り言のようにつぶやいた。
「──!!」その時、急にティエリアが強く抱きついてきて、心臓が飛び跳ねた。
そのままティエリアが首にきつく腕を廻し、更にまとわりついてくる。
首筋に熱い息がかかり、勃ち上がったティエリアの下半身が、ロックオンの股間に何度も当たった。
「ティエリア…!よせ…!」
何とか引き離そうとしたが、ティエリアは腕の力を一向に緩めようとはしない。
ティエリアが力をこめたまま、顔だけを離して、ロックオンを見上げた。
「う…」情欲に潤んだ瞳でじっと見つめられて、思わず鼓動が高鳴る。
その綺麗な顔はロックオンが今まで経験したどんな女よりも、狂おしいほどの色気に満ちていた。
柔らかそうな唇が誘うようにわずかに開いた。
思わず熱い口付けを交したくなってしまう。
その時。ティエリアがぐっとロックオンの股を割って、腰を押し付けてきた。
ロックオンの後ろに、明らかな男のシンボルが押し付けられる。
ティエリアが中に侵入させようと、一瞬力を込めたのが分かり、
ロックオンは慌てて力づくでティエリアを振り払った。
ごんっと鈍い音がして、ティエリアが体ごと個室の後ろの壁に吹っ飛ばされた。
恨みがましそうな目つきで、ロックオンを睨みつける。
「わ…わりいが…俺はそっちの趣味はないんだ…。逆ならしてやらない事もないけど…。」
どうしたものかと戸惑うロックオンに、ティエリアがまだ諦めきれずに、
下半身を昂ぶらせたまま、じりじりとにじり寄ってくる。
「い…今は時間がねえ…!さっきみたいに手でやってやるからそれで我慢しろ!」
のっぴきならない状況を打破すべく、焦って狭い個室に座り込むと、すぐにティエリアのペニスに手をやった。
「あ…!!」一声大きく叫んで、ティエリアが硬直した。
ロックオンが先ほどよりも更に力を込め、素早く擦りあげる。
少しでも隙を見せれば何かとんでもない事になる─。
逆ならまだしも、間違っても男である自分が、いくら美貌の持ち主とはいえ、
男にやられるわけには行かない。しかも、本当に時間がない。
ロックオンが焦って、ひたすらに手を動かし続けた。
「あ…っ!あ…っ!」
ティエリアがロックオンの動きにあわせて、いつもより遥かに高い声で喘ぐ。
ペニスの快感が強まってくるにつれて、段々と、その声が大きくなってきた。
「ティエリア!静かにしろ…!」
「ああ…んんん…ッ!はあ…ッ…!」
ティエリアが、何とか声を我慢して、座ったロックオンの肩を再び強く掴み、
体を屈めてロックオンの頭に顔を埋めた。
汗に混じってシャンプーの香りが、ティエリアの鼻腔を刺激する。
ティエリアが味わうようにロックオンの髪に舌を這わせた。
いい匂いとは裏腹に、期待した味ではなく男の脂臭い味が広がる。
それでも、ティエリアの欲情が治まることはなかった。
そのまま髪を嘗め回しながら顔を移動させ、ロックオンの耳たぶに辿り着くと、
そこに柔らかく噛み付いた。
ロックオンがぴくっと体を震わせるのを感じ、更に優しく噛みながら、
穴に舌を入れ中を嘗め回した。
「ぐ…っ!」堪らず、ロックオンがうめく。
例え男だろうが、時間さえあったらたっぷりかわいがってやる所なのに─。
ティエリアの喘ぎを耳元で聞き、唇を噛みながら仕方なく指を動かした。
ティエリアが今度は両手でロックオンの頭を掴み、強くしがみついて来る。
「ああっ…!!ああ…ッ…!!」声が大きくなって来た。
その時、ガチャッと音がして、トイレに誰かが入ってきた。
足音の主は、どうやら一人ではない。
「──!!」驚いたロックオンが即座に手を止め、左手でティエリアの口をふさぐ。
「ロックオンコシツ!ロックオンコシツ!」
まだトイレに残っていたらしい、ハロの声が響く。
(あいつ…!余計な事を…!!)
身を潜めるロックオンの個室に、アレルヤが声を掛けてきた。
「ロックオン?入ってるのかい?」
「あ…ああ…。アレルヤか…。すまん。腹の調子が悪くて…。」
適当な言い訳をする。ティエリアの熱くなった体と口を、必死で押さえ込んだ。
「大丈夫かい?休憩はあと5分で終わりだよ?」
「す…すぐに行く…!もう終わるから…。い、いや…。出るから…。作戦に変更は…?」
「まあ交代要員もいないし、システムに変更は特になし。
俺らが少し下がり気味でしっかり守る。
あっちはダリル・ダッジとグラハム・エーカーが攻撃の要だからな。
徹底マークで、後半は完璧に抑えるさ。」
ラッセ・アイオンが用を足しながら言った。
「そう言うこと。ロックオンはスメラギさんと中盤でボールをまわして、
相手DFをひきつけて。向こうの守備の要のカタギリが、どうやらティエリアに
振り回されてるらしいから、ラインも崩れると思う。そこで、刹那の出番というわけさ。」
「ああ…。必ず決勝点を挙げる…。」刹那の声がした。
「そう言えば、ティエリアがいなかったけど…。」
(刹那…!余計な事を思い出しやがって…!!)
「ティ、ティエリアならさっき廊下で見たぜ…!?
多分ヴェーダから直接指示を受けてたんじゃないかな…?」
早く去ってくれと祈りながら、ロックオンが言う。
ティエリアが熱くなった体を持て余して、体を揺らし始めるのを、必死で押さえた。
「ふーん…。まあ、そんな所だろうね…。ティエリアなら。
まあいいや。僕たちはもうピッチに出るよ?急いでくれ、ロックオン。」
「ああ。分かった。」
アレルヤ達の足音が、トイレの出口に向かい、ロックオンが大きく息を吐いた。
「さあ、続きやるぞ…。時間がないから、早くイケよ?」
全員が立ち去ったのを確認し、ロックオンが即座に刺激を再開した。
「あぁ…ッ!ああぁっ……!!」
すぐにティエリアが気持ちよさそうな声をあげる。
「早く…!早く…!」ロックオンが急かし、手の速度を速めた。
遂にティエリアにその時が訪れた。
「うう…っ!あぁぁああ──!!」
勢い良く発射された白濁が、再びロックオンの手を汚した。
「よし!さっさとこれ巻いて、さっさと行くぞ!」
ロックオンが素早くペーパーで手を拭き、プロテクターを差し出す。
「げ…。マジかよ…。」一瞬目を疑った。
ティエリアの下半身がまた、どんどん大きくなっていっていた。
「ははっ…。ハロの奴…。お仕置きだな。」
万策尽きた…。この期に及んでは、もう笑うしかなかった。
「ティエリア。もう時間がない。もう手伝ってやれねえ。分かるか?」
「あううう…」ティエリアがまだ収まらない熱に、涙混じりに身悶える。
「そんな状態じゃプロテクターは付けられねえ。もうこうなったら気合しかない。
気合で試合終了までの45分、耐えるんだ。
お前はカタギリをひきつけておけば、それでいい。後は俺たちがフォローする。いいな?」
無茶な要望だとは分かっていたが、それ以外に選択肢が思い浮かばない。
「ううう…」ティエリアが真っ赤になって、何とか頷いた。
「よし。じゃあ、行くぞ。我慢できなかったら、パンツの中で出せ。
その内治まると思うから。」
ズボンをきちんと履き、ティエリアにもちゃんと履かしてやり、真っ赤になって
小刻みに震えるティエリアの手を取って、ピッチに向かった。
ピッチには既にロックオン達以外のすべての選手が出て、軽くアップをしている。
すぐに、審判がボールを持って、中央に歩み出てきた。
「ティエリア…。気合だぞ?頑張れよ…!」
ぽんっと勇気付けるように腰を軽く叩いたが、
「ひゃん…ッ!」ティエリアが短い悲鳴をあげて顔を歪め、のけぞるのを見て
「……。大丈夫かな…。」思いっきり不安になってしまった。
無情にも、後半がはじまった。選手達が散らばり、ボールが縦横無尽に回される。
走るときはもちろん、歩いている時にもティエリアに耐えがたい衝動が涌き起こる。
「う…うぅ…」
ロックオンに2度も処理してもらってもなお、ペニスが熱く疼き、勃起が治まらない。
しかも後ろに塗り込められた薬剤のせいで、体の中からも確かに淫欲がほとばしっていた。
相変わらず、ティエリアにはカタギリが付いている。
「ふっ…。後半も、しっかりと抑えさせてもらうよ…。」
牽制したカタギリだったが、至近距離からティエリアに艶かしい表情で見つめ返されて、
逆にたじろいでしまった。
(まさか前半のアレがまだ効いているのか…?まあいいさ…。
しかし本当に可愛い顔をしている。
……。ふふ…。もう少し、可愛がってやるか。最後…かもしれないしな。)
カタギリが、必要以上にティエリアに密着してきた。
ボールがスメラギからティエリアに回ってくる。
その瞬間にカタギリが前半と同じく、審判の死角を取り、ティエリアの股間に手を回した。
「あんっ!!」
快感が走り、ティエリアが顔を歪め、ぐっとカタギリの手に下半身を押し付ける。
(ぐ…!これ…は…!この10番…)
カタギリが異様なほど大きくなったティエリアの下半身に驚き、思わず手をのける。
「ん…」ティエリアが潤んだ目で一瞬切なげにカタギリの目を見つめた。
カタギリが予想外の視線に射抜かれ、わずかに動きを止めた。
次の瞬間、快感を堪えてボールに素早く反応したティエリアが、最前線の刹那に
前線のDFの間を見事に抜ける絶妙なスルーパスを出した。
「あああ…ッ!!」
しかしティエリア自身は、蹴った衝撃で最後の刺激を受け、パンツの中で射精してしまった。
「ゴオオオル!!!」アナウンスが響き渡る。
刹那が、スルーパスを受け、完璧なシュートでネットを揺らしたのだ。
スメラギ達が刹那に走りより、喜びを爆発させている。
一方、ティエリアはその輪には加われないでいた。
「くううう……」アシストなんかどうでも良かった。
バレてはいないものの、衆人環視のど真ん中で、果ててしまった。
満足感と情けなさを同時に感じ、混乱した感情でつい涙が滴り落ちた。
一人事情を知るロックオンが、素早く近寄ってきた。
「ティエリア…!今の良かったぞ!?大丈夫か…?下…」
心配そうに、そっと肩を抱いてみんなから見えない位置で、ティエリアの下半身に目をやる。
「う…うう……。まだ…だめ…だ…。」
さっき3度目の絶頂を迎えたのに、まだペニスが熱を持っている。
「いつまで…続くんだ…。」
泣きながら耐えるティエリアのあまりの様子に、ロックオンの胸が痛む。
「ティエリア…。すまん…。ハロ…いや、俺のせいでこんな事…。仕方ねえ。
こうなったらもう思いっきり何度でもいけばいいさ。きっと誰も気付きやしねえ。
限界まで出し尽くしたらさすがに落ち着くだろ!?」
ロックオンが精一杯励ます。
カタギリが、近づいてきた。
「君…大丈夫なのかい…?悪かったね。荒いプレーをしてしまった…。」
敵とはいえ、さすがに歴戦の名選手だ。
ティエリアの惨状には自分にもかなり責任があるものと見て、謝罪に訪れたのだった。
「いや、気にしなくていいすよ。こっちにも悪い所があるし…。
ま、後はフェアプレーでお願いしますよ?」
ロックオンが、釘をさすようにカタギリに言う。
「ああ。そうさせてもらうよ。」
カタギリがティエリアとロックオンを申し訳なさそうに見て、戻っていった。
その後、ティエリアは暴走といってもいい位、完全に開き直って動きまくった。
その姿は傍目には、何としても優勝をもぎ取るんだという、熱い感情に支配された
結果だと、映っていた。
「ああう…ッ…!!」
時折ぴくぴくっと不自然に硬直するのも、おそらくマンマークのカタギリのプレーで
何らかのダメージを受けたのだろうと、観客は推測した。
アウェーのスタジアムの空気が、明らかに変わってきた。
その美貌だけでなく、ティエリアの切迫感溢れるプレーはいやでも人目を集めるものだった。
しかも、涙まで流しているのだ。
徐々に観客に同情心が湧き起こり、やがてティエリアが何かする度に
大きな歓声と拍手が起こるようになった。
その時のティエリアは、もう何度果てたか分からない状態だった。
パンツの中は自分の体液で水溜りのようにびちょびちょだった。
下着とスパッツに染み入るだけでは飽きたらず、ズボンまで濡らしているのでは
ないかという位の、異常なほどの液量が放出された。
試合が刻一刻と進んでいく。
やがて、もう出すものは何もないという所まで来てしまい、悟りを開いたかのような、
恍惚状態に陥った。
ティエリアの蹴ったボールが、立ちふさがるカタギリの股を鋭く抜いた。
すぐに体を切り返し、そのままドリブルを継続し、ペナルティエリアに向かう。
高度なプレーに観客が目を奪われた。キーパーが前進して、距離を詰めてくる。
ティエリアがふわっとボールを浮かした。
「アッ!!!」全員が息を呑んだ。
ボールがまるで鳥の様に宙を舞い、キーパーの頭上を越していく…。
(やられた…!!)
ユニオン代表が覚悟した瞬間、刹那が猪のごとく突進してきて、ヘディングをかまし、
あれほど柔らかかったボールが、勢いよくゴールネットに吸い込まれていった。
後半38分で、3‐1。もう試合は決まったも同然だった。
ティエリアのループシュートを脇から掠め取った形になったが、
無我の境地のティエリアとしては特に異存はなかった。
観客が刹那ではなく、ティエリアのプレーに惜しみない拍手を送っている。
もう、それだけで充分だった。
「ピピーーーーー!!」
ユニオンの猛攻撃を必死に守りきり、やがて長いホイッスルが鳴り響いた。
試合、終了。
選手も観客も、全員が素晴らしい試合に感動し、その幕切れを惜しんだ。
選手同士が健闘をたたえあい、ユニフォームを交換する。
多くの選手がティエリアのユニフォームを欲しがったが、ティエリアは結局誰とも交換しなかった。
大会規定では、シャツはズボンに入れる事が必須になっている。
おそらく、汗以外の不必要な体液がこびり付いているだろう。そんな懸念からであった。
カタギリが残念そうに、寂しげな目で握手をすると、
一層の寂寞を背中に漂わせて、去っていった。
そして、表彰式。結局大会MVPは、今大会最多5得点の刹那が受賞した。
ティエリアが取っても良かったタイトルだが、刹那だって負けず劣らずいい仕事を
したのは明らかだったから、選手達はみんな素直に喜び、優勝の感激に酔いしれた。
その後、メンバーはひとしきりロッカーで大騒ぎした。
踊り歌い、叫びまくった。
さすがのティエリアも、サッカーがこんな快感を与えてくれた事に、深い感謝と興奮を
抱かずにいられなかった。
大会に参加した事で、明らかにメンバーの結束は強まった。
スメラギが、涙ぐんで感動に打ち震えるのを見て、全員がうるうると泣き出してしまう。
全員の心に、忘れえぬ思い出が刻まれた瞬間だった。
その後ホテルに戻った一行は、街に繰り出し宴を楽しむ事にした。
目を輝かせて誘うイレブンに、ティエリアも素直に同行する事にした。
ジャージで集合した一行は、とりあえず、監督イアン・ヴァスティの音頭で
ビールで乾杯と相成った。
「オメデトウ!!オメデトウ!!」ハロが全員の席を飛び回る。
未成年組は当然ジュースだ。
なのに、みんなの熱気とビールの匂いで、摂取していないにも関わらず、
アルコールが回ってくるような錯覚に陥ってしまう。
ジュースから水に移行して乾いた喉と、体を落ち着かせようとしたティエリアだが、
体の奥から得体の知れない何かが蠢くように、湧き起こってくるのに気付いた。
明らかに、先ほどのハロの薬液を思い起こす熱さだ。
もう効果は切れているはずなのに、そして実際ペニスが反応する事はもうなさそうなのに、
体内の細胞が、もっと刺激を欲しがっていた。
体が熱くなり脂汗が滲み出て来るような感じで、顔が熱くなる。
ここにいたらダメだ…!
ホテルに戻って一人、熱くなる体を冷ますしかない。
喧騒轟く中、何とかロックオンに近寄り耳元で囁いたが、
周りの音で聞き取れないらしかったので、更に大声で叫んだ。
「宴会を中座して悪いが、俺はもう帰らせてもらう。
疲れたから、ホテルに帰ったらもう寝るつもりだ。
今日は素晴らしい一日だったと、みんなに伝えてくれ。」
「おい、大丈夫か?体…」
「平気だ。」
心配そうな表情を浮かべたロックオンに背を向け、急いで帰り支度を済ませ、
店を後にした。ひんやりした外気が肌に心地良かったが、
体の疼きが治まる気配は一向になかった。
ティエリアは小走りで、夜の繁華街を抜け、ホテルに向かった。
途中観客と思われる兵士らしき人物が何人もティエリアを振り返り、
声を掛けようとしたが、「悪いが、急いでいる。」短く答え、走り去った。
部屋に走りこみ、一目散にジャージを脱ぎ捨て、全裸で風呂に飛び込んだ。
そのまま修行僧のように冷水を頭から何度もかぶる。
空調が効いていても、夜はまだ肌寒い季節だ。鳥肌が立ち、体がガタガタ震え出した。
「く…」なのに、未だ体の疼きが治まる様子はなかった。
ハロの薬液がよほど強力だったのか、それとも激しい運動で体が過敏になり、
効能を強めてしまったのか…。
原因はわからなかったが、それでもさっきよりは状態はマシだ。
とりあえず、試合は無事終わった。しかも今は自分の居室にいる。
朝までゆっくり体を癒せば、さすがに元の状態に戻るだろう。
ティエリアはバスローブに着替えて、ベッドで眠る事にした。
その時、「ピンポーン」チャイムが鳴った。
時間は夜10時を回った所だ。ロックオンが、心配して戻ってきたのかも知れない。
ティエリアがローブを素肌に纏い、インターフォンを覗き込むと、
その画面に映っていたのは、なんとユニオン代表のビリー・カタギリだった。
「…?」訝しがりながらも、ティエリアが受話器を取った。
「…はい。」
「やあ、ティエリア・アーデ選手。今晩は。
今日は祝勝会で帰ってこないかと思っていたんだが、フロントで聞いたら
君だけは戻っていると言われてね…。
少し遅い時間だが、新王者に表敬訪問させてもらう事にしたんだ。
もう、明日には艦に帰ってしまうんだろう?入れてもらえないかな?」
穏やかな口調のカタギリに、別に敵意を抱く必要もなかった。
「どうぞ…」すぐに、ドアを開けて招き入れる。
水色のユニフォームを脱いだカタギリが、白スーツをパリッと着こなしている。
その姿には大人の知性と落ち着きが溢れていて、つい気恥ずかしくなってしまった。
「ご用件は何です?」
表敬訪問だと言われた事も忘れて、つい失礼な質問を口に出してしまった。
それを、カタギリは試合のラフプレーへのわだかまりだと受け取ったらしく、
困った表情で謝罪をはじめた。
「いや、さっきのアレは悪かったね。僕も、必死だったんだよ。
…。ふふっ…。もう、年だという事かな…。」
カタギリが自己完結したかのように自嘲気味に笑う。
申し訳なさが募って、
「……座ってください。」一応、ソファーを勧めると、カタギリが嬉しそうに微笑んで
素直にソファーに腰掛けた。
ティエリアがとりあえず部屋に備え付けてあったジンジャーエールをコップに注ぎ、出してやる。
「いや、ありがとう。
表敬訪問にきたのに、こんな気を使わせてしまってなんだか申し訳ない。」
カタギリがおいしそうに一口飲み、じっと、ティエリアの肢体を眺める。
「君、サッカー歴は?情報不足のソレビの中でも、特に君に関しては謎だらけなんだが…。」
「2ヶ月前にはじめた所です。」
カタギリが驚いて顔を上げた。
「なんと…!本当かい?そんな短期間で、ここまでのテクニックを…いや、
テクニックというより、試合勘を身に付けているなんて…。驚いたなあ…。」
カタギリがそっと、立ったままのティエリアに手を伸ばした。
「ちょっと、いいかい?筋肉を確かめたい。」
そう言うと、無遠慮にティエリアのローブの裾に手を入れ、太ももからふくらはぎまで
強弱をつけながら筋肉の付きを確かめていった。
「う…ッ…」まだ興奮が冷めていない体を、愛撫するように触られて、
思わずティエリアが声を出してしまう。
「うん?痛かったかい?すまないね…。しかし、君、いい質の筋肉に恵まれているね…。」
カタギリが力を緩め、さらに足を撫で回した。
「この体とセンスを持ってすれば、10年、いや、50年に一度という選手にまで
なれるかもしれない。僕のチームに呼んで育ててやりたいけど、
規定でスカウトは厳禁だ…。本当に残念だよ。」
カタギリの手つきと大人の静かな声が、意図せず欲情を高めていった。
「君、もっと練習しなさい。すごい選手に絶対になれるから。」
カタギリが足に手を這わしたまま、優しく見上げてきて、
「んん…ん…」くぐもった声を出しながら、もうどうにも我慢が効かなくなってしまった。
そのままカタギリに身を投げ出し、抱きついた。
「ちょ…君…!」カタギリが驚いて突き放そうとするのを、力づくで阻止し、
がばっと顔を上げると、一気に口付け、強引に舌を入れてしまった。
カタギリの力がふっと抜けたのを感じ、そのまま角度を変えて舌を深く絡み合わせる。
やがてカタギリの様子が変わってきた。
ティエリアの舌に応える様に、自分のそれを巻き付け、軟体動物のように動かし始める。
まだ裾に入ったままだったカタギリの手が、今度は完全な愛撫に変わった。
性感を刺激するような手つきで、ティエリアの太ももから、何も付けていない陰部をまさぐる。
「ああ…っ…」ペニス全体を優しく包むように撫でられて、思わず甘い声が出た。
カタギリが唇を離し、片手でティエリアのバスローブを簡単に脱がしていく。
露わになっていく肌に唇を這わせると、ティエリアの体がその度に熱くなり、
何度も身を硬直させて、艶かしい声をあげた。
「下…反応しないみたいだね…。試合でやりすぎたかな…?」
股間をまさぐりながら、カタギリが低い声で囁いた。
その言葉どおり、ティエリアのペニスは一切反応していなかった。
本当に、出すものが切れてしまったかの様だった。
「う……。そっちはもう…いい…。」
ティエリアがカタギリの愛撫にのけぞりながら、途切れ途切れに言う。
「……。という事は…。後ろに欲しいという事かな…?」
カタギリが、指をペニスから後孔に移動させ、するっとそこを静かに撫で上げた。
「やあぁ…ぁあん!!」
途端にティエリアに大きな快感が走り、びくびくっと背筋を凍らせる。
カタギリが指をわずかに挿入して、中を探るようにかき回す。
「あぁぁっ!」ぴくんぴくんとカタギリの膝の上で、腰が飛び上がった。
カタギリが熱い息を吐きながら、じっくりとティエリアの歪む顔を見つめ、
ティエリアの眼鏡をそっと外した。
何も遮るもののなくなった綺麗な瞳で見つめ返されて、カタギリの鼓動が早鐘を打つ。
もう一度貪るようなキスをして、遂にカタギリがバスローブを全部脱がすと、床に放り投げた。
ティエリアの膝小僧辺りに、カタギリの一物がその存在感を示すように、ごつごつと接触する。
火が付いてしまったティエリアには、今更何のタブーも感じられない。
すぐに膝から床に降りると、カタギリの足の間に跪いた。
震える手でベルトを外し、ズボンと下着を膝辺りまで下ろす。
カタギリはどうやら入浴してきたらしく、石鹸のいい香りがした。
既に全開寸前にまで勃ち上がったカタギリの怒張をそろそろと口に含んでいく。
途端に苦い男の味がして、一瞬顔をしかめたが、すぐに奥までいっぱいに咥えこむと、
丁寧に舌を使い始めた。
カタギリが気持ち良さそうな唸り声を出し、それがティエリアの欲情を尚更高めていく。
体が疼いて疼いて仕方ない。
早く、中に欲しい。
そのような行為の経験などないのに、抗えないほどの渇望に囚われていた。
「すごいね……。ああ…。」
カタギリが気持ち良さそうにうめきながら、ティエリアの髪を優しく掻き回す。
「薬…のせいだ…!」
ティエリアが我慢しきれなくなって口を離し、乱暴にカタギリの膝の上に飛び乗った。
そのまま本能のままに自分でカタギリの怒張に腰を落とし、ずぶずぶと受け入れていった。
「ああああ……!」
ティエリアが悦楽に顔を引きつらせる。
腰を進める度に、想像以上の快感が走り抜けていった。
やがて根元までがっちりと受け入れると、そのまま自分で腰をくねらせ始めた。
「ああんッ!!ああんッ!!」
内壁が擦れる度に、過剰なほどの快感が起こり、恥も外聞もなく大きく声を上げ、
さらに腰を遣った。
カタギリのもたれるソファがぎしっぎしっと卑猥に軋む。
「うああああ!!」
ティエリアが一番気持ちいい所を発見して、部屋の外まで聞えそうなほどの大声で喘いだ。
「………!」激しい行為の最中でも、さすがの大人の余裕でカタギリが気を使い、
自分のネクタイをさっと外すと、ティエリアの口にねじ込んだ。
「んんん…!!んんん…!!」ネクタイを噛み込んで、ティエリアが唸りながら、
激しく腰を動かすのにあわせて、不規則に下から突き上げてやる。
「んんん──!!」
ティエリアが大きくのけぞり、腰を大きく跳ね上げ、涙を流しながら硬直した。
「イった…のかな?」カタギリが繋がったまま、動きの止まったティエリアの様子を伺う。
ぽろぽろと涙を流すほどの悦楽の表情を間近に拝み、眩暈がしてしまう。
ティエリアが脱力してしなだれかかってきて、美しい顔が見えなくなってしまった。
「君…」
何か言おうとしたカタギリだったが、ティエリアが再び動き始め、言葉を飲み込んだ。
「んん…んんん…」今度はゆっくりと、貪るような腰つきだ。
最も快感を感じるポイントをピンポイントで刺激するように、緩やかだが、
規則的な上下運動を繰り返す。
すぐにティエリアが強烈な快感を得はじめたのが分かる。
カタギリがどこかの文献で目にしたデータを思い出した。
「そうか…。前立腺刺激による過剰なオーガズム…。これが、ドライっていう奴か…。
噂どおり、すごい代物みたいだね…。」
カタギリが研究者らしい思考を巡らす。
ティエリアでサンプルデータでも採取するかの様に、ティエリアの動きとその表情、
そして中の感触をじっくりと観察する。
「んんんんん──!!」
再び、ティエリアがネクタイを咥えたまま果てたのを確認し、
カタギリが自身を引き抜いた。
「んん…?」ティエリアが快楽に呆けた表情で、不思議そうに見つめる。
「もしこれが僕の考えている状態なら、君、まだまだイキ続けるよ?
あまりの快感で失神してしまうかもしれない。そこまでの境地に達してみたいかい?」
そんな事言われても、もう何も考えられない。
とにかくこれ以上厭だという位に、突かれたい。それだけだった。
カタギリが敏感に察した。
「ソファに上半身を預けて、後ろを向いてごらん。」
その指示に素直に従い、言われたとおり上半身をソファの椅子部分に預け、尻だけを突き出した。
「んんッ!!」
すぐに、カタギリの指が入ってきた。
さっきまでカタギリの怒張を受け入れていた後ろには刺激が弱すぎたが、
カタギリがすぐに前立腺を丁寧に刺激しはじめて、強烈な快感で堪らず臀部を左右に動かしてしまった。
「動かないで、我慢して。」
カタギリが膝で腰を上から抑え、動かないように固定して、後ろを覗き込むと、
更に指を使った。
「んんん─!!んんん─!!」
再び涙が溢れ出て、ソファーにしみていく。
唾液が既にネクタイをべとべとにしていた。
ソファの背もたれに押し付けた顔に、革がひんやりと当たったが、
すぐにティエリアの熱で温まってしまった。
カタギリの指が、そこを容赦なく責める。
何度も何度も指がほじるように押し当てられ、ティエリアが顔だけを大きく振って快感に耐えた。
やがてカタギリの指が当たる度に、絶頂が訪れるまでになってしまった。
声が出ているのか、泣いているのか、あるいは失禁したのか──。
そんな事も分からないほどの絶え間ない激しい快感で、意識が朦朧としてきた。
「やっぱり…すごいね。
男でも、いや、男だからこそ、ここまでの感度を得られるという事かな…?」
カタギリがとりあえず実験に満足して、ふらふらのティエリアから指を抜く。
「んんん……」
甘い余韻が後ろに充満する。が、すぐにカタギリが今度は純粋に自分の欲のために
行為を行うべく、ティエリアの重い腰を掴み、一気に挿入した。
「んんんん!!!」
いきなり太いモノで貫かれて、ティエリアが助けを求めるかのように、
背もたれに必死でしがみ付く。
「大丈夫…ッ…!これで、もう終わりだから…ね…っ…!」
カタギリが、今までの中断していた楽しみを取り返すかの様に、荒々しい抽迭を繰り返す。
「んんッ!!んんっ!んんッ!!」
ティエリアの体が大きく前後に揺さぶられ、背もたれに強く顔が押し当てられ、
苦しくなった呼吸で大きく喘いだ。
「んッ…!んッ…!」カタギリがうめきながら、腰を大きく前後させ、
意思のない棒のようになったティエリアの体を突きまくる。
「んん─!!んん─!!」涙を流しながら、身悶えた。
激しかったカタギリの腰つきが、更に激しくなる。
「もうイクから…ねッ…!すごく…気持ちいいよ…!!」
カタギリが最後の突きこみに入った。
「んんんんん─!!!」
ティエリアが再び中で果て、海老反りになった後、遂にそのまま意識を失って倒れこんだ。
「ぐッ…!」カタギリが顔を歪めたかと思うと、自身を引き抜き、
力なく倒れこんだティエリアの背中に発射した。
つーっと綺麗な肌を流れていく自分の体液を見つめて、大いに満足して深呼吸し、
すぐに下着とズボンを履いた。
そのままゆっくり息をして、ティエリアの後姿を再びじっくり眺める。
ティエリアは荒い息をしたまま、ソファに突っ伏しピクリとも動かない。
「まさか…失神…したかな?」カタギリがティエリアをそっと抱き起こした。
目覚める気配は全くなかった。
「参ったね…。こんな事、初めてだ…。」
普通ならパニックになるところだろうが、さすがに研究者だ。
意外にも落ち着き払ったままの自分に少し驚きながらも、カタギリがティエリアの脈と
呼吸が正常なのを確かめ、背中の白濁を拭き取った後、ベッドに抱きかかえて行くと、
ゆっくりと寝かしてやった。
ベッドの上で、可愛い寝顔を見ながら、バスローブを着せてやる。
ローブの合わせ目から覗くすべすべの白い肌に、優しくキスをしてやった。
ティエリアの脇に座り顔をやさしく撫でてやると、やがてティエリアがぼんやりと
意識を取り戻し、目をゆっくり開いた。
「はい。水だよ…。」
カタギリがすぐに水を持参して、飲ましてやる。
コップ一杯分飲み干したのを確認し、再びやさしく頬を撫でてやった。
「さっきの事は、多分僕のせいなんだろうね…。心配しなくても、僕も大人だからね。
当然、他言はしないよ。」
ティエリアがゆっくりと瞬きをして、聞き入った。
「でも、今日はすごくいい夜だった。本当に、一生忘れないと思う。」
カタギリが優しく額にキスを数回落とした。
ティエリアが満たされた気分で目を閉じ、カタギリの温かく大きな手に、頬を沿わした。
「いつまでもここにはいられない。もう帰らないと…。寂しいけど、お互いのためだからね…。」
ティエリアが不満げに目を潤ましたまま、抗議の視線を送る。
「きっとまた会えるよ…。
今日付けでエイフマン監督が勇退され、僕は選手を引退し、代表監督を引き継ぐ事になったんだ。
前半20分、君に抜かれたあの時…。僕はもう引退を決めていた。
ここが、自分の限界だってね。」
ティエリアがじっと見つめる。
「ふふ…っ。柄にもなく、せこいラフプレーで君を苦しめてしまったけど、
アレは僕の最後の悪あがきだって思って、許して欲しい。」
カタギリが髪を撫でながら、とても優しい目でティエリアを見つめた。
「4年後、またあのスタジアムで会おう。今度は監督として、必ず君達を破ってみせる。
だから…。」
カタギリが切なげに視線を揺らした。
「お互い戦いの中に身を置く者だ。絶対はないけど…それでも…。死なないでいてくれ。」
カタギリが切なげな目のまま、にっこりと寂しそうに微笑み、立ちあがった。
ティエリアがぎゅっと手を掴むのを、そっと振り解き、最後にその手を両手で握り締めた。
「4年後、必ず…。二人だけの、約束だ。」
そう肩越しに言うと、静かに部屋を出て行ってしまった。
体の充足感と裏腹に、ティエリアには空虚なむなしさだけが残った。
結局その後、酔っ払ったメンバーが次々様子を見に来て、なんだかんだで結局一睡も
出来ないまま、夜が明けた。
昼前になりそれぞれが、後ろ髪を引かれる思いでトレミーに帰艦した。
艦内で、ロックオンがティエリアに何か言いたそうにしていたが、
ティエリアの様子はもういつもと変わらず淡々とした物でしかなかった為、
特別な関係を築くのはどうやら不可能だと判断したようだった。
その日は全員ゆっくりと体を休め、大会の余韻に浸った。
翌日、ロックオンがハロとその兄弟をイアンに修理に出し、
即座に制御系システムの障害が取り除かれた。
もうこんな事があってはならないと、ロックオンの提案で地上から
サッカーボールが補充される事になった。
王留美がボールの入った箱と共に、大会記念写真を携えてやってきた。
全員で、大会の忘れ得ぬ記憶を思い出し、写真の風景と照らし合わせる。
「あら…。」スメラギが、一際大きく引き伸ばされた写真に目をとめ、みんなに提示した。
「これ、優勝直後の集合写真だわ…!感激だわ…。本当に…。」
全員で、覗き込んだ視線が一人の人物に同時に注がれた。
ティエリアだ。顔が真っ赤になって、どうやら涙も流しているらしい。
「ティエリア……。」みんなが、ティエリアを振り返り、感激の表情で見つめる。
あのティエリアが、優勝の感激に涙しているなんて…。
そう言えばティエリアはど素人だったのに、誰よりも努力して、ものすごい成長を遂げ、
チームに貢献した…。
MVPは刹那だが、本当はティエリアにやってもいい位だ…。
全員が同じ事を考え、ティエリアを熱く見た。
「4年後、必ず連覇しましょう…!」
スメラギが涙声になりながらも、決意の口調で宣言した。
メンバーが、力強く頷く。
すぐに団結した面々がティエリアの周りに集まり、円陣を組んだ。
「今回の功労者は、何と言ってもティエリア!!胴上げ…あッ!!」
冗談じゃない!!
ティエリアが慌てて円の下をくぐり真っ赤な顔をして逃げていくのを、みんなが追いかけた。
トレミーは今日も平和だった。
<終わり>