229 :さわやかムードメーカー:2009/09/04(金) 19:25:57 ID:B5jh6cJT
あんまりキャラが増えても作りづらくなると思いながらもさわやかムードメーカー書きました。
幼馴染と被った部分できてしまい申し訳ない。
さわやかよりもただの元気系になってしまいました、スマヌ。
→「うん。いいよ」
言ってしまってから、両手で口元を塞ぐ。
(やだ! 断るつもりだったのに思わず正反対の事を……!)
私の気持ちとは裏腹に、無常にも部屋の扉がゆっくりと開いていく。
易々と他人を入れるつもりなんてなかったのに、口走ってしまった自分が憎い。
「よかったわ。さぁ、篤君もどうぞ入って」
入ってきたのは、さわやかなクラスのムードメーカーの男子だった。
明るい性格みたいで、彼の周りにはいつも自然に人の輪ができていた。
ただ私は近寄りがたくて、一回もしゃべった事は無かったけれど。
「…………」
私は無言で男子を迎える。
こういう時、どんな顔をしていいのかわからない。
「喪女ちゃんと篤君。お茶の用意をしてくるから、しばらく待っててね」
「ありがとうございます。おばさん」
「ふふっ。すごく久しぶりに篤君が来てくれて、おばさんすごく嬉しいわ」
「変らず綺麗なおばさんに会えて、俺も本当に嬉しいです」
「まぁ。背丈だけじゃなく、すっかりお世辞も一人前になっちゃって」
そんな私の戸惑いには気づかず、男子とお母さんは楽しそうに談笑している。
確か、フェミニストでモテモテという噂を耳にした事がある。
歯の浮くような言葉もサラリと言える辺り、あながち噂も嘘じゃないのかもしれない。
「篤君、どうぞゆっくりしていってね」
そう言って、やっとお母さんが部屋を出て行く。
残されたのは当然私達二人だけ。
いくらモテモテフェミニストだとしても、どうしてお母さんと男子がこんなに親しくしているのか。
それがさっぱり理解できない。
「喪女ちゃん。すごく久しぶりだね」
「………?」
「せっかくの感動の再会なのに、なんて呆けた顔してるのさ」
「は?」
「教室でも話しかけてくれるの待ってたのになぁ。なのにこの仕打ち?」
「……??」
「子供の時みたいに遊びに来たんだよ。せめて、もっと喜んでくれてもいいでしょ?」
「えっ?」
「俺の事本当に憶えてないの? 俺、あっちゃんだよ!」
「あっちゃん……?」
「どうして思い出せないの? 幼稚園の時、あんなに遊んでたのにさぁ!」
(あっちゃん?あっちゃん、あっちゃん……)
どこか懐かしい響きを私は何度も噛みしめる。
心の引き出しの一番奥。
大事に大事に仕舞っている、楽しかった思い出が次々と湧き上がってくる。
「あっちゃん……。もしかして、幼稚園の時に引っ越しちゃった、あのあっちゃん?」
「ようやく正解。だけど喪女ちゃん、気づくの遅すぎ」
「だ、だって……」
突然の出来事に、気が動転している。
クラスの人気者が、まさか昔仲良くしていた子だったなんて。
私が驚きのあまり何も言えずにいると、お母さんがお茶を持って部屋に現れた。
あっちゃんはまたお母さんと楽しそうに話を始めていた。
お母さんが部屋から出て行ったのを確認し、私は思わずため息を吐く。
「あっちゃんってやっぱり……あのあっちゃんだよね」
「うん、そうだよ」
「あんなに仲良かったのに、私、全然気付かなかった……」
「ま、俺は男だしね。多少、外見は変るものでしょ」
「それにしたって……」
「実を言うと、俺も喪女ちゃんにすぐ気づけなかったんだ。だからお互い様かな」
「私も?」
「うん。喪女ちゃんも自分じゃ気が付かないだけで、ちゃんと変っているよ」
「そうかな。だけどあっちゃんの場合、すごく良い方向に変ってるよね……」
「そう? 実感は無いけどなぁ」
私の記憶の中のあっちゃんは私よりもうんと背が低かった。
こんなにオシャレでもなかったし、ごく普通の明るい少年だった。
多くの女子からあこがれの存在として見られるようになったあっちゃんを、私は感慨深く見る。
当のあっちゃんは、改めて私の部屋をぐるりと見回している所だった。
「しかし、この部屋も懐かしいな。タイムスリップしたみたいに、ずっと昔のままだ」
「うん。模様替えもほとんどしてないからね」
「ほら、ここでよく喪女ちゃんとおままごとしたじゃない。憶えてる?」
「うん、一応……」
「喪女ちゃんはお母さん。俺はお父さん役でさ」
あっちゃんは昔を懐かしんでいるように目を細めて笑う。
その懐かしい仕草につられて、私も子供の頃に遅くまで遊んだ日々を思い出す。
「私、毎日あっちゃんとおままごとしてた気がするよ……」
「そりゃそうさ。なんたって俺がヒーローごっこしようって言っても、即却下だったからね」
「ご、ごめんね」
「いいよ。ヒーローごっこもしたかったけど、おままごとも好きだったから」
「でも、迷惑だったんじゃない?」
「全然。俺もすごく楽しかったよ」
そう言うと、あっちゃんはニコッと笑う。
いくら昔に遊んでいたといえ、こんな親しげに笑われたら困ってしまう。
私は人懐っこい笑顔から逃げるように、話題を振る。
「い、今になって考えると、私、けっこう強引な性格だったよね……」
「そうだねー。飽きるまで遊びに付き合わされたくらいだから、相当なものかもね」
「ご、ごめん」
「いいのいいの。喪女ちゃんと一緒なのが、俺、本当に嬉しかったんだから」
「そうなの?」
「うん! 何たって遊びとはいえ、喪女ちゃんとラブラブ夫婦だったんだよ」
「……!?」
「大好きな女の子と一緒に遊べていたんだから、嬉しかったに決まってるじゃん」
(だ、大好きな女の子って……!)
全部子供の頃の話だって理解はしている。
でも今の私の顔は、きっと耳まで真っ赤だろう。
「『あなた、あーん』って毎日してくれたよね」
「そ、それは昔の話で……!!」
頭から湯気が出そうになりながら、慌てて否定する。
そんな私が面白かったのか、あっちゃんは口元を押さえて笑いをこらえていた。
「冗談だよ。まったく、喪女ちゃんは面白いなぁ」
「も、もう。からかわないでよ……」
「ごめんごめん。だって、喪女ちゃん少しも変わらないんだもん」
「えっ。ど、どこが?」
強引だった子供の頃の私と、引きこもりになった今の私じゃ全然別物に思える。
「そうやってムキになってすぐ赤くなる所とか……?」
「うっ……」
「照れ屋で素直で、ちょっぴり臆病な所もかな。昔と全然変わらないよ」
「そ、そうかな?」
「うん。俺が保障するって」
(あっちゃんって、やっぱりすごいな……)
あっちゃんの持つ天性の明るさと人懐っこさで、私達の距離は一気に縮まっていく。
こんな私でさえ、別々に過ごしていた十年間がまるで無かったかのように感じてしまう。
「あのね、あっちゃんも外見は変っちゃったけど、中身は変わらないと思うよ」
「えっ、俺も?」
「うん。昔から明るくて、みんなに慕われてて……」
「そうだと嬉しいんだけど。でも実際はすんごく腹黒かもよ?」
「う、嘘……」
「どうだろうなぁ。なんなら、俺のお腹見てみる?」
制服のボタンに手を掛けたあっちゃんを、私は慌てて止める。
「や、止めてよ……!」
「止めて欲しい? じゃあ、百万円」
「もう。冗談ばっかり……」
「まぁ今の冗談は置いといて。十年も月日が経ったんだから、俺達にも色々あった訳じゃん」
「うん……」
「せっかく同じクラスで再会できたんだし、俺に出来ることがあるなら言ってよ」
「でも……」
「俺と喪女ちゃんは昔からの友達なんだ。何も遠慮なんていらないよ?」
「………」
「俺、喪女ちゃんの力になりたいんだ」
「………」
「だから、昔みたいに頼ってよ。ね?」
(あっちゃんが私の力になってくれる……)
そう思った瞬間、肩の力がフッと抜けた。
まるで私を締め付けていた重い鎖が一つ、外れたみたいだった。
「あっちゃん……。その、ありがとう」
「さっきよりも柔らかい顔してるね。少しは楽になった?」
「うん……」
「よーしっ、こんなに期待されてるなら次も来ない訳にはいかないかな」
「えっ? どこに?」
「ココだよ。この喪女ちゃんの部屋に決まってるでしょ」
「えっ!?」
「まさか……嫌なの?」
「ううん。嫌じゃない……けど」
「良かった。じゃあ俺、また来るから」
「ちょっ……」
「嘘とか冗談一切無しの、これは本気」
「……ま、まってよ」
「待たない。俺、昔みたいに張り切って通っちゃうから、覚悟しておいてね」
そういい残して、あっちゃんは勢いよく階段を下りていく。
せめて送った方がいいのかもしれないと思っていると、「また喪女ちゃんに会いに来ます」と声が聞こえた。
その後、お母さんと少し言葉を交わして玄関の扉が閉まる音がする。
(はぁ……ビックリした。でもこんな偶然もあるんだな……)
私は少しだけ窓を開け、あっちゃんの後姿をそっと見送った。
以上です
どうも失礼しました
最終更新:2009年09月08日 00:54