手首の包帯
○○日目
黒田君が来るようになって、明るくなったとお母さんに言われた。
こんな私でも友達だと言ってくれたのが嬉しい。
よそよそしい敬語も止めてくれたし、最初に比べてずっと仲良くなった気がする。
今日もプリントを受け取り、話を始める。
「喪女さん。最近どんな本を読んだ?」
「えっと、村丘春の本とか?」
「それニュースにもなってたし、入手困難じゃなかった?」
「そうらしいね」
「一体、どうやって手に入れたの?」
黒田君の瞳が急に輝きだした。
「お母さんに頼んで朝一番で買ってきてもらったんだ」
「うらやましい……僕は書店で一週間待ちだよ」
「でね、村丘春の本ってスルスル読めるから、つい夢中になって全部読んじゃったんだけど…」
「じゃあ!」
さっきまで丸まっていた背中が伸びる。
「いいよ。貸してあげる」
「ありがとう!喪女さん」
本の話をする黒田君は本当に楽しそうだ。
○○日目
いつもようにプリントを届けてくれた黒田君。
ふと、その左手に違和感を覚えた。
(あれ……?)
お茶を手に取っている左手首から包帯がチラッと見えた。
「その手、怪我?」
私は自分の左手首を指差しながら尋ねる。
「あっ……! そ、そうなんだ。僕ってそそっかしいから手が滑って」
「そうなんだ。大丈夫?」
「へ、平気だよ。本当に駄目だな僕は。はは…は……」
一瞬、自傷行為という言葉が思い浮かんだ。
すぐに否定してくれた事に、ホッと胸をなでおろす。
(まさかと思ったけど、私の考えすぎだよね)
最終更新:2009年09月08日 02:40