アットウィキロゴ

七月三日~七日



私は壁に掛けてあるカレンダーを見る。
今日は七月一日。
最低でも新学期の九月一日までに学校へ行かないと、進級は難しいだろう。

弟の亮から軽蔑されているのは分っている。
引きこもりを続ければ続けるほど、嫌われる一方なのも理解している。
だから私は姉として、ちゃんと新学期に登校できるようになりたい。
二ヶ月後の新学期、弟の亮と登校する事。
それを私の目標にしよう。

果たして私は亮から認められ、昔のように仲良くなる事ができるのだろうか――


七月三日

居間に向かうと、亮が居た。

「おい……」

いつも通り無視されるのかと思っていたのに、不意に声を掛けられる。

「な、何?」
「………………」

自分から話しかけたくせに、亮は黙っている。
また意地悪な事を言われるかもしない。
私はぐっと身構える。

「………」

亮が口を動かし何かを呟いた。
だけどその声が小さすぎて、私には聞こえない。

「えっ? 今何か言ったよね」
「あぁ。言った」
「何て言ったの?」
「……………」
「教えてよ。気になるじゃない」
「くせぇ……」
「はい?」
「くせぇつったんだ。どうして獣みたいな臭いさせてんだよ」
「わ、私?」

亮は私の問いにうなずきもせず、冷ややかな視線で私を見下ろす。
そして舌打ちをしながら居間から出て行ってしまった。

私は自分の体をくねらせ、あちこち匂いを嗅いでみる。
けれど自分ではよく分らなかった。

七月六日

居間に向かうと、また亮が居た。

「おい……」

いつも通り無視されるのかと思っていたのに、不意に声を掛けられる。

「な、何よ?」
「………………」

話しかけたくせに、亮は黙ってしまった。
また意地悪な事を言われるかもしない、と私は身構える。

「………」

亮が口を動かし何かを呟いた。
やっぱり、その声は小さすぎて私には聞こえない。

「えっ? 今何か言ったよね」
「あぁ。言った」
「何て言ったの? 気になるよ」
「…………」
「はい?」
「風呂、入ったのか?」

【選択肢】
「ううん、入ってないよ」
「うん、一応」


→「ううん、入ってないよ」

「やっぱり……」
「何がやっぱりなのよ」
「最高にくせぇ……鼻が曲がる」
「わ、私?」
「他に誰が居るっつうんだよ……」

確かに、この部屋には私と亮しか居ない。

「もう人だと名乗るな。全人類に失礼だ!」

捨て台詞のような言葉を吐くと、亮は今から出て行った。


→「うん、一応」

「ふぅん。あっそ……」
私の言葉に、亮はうなずく。
とはいっても、心底ダルそうにだけど。

「この前、亮に臭いって言われたからね」
「常識の範囲だろ。自慢げに言うな」
「そ、そうなんだけど……」
「まぁブスなんだから、そうやって小奇麗にしておけよ」

捨て台詞のような言葉を吐くと、亮は居間から出て行った。


七月九日

「よし! 出来た」

私はオーブンからクッキーを出す。
見栄えは悪いけど、綺麗な焼き色がついていた。

その時、ちょうど居間に亮が入ってきた。

「ねぇ、亮。今クッキーが焼けたところなんだ。食べる?」

甘い香りに負けたのか、亮はだるそうにキッチンまでやってくる。
そして、焼けたばかりのクッキーを覗き見た。

「隕石かよ……」
「み、見栄えは悪いけど、けっこう上手くいったんだから」
「で?」
「味見してみて」
「俺にこの月の石を味見しろっていうのか?」
「そうだよ。さ、どうぞ」
「…………」
「食べてみて。もし美味しかったらまた作ってあげるから」
「…………」
「さぁ、早く」
「………やっぱ止めた。腹壊したくないしな」

そう言って亮は手に持ったクッキーを置く。
そしてさっさとキッチンから出て行ってしまった。

「何よ。食べてくれてもいいのに……」

私は去っていく亮の後姿を見ながら、クッキーを手に取る。

「いいもん。私が独り占めするから」

香ばしい焼けたばかりのクッキーを、口に中にポンと入れた。

「か、硬い。歯が折れる……」

クッキーは亮の言う通り、食べられたものではなかった。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年09月08日 12:40