「久しぶりの宇宙だ」
というのはアルク。
何かしら懐かしさを浮かべる面々の姿がある。
それとは対照的に。
「・・・む、無重力がッ!」
ハーディ・ロックバーンを始めとする数人の男女は動揺を隠せずにいた。
「しかしトニーブラウン。アンタ宇宙は初めてじゃないんだな。イメージ的に『うわわわわ!お前らそこをどけー!』とか言って突っ込んで来そうな感じだったんだが」
メンバーから笑いがおこる。
「昔は色々あってな」
トニーブラウンの言葉に一抹の感情の変化を見たのは、JD。
「宇宙に出てから、元気が無いんじゃないか?」
戦艦アルカオルクスの居住区。宇宙空間が見えるスペース。
トニーブラウンにコーヒーを手渡すと、壁によりかかった。
サングラス越しの表情がピクリと動く。
そして口元が少しだけ綻んだ。
「感傷的になってるんだろうよ。そんで、元気が無いのはお前もじゃないのか?」
サハラ局長の顔がJDの脳裏に浮かぶ。
薮蛇だったか。まぁ、この男ならしょうがない。
まずは自分の気持ちを話す事にした。
「まあ、隠すもんじゃないが・・・・」
JDの見せる、遠い目。
トニーブラウンは少々の驚愕を持って沈黙で応える。
ノウスクラッチJD、この男にもこんな目をする事があったのか。
続けて語りだす、彼の言葉。
「俺の任務・・・この
AICに居る理由は、もう無くなってる」
自分が宇宙に行くアルカオルクスを護り、散る役目であった事。
そしてその機会はある一人の男が請け負った事。
ならば。
己の、やるべきことは。
「復活する事だ」
最後は自問自答するように彼は呟く。
顔を上げた時のその顔に、JDの目に。
曇りは無かった。
うらやましいな。
「迷いが無いってのは、いいことだ」
サングラスを少し持ち上げる。
「昔の俺の隊長が言っていた」
表情の変化を悟られぬ為に。
「まだ迷い続けている。戦う事に対する恐れもある。だが・・・『それもまた俺』だそうだ」
過去が謎のままにされていたトニーブラウンの口から出た言葉。
JDに深く詮索する気は起きなかった。
きっと、この男にはこの男の生き方と、これまでの生きてきた道があるのだろう。
ただ言える事は・・・少しだけ、二人とも元気になった事か。
が、そこにさらに元気な奴が来た。
「何やってんだ?アンタら」
アルク。
「内緒話だ」
ニヤリと笑ってJDが答える。
みるみるつまらなそうな顔になっていくアルクに、トニーブラウンが声をかけた。
「そういえばアルク、お前も宇宙生まれだったんだな」
「あぁ。サイド6第7番地コロニーで18年間過ごして来ましたがね」
「・・・え?てぇことは」
『ここが、お前の故郷か???』
現在、戦艦アルカオルクスの滞在しているコロニー。
1年戦争のさいに中立地帯を宣言し、それを続けている。
サイド6第7番地コロニー『イェルグ』
現在、戦艦アルカオルクスから見える、コロニーの名だった。
最終更新:2009年03月10日 02:39