二つ名:招致の勇者
名前:リュトン
詳細:
召喚術を専門としていたが、召喚がうまくできず落ちぶれていた。だが「勇者か魔王なら召喚できる」ことがわかり、いろいろな勇者や魔王と契約を結ぶために旅をしている
『祈りながら汝、自身を燃え上がらせよ』
招致の勇者。真名:リュトン。召喚魔術を生業にする魔術師。仕事内容は人探しに魔物払いと多岐に及ぶ。時々魔術学校の臨時講師として下級生に術式や魔法陣の書き方を教えているが収入は少ない。
召喚魔術とは霊的存在を自身、ないしは特定の場所に呼びだす技法のことで、呼び出す方法には「喚起」と「召喚」の二種類がある。「喚起」とは、術者より下位の霊的存在を呼びだす術。「召喚」とは、神や天使という、術者よりも高位の霊的存在を自分または特定の領域に引き下ろす術のことである。
魔術師の世界では、一般的に「喚起」の召喚魔術が使われることが多い。「召喚」の魔術は多かれ少なかれ危険が伴うし、自分よりも下級の魔物を使役する方が勝手が利くためだ。魔術学校でも「喚起」の召喚魔術に多くの時間が割かれ、召喚師のほとんどは「喚起」魔術を使用する。招致の勇者もまた例にもれず、「喚起」魔術を使用していた。
しかし彼の本分は「召喚」魔術にあった。「神」や「天使」など、高位の霊的存在を呼び寄せることに彼は長けていた。勇者と魔王は、女神と邪神に神託を与えられた存在。故にそれらを招くことに彼は長けていると言える。実際に女神から与えられた力は、勇者と魔王を召喚出来る力のみである。彼自身、神や天使を召喚することはほぼないと言っていい。
彼の得意とする「召喚」魔術にもまた二種類の方法がある。「請願召喚」と「憑依召喚」である。「請願召喚」とは、術者と召喚対象が分離されたまま行われる召喚方法。「憑依召喚」とは、術者自身の意識内に、霊的に優れた存在を呼び降ろす方法を指す。
勇者や魔王を招く場合、ほとんどは「請願召喚」を使用する。「憑依召喚」は声や思考だけを借りたい時や、命の危険に苛まれた時などに限り使用する。
「憑依召喚」は「杯の業」と呼ばれることがある。魔法円の中の術者自身を杯と見立て、そこに水を注ぐように術者に高位の霊魂が流れこむ様を表している。「憑依召喚」の際、術者は文字通り器と為る。それは憑依する者の位が高くなるほど、人間が踏み込んで良い領域ではなくなっていく。故に、「憑依召喚」を使用する魔術師には、自らの人生、生命、魂魄そのものを神への供物とし、永遠に祭壇に捧げる覚悟が求められる。
「召喚」魔術で霊的存在を召喚するには、事前に双方合意のもと契約が結ばれていなければならない。リュトンの要求はただ一つ。「必要な時に、力を貸してほしい」。それを通す条件は、相手によって様々である。
事前に召喚する日時を指定していることもあれば、突発的に呼び出すこともある。しかし緊急の呼出は、契約によって「突発的な召喚に応じる」ことを承諾されていなければ出来ない。
人や魔王によってその契約内容は様々。
招き来てもらう術に長けているが、元の場所に転移させる魔術は未だ習得出来ていない。その為召喚された方には自身の足でお帰り願うしかない。颯爽と帰っていくものには土産を渡し、それが出来ないものとは帰路を共に旅したりする。扉の魔王とは是非ともお近づきになりたい所存。
契約している者とは脳内で意志疎通が可能。しかし呼び出しに関する受け答えに限る。相手に呼べと命令されれば、呼び出すことも可能。
中性的で小柄。肌は生白く、唇は程よい血色。パッと見て性別の区別がつかない。一応本人は男のように振る舞っている。
芯の通った真っすぐな立ち姿に、凪いでいるのに見透かすような、静かで強い眼差し。ある種の清廉さを感じさせる、端麗な出で立ちをしている。
「無私」を体現しているかのような、欲の少ない青年。召喚師の仕事も、自分が生きる為に習得出来た物が召喚魔術であったから続けているにすぎない。その他に手を伸ばすこともなく、『男子は生涯、一事をなせば足る』という精神に通ずる考えを持っている。
表情があまり変わらない為、少し近寄りがたい印象に思うが、表情がないだけで、彼は人付き合いに線引きをしていない。普通に話しかければ普通に返してくるし、抵抗もなく人に話しかけに行く。
少し天然で、かつ強引な部分がある。彼の根本にある目的主義がそうさせているが、本人に悪気はなく、礼儀知らずというわけでもない。交渉の際に手順や作法が必要ならば黙ってそれらを用意するだけの教養はある。契約交渉の際、無意識に自身の中性的な容姿を利用することも。
自己の『我』というものが突出していない為、誰にでも合わすことが出来る。意気投合して距離が近くなる、というよりは『気が付いたらそこにいた』と人に感じさせる付き合い方をする。彼の琴線に触れるような事が起きれば、途端頑固になる。それ以外は好きにしてくれて構わないというスタンスの、サッパリとした性格。
甘いものが好き。三食甘いものを食べるのを何とか堪えている状況。彼のコートの中には契約書(魔術書)とは別に、世界各国の甘味屋の情報が記された著書があるとかないとか。
一人称/三人称:ボク/アナタ
誰に対してもタメ口で話すことが多い。
「気になることがある。支障がないなら、調べさせてほしい」
「来てくれて有難う。早速で悪いが、力を貸してくれないだろうか」
「……ダメか?」
「……どうしても、ダメか?」
リュトンとは古代の器の一種。角状または鹿・山猫・羊・山羊などの動物の頭部を模した形の杯のこと。古代ギリシャ語の「流れる」という意味の動詞(ῥυτόν)に由来する。