二つ名:消の魔王
名前:リズル=ミラーデイス=ヴィアハムート
詳細:
竜族の亜種で、体を消すのが得意な魔王。仮にも竜族であるためもっと凛々しく誇り高くいろと言われるが、本人は自由であるのが好きで、よくお説教中に消えて出かけていく
【追加設定】
首筋や目元、それから指や耳などには竜族としての特徴が残っている。人間のそれとは違う形をしていたり、毛の代わりに鱗が生えていたりなど。
更に言えば、腰元からはゼンマイのような輪っか状の尻尾が思いっきり飛び出している。何のために変化の魔法を行使しているのか。
気合次第でこれらを隠してしまうこともできるのだが、彼はなんとなく窮屈というだけの理由でそうしない。
手足の末端や背筋、喉元などは鱗で覆われているが、それ以外の部分は柔らかい皮に包まれている。
全体的に打撃や衝撃には強いが、剣による斬撃などには弱い。また、炎や冷気といった熱の攻撃にも比較的脆弱。
柔軟な肉質をしているだけに、その脚にぶつかったりしても大したダメージにはならない。精々勢いよく転ばされるくらいである。
竜族の"亜種"である事を主張するかのように、角がない。敵を威嚇する牙も持たず、どちらかと言えば鮫に似た鋸歯が数多く生えている。
大声も火も氷も雷も出ない。ここから生まれるのは今にも霞んで消えてしまいそうな声と、睡眠毒ばかりである。
そして舌が恐ろしいほど長い。上手に伸ばせば自分の尻尾に絡みつけられるほど長い。
魔力も何も用いず、それ単体で透明化する能力を持つ。
原理は彼本人からしても全くの不明。生まれながらに感覚でやってきたらしい。
彼の肉体の中で最も特殊な部位。そもそもの大きさからして、自分自身を丸ごと包み込んでしまえるほどに巨大。
そこには絶える事無く魔力が満ち、鏡面じみて透き通った翼膜には宇宙のような黒い景色が映っている。
消の魔王本人は、受け継ぎ損ねた竜族としての魔力が全て、ここに集約されてしまったのではないかと考えている。
4本。胴体から横向きに生えている。人間でいう掌に当たる部分に摩擦係数の高い鱗があり、壁や天井に張り付くことが出来る。
腰とも尻ともつかない場所からぴょこんと跳び出し、くるくると丸まっている。
外見としては非常に可愛らしい。が、この尻尾は99%筋肉で構成されており、凄まじく頑丈で実用的。
非常に優れている。人間用の視力検査を受けさせれば少なくとも5.0ほどの結果は出す。
真の姿を現せば、両目を違った方向に動かし、様々な角度を同時に確認することも可能となる。
こちらは並。鋭いには鋭いが、それ専用に訓練された動物には劣る。
全くない。元々の姿に鼻がないことが主な原因である。
普通の人間と同じように感じる。感じた上で何の反応も示さない為、味覚がないのではと疑われたりなど。
実に鋭敏。その他の感覚全てを封じられても、空気の移動や地面からの振動によって周囲の状況を完璧に察知できる。
これは姿を消す力を効率よく行使するために育まれた体質のようだ。
気の赴くがままにあらゆる世界を巡り、その中で勇者や魔王と交流するのを目的とする。
勇者と出会えば、力を持つ者として協力をしてあげたり雑談したりする。そして別れれば、どこかで再会するのではないかという楽しみにもなる。
魔王と出会えば、同じ魔王同士で情報を交換しあったり雑談したりする。訪れた世界を記憶し、自分が動き回れる範囲を増やす結果にもなる。
戦いや、剥き出しの敵意を恐れる必要はない。それはそれとして受け止め、受け入れ、やり切るのみである。ある意味では非常に好戦的ともいえる。
彼は立場や職業、それから生い立ちなどをあまり重視せず、自分のことも相手のことも1体の生き物として見る傾向にある。
それゆえ、「魔王」として破壊活動や聖界侵攻を行うことは殆どない。
ただ、「消の魔王」の名前については積極的にアピールし、「人畜無害で安全でしかもほんのちょっぴり凄い奴」としてのイメージを人々に定着させようとしている。
一人称は「俺」。二人称は「アンタ」か「お前」の二択。三人称は老若男女に関係なく「あいつ」。
勇者や魔王など、二つ名を持つ相手の場合に限って「○○の旦那」「○○の姉御」等も使う。
非常に砕けた口調で、どことなく投げやり。冗談好きでもあり、茶化すような言動も好む。
一応、自分より格上らしい相手や目上の相手には敬語を使おうとするが、あまりうまくいかない。どこかズレた口調になる。
笑い声の最初には『ケ』が付く。「ハハハ」は「ケハハ」になる訳である。
「ヘイヘイどうもお待ちどうさん、俺が消の魔王ってもんですよ」
「見よ、この誇り高く天井に張り付く姿。……あっ、すまねえ、姿消しっぱなしだったわ。これじゃ見えねえよな」
「あと別に誇り高くもねえな。何言ってんだろ、俺……ケァハハ」
持っている能力を最大限に生かし、狡い程に粘り強く戦う。
完全に姿を消して付かず離れずの距離を保ち、延々と睡眠毒を吐きかけ続けるようなやり口である。
透明化が何らかの手段で破られた場合は、翼の力も絡めた戦いとなる。
翼で相手を包み込んでどこかへ飛ばしてしまったり、別の世界から巨大な岩を持ってきて落としたりなどする。
出来る限り使いたくない最終手段ではあるが、自分の世界から番竜を連れてきて解き放つ、ということも可能。
また、敵の数が明らかに多い場合や大きな敵と戦う場合は、けっこう簡単に真の姿を晒す。
特殊能力の面では人の姿の時と変わらないが、重量と腕力を活かした打撃は敵対者にとってかなりの脅威となるだろう。当然ながら、透明化の能力も十全に行使できる。
姿を消す。まず元々の体質を駆使して肉体を消し、そこに魔法を添加して服や気配も消しているという原理。
彼にとってこの能力の行使は息をするように簡単で、同時に便利な物である。
気合次第で匂いや音を消したり魔力の反応も抑え込めるらしいが、そこまでするのは稀。
口から吐き出される薄水色の毒。最初は固まった状態でふよふよと飛び、何らかの物体に衝突すると爆発的な勢いで広がる。
また、この毒は陽の光に当たると透ける性質を持ち、室外で使用されると認識することさえ困難となる。
この毒を吸った者は数秒で夢も見ない深い眠りにつき、少なくとも6時間は目覚めない。
そのままの状態でも副作用の無い麻酔薬や睡眠薬になる。商売の為にこれを求める者もいるとかいないとか。
文字通りに舌を尖らせ、全身の筋肉を収縮させたのちに発射する攻撃。
人間の姿で使うと外見が凄まじい事になってしまうので、基本的には真の姿を現した時にのみ使う。
尻尾と同じく筋繊維の塊である彼の舌は、思いきり力を込めると金属も同然の硬度になる。
音速を超える一撃は生半可な防御など無視し、敵対する者の骨格を容易く砕き散らすだろう。
彼の最大の特徴にして魔力の大部分を秘めた翼。翼膜には宇宙じみた虚空の景色が映る。
一度羽ばたけば今いる世界を瞬時に離れ、別の世界の事を思い浮かべながらもう一度羽ばたくことで、その世界に降り立つことが出来る。
簡単に言えば、世界を移動する力を高速かつ低負担で行使できるわけである。
ただ、発動時に行きたい場所を思い浮かべなければならない都合上、見当もつかない世界に行くことは出来ない。多少は情報が必要。
追い詰められた時に限り、彼はこの翼を攻撃の為に扱う。
相手の全身をこの翼によって覆い込み、今いる所とは別の世界へと飛ばしてしまう……つまり、目の前から消し去ってしまう訳である。
行き先の世界は基本的にランダム。「この世界に送ってくれれば確実に処理する」と言ってくれる魔王を募集している。
どうしても調子が悪い時や次に行きたい世界がなかなか見つからない時、彼は異次元の中で、遥か眼下に奇妙な物を見ることがある。
それはまるで巨大なボードゲームのようで、広大な白と黒の盤面の上を、様々な色合いをした無形の駒が動き回っているのだという。
彼はその景色について追求しようとはしない。してはならないと、本能が言っているのである。
雲を突き抜けるほど高い岩壁に囲まれた、上から見ると円形の世界。
どうにかして岩壁を超えると、世界の反対側に出てきてしまう。惑星が丸く閉じているように、この世界も円形に閉じているのである。
その中心には北から南へと一直線に壁が敷かれ、世界を東と西に二分割している。
それほど広い世界ではない。聖界の豊かな都市1つ分と同じ程度である。
この世界が出来た当初、住んでいるのは純粋な血を持つ魔族のみだった。
住人と彼らを統べる魔王は『純血』を何よりも尊び、それが行き過ぎて他の世界の混血魔族を蔑む事もあった。
しかしとある時、外の世界の混血魔族と子供を作ってしまった者が現れ、その者は世界の西端に追いやられた。
1人が規律を破ってしまえば、2人目が現れるのも遠くない。外の世界の魔族に愛を見出す者は次々と現れ、それが発覚しては西へ追いやられることとなる。
いつしか純粋な血の者はその数を減らしていき、混血の者は目に見えてその数を増やしていた。
当時の魔王は汚れた血が自分の元に近づくのを疎み、生息域を東西に分けた。この世界に壁が築かれたのである。
純血の魔族は魔王から与えられる魔力をふんだんに使い、贅の限りを尽くした。
西に住む者達を変わることなく蔑みながら、優雅に豪奢に暮らした。
……純血に固執するがあまり子孫が作れず、少しずつ数が減っているという事実には目を背けて。
混血の魔族は魔王からの補助も与えられず、細々と暮らしていた。
だが彼らには純血の者共にはない"数"があった。大勢で協力し、高層の建物を建築したり地下をも居住区として開拓し始めたのである。
純血の魔族たちを煽り立て、苛立たせようとする理由もあり、彼らは自由に交配を重ねて多様な魔物を増やし続けた。
……貪欲に愛と仲間を増やし続ければ、いつか生活に限界が訪れるとも知らず。
壁が築かれてから何百年か経つと、その世界の歪みは顕著に表れた。
東に住む者は、もはや両手で数えられるほどの数しかいない老魔族のみ。
西では生活の許容限界を遥かに超えた数の魔族たちが飢え果て、遂に同属食いの禁忌に手を出す者まで現れ始めた。
誰が見ても、もうこの世界に未来はない。
何百年にも渡って東西を隔ててきた壁が、今更になって崩せる訳がない。崩れた所で、血みどろの争いになるだけ。
純血の竜である魔王も老いてしまい、やっとのことで作った子供にありもしない希望を託すのみだった。
そうして生まれ落ちたのが、現在の魔王『消の魔王』である。
近親による交配を繰り返してしまった結果、竜にして竜でないものとなり、そして生殖能力を持たなくなった。彼こそが、正真正銘この世界最後の魔王なのである。
『消』とはこの魔王の能力に対する名前であると同時に、滅びていくこの世界に押されるべき烙印の名前でもあった。
この世界では、遥か昔から三節の名前を付ける風習がある。
【名前】=【能力や体質をもじった言葉】=【苗字】という風である。
名前の二節目については、15歳になった時に周囲の者と話し合ってつける決まりがある。
この世界では、三節分の名前が完成して初めて一人前と言われるのである。
消の世界の東側では、どんな魔族も人間の姿をして過ごすのが普通である。
元々は初代魔王が自分の力を誇示する為にやっていたことが、いつの間にやら習慣になってしまったようだ。
その為、東の住民が生まれて最初に学ぶ魔法は人間に姿を変える魔法である。
あまりにも長い時間を人間の姿で過ごす為、寿命を迎えた際に元の姿に戻らない者もいるという。
消の魔王の先代。ヴィアハムート家5代目となる純血の竜の魔王。
真の姿は、群青色の鱗と槍そのものの形状をした尻尾を持つ竜。純血なだけあり、非現実的なまでの威容を誇る。
性格は非常に穏やかで、誰かに対して積極的に敵対しようとはしない。
だが、敵意を持って接してくる者には全霊の力で応える熱い闘志も、心の奥に兼ね備えていた。
優しすぎ、責任感が強すぎたせいで、世界が滅びに向かっていると知りながら何も出来なかった悲しき王である。
「フィーラン」の名は「heal」、彼が最も得意とした再生と治癒の魔法から来ている。
先祖代々、王家にて王の秘書官を務めていた犬型魔族の老人。
非常に頭が固く、厳しく、そして皮肉っぽい。王としての威厳が欠片もない消の魔王の事を嫌っている節があった。
最終的には消の魔王の事を王と認めたが、それ以前に刻まれてしまった溝は、最期まで埋まらなかったようだ。
魔法に詳しくとも、それを扱う体力がなかった。誇り高かい人柄だったが、その誇りを貫けるほどの力がなかった。
「イエリー」の名は「Ear」と「Area」、恐るべき聴覚と、地形探知魔法が得意であるという性癖から来たもの。
カラスに似た鳥の魔族。エリックと同じく、先祖代々王城の執事を務めていた魔族の老人。
カーストの中間のような立場にいたからこそ世界の多くを知り、ラグロと同じ結論に辿り着き、そして何もできなかった。
老いのせいで歩くこともままならず、晩年は書き物や絵画を嗜んで過ごしていたようだ。
若かりし頃の彼には聖界や魔界についての情報が記された本を収集する趣味があった。それらの本が、現在の消の魔王の行動指標として役立っている。
「クリーナー」はそのまま「Cleaner」、掃除をするものという言葉から来ている。生まれながら、彼はその生き方を義務付けられていたのである。
既にその名が忘れ去られて等しい、濃緑色の竜。
関節や骨格に沿うようにして作られた合金の鎧を身に纏っている。加えて、手の中には数多の外敵を屠ってきた巨大なハルバードを持つ。
元は油断なく東の街を飛び回り、外敵を速やかに駆逐してきた英雄だったが、今はその面影はない。
鍛え上げられた肉体と魔力に任せ、繰り返し痛覚遮断や再生の魔法を行使し、遂には自我崩壊にまで至ってしまっている。
現在では目に映る動物を全て破壊する事しか頭にない。相手が貴族だろうが魔王だろうがお構いなしである。
〔番竜の戦闘力〕
繰り返してきた戦いと、精神が崩壊するまで使用し続けてきた魔法により、その戦闘力は既に消の魔王を遥かに凌駕している。
この竜は角に秘めたる魔力を用い、幼い頃から再生の魔法を駆使して体を鍛え上げてきた。
それは鍛錬が実戦に、戦う相手が仲間ではなく勇者に変わっても同じ。
戦いの最中でも魔法を扱い続け、受けた傷は即座に修復し、不死身とも思える力を見せつけて立ち回ってきたのである。
全ての記憶が消えた今でも、彼の脳髄は淀みなく再生の魔法を行使する。
どれほどの致命傷を与えようと、ほんの数秒間の猶予を与えればその傷は跡形も無くなっているのである。
また、無傷のまま魔法の発動を繰り返す内、彼が身に着けていた合金の鎧は体の一部となっている。
血管が通い、自己を再生する魔法によって罅を塞ぐ金属体。果たしてそれは、『装備』と定義していいモノなのか。
常に筋肉が隆起した剛腕と、どんな鎧も防御魔法も破砕してきた斧槍。
それらの複合たる格闘術もまた、敵対者にとっては著しい脅威となる。
常識外の膂力によって振るわれるその鉄塊を、尋常な方法で防ぐことなど不可能。
並の人間では刃本体が届く前に、風圧の洗礼を受けて全身の骨と内臓を粉砕され、死に至る。
この竜の一撃を防ぐには、彼と同様に並外れた膂力を手に入れるか、物理力全てを無視するような防御魔法で以て挑むしかないだろう。
最後に、筋肉と対を成す形で彼が持っている武器が『喉』である。
竜族は元より咆哮によって周囲の者を畏怖させ、吐き出す火炎によって卑小な敵対者を薙ぎ払う存在。
彼の体質もまた、その例外に漏れない能力を秘める。どころか先述の再生能力により、同じ竜族でさえ恐怖させる性質を持っている。
破れようが傷つこうがすぐに修復してしまう為、彼の声帯には限界というものがない。
相手の鼓膜が引き裂けるまで、脳震盪を起こして意識を失うまで、刺激に耐えかねて発狂するまで、叫び続けられるのである。
炎を吐く為の器官も、同様の効果により頑丈になっている。自分の体さえ焦がしかねない炎を、体内に特殊なガスがたまっている限り、延々と吐き出すことが可能である。
そして吐き出した炎が自分の外皮に燃え移った時こそ、最大の脅威となる。
延焼と再生が拮抗し、結果として彼は並みの生物では近寄る事すら敵わない業炎を纏って、戦闘を継続するのだ。
……斯様にも恐ろしい竜だが、実の所、戦闘を避けるのは大して難しくはない。
この竜は生物を生物と認識して襲っているのではなく、単純に動いている者を攻撃しているのである。
現在の彼に、生物とそれ以外のものを見分けるほどの知能はない。
故に、彼が視界の内に居る間は動かずに座るなり死んだふりなりしていれば、闘争に発展するのはありえない。
そもそも彼がいるのは、消の世界の中心近くにある壁の東側である。この辺りには彼が打ち滅ぼした建築物しかない為、わざわざ行く意味など毛ほどもない。
街の中心部に住む、巨大な魔族。混血種という段階を超え、キメラとしか言いようがない姿をしている。通称は「ホウさん」。
鳥獣の両脚、蛸のようなぬめりを帯びた腰、胸部から肩は青と緑の斑な筋肉の塊、両腕は熊の如きそれで細い4本の指を備え、頭部は捻じれた嘴を持つ梟の物である。
卑怯な行為が嫌いで、積極的に弱い者を守り、邪悪なものを排除している。
正義の心を持っているというよりも、単に悲鳴や血飛沫を疎ましく思っているが為に活動しているようである。
お陰で街の中心部は辛うじて治安が保たれている。その近辺では彼女がまとめ役であり、よそ者や勇者にも対応する。
名前は言うまでもなく法律から来ている。本物の法律がないこの街には、彼女が必要とされているのである。