二つ名:氷結の勇者
氷を生み出し操る魔法を得意とする勇者。そのため「氷結の勇者」と呼ばれる。
基本的に敬語で落ち着いた雰囲気。外面はいつも冷静で、あまり感情的なところは見せない。
しかし心のなかでは悩んだり葛藤したりすることが多く、気苦労が絶えない様子。
考えすぎるが故に優柔不断だったり思い切った決断がなかなか出来ない。
冷酷というわけではなく、人当たりはよい。
相手を尊重し過ぎることもあり、そのせいで自分の首を締めることもしばしば。
暑い日に「(魔法で)涼しくしてくれ」と言われるとブツクサ文句を垂れつつも断れなかったりする。
親しい相手には砕けた口調も使うが、スタンスはあまり変わらない。
理不尽なことや不条理なこと、筋が合わず納得いかないことに対して人一倍厳格で、
場合によっては怒りと武力を持って正そうとすることもあるが
それはあくまで自分の正義であることも悟っていて、しばしば引け目を感じる。
幼いころに魔界に迷い込んだことがある。
迷い込んだ魔界は、統治している魔王が死を迎えつつある世界だった。
彼はそこで魔王に見つけられて、もとの世界に送り返してもらった。
その際に氷の魔法も教わったのだが、本当は「氷の魔法」を「教わった」のではなく、
消え行く魔王から「授かった」、「魔王自身の能力」である。
しかし彼は幼かったため詳しくは覚えておらず、「魔王に助けてもらった」としか記憶していない。
その魔王にお礼を言いたくて今も探し続けているが、もうこの世にいないことは知る由もない。
そういったこともあり、魔王のことは「住む世界が別なだけの外国人みたいなもの」くらいの気持ちでいる。
友好的な関係を築きたいと思っているが、勇者である自分には許されないことだ、と苦悩している。
他の勇者とも対立を避け、なるべく親しく接するが、どこかで距離をおくクセがある。
特に勇者・魔王関連の話になると黙り込んだり適当にごまかしたりする。
自分の過去を話したがらず、氷の魔法は女神から授かったものだと嘘をついている。
彼の性格上、魔王を滅ぼそうとする女神の意思には全くもって賛同できず、そのため女神が大嫌いである。
しかし彼にとって女神=絶対の存在という印象が強く、逆らったら消されると思い込んでいるため
少なくとも聖界においては勇者として正しいであろう振る舞いをし続ける。
理由無く魔王を倒さんとする者は許しがたく、説得したいとは思うが
自分もまた魔王を倒すべき立場であるのにそんなことをするのはおかしいという矛盾を抱え、何もできずにいる。
そんな自分が情けなくてよく自己嫌悪に陥る。
自分の「勇者」という身分に相当な不満があるが、勇者でなければ出会えなかった人や、
勇者でなければできなかったこともあり、複雑な気持ちでいる。
勇者であることに苦悩することが多く、しばしば魔王が自分の世界を持っていることを羨ましがる。
結局彼はどっちつかずで迷い葛藤し続けていて、そのせいか滅多に覚醒することはない。
覚醒するためには、勇者だとか正義だとか面倒くさい理屈全て投げ捨てて「俺はこうするんだ」という強固な意志が必要。
氷を生み出し、自由に操ることができる。
魔法を教わってから毎日毎日魔法で遊んでいたので手先のように使い慣れており、
相手の靴の裏と地面とを氷結させたり、霧に近いほど細かい氷の粒を作ったりできる。
武器は、一番扱い慣れているという理由で身の丈ほどもある大鎌を使っているが、
他の武器も作れるし、くさび状の氷を作り出し、相手に撃つこといったこともできる。
氷を形成する速度は恐ろしく早い。
扱い慣れている大鎌なら瞬く間に作り出すことが出来る。
単純で、イメージしやすいものであればあるほど形成する時間は短い。
大鎌を振った瞬間に、持ち手の部分を伸ばしてリーチを広げるといったことも可能。
しかし素早く繊細な扱いが出来る分パワーはあまりなく、
莫大な量の氷を一度に生み出すことはできない。手に持っている大鎌ひとつほどで限界。
あらかじめ氷を何度も生み出しておいて量を稼ぐといったことは可能。
適当な氷塊を転がしておいて、相手が近づいたらそれで攻撃するという、
ちょっと卑怯くさいこともできる。
能力が強力ではない分、良く言えばテクニカル、悪くいえばいやらしい戦い方をする。
燃費自体はかなり良く、たとえ全力でも数時間魔法を使っていられるが
身体的なスタミナはそこまで高くないため魔法は使えても身体は動かない、といったこともある。
彼の能力は魔王から授かったものであるが、それは本当は「氷の魔法」ではない。
本来の能力は「あらゆるものを凍てつかせる」能力である。
この能力を持っていた魔王は死にかけだったこともあり、彼に氷を生み出す程度の力しか授けられなかったのだが
覚醒することによって本来の力を引き出すことができる。
この状態なら、ものを物理的に凍らせることはもちろん、相手の心を凍てつかせてひどく冷めた気分にしたり、
「時」そのものを凍てつかせて時間の流れを止めたりすることもできる。
当然魔王の力は強大で、通常ならば覚醒した瞬間魔王の力に身体が飲み込まれ消滅するか魔族化してしまうが、
これを勇者の証に宿る神の力によって抑えこみ、人間のまま魔王の力を行使することができる。
このとき勇者の証は13つの欠片となって、土星の環のように彼の周りに漂う。
しかし抑えこむにも限界があり、この勇者の証の欠片は能力を使ったり時間経過したりするとどんどん弾けていく。
特に上述したような「時を凍てつかせる」ような強力な技を出せば一気に弾ける。
全ての欠片が弾けてしまうと、少なくとも人間ではいられなくなるため、弾けきる前に覚醒状態を解除する必要がある。
弾けた勇者の証の欠片が復元するには数日かかる。弾けた勇者の欠片が多いほど時間がかかる。
勇者の証が完全に復元しても、覚醒を重ねるごとに彼は魔王の力に侵されていく。