- 著者:小松左京
- 発行所:株式会社いんなあとりっぷ社
感想(2011/10/22)
小松左京という存在の来歴や、歴史・地学・生物学に親しんだ経緯などが書かれている。
最初のうちこそ、章立てや構成のことを考えて文章を書いているが、そのうちに筆は止まらなくなり、自分の興味のあることをいろんな知識で補完しながら書き連ねていく。
ある意味、小松左京らしさが最も良く出ている作品になっている。
小松左京は小説よりもエッセイやコラムのほうが面白いと思っていたが。そういう枠組みではなく、小松左京が咀嚼して消化し排出したものが私程度にはちょうど良い離乳食になっているのだろう。
この本が出てのは今から21年前。私はそのころ高校生でした。
考えの足りない高校生でしたが、この本を読んで知識というものの重要性を把握したことを覚えています。
江戸時代、蘭学を研究している医者などとは別に、蘭癖を持ったお殿様というのがいました。
体系的に学問を学ぶのではなく、黄燐マッチなどを擦って火がつくのを喜ぶといった感じです。
小松左京は蘭癖がすさまじい知性のために蘭学にまで昇華してしまった形と考えて良いと思う。
もちろん本格的な学者と同列に並べるわけにはいかないだろうが、知性に対する敬意を忘れていないところに彼の素晴らしさがある。
この作品では一対一の対談が何本か載っているのだが、小松左京は対談者としても素晴らしいことに気づかされる。
知性に対する敬意と、自身の旺盛な知識欲によって、相手の言いたいことを引き出し、一般人に理解しやすい形に分解し面白い形に再構成する。
私が小松左京が好きだから、ひいきの引き倒しみたいになってしまったが、90年代の知性を知る為には必読の本多と思う。
最終更新:2011年10月22日 09:28