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+ 消える星影 +

(1)

生まれたころは毎日が不安で、
僕はいつ死んでしまうんだろうかってずっと思っていた。
しばらくたって、僕は死なないことに気が付いた。
それは心の死刑宣告で、その時からきっと人間になりたかったんだろう。
そう、僕は人間になりたかったんだ。

『私が、ウツロ君の 『笑顔の理由』 になりますから』

そう言う彼女の瞳は真剣で、笑って誤魔化す事が出来なかった。
どうして僕に優しくするんだろうか。
捻くれ者の僕は、嬉しい反面、その優しささえ疑ってしまう。
彼女は軽蔑するだろうか?されて当然なんだけれど。

たとえば、こうしてフラスコの中で目を閉じる僕を見たらどう思うのだろうか。
たとえば、誰かの命を握りつぶす僕を見たらどう思うのだろうか。
たとえば、四肢がバラバラになっても再生する僕を見たらどう思うのだろうか。
答えは簡単、恐怖しか生まれない。

「おやおや死にたがり君、フラスコ帰りかい」
「ねえマキナさん…、これで何桁だと思います?」
「さあ?3桁は固いんじゃないかな」

僕が死ななくなると、誰かは喜ぶ。
それはどんどん生物兵器が便利になるからだ。
生物兵器としての力はついていく、でも、心は消えていく。
どうして、僕は生きているんだろう。

「すっごい浮かない顔」
「…まあ」
「何だい?悩み事かい?」
「わかって聞いてませんか」
「さぁどうかな、わかってたとしてもこれは君自身が気づかないとねぇ」

風邪をひくことも、熱を出すことも、疲れも、痛みも知らないこの体。
僕の意志と関係なく、死ぬことから逃げていく。
疲れることはないはずなのに、どうしてこんなに体が重いんだろう。
どうして、心臓が痛いんだろう。
どうして、無性に泣きたくなるんだろう。

「難しいです」
「ん?」
「生きるのが」

生きることは難しい、心から笑うことも悲しむことも怒ることも難しい。
なんとなく生きて、なんとなく合わせて。そうして生きる事しか僕は知らない。
彼女は感情を武器にしていた。僕には出来ないことだ。
どうして、あんなふうに全力で感情を出せるんだろう。
…どうして、僕には出来ないんだろう。
生まれてくる『どうして』は答えが見つかる前に消えていく。
感情をなくして、心をなくして、疑問も消してしまえればどれだけいいんだろう。





(2)

「マジでネガティブな顔だな、うぜぇ」
「…ミチル

へらへらと笑いながら罵ってくるミチルは、僕とよく似た顔をしているのに、恐ろしいほど生きたがりだ。
いや、この世界で生きているモノは大体生きたがりだ。
だから皆、僕を見て不思議だという。

「人の顔見てぐったりした顔すんな」
「定期検査の後で疲れてるんですよ」
「はっ、よく言うぜ。どーせ可愛いあの子の事思ってんだろ?マジ気持ち悪い」
「それ以上言うと右手千切りますよ」
「だったら俺は左手千切ってやるよ」
「……やめましょう、くだらない」
「あんまり恋に盲目してると俺がそいつ消しちゃうぜ?」
「大きなお世話ですよ」
「どーだかなァ。…次会ったらマジでその女消すからな」
「…それは、上からの命令ですか?」
「んー、ナ・イ・ショ」
「相変わらず鬱陶しい返し方ですね、友達なくしますよ」
「友達いねぇお前に言われたくねーわ」

ミチルの言う通り、これ以上か関わってはいけないのかもしれない。
好きとかそんな事じゃなくて、ただ、僕を僕として見てほしかったのかもしれない。
そんなつまらない理由で、この間のように、彼女を危険に巻き込むなんて馬鹿げている。
少しの間だけだったけれど、誰かを大切にする気持ちが理解できた。
それだけで、僕は満足だ。

「でも、言うとおりかもしれませんね…」
「聞き分けがいいじゃねえの」
「ミチルならやりかねないから。次で、最後にしましょう」
「ふぅん………、つまんね」

次に会った時にはお別れをしよう。
彼女と僕は違いすぎる、きっとよくない事が起こる。
だから、もう二度と会わないようにしよう。
その前に、お礼を言おう。感謝していることを伝えよう。
たくさんの幸せな時間をありがとう、って。
…おかしいな。僕は今幸せなのに、どうして目の前が霞むんだろう。


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最終更新:2011年06月10日 22:23