「分かりました。それでは、少なくとも怪我が治るまで、僕が保護しておきます。」
『ありがとう。ごめんね、帰ってきて早々に…。』
「いえいえ、僕も寂しかったものですから。」
カイムは自宅の縁側に座り、主である春美と通信をしていた。
シキはソファの上で寝息を立てている。いろいろあって疲れたのであろう。
『でも、それだと大変だね。訪問計画の件もあるし…。』
「僕の担当は
風月堂の咲埜子さんでしたよね。大丈夫です。近いですし。」
『明日だけど、シキさんも連れていくの?』
「はい。そのつもりです。彼を一人で放っておくわけにはいきませんし、自分も手伝うと言っていたので。」
『でも、まだ警戒されてるんじゃないの?』
「大丈夫ですよ。彼はもう警戒を解いてくれました。」
『えっ?』
春美は素っ頓狂な声をあげる。
この短時間で打ち解けられるだろうかと思ったのだろう、と解釈し、理由を付け加えた。
「訪問を手伝うと言われた時、一度断ったのです。しかし、彼は喰い下がりました『俺が何もできねぇと思っていたら心外だぜ』と。」
『…つまり…。』
「『自分の身の上をこちらに明かした』。それはつまり、警戒を解いた証拠でしょう?」
『成程ね…。』
「まぁ、こちらも最初は力を使っていたわけですがね。」
面目ない、とカイムは自嘲した。
『しかし吃驚したなぁ。今回の手口も多分
シン・シーだよね?』
「そのようです。鋭利な刃物による怪我でしたので…。」
『ずいぶんと行動が早いね…。』
「全くですよ。この前ノラさんが被害にあったというのに…。」
そう言うと、春美は口ごもるように言った。
『…あのね、カイムさん。実はその直後に…。』
「えっ!?彼女は確か第二三話では…?」
『ええ。どうやら能力を見抜けるだけで、片っ端から加害してる傾向があるみたいなの。もっと言うなら、
百物語組ばかりが狙われてるわけでもないみたい。』
「第五一話、第五八話ときてたので、その上をいくのではと危惧していたのですが…。」
『とにかく、人外なら油断はできない状況みたいなの。カイムさんも十分気をつけて。』
「分かりました。とりあえず教師として復帰するのはまだ先になりますので。」
「…それでは計画通り、訪問は明日に行います。」
『お願いね。あと、道中で人外さんに会っても忠告をお願いするね。』
「分かりました。それでは、僕はこれで。」
春美との通信を切り、カイムはシキを見た。
変わらず寝息を立てるシキにカイムは近づき、軽く頭をなでた。
「こうしてみると、普通の猫と変わらないのにね…。」
最終更新:2011年06月21日 07:30