弱い者が阻害される?
それはとんだカンチガイ。
本当に阻害されるのは、「違う者」。
そう。弱い者だけじゃない。
「他」にも阻害されるものだって、当然いるわけであって…。
彼は生まれながらに輪廻を任される運命にあった。
どうやって生まれたのかは、彼自身にも分からない。
「独り、土から生まれた」という表現が一番あうような、とにかくそんなものであった。
彼には兄弟がいた。
兄が一人、弟が一人。
彼は兄の「仕事」を常に間近で見、自らの成すべきことを体で覚えていった。
そして、兄の任期が終わった『157425万年目』、彼は2代目としてその座についた。
ついた、ところまでは順調だった。
しかし、休むことなく自らの仕事をこなしていく彼は気がつかなかった。
兄弟達が自らから逃れるように、ひそひそと話し合っていることに。
そしてそのことに彼が気付くのは、本当に突然のことだった。
一通り仕事を終え、つかの間の休息をとっている時だった。
「…●●。」
自らを呼ぶ声が聞こえた瞬間、突然踏みしめていた地が消え、目の前が闇に閉ざされた。
「!!??」
反射的に動こうとするその両手足を突如襲った鉄の枷。
自由を奪われた体は枷につながる鎖で雁字搦めにされ、微動だにできなくなってしまったのだ。
本当に一瞬の出来事だった。
「な…!?」
何が起こったのか理解しようとフル回転する頭を止めるように、頭の中に声が響いてきた。
『…すまんな、●●。』
「その声…兄貴っ!?」
『お前は今、この時を持って2代目の座を降りてもらう。』
「えっ!?何で…!」
彼は動かない体を無理に動かし、前にのめろうとした。
「わしのやり方に、間違いがあったんか!?まさか間違って裁いて…。」
『そうじゃない。』
「じゃあ、何で…。」
『至極簡単な理由だ。』
『「強すぎるから」だ、お前が。』
「!!??」
『すまんな。だが、こうするしかなかったんだ。』
「待て!強すぎるからって、それだけで何故…!」
『分からないか?強すぎるからこそ、対抗組織がなくなる。』
「わしらの仕事に、大綱もなにも…!」
『…とにかく、お前の仕事はこれまでだ。あとは俺と浄王に任せろ。』
「ま…まってくれ!界王兄貴ィ…!!」
彼の叫びもむなしく、その声を最後に彼は他人との交信を絶たれた。
仕事について『1000年』。
彼にとってはあまりに短すぎる任期であった。
自らが何処に縛られているか、それは分かっていた。
ここは所謂『輪廻の狭間』。
輪廻転生を繰り返すものが「通ってはならない」場所。
ここに閉じ込められたものは、転生によって出ることはできない。
永久の
闇の中に閉ざされたことを知り、彼は何を思ったかはっきり覚えていない。
それだけ長い間、彼は枷と鎖に囚われ続けていた。
その間に彼は感情を、信頼を、希望を、様々なものを失ったという。
彼はあきらめていた。自分はこの闇から脱け出すことはできないと。
そう。「主の能力」によって人間道へと呼びだされるまでは――。
長い間眠っていた気がする。
ふと目を開けた途端入りこんできた刺すような光に、彼は暫く目を開けられなかった。
実感がわかなかった。自分が今体を預けているのは鎖でも闇でもなく、ストラウルのビルの屋上だということに。
全く力が入らない筈の体を容易に起こし、彼は空を見た。
そして、呟いていた。
「…こ、こは…何処、じゃ…?」
ヤミカラノテンセイ
彼が初めて敗北するまで、あと1年4か月と25日。
最終更新:2011年07月01日 22:17