アットウィキロゴ

とある巨木の反省見聞

秩序とは

秩序とは一体何なのか

善とは

悪とは

答えの決して出ない質問に

答えがあると僕は思い込んでいた――?


足音が聞こえ、そちらを向く。
友人が心配そうに、こちらを見上げていた。
「どうした、アカノミ?元気ないんじゃないか?」
『…そう、かな?』

元気がないわけじゃないけど、正直戸惑っていたのはあった。
さっき来てくれた「東」に、僕は浅はかな考えを思い知らされた。
そんなに難しいことを考えていたなんて、少しも感じなかったのに。

『大丈夫だよ。ちょっと混乱してるだけ。』
「そうか?まぁ、ならいいんだけどな…。」
友人は暫く僕を見上げ続けていた。

『僕って、思ったより難しいこと考えて、決めつけていたみたいだね。なんだか、恥ずかしいよ。』
「…まぁ、仕方ないっちゃあ仕方ないけどな。」
友人は微笑んだ。
「動けないお前が情報を得るには、言葉を覚えるには『浮世歌』しかなかった。世界を緒情詩的に表現するもんだから、尚更そういう話にもっていきがちだったんだよな。」

『…初めて思った。僕、もっと広い世界を見てみたい。…叶うことのない夢だけど。』
「いいや。願っていればいつか叶うもんだと思った方がいいぜ。」
僕は『えっ?』と、また友人を見た。
「何でも良い方に考えれば幸せじゃねぇか。それが叶った時なんて一入だ。俺も『故郷』を失った時は、もう誰にも心は開けやしないと思ってたが、いまこうしていられるんだ。」

「叶わない夢は、ないよ、きっと。」

『…そうだね。ささやかに、祈ってみることにするよ。』
「ああ。それがいい。」
『そうだ。今度、「東」が残りの4人、皆連れて来てくれるんだって!』
「そうか!それはいい機会に…。」
言いながら友人は僕に寄りかかった。

そのときだ。

「…!?」
友人ははっと顔をあげ、素早く僕を見上げた。
その眼から金緑色は消え、血の色が浮かび上がっていた。

『ど…どうしたの?』
「いや…。悪い、アカノミ。今日はこの位で。」
『え、あ、うん…。』
駆けていく友人は、どこか慌てたような風に見えた。


(ど…どういうことなんだ、今のは…!)
麓の森に足を止め、彼は息を切らしながら近くの木に手を置いた。
そこにあったから置いたわけではない。その樹はかつて「キムナ」が樹に変えた人間だった。
(おかしい、まだ人間としての意思を持っている樹でも、あんな感覚はなかった。まさか、そんな…。)

彼は振り返り、道の先にいるであろう友人の姿を思い描いた。
握りしめた右手に残っている感覚は、樹としてはあり得ないものだった。
それは、「鼓動」。流れゆく水が、規則正しく流れていく感覚。
今までつきあってきた彼であったが、この感覚を味わったのは、初めてだった。
「まさか、本当に可能性があるのか…?」


アカノミが、動けるようになる可能性が――。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年07月19日 22:02