「あーるじっ!定期報告にきたよー…って、あれ?」
寺院にやって来たノラは、すぐに春美の姿が見当たらずにきょろきょろと見回した。
「おっかしいなぁ。匂いはするからいるんだろうけど…。」
あがりまーす、と一言言い、ノラは寺へと上がって行った。
「門下生は修行中かな。静かだし。…んっ?」
急に顔をあげ、ノラはあたりを見回す。
「この匂い…!もしかして!」
ノラは近くの襖をあけ、覗いた。
「あ、やっぱり!
タマモ姉さんだっ!」
「ん?…ああ、ノラか。」
「お久しぶりですっ!」
ノラはタマモ、と呼んだ女性に抱きついた。
艶やかな着物に黄金色の髪を持つ美しい女性。
その頭部には狐の耳が生え、髪色と同じ九つの尾をもっていた。
「
百物語組第八八話」。それが彼女に与えられた肩書。
そう。彼女もまた、春美に語られた妖怪だ。
ノラはタマモを実の姉のように慕っている。
同じ類だからか、二人は特に仲が良い。
抱きつくノラの頭を、タマモは優しくなでた。
「元気にしとうたか?」
「うん!タマモ姉さんも元気そうだね!よかったぁ!」
ノラは笑顔を見せた。
「…お主、大丈夫だったかの?」
「えっ?」
「
シン・シーの件。襲われたと…。」
ノラは直ぐに首を振った。
「うん!もう全然平気だよ!」
「そうか…。」
「…もしかして、心配してくれたの?」
「当然。お主は妾の妹のような存在だしの。」
「ありがとうっ!」
ノラはもう一度タマモに抱きついた。
「あ、ノラちゃん。もうきてたんだ。」
そこに春美が入って来た。
「遅いよ主。どこいってたの?」
そういいながらもノラはタマモに抱きついたままだ。
抱きつかれている側のタマモがどこか恥ずかしそうにしている。
「うん、ちょっとお爺様に呼ばれてたんだ。」
「そうだ、タマモさんもいるから先に話しておくよ。」
春美は二人の前に座った。
「今度の水曜日、丑の刻にこれる?」
「うん。夜だし大丈夫だよ。」
「妾も大丈夫じゃ。」
「そっか。なら、忘れずにきてね。」
「久しぶりの仕事だよ。勿論、アースセイバーとしての。」
春美は真剣な顔つきになり、二人を見た。
「…もしかして、妖怪が人を襲って…。」
「ノラちゃんは、多分学校できいたことあるよ。」
春美は一冊の本を取り出し、開いて見せた。
「『予知電話』…。この都市伝説による被害が、相次いでいるの。」
最終更新:2011年07月19日 22:10