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ヨチデンワ

「…午前2時58分。皆、全員いるがか?」
月光の問いかけに、寺院の一室に集まった一同は一斉に頷いた。
「ごめんなさい、こんな時間に呼びだしてしまって…。」
春美は頭を下げる。そんな春美の頭を星はなでた。
「いいんだよ。これも怪盗狩りの一環ってことで。モエギ達もおとなしく留守番してるしな。」

深夜2時、春美に招集をかけられたのは月光、星、クランケ、タマモ、ノラ。
それに寺院に元々いる春美、キリ、ゴクオー、キエン、ユカリを合わせ、全部で10人の人間と妖怪が集まっていた。
各々が携帯を持ち円形に並んでいる。
それは、これからアースセイバーの仕事を兼ね「妖怪封印」の作業を行うからだ。

「…とはいえ、何故お主までいるのじゃ?」
タマモは二つ隣のゴクオーを見た。
「何故も何もないわ。わしも何でお前が居るか聞きたいところじゃったしの。」
「あーあ、また始まった…。」
キエンは呆れたように呟いた。ユカリがすかさず割って入る。
「その、今はそんなことしてる場合じゃないと思うよ。時間もないし、集中しよう、ね?」

タマモとゴクオーが静まるのを待ち、春美は切り出した。
「皆一度はきいていると思いますが、改めて今回の妖怪を確認します。」
春美が携帯を持ち上げながら言う。
「今回は『予知電話』の怪…。都市伝説で一度耳にしたことがあると思います。」


都市伝説によると、とある方法で未来を予知する天の声を呼びだすことができる儀式らしい。
まず、丑三つ時に人を10人集める。この時全員が携帯電話を所持しなければならない。
10人は外側を向いた状態で円形に並ぶ。
そして、全員が一斉に右隣の人の携帯に発信するのだ。

普通、電話をかけても隣の人も通話をしているので電話は繋がらない。
しかしこうすると一つだけ電話がつながり、数コールもすればガチャリと音が鳴るのだ。
電話に出るのは女性の声。誘惑するようにこう問うのだ。
「貴方の知りたいことは何?何でも教えてあげるわ。」
その声の言うとおり、質問したことには何でも答えてくれるという。たとえ、他人の心情でも、未来の事でも。

しかし、3つも質問をすると、声が言いだすのだ。
「満足した?なら覚悟して。次は此方が聞くわ。貴方は報酬を払ってくれるのよね…?」
そう言った瞬間、電話を持っている人の体に異変が起こり、五体満足な体の一部を消し去ってしまうという。
奪われた部位は帰ってこない。「天の声」の体の一部になってしまうという…。


「所詮都市伝説と思いこんで面白半分で実行し、腕や足を持っていかれるケースが相次いでいます。」
「つまり、今回はその犯人を呼び出し、鬼門に返すんだな?」
「その通りです。」
時計はもうすぐ午前3時をさそうとしていた。
「よし、時間もないし、早速始めようぜ。」





全員が立ち上がり、携帯を手にとった。
「行くぞ。せーの!」
星の合図で全員が発信ボタンを押し、スピーカーを耳に当てた。

無機質な音がずれながらハーモニーを奏でる。
「全員、発信したね?」
春美の声に全員が頷く。そして、一人が手を上げた。
「…主。あたしの携帯が…繋がった。」
ノラが、心配そうにあたりを見回した。

「分かった。ノラちゃんはそこから動かないで。他は配置について!」
ノラ以外の全員が携帯を切り、一斉に散った。
と同時にノラの携帯のスピーカーから声が流れ出してきた。
『貴方の知りたいことは何?何でも教えてあげるわ。』
ノラは春美とアイコンタクトをとると、深呼吸をし、一言放った。

「あたしが知りたいことは一つ。「貴方の姿がみたい」。」

その台詞は、初めから春美が指定した台詞だった。
『…へぇ、もしかして最初からそのつもりでこんなことしてたの?』
面白い物を見つけた、という風に声は帰って来た。
「そうだよ。何でも教えてくれるんでしょ?なら、あたしの前に現れてもいいんじゃない?」
『ふふ、そうね。久しぶりに面白いこと言ってくれたし…。』

《見せてあげてもいいわよ。》
「!」
ノラは反射的に振り返った。
眼の前に突如として現れたのは、青く光る電波体のような女性。
髪、肌、ワンピースがそろって青く光っているが、所々肌色が紛れこんでいた。
女性は片方だけの青い目をこちらに向けながら不敵に笑った。

《でも、この姿見たのなら、ちょっと多めに報酬をもらわないと。》
「っ…。」
ノラは女性を睨みつける。しかし、脚は全く動かさない。
逃げ出したいのを堪え、次の合図を待っていた。

女性が動いた。右手のひらがノラを襲おうとしたその瞬間に、合図が下りた。
「ノラちゃん!後ろに下がって!」
床を蹴り後ろに下がると同時に床が紫に光った。
そして光は実態を持ち、二重の結界となって女性を見事にとらえたのだ。

《!?》
「キエン君!ユカリちゃん!」
春美の合図で二人が飛び出した。
キエンがノラの持っていた携帯と女性との「縁」を切り、ユカリが赤い糸で結界との「縁」を結んだのだ。
「よし!これで結界と完全に結ばれた!」

《どういうこと…?まさか、貴方達も妖怪なの!?》
「そのまさかでありマスよ。」
一歩前に進み出たキリの手には、紫の炎がともる札が握られていた。
彼は自身の能力を応用し、二重結界を作り出しているのだ。

「予知電話の怪、貴方を鬼門へ送還いたします!」
《やれるものなら…やってみなさいよ!》
女性は結界に掌をおき、力を入れ出した。
「…!」
予想に反するものすごい力。キリは札を持っている側の手を結界に向け、対抗しだした。

「星さん!彼女の動きを止められませんか!?」
「…いや、無理だ。人間の肉体を取り込んだ部分にしか重力がきかねぇ。多分あの青く発行している部分は電波体かなにかと同じなんだ。」
ち、と星は舌打ちをした。その様子をタマモとゴクオーが見ていた。

「…仕方ないの。キリ!結界にわしを入れろ!」
「! しかし…!」
「いいから!わしが動きを止める!その間に!」
そう叫ぶと、ゴクオーは返事を待たずに結界に突っ込んだ。





ブレラ!無礼失敬!」
「いつものことでしょ!百も承知よ!」
ゴクオーが背負っていたブレラを取り上げた。同時にブレラの周りの空気が凍りだす。
ゴクオーはそれをしかと握り、後ろから女性を殴りあげた。

…が、一向にきいている気配がない。
「な…!?」
一歩下がると、女性が振り向き、ゴクオーを見た。
《あら、貴方。私に用があるの?》

「何を聞いていた、ゴクオー。あやつは電波体同然。実態をもった部分でないと攻撃は通用せんぞ。」
タマモが呆れたように言った。
「そんな冷静に言ってる場合じゃなかろ!しかもそんなピンポイントで…。」
「…はぁ、仕方ない。」

タマモは結界を睨みつけた。と同時に、女性の動きが止まる。
《…!?な、何これ、体が…!?》
「神経性の毒ガスじゃ。これで結界内で動けるのはお主だけになった、ゴクオー!」
「!!」

ゴクオーはタマモを見た。タマモは頷く。
タマモは長年地獄にいたゴクオーなら多少ながらでも耐性があると見たのだ。
ゴクオーは飛び上がり、もう一度ブレラを、今度は正確に実態に当てた。
当たった部分が急激に冷やされ、凍りだす。女性がバランスを崩し、完全に動けなくなる。
「今じゃ、主!月光!」
ゴクオーの合図で二人は素早く陣を展開した。

「悪霊…滅すべし!」
九字を切る声に合わせて陣が展開し、女性を捕えた。
別空間へと陣の中心が開かれると、抵抗する女性を引きずり下ろした。
《嫌…!ただ、歩くための偶体が欲しかっただけなのに…!!》
そんな声を最後に、女性は鬼門へと返還された。


「お疲れ様!大丈夫だった、皆?」
緊張の糸が切れ、全員がその場に倒れ込んだ。
素早くクランケが怪我の手当てを施している。
「ああ。誰も腕やら持っていかれてないしな。」
「でも、この前に体を持っていかれた人はきっとこれからも不自由なままなんだろうね…。」

「…腕が5人、足が13人、目が1人じゃった。」
ゴクオーが静かに呟く。春美はゴクオーを見た。
「皮膚のつなぎ目や色を見る限りだけじゃけどの。合わせて19人以上が、今も苦しんどるんじゃろうな。」
「…そうだね。でも、そんなの数える余裕なんて…。」
「タマモのおかげじゃ。」

「あいつが動きを止めて、ピンポイントで狙えたから余裕ができた。といっても一瞬じゃけど。」
ゴクオーはそう言うと、タマモを見た
「その…ありがとの。」
「ふん。そもそもお主が無茶ぶりをするからじゃ。例を言われる筋合いはない。」
「…まぁ、の。」


ヨチデンワ


彼らは後に知ることになる。
この女性が狂わせたとある人生の大きさに。

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最終更新:2011年07月29日 19:47