「さぁて、今日は何処を巡ってみるかな…?」
寺院の塀の上に立ち、
エトレクは夕陽色に染まるいかせのごれを一望した。
昨日の
ヨシエの助言をもとに、今日からかの少女を捜し回るつもりだった。
「とはいえ、ヨシエさんの言うとおり10年も経ってるんじゃかなり見た目も変わってるだろうなぁ…。」
この男、時間の感覚にずれが生じていることは気にもしていない。
というか「存在」としてどれだけの時間鬼門にいたかなんて覚えてるわけがない。「時」というものがないのだから。
「…ま、細かいこと考えてたって仕方あるまい。今日も琴音さんは来ないし時間もないし、先に捜しに行くか。」
そう呟くと、彼は塀から飛び降りた。
数十階建てのビルから飛び降りても無傷の男だ。なんと微妙な専売特許なのだろうか…。
「2時間しかないもんな。とりあえず今日は近場を探るか。」
目立つ服装も慣れたもの。彼はお構いなしに歩き出した。
ここは何処にでもある閑静な住宅地。直ぐ近くにストラウル跡地がある分住民は少ないが、人数を絞り込む分にはうってつけだ。
そもそも寺院の近くでもある。多少おかしな人物が歩いていても驚かれるまい。
…まぁ、御町内の変な人として謳われるのは複雑な気持ちだが。
「…っていっても、こんな近場にいるわけないよなぁ。いたら奇跡だろ、おい。」
かなりの規模があるいかせのごれで人一人探しだすにはかなりの労力を要するだろう。
だが、手掛かりが少女の名前である「ブランカ」以外に何もない。
アースセイバーに協力してもらうにはあまりに手掛かりが少ないので、自重することにしていた。
「そうこうしているうちにもう1時間半かよ。あーもー、時間が早い!」
住宅地にもかかわらず彼は叫びだしていた。
当然だろう。一日24時間のなかでたったの2時間だ。別に白昼堂々捜しまわるのもいいが、姿といい何といい、非日常極まりない。
その時間の中で少女どころか一人も人間に出会っていない。
人を襲うことが仕事なのに、人を寄せ付けないのだろうか。
…なんだか自分で書いててつくづくかわいそうになってくる(
「しゃーね。今日はこの位で切り上げるか。どの道あと30分捜しても誰も見ないだろ。」
開き直ったように彼は言った。
「…さーて、『明日はこの路地を洗うか洗わないか』…。」
夕陽を眺めながら彼は先程と打って変わり、小さく呟いた。
「…うん、明日は『洗わない』!人も少ないんだ。ここにいる確率は少ないな。」
即断即決がこの男の数少ないいいところの一つだ。
彼は踵を返すと、寺に向かって歩き出した。
…尚、彼が寺へと戻った20分後、
火波 琴音がその路地を通ったことは此処だけの話である…。
最終更新:2011年07月30日 04:30