アットウィキロゴ

『ホウオウグループの雪女』

「うんしょ、よいしょ…」

某日、ホウオウグループ。
瑠璃色の髪と白い着物がせわしなく動いている。

「…っと。鴉さん、書類持ってきましたー」
「そこに置いてくれ」
「はいっ」
「すまないな」
「いえいえ! また何かあったら言ってくださいね」
「ああ、白奈」

白奈、と呼ばれたこの少女。
ホウオウグループでは珍しい妖怪の一員である。
因みに種族は雪女。

「ところで、この書類は何ですか?」
「過去に戦った、アースセイバーの能力者のデータだ」
「アースセイバー…」
「…羨ましいのか?」
「えっ」
「ホウオウグループの一員で妖怪は、お前とあの吸血鬼兄妹だけだからな」

クロウの言葉に、白奈がとんでもないとでも言うように両手を激しく降る。

「そんな事無いですよ! 確かに妖怪の人は少ないですが、グループには凄く感謝してるので全っ然平気ですっ!」
「感謝…か」
「はい! 皆さんがいなければ、私は生まれてこなかったんですもんっ!」
「なるほどな」
「じゃあ私、外に行ってきますね!」

するとクロウは半分呆れたような表情になった。

「また迷子になるつもりか?」
「今度はだいっじょーぶです!」
「……そうか」
「何ですかぁ~、そのどうせまたみたいな目はぁ~」
「気のせいだ、さっさと行け」
「はいっ、では!」


「よう雪女」
「ミッチーくん! 雪女じゃなくて白奈だってば!」
「どっちでもいいだろ。また外に行くのか?」
「そうだよっ」
「懲りない奴だなァ、何度も泣いて帰ってくるくせに」
「今日は大丈夫、だいじょうb」
「無理だな」

カチン

「…ヒュウゥ~~~!!!」

ミチルの言葉に怒った白奈は、口から冷気を吐き出してミチルの足を凍らせた。

「ちょ、てめっ、冷気を吐くなよ!」
「知らないっ! 自業自得だよっ!」
「あっ、コラ待て! 動けねえだろうが~!!」


「もうっ、ミッチーくんったら! 相変わらず憎まれ口叩くんだから…」

ブスッとした表情で、街中をてくてくと歩く白奈。
勿論、着物は目立つので洋服に着替えている―――というより、変化している。
瑠璃色の髪も普通のロングストレートになり、瞳も白っぽい色ではなく黒い色に変わっている。

「…ん?」

白奈の視界に一軒の店が入る。
それが何の店なのか分かった瞬間、白奈の表情はたちまち満面の笑みに変わった。





「アイスクリーム屋さんだ~!」

当然アイスクリーム屋目掛けて突っ走る。

「すいません、アイス下さいっ!」
「はい。味は何がいいですか?」
「えーっと、どれにしよっかなあ…迷うなあ~…」

しばらく迷って考えた結果、白奈はチーズケーキ味のアイスを買うことにした。
「ありがとうございました」という店員の声を背にし、白奈はアイスを一舐めする。

「ん~、幸せ♪」

アイス一つですっかりご機嫌になっている。
彼女は嬉しいことがあれば、嫌なことは全部すっきり頭の中から消える。
そういう人物だ。

「おいっしぃ~♪」
「よっ、白奈ちゃん」
「うぉわあえええっ!??」

背後から突然聞こえた声に盛大に驚愕する白奈。
その拍子で思わず体から冷気が漏れだしかけるが、何とか踏みとどまった。

「ちょちょいちょいっ! 誰かと思ったらモコくんじゃんかー! めっちゃびっくりしたあ!!」
「驚きすぎだっつの」
「驚くわっ! 思わず冷気を噴き出すとこだったよっ!」
「へ? 冷気?」
「あ、何でもない何でもな~い…(危ない危ない、妖怪だって事バレるとこだった)」

一人冷や汗をかく白奈。
とはいえ、幸いにもコウスケはそれ以上怪しもうとはしなかったが。

「女の子が一人で何やってんだ?」
「アイス食べながら散歩してる~」
「じゃあ、折角だから俺とどっか行かね?」
「さっそく口説きますか」
「そんな冷たい事言わなくていいじゃねえか」
「どうせなら私じゃなくて、コヨリっちゃんを誘えば?」
「…何でそこでコヨリが出てくんだよ」
「一番好きなんでしょ? 取り巻きの中で」
「はあ!? そんな訳ねーし!!」

反論するコウスケだが、彼の顔は赤くなっている。
白奈はいたずらっぽく笑い、コウスケに更に詰め寄る。

「だからコヨリっちゃんとデートしなさいな。今度メールしたげるから」
「すんな!」
「しちゃう~。ばいばーいっ」


「モコくんは隠してるつもりだろうけど、私にはバレバレなんだよね~」

一人くすくすと笑う白奈。

「日も暮れてきたし、そろそろ帰ろうか」

そう思った白奈は、てくてくと歩き出す。
が、次第に彼女の表情は曇り始め、挙げ句の果てに歩みが小さくなっていく。
そして今置かれた状況に気付いてしまった。


「ここ…どこ?」

そう、彼女はまた迷子になったのだ。

「ど、ど~しよ~…」

半泣きになりながらも、何とかホウオウグループに帰ろうとする。
だが中々辿り着けなかった。
しかも最悪な事に、人気の少ない街中の路地裏に迷い込んでしまう。

「ひっく…ひくっ…」

とうとう泣き出してしまう白奈。
その時。

ガチャ…ガチャ…

「…?」

後ろから聞こえる奇妙な物音。
白奈はおそるおそる振り替える。
その刹那。

ドォッ!

「うぁえっ!?」

突如放たれたグレネード弾。
放ったのは―――。

「えーっと、『パニッシャー』ちゃん…だっけ?」





頬をかきながら、ひきつった笑いを見せる白奈。

「あのー…見逃してほしいなあーなんて…無理?」

だが人間の言葉が分かるはずもない兵器は、白奈に向かって容赦なくマシンガンをぶっ放す。

「ひええ」

何とか逃げる白奈。
しかし弾が一発、彼女の頬をかすった。

「っ…あーもうっ!」

逃げるのを観念した白奈は、戦う体勢に入る。
その瞬間、彼女の姿が雪女としての姿へと変わった。
そこへパニッシャーがグレネード弾を撃つ。

「…ヒュゥウ~~ッ」

白奈の口から冷気が吐き出される。
それを浴びたグレネード弾は、たちまち氷づけにされて地面に落ちた。

「めんどくさいから、一気に凍えさせてやるっ!!」

その途端、白奈の回りに雪が―――いや、吹雪が舞う。
その吹雪がパニッシャーに纏わりつき、そして―――。

「ヒュゥウウウウウッッ!!!!」

白奈の口から更に強烈な冷気が吐き出され、パニッシャーはその冷気と吹雪で一瞬にして凍った。

「ふー…疲れたあ…」

何とか命の危機から脱した安心感から、白奈は地面にへたりこんだ。

「それにしても、パニッシャーちゃんって相手がホウオウグループでも攻撃するのかあ……やっぱりホントの事だったんだ」

その時。

パキッ

「…ふにゃ?」

白奈の耳に、何かが割れた音が入る。
音の方を見ると―――。

パキパキッ…パキッ…

「わえっ!? ヒ、ヒヒ、ヒ、ヒビ入ってる!!?」

パニッシャーの氷に、不吉にもヒビが入り始めていた。

バキッ、バキ…バキンッ!!

「ひゃああああっ!!!!」

逃げ出そうとする白奈だが、安心感と再び迫りくる危機の恐怖に、すっかり腰が抜けてしまっていた。
声も思うように出ない。
白奈は耳を押さえるように頭を抱え、目を瞑った。

「…………………あれ?」

何も来ない。
不思議に思った白奈は、ゆっくりと手を下ろし、目を開いた。
すると視界に入ったのは、破壊されたパニッシャーと2つの人影。





「鴉さん! 吸血鬼くん!」
「全く…パニッシャーは凍らせただけでは倒せんぞ」
「それにたかが兵器に恐れを成すなんて…その綺麗な白い目をえぐりとってあげようか?」

冷たい笑みを浮かべ、残酷な事をまるで冗談の様に言うエドワード
それをクロウがたしなめる。

「…エドワード」
「大丈夫ですよ鴉さんっ!」
「は?」
「えぐられない様に、目を凍らせますから!」
「…そういう問題じゃないだろ」
「じゃあ目ごと炎で溶かすよ」
「…お前も反応するな。とにかく戻るぞ」
「あっ、はーい!」


「お、ようやく帰ってきたか。雪女」
「だーかーら! 私の名前は白奈!」
「んな事どーでもいいだろ。それよか、また迷子になったのか?」
「な、なってないなってないっ! ちょっと遅くなったから2人に迎えに来てもらっちゃったの!」
「何で遅くなったんだ?」
「パニッシャーに突然、襲われたから!」
「パニッシャーに?」

その時エドワードが口を挟んだ。

「いくらパニッシャーでも、人気の多い場所には現れないけど」
「……」
「て事は人気の無い場所にいたんだよな? 何でそんなとこにいたんだ?」
「え、あ、えと…ア、アレだよ! 新しいアイスクリーム屋さんが出来てたから!」
「どこにもなかったがな」
「……」
「ふ~ん…てこーとーは。お前やっぱり―――」
「言わないでよーーーーーーっっ!!!!!!」

赤面した白奈は激昂のあまり、体の周りから冷気もとい、雪を吹き飛ばした。
それをまともに浴びたミチルは凍ってしまう。

「うわぁああああん!! ミッチーくんのバカァ! 死んじゃえばいいのにぃいーーっ!!」

白奈はそのまま大泣きしながらどこかへ走り去ってしまった。
凍らされたミチルはクロウとエドワードによって何とか助かったそうな。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年08月08日 16:34